2018/01/22 のログ
レンタロウ > 考え込んでいるせいで気付かなかったが、思ったよりも身体は水を欲していたらしい。
飲み込んだ水の感触に、人心地ついたかのように息を吐きだした。

「そう言ってくれると、俺も少し気が楽になる。
 ………あぁ、見ていたのか。」

微笑む少女の言葉に、半分ほど水を飲んだ後で答える。
続く質問に、男は視線を少女から外した。

「…この剣を使って戦う時、俺は相手を効率的に殺す動きをしていたからだ。意識せず、自然にな。
 俺には記憶が無い。だから…記憶を失う前の俺が、そういうことに慣れているということを認めるのが、少し怖かった。」

言い終わった後、長い溜息をついた。
記憶を失う前の自分を知るのが、何処かで恐れている。そう少女に答えた。

中条 薫 > 男の口から伝えられた内容が思ったよりも重かった事実に、彼女は内心(気軽に聞いちゃいけないやつだったかなぁ)と思った。

「あの無駄のない攻撃が、身体が無意識の反応で出来るというんなら、確実にそのテの修羅場を潜ってきたってことだろうね・・・。」

確かに、自分が知らない過去に、自分は数多くの人を殺めていたなんてあったら、怖くて当然だ。

「今のうちに受け入れる心構えをしといたほうがいいんじゃない?過去の事実にさ。まあプラスに考えようよ、プラスに。何も強いことは自分に悪い事じゃないしさ。」

『なるようになる』がモットーの彼女は思いついた言葉をそのまま口に出す。無責任かもしれないが、至って真面目な回答である。

レンタロウ > 「…あぁ。」

少女からの返答に、片手の掌で覆うように額を押さえる。
認めたくはない。だが、そうとしか思えない証拠が身体に染み込んでしまっている。

「…そうだな。心構えくらいは、何処かで済ませなくてはならないだろうな。」

なるようになる。前向きに考えよう。
そう促すように言葉をかけてくる少女に、男は少し沈黙してから答えた。
自分の過去を知るための覚悟はしなくては、と口にしてペットボトルの水を飲み干した。

中条 薫 > 辛気臭くなった空気を振り払うようにフーっと息を吐き出し立ち上がる。

「さぁて、疑念も晴れたし、私は帰るとしますか。」

うーんと背伸びをし男に向き合うと、ポケットから小さな紙を3枚取り出し男に差し出す。

「はいこれ、カフェテラス橘で使える割引券。私そこでバイトしてるから、気分転換したくなったら来なよ? 話くらいなら付き合うからさ。」

レンタロウ > 「…すまんな。初対面の人間に、こんなことを話してしまった俺が言うのもアレだが。」

初対面に話すようなことではなかった、と言ってから思う。
聞かされた方も、余り良い気分ではなかったかもしれない。
空になったペットボトルを手持無沙汰に緩やかに振っていると、少女から差し出された紙を受け取る。

「…む、いいのか?すまんな、何も返せていないのに。」

どうやらカフェの割引券らしい。
先程のペットボトルといい、貰ってばかりだと少女へと申し訳なさそうに言って。

中条 薫 > 「いや、聞いたのは私だし、むしろわざわざ話してくれてありがとうって感じだよ。これはその御礼とでも思って受け取っといて。」

気にしないで、と手をひらひらと振りその場を後にしようとする。
しかし何かを思い出したように急に振り返って、

「そう言えば名乗ってなかったね、私は2年生の中条 薫。それだけ。じゃあね~。」

そう一言だけ言うと、彼女の腰掛けていた椅子の影に片足を乗せると、影に吸い込まれるように消えていった。

ご案内:「訓練施設」から中条 薫さんが去りました。
レンタロウ > 「そうか。なら、近い内に使いに行くとしよう。」

少女の言葉に、苦い顔ばかりしていた男が漸く笑みを見せた。
経緯はどうあれ、誰かに打ち明けられたことは少なからず良い結果となっているようだった。

「中条か。…あぁ、またな。」

立ち去ろうとする少女が振り返り、名前を口にする。
自分も名乗ろうとしたが、それよりも少女が消える方が早かった。
今度、カフェで会った時に教えようと思いながら男も立ち上がり。

「…心構えか。」

割引券を仕舞って、空になったペットボトルをゴミ箱に捨ててから、休憩所を後にするのだった。

ご案内:「訓練施設」からレンタロウさんが去りました。