2015/07/04 のログ
ご案内:「転移荒野」にブリガンテさんが現れました。
■ブリガンテ > 異世界のものが次々と転移し、異世界の怪異や、異世界の遺跡、異世界のダンジョンなどがこの区域に現れ、非常に混沌とした転移荒野。
そこに視認できる10人前後の集団が簡易的な拠点を作り上げ何かを待っているかのように佇んでいた。
彼らは皆、現代の軍隊のように銃火器を装備し顔を隠すように骸骨をあしらった目だし帽を被っている。
そして拠点の全方位を油断無く見張っているのだ。
■ブリガンテ > 彼らが転移荒野に拠点を張ってから数日が経過しており、その間淡々と拠点の周辺を見張っているだけである。
突如としてそれは彼らの目の前で起こった。
空間に揺らぎが生じたのだ。目のピントが合わないかのように景色の輪郭がぼやけ始め、次第にそれはあやふやになっていく。
そしてあやふやになったそれが渦巻いて行き真っ暗な穴として現れた。これもまた一つの転移であろう。
その穴の中から人型の、だが明らかにヒトではないモノ達が整然と隊列を組んで出てくるのだ。
■ブリガンテ > 複眼で大きな口、鋭い牙に長い鉤爪を持つ二足歩行の醜悪なバケモノ共。
手に様々な見たことが無い銃火器のような物を持ち、背にはバックパックの様な機械が接続されている。
個体数は30前後とそう大規模なものではない。
バケモノ共はニンゲン、目の前の拠点に居座る集団を確認すると散開した。
見た目はバケモノでも知性はあるようだ。しかし互いのキルゾーンでは無いようでただ睨み合っているに留まった。
■ブリガンテ > 一方、拠点に陣取っていた彼らは慌てている様子は無く着々と戦闘準備を進めていた。
まるであのバケモノ共が来ることをあらかじめ知っている、そう思わせるような迅速な対応であった。
1分程で全員の配置が完了したらしい、人数は倍の20人に増えていた。
ヒトとバケモノ、依然として睨み合いは続いている。
■ブリガンテ > 1時間経っただろうか、もしかすると10分しかまだ経っていないのかも知れない。
戦いの火蓋はいつも突然やってくるものだ。一匹のバケモノが吠えた。それに続き周りも吠え、相手を蹂躙せんと銃を構え駆け出したのだ。
■ブリガンテ > あっという間に互いのキルゾーンに入り、激しい銃撃戦が始まった。
バケモノ共は岩等、ヒトは塹壕や拠点の壁を利用して。
人数差を加味しても拠点に陣取るヒト側は善く戦っていた。未知なる兵器に恐れることなく敵の進攻を遅らせているのだ。
敵の兵器は強力だがかなり特殊でもあった。
飛んでくるのは鉛弾等ではなく、エネルギーの塊である。それらは苦も無く拠点の壁を穿つ。それで一人やられた。
■ブリガンテ > 「一人やられた!」 「こいつらの弾、いともたやすく壁を抜いてくるぞ!」
拠点に響く銃声と怒声。状況は五分五分と言ったところだ。
バケモノを一体、また一体と始末していく。同じようにヒトも倒れていくが。
■ブリガンテ > 戦闘が開始してから30分が経過し敵の戦力は半分に、ヒト側も粘ってはいるが3分の1の戦力を失っていた。
互いの距離は戦闘開始直後よりも縮まっている。遠くで見て不細工な連中だが、近くで見るとより醜悪だ。
「撃て! 撃ち続けろ!」 「グレネード!!」
醜悪なバケモノが針の山のような物体を投げ込んできた。
咄嗟に近くの塹壕や遮蔽物へ身を隠そうとする。その直後、それは弾け周囲へ針状の金属片を撒き散らす。
それでまた一人、犠牲となった。
■ブリガンテ > 次第に戦闘は規模を小さくなり、拠点内での乱戦状態になっていた。
互いの戦力は磨耗しもはや組織的行動は意味を成さなくなり、個人の技量だけがモノを言う世界である。
ある者は格闘で、ある者は至近距離でも銃撃戦を繰り広げている。
■ブリガンテ > 「死ね!化け物!」 「さっさと倒れろよ!」
