2017/07/23 のログ
ご案内:「訓練施設」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > 「……と、いうわけでだ。」

日曜の訓練施設、無人の一室で俺は誰に言うでもなく呟いた。
一体何が「というわけ」なのかは、口にした俺自身謎である。
無言で作業をするのが性に合わなかっただけなので、深い意味も無い。

俺の足元には人一人が入れるほどの大きさの魔法陣。
そしてそれを描くために参考にした諸々の資料。
明らかに今ここで何かを始めようとしている状態なのは、一目瞭然だった。

「上手くいけば、ちょっとだけ今後の授業が楽できるな……」

我ながら上手く描けてると思う魔法陣を眺めながら、俺はほくそ笑む。

暁 名無 > 「そうだよな、捜しに行くより喚び出しちまう方が早いよな。
 なんでもっと早く気付かなかったんだかなー……」

昨日の保健室での一幕から、まだまだ生徒たちに幻想生物に関する認知度が足りていないのではと思った俺は、
どうにか幻想生物のことをもっと広く知って貰おうと昼寝明けから散々考えていた。
何しろ俺の授業の受講者数にも関わって来るし、それはつまり予算にも絡んでくるわけで。
一応のメインジョブである教師生活をそれなりに楽なものにするためには、避けては通れない道でもある。

とまあ、そんな事情を抱えて一晩悩んだ末に出た結論が。
幻想生物の召喚、というものだった。
召喚術に関しては、ほぼほぼ素人同然の俺ではあるが、まあこの時代に来る以前に少しだけ齧ったので出来なくはないだろう。

そんな緩い発想のもと資料は集められ今に至っている。
我ながらいざという時の行動力は目を瞠る物があるなあ。

暁 名無 > 「さて、そろそろ始めっかなー。」

召喚を試す前にもう一度不足が無いか確認する。
魔法陣……この場合召喚陣とでも呼べばいいのか?─良し。
術式を作動させる為の魔力……は、今日はそこそこ体調も良いし大丈夫だろう。
あとはどんなデカブツを呼び出しても平気な広さの空間……申し分なし。
まあ、今回は最初なので小動物サイズで何かイメージしておくとするか。

「……準備オーケー、それじゃ始めるか。」

俺は懐からいつもの煙草を取り出すと、一本咥えて火を着けた。

暁 名無 > 煙草の煙がゆっくりと室内を満たしていく。
俺は目を閉じ意識を集中させ、慎重に術式を作動させた。
召喚陣へと魔力を注ぎ込み、魔術回路を興していく。
ゆっくりと、この部屋と、別の場所を繋ぐイメージを作り上げ、そのイメージをより強固なものへとしていき、最終的には魔力を媒介に投影する。

まだ魔術のいろはを覚え始めた頃。この『集中』という過程が俺は苦手だった。
元々じっとしているのが苦手な性質で、物事も滅多に深く考えなかった俺が一番慣れるのに苦労をしたのは一点に集中するという事。
どうにかこうにか自分の中で意識の切り替えをする事で可能とした後は、鼻歌混じりでも実行に移せるようにはなったけども。
──とまあ、そんな余計な事を考えていたら。

「………あれ?上手くいかねえな?
 手順は間違いないし、魔力の通りも滞ってないし……」

どうやら陣の何処かに不備があるらしい。
やれやれと状況を確認すべく俺は魔力の供給を止めようとしたが、唐突に魔法陣が強く輝き始めた。

線一本足りないだけで、全く別の魔術が成ってしまう事もあるという事を、俺は光に包まれながら思い出し、そして──

ご案内:「訓練施設」から暁 名無さんが去りました。