2015/08/09 のログ
ご案内:「転移荒野」にアルワルドさんが現れました。
アルワルド > (転移荒野の上空、雲ひとつとて無い一面の青のみを頂いた空に罅割れが走る。
遠くに視るならば恰も、黒い稲妻が奔るかのような歪な光景はやがて割れ爆ぜ
空に鏤められるかのようにばら撒かれた世界の欠片は、煌びやかな光彩を散り撒いて
周囲に溶け込む様にして消えて行った。その下に一つの人影を残して。)

……う……。
(倒れ臥した人影は中世の騎士や貴族が式典の際に纏うような衣服を身につけていた。
薄手のアビ・ア・ラ・フランセーズにも似た白い衣装は、所々にある種幾何学的な文様が金糸で描かれ
それらを囲むように、派手すぎる事の無い宝石細工が飾られている。
そんな一目で上等と判る衣服の人物は時折呻き声を発し、魘されているかのような素振りを見せていたが
突然、ばね仕掛けの玩具か何かように飛び起きると周囲を見回し、そして頽れるように膝を折った。)

アルワルド > ……此処は、何処なんだ?僕は工房に居て、飛翔機の…そうだ、新型の推進器の駆動実験に立ち会っていた筈……
(呟きに返る言葉は無い。視界の限りは風に巻き上げられた砂埃と陽炎のみで生命の気配は感じられず
何某かの幻術か、シミュレイターの類を疑いもしたが頬を叩く砂粒は何処までもマテリアルであったから
そのような思考は砂粒諸共、風に巻き上げられて消えて行った。)

……もしかして……死んだ?僕は死んだのか?いや、待て。ちょっと待て……!?
(思い出せる限りの記憶をどう振り絞っても、閃光に包まれる推進器で途切れる。
その場で頭を抱え、地団太を踏み叫ぶも返る言葉はやはり無く
やがて叫ぶ言葉も無くなった。)

           ジャハンナム
…………はは、つまり此処は空の底、か。僕しか居ない所をみると、技師の皆は無事と見て良いか……。
(ジャハンナム
それは故郷の言葉で地獄を意味する場所。
空を何処までも落ちた末の、亡者の住まう果て無き大地。
諦念するかのように見上げれば、空は随分と遠く視えた。)

ご案内:「転移荒野」にアーヴィングさんが現れました。
アーヴィング > ………よぉ、お客さんかい?あんた
(風紀の仕事と称して開拓村に顔を出し、畑を荒らすリザード種の討伐依頼を受け…
 獲物が焼き肉に成り果てた頃、空に異変が起きた
 謎の裂け目、黒い稲妻…依頼内容とは違うが脅威と成りそうな物ならば確認する必要がある
 
 飛行魔法を起動し、音速と比べれば遅いながらも高速で着弾地点へと急行し…そして人影を見かければそう声をかける

 様式は故郷の物に近いからか一瞬懐かしさも沸くが、良く見れば細部が明らかに違う)

つか、無事か?おい
(明らかに消沈しているであろう少年の様子に気付くと心配そうに声をかける
 そういえば自分もこちらに来たばかりではこうして途方にくれていたか)

アルワルド > ……しかし僕の日頃の行いはそこまで悪かったか……?
(此処が冥府だとするならば、それはそれとして落ちる理由が思いつかない。
少なくとも国の、王の剣としての責務は果たしてきたと云う自負はある。
出来る限りの品行方正を心掛けてきたつもりでもあった。それだけに悩みもする。)

……判らないし、解らないな。一先ず夢界ではなさそうだが――……
(思考と身体の紐帯は確かに在ったが揺らめいて頼り無く、ともすれば断ち切られてしまいそうだ。
例えば、不意にかかる誰かの声等で)

……誰だ!?
(反射的に、声のする方とは反対に飛びずさり顔を上げる。視線の先には……やたらと目付きの悪い青年が居た。
傍から視れば明らかに敵意があると判断されるに違いない容貌だ、凶相と言っても良いかもしれない。
――ただ、それだけに僕は幾許か安心をする事が出来た。
僕の瞳、《空の眼》は僕に対し害威のある生物の正体をある程度まで看過する事が出来る。
つまり面前の彼は、少なくともそういう存在では無いと、逆説的に知れたからだ。)

……失礼、冥府の住人かと思ってしまいました。人が居るなら此処はジャハンナムでは無さそうですね。
ご覧の通り無事と言える状態ですよ。生憎と、状況的には……まだ、良く解らないのですが……此処はアルクスでは無いのですか?
(アルクス、国土の大半が砂漠に覆われた故郷の名を口にする。群島世界に擱いては余り目立たない小さな、でも大切な場所の名を。)

