2017/07/31 のログ
筑波 察 > 「じゃあ僕とは"畑"が違うわけだ。
この島に住んでて、制御できない力ほどタチのわるいものはないねぇ。
そして未知数の力には期待が高まるねぇ」

(嫌味ではない。この間まで自分の力は制御できない状態だったし、
今は未知数の力を秘めている。そしてそれを確かめるために実験しているのだ)

「空を飛ぶなら翼はいるんじゃないかな?ワイヤーは空では使えないし。
そして君への負担も大きそうだ。」

(何よりもさっきの加速の仕方だと君の身体が空中分解しちゃうんじゃ?
そんな悪ふざけを言って見せる。もちろん空中分解は冗談ではない)

「スマホが映した映像をブルート○ースで飛ばして、僕が受け取ってる。
電波として映像が出ているなら何でも受信できる。っぽい。
機器への干渉はちょっと難しいかな」

(まだ実験段階だが、おそらく最終的にはそうなると思う>

飛鷹与一 > 「まぁ、生まれつき持ってた異能なんで腐れ縁ですけどね、制御不能の方は。
放置しておくとちょっと俺の人生がヤバいので何とか制御法を見つけたい所です。
未知の方は…まぁ、こっちは発動は自分の意思で出来るだけマシといえばマシですかね…。」

制御できない力ほど面倒なものはない。それは身に染み過ぎている。
未知数の力は未知なだけあって手探りだがまだ制御の可能性はあるだけマシだ。

「負担も大きいのは見越してます。ただこういう形じゃないと爆発的な加速は得られないので…」

「師匠」と違い、立体的ではなく直線的で方向転換も一苦労。
欠陥だらけの高速機動だが改善すればある程度形にはなると思いたい。
彼の指摘は間違いではなく、下手すれば体が四散するだろう。つまり色々とリスキーだ。

「…電波…電磁波という事ですか。そうなると”波があるモノ”なら干渉は一通り出来るかもしれませんね」

使い方次第ではそれこそ応用性の塊ではないだろうか?

ご案内:「訓練施設」に飛鷹与一さんが現れました。
筑波 察 > 「生まれつきかぁ。なら仲良くしないといけないねぇ。
きっと墓場まで一緒だろうから。」

(異能と仲良くする。そして墓場まで持っていく。
いつか異能に悩む少女に向けて同じことを言った。
現状、異能や魔術と人生を共にするのは力を持った者全員の宿命だ)

「加速、ねぇ。
君は速さを出すことが得意なのかい?」

(なんとなく、目の前にいる同級生からは焦りと言うか、劣等感というか、
憧れに近づきたいとか、そんな感じの感情が見て取れた。
そして、唐突に質問を繰り出す。
別に深い意味なんてない、気になったから聞く程度の質問)

「そうだね、振動しているものなら支配的に操作できるよ。
でもその振動が機械にどう影響するかまではわからないからね。
何よりもぼくの頭はそこまでよくできていない」

(訓練次第でどうにでもなるのかもしれないが、
現状そこまでたどり着いていないのが現実だ>

ご案内:「訓練施設」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「…死神と仲良くするのもゾッとしない話ですね…ハァ」

溜息を一つ。死を遠ざける力だが代償で死に近づく。矛盾な力はまさに死神の悪戯としか思えない。
仲良く、と彼は口にした。異能と共存するのはとても大事でそもそも切り離せないもの。
だが、現状は共存したくても力が常に暴走しているような有様だ。どうしようもない。

「……え?いや、近接戦闘が心許ないですし、高速機動が出来れば色々と便利ですしね」

得意とは言えない。少年は地味に多彩だが最大の長所は異常な射撃能力であって加速能力ではない。
もっとも、焦りや劣等感は無意識にあるかもしれないが、少年自身はそれに気付いていない。

