2017/07/09 のログ
暁 名無 > 「まったく……毎回こんな事してたら身が持たねえ……」

十二分に蒸気が満ちたのを確認すると、俺は障壁に背を預けて腰を下ろした。
魔術の扱いに関しては素人に毛が生えた程度を自称する俺としては、ここまで大掛かりな術式は負担が大き過ぎる。
とはいえ、誰かに頼むのも気が引ける。

「……もういいぞ、準備出来た。
 出て来い、狭い所に居て退屈してるだろ。」

俺は懐から小瓶を取り出し、その口を開ける。
蓋が外れると同時に中から飛び出したのは、数匹の“魚”だ。

暁 名無 > 蒸気に満たされた空気中を飛ぶように泳ぐ魚を眺める。
赤、青、紫。それぞれ色の異なる熱帯魚のような魚が2対で計6匹。
さながら水槽の中に居る様な気分になるが、間違いなく呼吸は出来ている。

「……人の苦労も知らねえで……ったく。」

気儘に自由に、優雅に泳ぐ魚たちを眺めていたら思わずため息がこぼれた。
ドーム状の水槽で蝶のような魚が舞う姿を、俺はただただ見つめている

暁 名無 > 「まだまだこんな風に珍妙な生き物が門の向こう側にはわんさか居るってのか……」

辺りに誰も居ないのを良い事にぽつりぽつりと呟きつつ考えていた。
時折目の前を横切る様に泳いでいく空飛ぶ魚たちは、つい先日転移荒野で見つけて拾って来たばかりだ。
今年度に入ってから他にも何種類か、この世界の生物から大きく外れる生き物を拾っては飼育している。

お陰で生活費や光熱費が馬鹿にならない。
そんな状況で藤巳からの弁当が無ければ、割と生きていけない状態だ。

「そろそろ気が済んでくれ……そうにねーなー。」

ぐるぐる、蒸気の中を目まぐるしく泳ぎ回る姿には、疲れとか飽きというものを一切感じさせない。
一方で俺は普段使わないような魔術を2つも、それも連続して使い疲労困憊だ。

暁 名無 > 「ま、いーか。
 落ち着くまで昼寝して、帰りがけに図書館にでも行くか。」

折角の休日にも関わらず、学校の近くまで来たのだから寄らない手も無い。
少し調べておきたい事があったので今日のこの後の予定として組み込んだ。

「……ん、ふ、わあ~。」

そんな事を考えていたら、そろそろ気怠さも限界だ。
頭を靄の様に覆い隠す眠気に身を委ね、俺はゆっくりと眠りの底へと落ちて行った。

ご案内:「演習施設」から暁 名無さんが去りました。