アーヴィング > おーおー、威勢がいいねぇ
飛ばされてきてすぐにそんだけ気合はいってんなら十分だ
(ニヤニヤと、面白がるようにしてその警戒っぷりを眺める
 本人的には良い気概を見せられて楽しくなって来た…といった程度だが
 傍から見れば思い切り煽ってるようにしか見えないだろう)

あー…いいか?
(とポケットから手帳を取り出し)

ここ転移荒野はかつて異次元への門が開いた過去を持ち、そのため次元境界線が非常に不安定です
そのため通常は起こらない大規模な転移現象がたびたび起こり
異世界の迷宮、怪物、そして時には人物が転移してくる場所となっています
発見した場合は速やかに財団に連絡を取り入学申請を…あ、これページちげぇわ……
(嘱託委員なのでこうした通常業務は行う必要はないのだが
 妙に几帳面な性格から資料室で様々な事項を手帳にメモっていたのだ
 説明編ではなく対応心得編のページを朗読してしまったが)

まあ、なんだ、ようこそ異世界へ、テメェは別の世界に来ちまったっつーわけだ
……ジャハンナム…ジャハンナムっつったか?
んでアルクス…アルクス…たしか砂塵の国の……
(聞き覚えのある単語…
 ジャハンナムという言葉自体はこちらにもあるようだが、アルクスという単語は…その組み合わせは、故郷のものだ)

名乗れ坊主、その装束、騎士号を持つと見た
(もしや同郷か?という思考に至るに時間はかからなかった
 「威」を発し、気配の質がわずかに変質する)

アルワルド > (空の底に落とされた訳では無い。その事実は僕に少なからずの安堵を齎した。
ただ、それならば何故工房に居た筈の自分が此処に居るのか?
と言う疑問はゆらゆらと風に巻かれるのだが。

思考の折、僕は何時もの癖で眼鏡の弦を指で押し上げようとし、そこで漸く眼鏡が無い事に気付く。
周囲を見回すも落ちては居ない。気に入っていたのにな、と埒外な思考が脳裏の隅に鎮座し――)

――は?
(直ぐ様、閃光に飲まれるように消えた。
今、僕はどのような顔をしているだろうか。
100人が見たら120人くらいは「間抜けな顔をしている」と称するだろうか。
敬愛するザインドロフ陛下が見たら眉根を顰められてしまうような顔だろうか。
それとも、目の前の軽薄そうな笑みを浮かべた男性の説明めいた言葉など、右から入って右から出て行くような顔だろうか。

イセカイ、いせかい、異世界。異なる世界。知っている。夢界のことだ。でも此処は違う。感覚的なものだけれど、魂が違うと告げている。
では此処は何処だ、と思考を回しかけた所で止められる。目の前の軽薄そうな男性の言葉に僅かながら、けれど確かに剣呑な物を感じたからだ。
見上げると彼の視線はそれだけで射殺さんばかりの、戦士の煌きを含んでいた。)

……横柄な態度ですね。構いませんが……僕の名前はアルワルド、アルワルド・ザフラ・ジャッラール。アルクスが魔術王、ザインドロフ・バル・デムスの剣となりてその威を払う者。名前くらいは聞いた事、あるのではないですか?
(先日行われた大規模会戦を制した、と言う自負は言葉を少しだけ居丈高にさせる。
漆黒の王鳥、ルクスヴァリアントⅡの放つ煌きは晶映放送でもそれなりには報じられていたのだから)

アーヴィング > あー、判る…わかんぜ?
信じられねーかも知れねーけど…
ほら、聞いた事ねぇか?多次元世界モデル
虚空叢の侵攻で一気に信憑性が増したっつー…
あれの壁の向こう側にあるのがここだ
地球とか、ガイアとか、アースとか、色々呼ばれてる
(髪の毛をがりがりとかき回しながら、気の毒そうに混乱した姿を見やる
 存在は確かだが観測も出来なければ、存在の証も掴めた事がない
 そんな一部の学者だけが熱心に研究しているような分野
 それが現実にあったとはすぐには信じれないだろう)


……いや、悪ぃ…聞いた事もねぇわ
少なくとも戦場に立てるレベルの騎士なら112人だいたい頭んなかに入ってたんだが…ルーキーか?
つーか、アルクスの魔「導」王はシャルノワ・バル・デムスじゃなかったか?
ザインドロフ殿下っつーとまだガキだったような…
(頭の中に収められた知識ではそうなっている
 アルクスと言えば知性に恵まれないながらも強国に数えられる、その知識に覚え違いはないと思うが…)

