2017/09/03 のログ
ご案内:「訓練施設」にセシルさんが現れました。
■セシル > 夏休みが終わり、講義が再開し始めた週末。
セシルは、昼間から訓練施設に籠って魔術の鍛錬を続けていた。
警備課への配属の保留決定。その問題点。
それについては魔術を行使する技術の問題かと思って、魔術教師に相談した結果。
答えは、無慈悲なまでに明確だった。
『魔術を同時に複数行使する鍛錬を、初歩からやり直せ』
言葉こそ柔らかかったが、趣旨はそういうことである。
よって、セシルは食休みや小休憩を挟みながら、それを続けているのだった。
■セシル > 初歩ということで、やることはシンプルだ。
利き手に剣を携え、そこに魔力を留め続ける、魔法剣の基礎鍛錬。
左手に風…防御術式に使っている元素を集め続ける、元素魔術の初歩の訓練。
これを続けるだけだ。
「だけ」とはいうが、魔術の技術にそこまで長けているとは言えないセシルの場合、これはかなりの難事業だった。
その状態を発動させるだけならば、難しくはない。問題は維持だった。
元素魔術の方に意識を向けすぎると、魔法剣の安定が揺らぐ。
魔法剣の方に意識を戻すと、あっという間に風の元素が拡散する。
最初のうちは、1分も保たなかった。
あの試験の時、自分がどれだけ「気合」で無理をしたのか、セシルは改めて思い知らされていた。
あの日も結局、夜までまともに動けなかった。無理の反動が、それだけかかっていたのだろう。
■セシル > それでも、魔術自体はそこまで縁遠いものでもなかったから、繰り返していればコツは何となく掴めてくる。
調子が良ければ、5分くらい維持することは出来るようになっていた。
「………ハッ」
それでも、5分維持すれば目の奥がじんわりと疲れるような感覚に襲われ、セシルはその疲労感を、集中するために詰めていた息とともに吐き出そうとする。
…無論、それでどうにかなるわけはなく、それが、セシルが決めた小休止のサインだった。
「………はぁ………」
気の抜けた息を吐いて、セシルは一旦訓練スペースを出て、休憩スペースのベンチに腰掛けた。
小休止だし、体力は使っていない。スポーツ飲料は不要だった。
「………。」
セシルは、外部の情報を遮断するように目を閉じて、しばし深呼吸を繰り返す。
軽めの、瞑想のようなものだ。
■セシル > 10分ほど、そうしていただろうか。セシルは、ゆっくりと目を開く。
まっすぐ長いまつ毛に囲まれた青い瞳は、再び精気を取り戻していた。
「…よし」
セシルは再び立ち上がると、訓練スペースに戻っていく。
■セシル > そうして、また鍛錬と小休止を、幾度も繰り返して。
「………もうそろそろ、魔力も集中力も保ちそうにないな………」
安定した同時発動が危ぶまれ始める頃、セシルは再び訓練スペースから出てくる。
「………気分転換に、走るか」
身体を動かすにしろ、集中力を要するタイプの鍛錬はもう無理だ。
そう判断したセシルは、トレーニングルームのランニングマシーンに向かった。
夕飯前まで、ひたすら走って、集中疲れから解放される種類の汗をかいてから。
セシルは、訓練施設を後にしたのだった。
ご案内:「訓練施設」からセシルさんが去りました。