「…稲生の理解を深めるのは大事ですが、理解し切れるかはまた別問題ですからね。」

振動を操る、というのは矢張り応用性は高そうだがそれを使いこなせるかは能力者自身の知恵や発想や機転だろう。
自分の場合、それらでもどうしようもないから煮詰まっているのもあるが。

ご案内:「訓練施設」に飛鷹与一さんが現れました。
筑波 察 > 「ふふふ、君の能力は死神みたいな存在なのかい?
だとしたら一層仲良くしていかなきゃいけないねぇ?
だって死神と対話して鎮めることが出来るのは君だけってわけだから」

(持論を持ち出すなら、本当の意味で制御できない力というのは人に宿らない。
なぜならそんな力を持ったら一瞬で人は自壊するから。
自壊せずに、猶予が与えられているなら、それは異能と共存するための猶予だ)

「なら順番が逆だよ。まずは速さになれるところから始めないと。
君の師匠とやらは君にできないことを、
いきなりやれって言うような人なのかい?
死神と仲良くやるのだって、まずは些細な挨拶からじゃないとねぇ?」

(いきなりやって成功する例なんてほんのわずかだ。
卓越した力には訓練が必要だ。
それは彼自身が十分に理解していることだろう)

「理解するために訓練や勉強が必要だからね。
そして訓練する時間はあいにく無限じゃない。
人生80年。何をするにしても短いからねぇ」

(この発言は無論、比喩だ。
寿命なんて種族による。でも、人間の寿命はあまりにも短い>

ご案内:「訓練施設」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「端的に言えば、外的要因で死なない代わりに自分の寿命を削る感じですね。
まぁ死神みたいなものですよ。外的要因では死ななくても削られた生命力のせいで遠からずあの世にご招待、と。」

死神と対話する、か。つまり今この瞬間も発動している異能と向き合うという事。
だが、それは物心付いた時から常にやっている。死神が身近に居る生活に慣れてしまうのもアレだが。

(――いや、本当にそうか?俺は自分の異能をまだちゃんと理解しきれてないのでは?)

そんな漠然とした懸念が鎌首を擡げる。確かに今の状態は異能の勝手な暴走かもしれない。
だが、暴走しているからといって制御出来ないとも言い切れない。
長く付き合ってきたからこそ、何処か諦観を覚えていたのだろうか。

「…いえ、そういう事は言いませんね」

師匠は厳密には二人居る。本土に今も暮らす体術使いの老人と、こちらで出会ったとある少女だ。
ただ、二人とも少なくとも己に出来ない事を強制するような人達ではなかった。

(…どうも視野搾取気味になってるのかな俺。…何処かで焦っているのかもしれない)

こういう時、不器用な生真面目さがむしろ助かる。自身を客観的に見れるから。
そうだ、まずは速度に慣れる所からスタートしなければ。
とはいえ、炎翼加速のアイデアは捨てるには惜しいから改良はするつもりだが。

「…俺も80年生きられたらまだいいんですけどねぇ。
まぁ、確かに数十年の人生じゃあれこれ理解するのも限度はあるでしょうし」

80年どころかあと何年生きれるかも怪しい身の上だが、それはそれだ。

筑波 察 > 「死ぬことをツケ払いにしてくれる能力か」

(そりゃ確かに焦る気持ちも生まれるなぁと内心思いつつ、
まだ彼に対する違和感は消えなかった。
あれほど真面目な彼が、寿命が縮むくらいで何を焦るのだろう。
死神と向き合うくらい、とっくの昔にやってそうなものだが)

「言わないだろう?
ならまずは速さになれること、飛ぶことになれること。
これが先決だと、僕は思うけどね?

