2017/05/22 のログ
ご案内:「常世大ホール」にステーシーさんが現れました。
■ステーシー >
常世大ホール。
今日は常世島出身のツインボーカルユニット『ツヴァイフリューゲル』のライブがある。
最近、戦って怪我して入院して不味い飯を食っての繰り返しだったので、気が滅入っている部分はあった。
それを気遣って友人が今回のライブのチケットをくれた。
それと同時にCDを何枚か貸してもらい、今回のライブで歌いそうな楽曲を覚えた。
とまぁ、それくらいしか準備はしてきていない。
物販でサイリウムを買ったくらいだ。
ファンでないのに、ライブって来ていいのだろうか……
■ステーシー >
夕方、客席にて。
はっきり言って期待はしていない。
楽しめればいいとは思うけれど、私がエンターテイメントに求めているのはサメとゾンビと悪魔兵団がメインだ。
そこ、クソ映画好きとか言わない。
周りはみんな始まる前から異様な熱気に包まれている。
みんな純粋にツヴァイフリューゲルが好きなんだ。
そう思うと、なんだか気後れする。
刀剣の類は家に置いてきた。
剣客が丸腰は何とも、据わりが悪い。
異世界から来たマレビトに、この世界産の文化は門戸を開いてくれるのだろうか。
そろそろライブが始まる。
■ステーシー >
二人の歌姫がステージに上がる。
そして流れ出す音楽。メロディアスで、激しい。
パ、とライトアップされると歌姫たちはマイクを手に歌いだす。
周囲の観客がウオオオオオオオオオオオオって感じに盛り上がっている。
自分は、周りの大音声にビクッとなりながら周りを見てウルトラオレンジのサイリウムをパキった。
『静寂を切り裂く声に 集え今すぐFollow Me♪』
『闇を打ち破るこの剣に 駆け抜けてSinging Heart♪』
歌声は、美しかった。
CDで聞いた時には、ありふれた歌だとさえ思ったのに。
二人の歌姫が創り出す世界は、私を一瞬で魅了した。
鼓動が高鳴る。
――――――これが、歌なんだ。
初めてそれを知ったかのように、心を震わせた。
■ステーシー >
『Ground Zero! 歌えこの世界に!』
『Close to You! 熱く響き渡れ!』
サイリウムを手にぶんぶん振った。
もう座っていられない。
座っていると私の感情で制動が利かない、動き回る尻尾が鬱陶しい。
知らなかった。
歌声ってすごいんだ。
ライブってすごいんだ。
ツヴァイフリューゲルってすごいんだ。
熱狂のままに一曲目、二曲目と終わり、歌姫たちがトークを始める。
■ステーシー >
『みんな来てくれてありがとうー!!』
『今日は暑いから熱中症に気をつけてねー!!』
歌姫たちの言葉に、自分が汗ばんでいることに気付いた。
種族としてのフェルパーは高性能な体温保持の能力があり、汗をかくことは珍しい。
それだけ興奮していたのか、まるで刀で戦っている時みたいだ。
とりあえず持ってきていたスポーツウォーターを一口。
『相棒ならともかく可愛げのないアタシにまで声援サンキュー!』
その言葉が出た瞬間、周りが動いた。
『オオオオオオオオオオオオ!!!』
ファンクラブと思われる男性たちが動いた。
な、なんだ。なんの呪い(まじない)だ。
『宇宙一可愛いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
男性たちは絶叫としか言い表せないレベルに声を張り上げた。
なに。なに。なんなの。
『ははっ、いつもありがとうねー!』
あ、これ毎回やってるの!?
ライブって変なお約束事があるって聞いたことあるけど!!
これを、毎回、やってるの!?
■ステーシー >
よく周りを見ればウルトラオレンジのサイリウムを持っているのは自分だけだった。
そうか、曲のイメージに合わせた色のサイリウムを振っているんだ。
っていうか……今日のライブ十数曲あるんだけど…みんな何本サイリウム持ってるの…?
恐るべし、歌姫ガチ勢。
でも初見やエンジョイ勢を排除しに来ない辺り、みんな本当にライブが、歌が、彼女たちが好きなんだろうなぁ。
次の歌は確か、STEEL HEARTsだ。
ええと……ダメだ、手持ちのサイリウムだとメタルグレーはない。
ううん、悔しい。
次の機会があったらサイリウムもっと用意しておこう。
立ったまま、歌を、ライブを楽しんでいる。
いつからか、常世にいることに緊張を感じていたのかもしれない。
百鬼や白の暗殺者と戦っている間に、この島が戦いの場になっていたんだ。
でも、本当は違う。
■ステーシー >
この島には色んな人が生きてて。
その中に悪い人がいる。
良い人だっている。
どっちでもない人ももちろんいる。
全部合わせて、常世島なんだ。
なんだか、涙が出てきた。
これも歌が素晴らしいからだ。
帰ったらCDをもう一度聴こう。
今なら、彼女たちの歌の良さが十全に理解る。
今日は、良い気分転換になりそうだ。
ご案内:「常世大ホール」からステーシーさんが去りました。