まあいい、俺は賢王フェリックス・ル・ケブレスに使えるレガリアが筆頭騎士、アーヴィング・ヴァン・オルブライトだ
聞き覚えあっか?
(もしかして似て非なる、微妙な差異が存在するような世界から来たのだろうか?と少しばかり不安になる
 左腕に付けた紋章は故郷でも使っていた騎士紋であり、太陽を包みこむ一対の翼の意匠が施されていて、それを見せ付けるように)

アルワルド > 向こう側だなんて……。
(男性の語る言葉は、僕に物心が付くか付かないかくらいの頃に流行っていたオカルトめいた代物だ。
現在では一部のカルト的な人気を得てはいると聞くが、それだけであったから僕は鼻白んでしまった。

続く彼の言葉は、そのまま面まで白くなるようなものではなかったけれど。)

聞いた事が無い……!?先日の大規模会戦を制したこの僕の名を!?
も、もしや晶映放送に興味がない……訳では無さそうですが……
と、とにかくシャルノワ様は10年前に崩御なされてザインドロフ様が継がれたのですよ。
それと、陛下は確かに他国の王と比べれば齢30と若年ではありますが、貴方にガキと言われる筋合いはありません。
(驚嘆もそこそこに納められたのは男性が陛下を誹る言葉を口にしたからであり、咎める言葉は言外に謝罪を要求するもの。
ここで男性が応じなければ、僕は名誉の章典にかけて剣を振わねばならない所、だった。

ところが続く男性の言葉は、今日何度目か判らない程の奇妙な顔を僕にさせるものであり、剣どころか頭を振るう事になりかねなかった。
こう、大笑いで)

……は、はは……いや、いやいや貴方一体何を言っているのやら。
よりにもよって伝説の騎英、白青の王者、太陽騎士たる方の名を騙るだなんて。
僕の眼も些か狂いが生じたとみえるな……ええ、知っていますよ。
虚空戦争の英雄の名前でしょう?20年も前に空に消えた伝説の大英雄
騎士はおろかカエルーンの民で知らない者などありますまい。
(腰を浅く落として構える。指先を宙に振えばその延長線上に
小さな、光のワイヤフレームで構築された魔法陣が3つ、くるくると回転をしながら出現せしめる。)

……で、人をからかうのも大概にして頂きましょうか。
騎士に対しその騙りは万死に値するものですよ。
(返答次第では魔術の火線が走る事になるだろう。睥睨する萌黄の瞳に嘘は、無い。)

アーヴィング > ま、なんだ
起きちまったもんはしゃーねー
こっちも意外にわるかねーぞ?空が遠い以外はな
(と、騎士であるならば一番郷愁に駆られる要素を苦笑気味に添えて)

……あれからそんな経ってねーのに大規模会戦とかはしゃぎすぎじゃね?
は?いや、いややいやちょっとまて!
シャルノワ陛下が崩御!?んなわけねーだろ、俺閲兵式で言葉交わしてんぞ!?
つか30って…俺が見た時はたしか10かそこらで…
(おかしい、何か決定的な何かがズレている
 そういえば最初自分はなんて感じた?
 慣れ親しんだ様式とは細部が違う、と
 そうして思索の海に飲まれそうになった瞬間
 劇物が正気に返してくれた)

待て待て待て!いや、なんだその恥ずかしい呼び名!
太陽名乗っていいの王族だけだろ!?いやオルブライト姓はそれに順ずる家名だけど
は?20年前!?
(20年の時が故郷では過ぎている
 ああ、驚きだ、驚きも良い所だ
 それよりも20年後には自分で名乗ったら爆笑しか帰ってこないような名前で広まっているという事がなによりも衝撃的だった
 帰郷の念が爆発四散しそうな勢いで)

あー、はいはいはい、いいね、判り安いね
証を立てろって事か?
いいぜ、見せてやんよ
日輪剣……ザハリト!
(その名を呼べば胸の前に赤い炎が浮かびあがり、そこに手を突きこみ引き抜けばズルリと一本の大剣が引き出される
 刀身には無数の魔術文字が浮かび紅いラインが巡るように刻まれていて
 鍔は羽を広げた鳥を模し黄金色に鮮やかに輝き、柄頭からは朱色の飾り布がたなびいている
 アーヴィングの魂に宿る異界の魔剣であり、騎士としての象徴。それを肩にとんと置くように構え)

   ニューエイジ
来いよひよっこ、当代最強の証を叩きこんでやるぜ?
(ごう…と、円形上に荒野の粉塵が押しのけられ、日輪剣が威を発す)

アルワルド > ……!?
(宙空を舞う魔法陣が不意に力を失ったかのように落下し、地に着く前に粒子状の光と成り果てて消え失せる。
男を指差していた僕の指先は、彼が手に顕現せしめた一振りの剣に向けられていた。