戦力は互角、戦術は意味を成さず、罵声と咆哮の飛び交うただの殺し合いにまでもつれ込んだ。
もはや勝ち負けは無く、生きるか死ぬかだけ。
長い鉤爪に身を切り裂かれながらも急所を一突きし相打ちにもっていけば、互いの身を穿ち斃れていく。
そして最後の化け物が斃れ、その場にニンゲンだけが残ったのだ。
■ブリガンテ > 20名いた部隊は2名を残し、この戦いは終結した。
辺りを見渡すとバケモノの亡骸と拠点であった残骸が広がっている。
不思議な事に味方の亡骸は無く、ただ彼らが居たであろう場所に装備が残されているのみであった。
生き残った者は傷ついた身体を引きずりつつ装備を回収し、撤収して行ったのだった。
ご案内:「転移荒野」からブリガンテさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」にウィリーさんが現れました。
ご案内:「転移荒野」に桜井 雄二さんが現れました。
■ウィリー > 一つの文明と、それ以外の異なる文明との中間地帯。
その最前線たるこの場所にはいくつもの前哨基地が存在する。
もちろん基地といっても、砦めいたものではない。
あくまでも個人が自分の目的のために作ったもので、時には主を欠いたまま忘れられていくものもあった。
そんな忘却の隠れ家の一つに、ウィリーはいる。
夜闇を照らすランプの明かりで、左腕の調子を見ながら呼びつけた相手を待つ。
「さて……もうしばらくせずともくるか」
■桜井 雄二 > 左右非対称の髪型の男が前哨基地に姿を現す。
小型のライトを頼りに、ゆっくりと歩いてくる。
「ウィリー・トムスン。こんな場所で何の用事だ?」
見知った友人の姿を見れば落ち着く。
闇夜にあって熱視界こそ視れるものの、暗い場所は精神が乱れる。
人は原始的な本能で闇を恐れるものだから。
■ウィリー > 「すまんな。お前は人気者だから、どこにいても真面目な話をするのに難儀する……この辺りだったら誰もこないだろう」
冗談を言って笑いながら、グァバジュースの瓶を開ける。
木のマグカップにそれを注いで、一つを桜井に、一つを自分に。
「とりあえず座ってくれ。まずはそれからだ」
■桜井 雄二 > 「人気者というのは、誰でも話しやすいお前みたいな奴を言うんだよ、ウィリー・トムスン」
「わかった、お前が真面目な話を……それも怪異の話をしたいのであれば、聞くさ」
グァバジュースを受け取る。
自分の好みを完全に把握している。彼はこういう風に細やかな気遣いのできる男だ。
「わかった、座らせてもらおう」
適当に腰掛けて、ライトを下に向ける。
■ウィリー > 「それはどうだろうな? 八方美人は人気者とは言わない、そうだろう?」
自嘲を込めた苦笑を漏らして、天幕にぶら下げてあったランプを机に置いた。手元が明るいほうが、資料も見やすいだろう。
「怪異、それも狭義の定義では『対話不可能なストレンジャー』。まあ、マレビトの類だと俺は解釈した」
「もちろん、桜井の話を鵜呑みにするのもイマイチよろしくない。自分なりにも調べてはみた結果だ」
レポートめいた書類を机に並べる。『門』、『海より来たるもの』、『異世の徒』。いかにもそれらしいタイトルと文章が並べられている。
「対話できないもの、対立すべきもの。もちろんそういうものが存在するのは確かだろう。
文献も残されているし、何よりお前が一番それを理解しているだろうこともわかる」
「だが何故だ? 何故そこまで執着する。人に害をなす存在であることだけでは、この間の廊下掃除の時のような――
あんな憎悪の感情をむき出しには出来ないだろう?」
「理由があるのなら話してくれ。内容によっては、俺が聞いた怪異の噂について話をするわけにはいかなくなる」
■桜井 雄二 > 「そういうものか……」
