2017/08/01 のログ
和元月香 > (にしてもやばいなー...。動けん...、ちっとも動けん...)

ぎぎぎ、と腕に力を込める。
動かない。ちっとも動かない。
...諦めて力を抜く。

(...ちょっと休もう)

あれだけ動けば当然か、と自嘲してから月香は天井をぼんやりと眺めた。
こうなるのは久しぶりだ。

長い間生きてきて、自分が異常だという事は知っている。
それを無視してはいけないことも承知している。
最近は【本質】だけでは無くて【表面】でさえ消失してきている。
____楽観視は、もうできない。

(とは思ったけど、別にどうしようとも思えない...)

んー、と考え込んだものの解決策どころかやる気さえ感じない。
感情の侵食を止める術も、理由さえ無い。
それ自体がやばいのは、何となく分かるのだが。

和元月香 > 「前もこうしてぶっ倒れたよなぁ...」

ははっと掠れた声で笑う。
声がまともに出ない。

はるか昔の記憶が脳裏を掠める。
何億年も前の記憶なのに、不気味なほどはっきりしていた。
楽しくはなかった世界の記憶だ。

(いつに無くダークだったよなぁ...。
ちょっとだけ科学と魔法が融合した現代世界だったのに...。
やっぱりあれか。戦争がダメなのか。

平和なら、仲間を皆殺しにしなくてもいいもんね)

安い少年漫画のように、それでも絆を固く結んできた。
一緒に笑い、泣いた。怒った。ぶつかり合った。
彼らは強く、逞しかった。勇気を、信念を持った美しい人々だった。
どんな強敵にも立ち向かい、ボロボロになっても立ち上がり。
そして打ち倒す、強い強い人達だった。

____まさか仲間に殺されるとは、夢にも思わなかったに違いない。
あれだけ絆を確かめ合い、あんなに笑い合った仲間に。

あんなにも、あっさりと。

和元月香 > いや、訂正しよう。
途中までは楽しかった。
絆を結び、誰かのために戦った。

「うん、楽しかった」

言葉に出して再確認。
正義の味方も、やりがいがある。
誰かの笑顔が見れる。
誰かのために頑張る。
世界が平和になる、素晴らしい。

だから、彼らの仲間であり続けた。

しかし月香は、もっと重要な役目があった。
仲間になったのも全部全部、自分の目的のためだった。
悪役のすることのために、月香は純潔な彼らの仲間であり続けた。

敵に情報を横流しし続けた。
得た技、開発した必殺技、目覚めた真の力。
躊躇いもなく、当然のように。
顔も見た事の無い敵相手に。

そして、なかなか倒せない彼らを殺せと月香に命令したのだ。
そうすれば目的は全て叶えてやると。
月香はそれに従い、仲間を殺した。
敵の野望は叶い、月香の目的は果たされた。

ただの悪役でしかなかった。
ゲスで最悪な悪役である。
仲間を裏切り、全てを目的のために犠牲にした。

(世界を救うためだったとはいえ、彼らには悪いことしたよな...。
彼らだって世界を救うために頑張ってたのに、空回りしてるなんて言えばよかったんだ。
でも言えなかった、と...。

あの時の私は、【まだ人間らしかった】んだなぁ...)

世界を救うには1度生物を滅ぼすしかなかった。
世界はリセットされ、そうして世界は救われた。
生き物は再び繁栄し、今その世界は豊かな平和に満ち溢れている。

だから月香と、その敵のやった事は間違いでは無かったのだ。
きっと。

和元月香 > 「.......」

大分休憩したからか、体が問題無く動かせるようになってきた。
ゆっくりと上半身を起こし、張り詰めていた息を吐く。

(でも、なんとも感じないよなぁ。
憎悪ってどんな感じなんだろ?想像とは違うよなぁ。
嫉妬は?憤怒は?後悔は?苦痛は?

...分かんないや)

立ち上がり、コンピュータを操作する。
『レベル54』。
赤い寸銅ロボットと、飛行追撃ロボット、新たにライトセイバーを操る白い高機能式ロボット。
それに変わらぬ笑顔で立ち向かう。

「分からないことを、考えるだけ無駄だよね」


そうしていつも、月香は繰り返す。
大事な何かは、全て零れてゆく。

1人ではきっと止められない。
止める理由さえ無い。


月香は愚直に、復活した魔力でロボットを淡々と撃墜していった。
____翌日筋肉痛が激しすぎて痛みを感じなくなり、
気付かずに登校して筋肉が大ダメージを受けることを知らずに。

ご案内:「訓練施設」から和元月香さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に筑波 察さんが現れました。
筑波 察 > 「じゃあまずは自分の視界を得るところから訓練しますかねぇ。
――通信プロトコルを確認、視界良好。
視界をパネルから主観に切り替えます。」

(訓練施設にて一人、パネルを操作する青年。
今まで暗所で使っていたゴーグルよりもより眼鏡に形の近いものをかけて、
周囲を見渡す。しっかりと周囲を認識できることを確認すれば、
目の前に出ていたパネルを閉じる)

「でもちょーっと今まで見てきた感じと差があるねぇ。
慣れるしかないのかな?
OK、対人格闘でお願いします。レベルは本当に基礎から」

(誰に向かって言うわけではない、この施設のシステムに向けてだ。
オーダーした訓練内容は格闘を習い始めた生徒が
一番最初にやるような内容。
つい先日見えるようになったうえに、見え方に違いがあるのだから、
これくらいがちょうどだろう>

筑波 察 > 「やっぱり基礎を固めていくのが最短だよn――ぐっ!?」

(訓練施設の奥から人型のダミーが現れると、
いかにも一般人のような無駄の多い動きで殴り掛かってくる。
いくら慣れていないとはいえ、このくらいなら十分避けられるし、制圧できる。
レベル1、レベル2と難易度を挙げていくと、次第にダミーの動きは
"喧嘩慣れした人間"程度になる。
以前ならこれもまた一瞬で制圧したものだが、
腹部に拳を入れられ、バランスを崩してしまう。
更に追撃の蹴り、こぶしによる殴打を顔面にくらう。
地面に伏した段階でブザーが鳴り、一時訓練は停止。
酷いありさまだ>