わからないものに向き合う時、大抵は演繹的に考えるんだ。
そして実験する。たくさん実験する。
実験してわかったことを、真実として帰納していくんだ。

時々正しいと思ってることを疑うのもいいかもしれないねぇ?
本当に死神なのか?とか。案外可愛らしい天使かもよ?」

(そんなふざけたことを言えるのも、図太さゆえだろう。
彼は真面目が過ぎる。
そしてその真面目さで自壊するには少し惜しいくらいに面白い人間だ>

ご案内:「訓練施設」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「…あー言い得て妙ですね。取立人が死神で支払うのが自分の寿命ってのが皮肉が利いてますが」

死神と向き合う。それはもうとっくにやっている。寿命が縮むのも最近は体の変調で実感している。
何が怖いのか?分からない。ただ精神が先に壊れそうな気がしたのだ。
だって、死神とずっと対話し続けるなんて普通の神経じゃ無理なのだから。
そして、少年は多彩ではあっても、化物じみた精神性を持つ訳ではない。
生真面目故に無理をしている部分が、年月を超えてとうとう”悲鳴”を挙げ始めたのだ。

「速度と飛行に慣れる、ですか。完成は気長にやるしかなさそうですね…」

炎翼加速を完成させる為には、まずその土台がしっかりしていなければならない。
つまり自身の適応、慣れというものだ。この際、細かい改善点は後回しにした方がいいかもしれない。

「…天使は流石に無いですね。うんそれは無いわ…」

と、思わず一部敬語が外れるくらいに真顔で言い切った。
死神ではあっても天使ではない。そこだけは間違いない。
ただ、その本質や付き合い方をもっと深く考察しなければならないとは思う。

まぁ、彼がある程度推察しているように、何かを切っ掛けにいきなり自壊しかねない。そういう少年なのだ。

ご案内:「訓練施設」に飛鷹与一さんが現れました。
筑波 察 > 「そのツケ払いって、あれなの?連帯保証人とか立てられないの?
もしくはまさかの金利がマイナスになったり。」

(そんなバカな話があるか。
でも、相手が死神だとして、借金を踏み倒されたどうするのだろう。
例えば、彼自身の寿命で払いきれないほどの何かが起きたときとか)

「そうだねぇ。でも焦るのと気長にやるのは大きく違うと思うよ?
いつ消えるかわからない命火だからね。丁寧にやらなきゃ。

あら、そう?ならせめて悪友くらいにはなりたいねぇ。
お互いに憎まれ口をたたきながらも、
ちゃんと対等に話ができるように」

(これは彼に向けた切なる願いだ。
敬語が取れるということは、
彼自身"死神"とはため口で話せるような間柄なんだろう。
表現はあれだが、死神に弄ばれながらも、
仲良くやっている彼の姿が一瞬、スマホの画面に映ったようだった>

ご案内:「訓練施設」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「…あー…いや、困った事に俺の異能。俺に対する死を全て捻じ曲げるんですが、その捻じ曲げた死の反動が周りに及ぶんですよ。
つまり…俺自身は平気でも周りにランダムに被害が及ぶというか」

金利とかツケ以前に、悪辣な事に死を捻じ曲げた後の余波で周囲にランダムに災難を撒き散らす。
死神というかぶっちゃけ悪魔な気もする。自分は死なないが寿命は縮む。そして周りに何かランダムに不幸が起きる。

(…改めて考えると何だろうなぁこのクソ異能…)

と、心の中で悪態を零しながら。ちなみに寿命で払いきれない場合、多分身近な誰かから取り立てる気がする。

「…あー、何時消えるか分からないっていうのはリアルすぎて笑えませんよホント。
…対等、かぁ。死神抱えてる人間って冷静に考えるとどうあんだろうか…」

【死線】というのが彼の難儀な異能の名称だが、もう【死神】に改名した方がいい気がしてきた。

筑波 察 > 「ふーん?なんだか納得がいかないねぇ?
周りに被害が出ているのに、寿命が縮むんでしょう?」

(なんだか二重に取り立てられているみたい。
そんなことを言うが、彼自身にどうこうできない以上、どうしようもないが)

「せめて寿命以外の何かで払えればいいんだけどねぇ?
それこそ君の身代わり人形が君の代わりにダメージをうける、みたいな」

(そういう魔術的な部分は本当にド素人だ。
そういうのは難しいのかな?というだけ言ってみる。無責任だ)

「少なくとも君はずいぶん死神に好かれているみたいだから、
ちょっとしたお願いも聞いてくれそうだけどね?