話を続けてもらう。
「ああ……敵対的怪異や、怪異災害と呼ばれる存在だな」
書類を眺める。よく調べてある。
それだけで彼が怪異対策室三課に協力的である、ということに疑いはない。
だが。
「………………執着、か…」
そこから先の話は、少し話しづらいことだった。
「わかった、俺の事情を話そう」
「ウィリー・トムスン……お前を友人だと思うからこそ」
「俺は話さなければならない……俺と、蟻人の話を」
ふぅ、と溜息を吐く。乾いた喉をグァバジュースで潤す。
「俺は昔、本土……関東付近に住んでいたんだ」
遠い昔だが、最近起こったことであるかのように感じられる。
■ウィリー > 「……ああ」小さく頷いて、カップに口をつける。
「聞かせてもらおう。お前にとって、あれがどんな存在なのかを」
「そうでなくては始まるまい。敵対的怪異の目的が、果たして真に害をなすためだけなのかどうか」
小さく眉間に皺を寄せて、彼の言葉に耳を傾け始めた。
「本土……日本か。関東といえば中心的な都市群が多く会った土地だな」
「続けてくれ」
■桜井 雄二 > 「ああ………」
続きを促されれば、ぽつぽつと続きを喋り始める。
「俺には兄がいた。才知溢れる兄が」
「俺は氷雪系能力者、兄は炎熱系の能力者…」
「だが兄さんは俺よりもずっと凄かったんだ、力も心構えもな……」
心が軋む音が聞こえる。右目が熱い。だが話さなければならない。
「……本土にも時々、異世界とのゲートが繋がって蟻人が出現することがある」
「俺たちが住んでいた街にも蟻人の軍勢が出現したんだ」
「外で遊んでいた俺たちは…奴らに襲われて……」
「兄さんは俺を逃がして勇敢に奴らと戦ったんだ」
マグカップを揺らして液面を見る。自分の物憂げな表情が映っている。
「それからしばらくして、大人を連れて戻ってきた俺は…」
「蟻人に殺された兄さんを見つけたよ。明らかに苛烈な拷問を受けていた」
「表情を歪めた兄さんの遺体が最期に伸ばした左手を、俺は気がついたら右手で握っていた」
苦しげに右手を握る。
「その時、俺は右半身に炎熱系の能力を宿した」
「それからだ……俺は、ずっと蟻人への復讐の機会を伺っていた…」
でも、と声を上げた。
「………今は復讐じゃない。この街に住む大切な人を守るために蟻人と戦おうと思っている」
「安室冥路や、四十万静歌や、ウィリー・トムスンや……三千歳泪を守りたいんだ、全てを賭けて」
「そのために俺は………」
顔を左右に振る。
「話は終わりだ。失望されても仕方のない話だな」
■ウィリー > 静かに、そして重く語られる過去は、本人からすれば傷を抉られるような――
昔語りでは済まない、澱みにも似た心中の吐露であった。
「あの恨みも辛みも、全てそこから始まったものだったか」
頭を垂れる。人の心に、あまりにも軽率に踏み入ってしまったかもしれない、という後悔がそこには見て取れる。
「……すまない」
「……お前は受け継いだんだ、勇敢に戦ったお兄さんの命を。
もちろん血のつながったものを殺されれば、復讐心に駆られて当然だろう。
受け継いだものが『力』だけならば、それで仇を討つというのも間違いじゃあない。
――だが、もう違う。お前の右にあるのはお兄さんの『命』。
守るべきものを守るための炎……それでいいんだな?」
桜井はとっくに、ともすれば永遠に続くであろう復讐とは違う道を選んでいたのだ。
「失望なんてしないさ。それでいい、お前の選んだ道は少なくとも、俺からすれば正しく思える」
「それに、泪ちゃんを守るため戦うっていうのも気に入った。今度しれっと教えておくわ」に、と笑う。場を和ませるように。
「懸念材料はもうない。それじゃあ、次はこっちが噂に聞いた怪異の話をしようか」
■桜井 雄二 > 「謝らないでくれ、ウィリー・トムスン」