――ザハリト
天道を往く剣。
20年前に消失したとされ、以来多くの騎士が夢界に求めて果たせなかった剣
無論、僕もその一人だ。

それが今目の前に在る。あれは本物だと、理解を拒む事を焼き尽くして理解させてくる。
明らかな威を視て尚、僕の《空の眼》がそう、断じている。
彼がアーヴィング・ヴァン・オルブライト当人であると。)

ほ、本物……!?本物のザハリトに、本物のアーヴィング……!
い、いや、でも……僕の知るアーヴィングは、もっと、こう……。
(曰く、非常に誇り高く、騎士としての振る舞いを己に刻み。いついかなる時も堂々とし
必要とあらば高位の人間であろうと直言を恐れなかった英傑。

それが僕の知る英雄だった。というか、各所に残る逸話がそうなのだから、誰しもが知るアーヴィング像がそうだ。)

お、おかしいな……『虚空戦争~空に消えた太陽の騎士~』とイメージが違うぞ……?
あれは実話を基にしたって、レガリア王監修だって聞いてたのに……。
(『虚空戦争~空に消えた太陽の騎士~』
それは虚空戦争終結十年を記念して作られたアーヴィング・ヴァン・オルブライトを主役とする「実話映画」。
主人公であるアーヴィングは時に悩み、時に挫折を経験しながらも周囲の仲間に助けられ強く成長し
その戦果は獅子奮迅というのに相応しく、街中に現れた騎士級相手に天睨流超騎士究極斬で切り捨てたり
子供をかばって生身で騎士級の突撃を受け止めてぶん投げたり
飛翔機で拡大化した炎の剣で城砦級を島ごと切り裂いたり
飛翔機の全質量を魔力変換し光の翼で女王級の核を打ち抜いたり、その他etcetcと
全国の少年の心を鷲掴みにした代物だ。無論、僕の心もだ。
それだけに、今、ちょっとどうすればいいか、解らない……!)

アーヴィング > お、おい…大丈夫か?
何か今…絶望したみてーなツラしてんぞ?
あ、そっか…20年の時差があるっつー事は完全に隔絶された世界っつー事だよな…
(帰るのに一年がかかったとしよう
 すると帰る頃には一体どれだけの時が過ぎているか…
 懐かしい故郷には自分の時間は流れていない
 未練があったとしても諦めざるを得ない…)

だからホンモノだっつってんだろうが
いっとくが魂装具は名を偽って呼んでも応えねーからな?
つーか20年後に俺は一体…
(ふと、聞き覚えのある称号が聞こえた気がして…)

それだ!それだ原因は!
きっとあの馬鹿…じゃない、馬鹿王…ああ、うん
陛下の仕業だどう考えても!
絶対にあの人なんか俺が死んだと思って報いるためにはとか知恵絞って!王弟殿下がそれに乗っかって出来上がってんだよそれ!

やっべ……俺が主役の英雄物語とか超見てぇけど怖くて絶対に見れねぇ…
(ザハリトが炎に変じて虚空へと溶け消えると
 見果てぬ空の向こうにある故郷が急に魔境に見えてきた)

アルワルド > …………。
(余談だが、ああ、まったくの余談だが!
僕の部屋には1/100飛翔機シルバランサーの模型がケースに収められて大事に飾られているし
彼がレガリア王に宣言したという、騎士叙勲式での問答だって諳んじている!

だからなんだと言われたら、それ程までに憧れていたんだと、俯いて答えよう。)

あ、ああいえ……本物だという事は僕も魂装具を携える身ですから、その、良く判ります。
絶望は、そうですね、はい。絶望でしょうか……。
(拝啓、敬愛すべきザインドロフ陛下。此処は紛う事無き冥府の地でありました。
僕の憧れの冥府でありました。今目の前で喧しく叫ぶこの男性は紛れも無く伝説の英雄で
一部で信じられていた天蓋を超えての生存説が正しかった事を裏付けていました。

がらがらと何かが崩れて行く気がして足元が蹌踉とするけれど、たたらを踏むように堪えよう。)

いや、そりゃあ……その、普通死んだと思われますよ、それ。数々の記録を見ても識者が判断した事ですし
ただレガリア王の仕業と言われてしまうと、言下に否定出来ないのも判りますがー……
(空を見上げる英雄の横で僕は眼を逸らした。逸らして言い淀んだ。レガリアが賢王は正しく豪放磊落な御人柄でもあるわけで
色々とあるのだけど此処は濁して流してしまいたかった。

風は既に止んでいた。)