――君が殺されて取り立てられるなら、
君が殺したときとかはどうなんだろうねぇ?」

(ちょっと冗談めかして、それでもどこか冗談になっていない声色>

飛鷹与一 > 「納得も何も、俺の異能のカラクリ…法則性とか本質は研究者でもサッパリみたいですしね…研究所でモルモットなりまくりですけど進展無いですし。」

研究者が無能というより、少年の異能が怪奇なだけかもしれないが。
そもそも、異能は千差万別だからアプローチも個々様々。そのやり方が見つからないだけかもしれないけれど。

「ああ、何かそういうアイテムの話を以前ちらっと聞いた事が。ただツテが無いのでそっち方面は疎いんですよね」

残念ながら、少年も魔術は使えるが魔道に精通してるとは言いがたい訳で。

「――俺は殺しませんよ。人殺しの才能はあるみたいですけどね。」

もし、誰かを殺してしまったら。死神の思う壺でしかない気がする。

筑波 察 > 「……そう、
僕なんかは必ずルールがあるもんだと思って生きているにんげんだから、
そういう道理に反しているようなことが気になっちゃってね」

(その道理というのは、あくまで自身が学んできた物事の範疇で、だが)

「案外君の寿命は減ってないのかもね?
減っていると思い込んで、悩んで、壊れる君を、死神は笑っているだけかも。
死の代償はとっくに返済してたり。」

(これまた突拍子もない発言。
そもそも彼は寿命が減っていると、何をもってそういっているのか。
減っているのはわかっているのに、いつ尽きるかわからない。
それは普通に生きている人間なら誰しもが同じだ)

「よかった。これで君が目の色を変えたら、
僕は君を止める為に行動しなきゃいけないからねぇ」>

ご案内:「訓練施設」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「…ルールがあるとしても、よっぽど複雑怪奇か…あるいは引っ掛けでもあるかもですね。
俺の異能は何かそういう類の気がします。まぁ感覚的なものですけど」

そもそもルールなんてぶち壊して嗤ってそうな死神であるが。
ホントなんだろうなこのはた迷惑な異能は、と心の中で溜息。これも何度もしてきた事だ。

「……まぁ、そういう可能性もあるでしょうね」

彼の突拍子も無い発現を否定はしない。が、口にしないが現在進行形で体に変調が起きているのだ。
健康管理はしっかりしているし、病気も無いのに貧血や倦怠感、それに喀血もした。
そろそろツケを纏めて支払う時期が近づいているのかもしれない、とも思いたくなる。

(…もしそうなら、俺は自分で自分を追い詰めてるようなものになるけど)

嗤う死神は何も答えちゃくれない。嗚呼、何でこんな難儀な異能が俺に宿ったのかと。
そんなのは選べないので仕方ないと割り切る。もう割り切っているけど。

「……俺は殺す側ではなく、それを止める側でいたいですからね。
殺してしまったら、もう俺は俺でなくなってしまいますから。そこで飛鷹与一は多分”死にます”」

人殺しの才能があろうと何だろうと、誰かを殺したいとは思わない。思いたくない。

筑波 察 > 「複雑なルールも、構成要素はYESかNOの二択さ。
いつか君が死神と仲良くできる日が来るといいねぇ」

(少なくとも、彼は誰よりも自身の異能に悩んで、考えてきただろう。
だからこそ、盲目になっている部分が在るかもしれない。
それを見つけるのは彼自身だ。
しかし、だとしても、彼がいなくなって退屈する人もいるだろう。
そういう人たちはきっと彼に力を貸してくれる、すでに貸しているかも)

「なんにせよ、
君が死んでしまうと僕の同級生が一人減ってしまうからねぇ。
それは君の真面目な性格異常につまらない。
人を殺して飛鷹与一君が死ぬのも、つまらない。」