「お前には………いつか話さなければならないと思っていた」
鼓動を抑えるように右手で自分の胸を押さえる。
「友人だからな」
「ああ………俺の炎は蟻人を殺すためだけの炎じゃない」
「誰かの前に続いている道を守るための炎だ」
「そのためなら、俺は」
「……ウィリー・トムスン…」
確かさと不確かさが曖昧なこの蟻人と戦うという結論を、受け入れてくれる友人に感謝をした。
「そ、それはやめてくれ……恥ずかしいじゃあないか…」
冗談には冗談を返して。
「ああ、そちらの話を聞かせてくれ、ウィリー・トムスン」
■ウィリー > 「いや、謝らせてくれ。正義のためとか、復讐のためとか――
戦う理由は世の中にごまんとあるだろう」
カップを手で弄びながら、とつとつと語る。
「けど、別格なんだ。誰かとの絆を守るために、戦うっていう覚悟は。
俺は勝手に、お前を単なる復讐者と決めつけてたわけだから……謝るのは当然だ。友人としてもな」
「その炎と氷が、お前の……俺達の道を開いてくれることを切に願うよ」
グァバジュースを煽った。酒ではないのでいまいち格好がつかないが、まあ悪くはないか。
「こちらの情報は……なに、噂だと前置きはしたものの、かなり信憑性が高い。
黄昏時から夜にかけて、あらゆる場所で小規模な空間の歪みが感知されている。
異能にほど近い痕跡があるが、同時多発的に生じているために誰か一人の行動ではないのは確かだ」
資料を渡す。島内全域に、ポツポツと出現場所が×で示されている。
「それだけなら、単なる怪奇現象にすぎない。そうだろう?
……真の問題は、その歪みの周辺にいた者が『感情を喪失』しているということだ」
「数日前まで意識を保っていた――むしろ、正気といったほうがいいか。その被害者が言うには、それは誰何を問うても答えず」
「異能で抗おうとしても無力化されたという。相手の姿はまるで鬼じみていたとも」
「……残念ながらその被害者は、もう口も聞けなくなっている」
「俺はこれを怪異だと考えている。異能犯罪でも魔術犯罪でもなくな」
■桜井 雄二 > 「……少し前の俺は単なる復讐者だったさ」
「俺が変われたのは、友人たちのおかげだ」
道を踏み外さずに済んだ理由。そして、戦う意思を持ち続けられる理由。
「ああ、任せろ……俺の手の届く範囲のものなら、守り通す」
合わせてグァバジュースを煽る。美味い。
「何………空間の、歪み………?」
資料を見ると、それは事件の現場を示す×印。
「異能のキャンセレーション能力を持つ怪異……?」
「しかも被害者は感情を食われる。これは……」
資料に目を通していたが、顔を上げる。
「どうしてだ、ウィリー・トムスン。犯罪の線ではなく、どうして怪異だと?」
「確かに相手の姿が鬼じみている、というのは気になるが……」
■ウィリー > 「空間転移を操れる人間はごまんといるだろうが、少なくとも」
ビニル袋に入った白いかけらのようなものを見せる。
「こんなものを必要とする者は一人もいないだろうな。こいつはこの土地に「いない」生物の骨片だ。今のところ、この転移荒野にも。
出現場所の全てに落ちていた辺り……こいつは奴らの道具だと俺は踏んでいる」
「正直に言えば確信は持てていない。だが、これを怪異ではないと決めつける証拠も持ち合わせていない。
だが、異能の代わりに道具を用いて移動するやり口。
――そもそも、奴らは本当に感情を「食って」いるのか? 別の生き物の死骸を道具とするような卑劣な知性を持つものが?
もしかすれば、俺達が感情と称するものを、根こそぎ収奪するためにじわじわと蚕食しているのでは――」
「……いや、すまない。俺の考え過ぎかもしれないな」
鬼の姿は、感情を煽り立てるためのもので。
その姿すらも『感情の刈り取り』のための餌やりにすぎない。
そんな妄想じみた考えが、頭のなかで渦巻いている。