2017/09/30 のログ
セシル > 端末の画面を確認し、成果を確認する。

「………前よりも安定してきてはいるが、やはり10セット目は元素魔術の効力が安定せんな………」

魔法剣と、元素魔術。
鍛錬に費やした年月の差が、終盤の安定度にそのまま出ている。
こちらの世界では、元素魔術の実技と座学の授業を増やして補っているが…まだ、弱さを埋めるには至らないようだ。

(…流石に、これ以上鍛錬の時間を増やすと、他のことに支障が…)

来年以降委員会に主軸を置くために、今年度詰めている教養の座学講義に置いていかれないための勉強。
風紀委員会の職務。
剣術の鍛錬。
体力作り。

健康を保つための休養だって大事だ。健康診断の際、これ以上体脂肪を減らさないように軽く釘を刺されもした。

(………ひとまず、休むか)

渋い顔で溜息を吐くと、セシルは訓練用の端末をリセットして、休憩スペースまで出てくる。

セシル > 剣術や体力の鍛錬であればスポーツ飲料が欲しくなるところだが、魔術の訓練の場合にはカロリーが欲しくなる。
しかし、セシルは人工的な甘味の強いものには未だに慣れていない。

「………」

しばらく悩んで、セシルは果汁100%のジュースを購入する。
そしてベンチに腰掛け…

「………」

ジュースのボトルの中身を一気に半分くらい飲んでしまうと、脳内に溜まった疲労を吐き出すように、深く長い息を吐いた。

セシル > (流石に時間は増えんからなぁ………)

身体を使うことが第一であるセシルにとって、睡眠時間を筆頭にこれ以上の生活時間を削る選択肢はないのだ。
家事の時間など、元々の技能不足もあって既にないようなものだし(これはあまり自慢出来ない)。

「………焦り過ぎだな」

前にかがむように座る姿勢に体勢を変え、軽く髪をかきあげながら溜息を吐く。

セシル > 「表で救い上げられるものは救い上げる」という、友との約束。
そのために、「守り」の技をより高次元で身に付けること。
手の届く範囲で出来ることを思ってはいるが…思った以上に、体力と時間が足りない。
基本の就学期間、4年。あまりにも短い。

「………。」

何を思ったのか………セシルは、不意に焦点を意図的に遠くにずらしたかのような目で、顔を上げた。

セシル > 就学期間、4年。
今まで、様々な理由で「見ようとしてこなかった」、その先。
セシルは、焦点をずらした目で、それを見ようと試みたが…当然、そこには訓練施設の光景が広がるだけだ。
セシルは、残ったジュースを一気に飲み干して、それを放り投げる。
ボトルは、綺麗な弧を描いてゴミ箱に収まった。

「………今度、話をしてみるか」

誰と、何を話すのか。それは口には出さない。心の中で、既に決まっているからだ。

セシルは、珍しく覇気のない歩き方をしながら、訓練施設を後にした。

ご案内:「訓練施設」からセシルさんが去りました。