(協力してあげるとは言わない。
出来もしないことは言わない、それは無責任だ。
それでも、彼が死神と仲良くしているところは、見てみたいと、
そう思うのだ)

「っと、スマホのバッテリーが…
僕は帰るよ。悪いね、訓練の邪魔をする形になっちゃって。
でも、具合が悪い時に空を飛ぶのは胃袋にやさしくないよ?」

(そんな冗談を言って、演習場を後にした。
ちなみに帰路でバッテリーが切れて帰るのに苦労したのは、別の話だ>

ご案内:「訓練施設」から筑波 察さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「…死神と仲良く、ですか。…また無駄にハードなダンスでも踊る羽目になりそうですが」

あくまで異能の性質がそうなだけで、死神というのは例えのようなもの。
だが、何となく己の背後で髑髏にローブ姿、大鎌を持ったテンプレな姿の死神がケタケタ嗤っている気がした。

嗚呼、悩んで悩んで悩みまくって。先が見えてこなくても足掻いて、盲目になっているのだとしても。
――俺は生きたい。死にたくなんてない。ふざけるな。己に言い聞かせるように、死神に啖呵を切るように。

「…まぁ、俺だって別に自殺願望は無いですしね。異能で殺されるのはゴメンです」

自分の力で死ぬのはしょうがないだなんて思わない。まだまだ生きてやる、と。
同時に、俺は誰も殺したくない、殺さない。異能の余波で周囲に不幸が及ぶとしても。

「……あ、ハイ。お疲れ様です。帰り道は気をつけて」

そう会釈をして彼を見送ろう。少し考えに耽りがちなのも生真面目故の悪い癖かもしれない。
何となくボンヤリと訓練施設の天井を見上げる。

「……死神と対等に付き合うにはどうしたらいいんだろうな」

ご案内:「訓練施設」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「…取り合えず、あの人には体の変調だけは素直に伝えておかないとな」

スマホを取り出して、メールをぽちぽち。手早く送信してからまた懐へとスマホを仕舞い込んで。

このまま引き上げるつもりだが、何か気が抜けたのと炎翼加速の反動かフラリと仰向けにぶっ倒れた。

「……あ、ヤバい今更反動が来てる感じだこれ」

そういえば結構無茶して軌道修正したり最後、受身取ったけど地面に結構勢いよく叩き付けられた。
先ほどの彼との会話とかで紛れていたが、独りになった所で急激にぶり返したのかもしれない。

飛鷹与一 > 「…何か、色々と考えすぎて自分自身が結局疎かになってる気がするなぁ俺」

裏目に出ているというか何と言うか。体も精神もジワジワと追い詰められている。
それを認識しながらも、そこに屈する訳にはいかないのだ。
自分を見失えばそこで終わってしまうと何となくだけど分かっているからこそ。

よっこらせ、と上半身だけ身を起こす。痛みは鈍くなってきた。流石にここで寝転んだままな訳にはいかない。

飛鷹与一 > 「取り合えず帰ろう…。」

何とか立ち上がり、重い体を引き摺る様にして歩き出す。
また色々と考えることが多くなりそうだ。気楽に考えられないのが悪い癖というか。

そうして「死神」に憑かれた少年は訓練施設を後にするのだった。

ご案内:「訓練施設」から飛鷹与一さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > 訓練施設内に、とても似合わない人物が立っている。
スペースを1つ陣取り、珍しそうに訓練用のコンピュータを弄っている。

「ふんふん、魔術も体術もいけるタイプの個室なんだねここは。
レベルも幅広いか...。...よっし」

一番下の超簡易レベルをタップする。
鋭いモニター音が案外広い部屋に響き、壁に四角い穴が開く。
その中から現れた赤い単調なロボットらしきもの。

「ほう」
『シュミレーションレベル1、起動します』

____ギュインッ!

月香が意味の無さそうな奇妙なポーズを取ったのと、
ロボットが宙に舞い、踊りかかってきたのは同時だった。

和元月香 > そして、数分後。

「...やっぱ駄目かー」

はぁぁ、と盛大な溜息をついて額に手をやる月香。
下には、赤い寸銅型ロボットがタコ殴りにされて転がっている。
コンピュータのナビゲーターは無機質にシュミレーションバトルの終了を告げている。

結果として、月香は勝利した。

シュミレーションレベル1は下の下の異能を持つ異能者でさえ勝てるようにプログラミングされている。
ある程度の実力者の異能者なら、赤子を捻るより簡単に、一瞬で倒してしまうだろう。

(...そうじゃないって事は、私は下の下かもしれないってことだ!!
単にタコ殴りにしただけだけどねこれは!!)

体術もクソもないタコ殴り。
それだけで勝利できる程度の、極めて低い難易度だった。
しかし、月香ががっかりしているのはそれではない。



「やっぱり、【昔のやつ】は使えないかー」

がっかりしたような、残念なような。
それでいて当然、というような感情の篭った声だった。

和元月香 > 「...使えないもんは仕方ないけどさ」

コンピュータを操作し、シュミレーションレベル2を設定する。
赤い寸銅ロボが2体、穴から姿を現す。
さてと、と呟いてささっと印を結ぶ。

金の光を纏った両手を、2体のロボットに翳す。

「『潰れろ』」
____ガシャンっ!

勢いよくロボットが床にのめり込み、縦に振動が起きた。
煙を上げるそれを、月香は何となしに見下ろした。

「魔術使えるなら一瞬だけど...」

続けてコンピュータを操作。
月香はのめり込むように、魔術を行使していく。
何かを考え込むように。

レベル3。
レベル4。
レベル5。
レベル6。
レベル7。
レベル8。
レベル9...。

____
________。

和元月香 > 「____、っ...おっと」

唐突に、ふらっと体がよろめいた。
バランスを取ろうとするも、体に力が入らない。
そのまま前のめりにべしゃりと、無様に月香は地面に倒れ込んだ。

(...あり?まずった?)

少し霞む視界に、汗をどくどくと流す白い腕が揺れる。
感じてみるに、魔力もほとんど底をついているようだ。

(まずったな、私のバカ!)

心の中で自分を罵倒し、何とか仰向けになる。

モニターには『レベル53』の文字が点滅している。
夥しい数の寸銅ロボット、或いは飛行追撃ロボットが地面や天井に叩きつけられ、あらゆる場所に大きな亀裂が入っていた。

訓練施設に入って二時間半。
月香は全く休憩を取らず、訓練を続けていたのだ。

和元月香 > 何度も繰り返すが、月香の半分の感情は事実上崩壊している。
即ち怒、それから哀。
そしてそれに派生する、憎悪や妬み、悔しさ、苦痛さえも。

軽度のものなら存在する。
例えばおやつを取られてイラッときただとか、
ゲームで勝てずにムスッとしただとか。
それこそが月香を異常たらしめている原因なのかもしれないが、
簡単に言えば月香には【本質的な感情】が存在しないのである。

友達を傷つけられた。
学校でいじめられた。
とにかく誰かに酷いことをされた。
大事な人が誰かに傷つけられた。

そういう場合湧いてくる、心からの怒り、憎悪。
それが、無いのだ。

だから、苦痛の更に派生である感覚、【疲労】。
バイトでは感じる。それは肉体的苦痛は薄い、感覚的な疲労だ。
笑って済ませられる疲労。

月香は今日、疲労を感じなかった。
だから二時間半も訓練を続けていた。

____つまり本質的な【疲労】を感じるべき事態だったのである。

月香は感覚に異常はあるといえ、所詮は人間。
体の緊急警報である疲労による苦痛が無くなったところで、体力を消耗しない訳では無い。

「やべぇ動けん...」

つまり月香は、めっちゃ疲れて動けないのである。