2015/08/17 のログ
ご案内:「転移荒野」に昼奈さんが現れました。
■昼奈 > 「だらっしゃぁあぁあっ!!」
荒野に響く少女の怒鳴り声と破裂音。
動物の一つでも襲って気分を紛らわせようとやってきた荒野で見たのは、動くサボテンの化け物だった。
当然、この無鉄砲に後退のネジなんぞ無いわけで。 全力で地面を蹴ってからの、真空足刀蹴りが顔面を叩き壊す。
足の筋肉細胞すら自在に扱える彼女からすれば、蹴りの威力を操作することも容易いものだ。
「ったく、………おもしれーとこじゃんかよ。」
赤毛のちっちゃいツインテールを揺らしながら、ケ、ケ、ケ、と片側の頬だけを持ち上げるように笑う。ゲスっぽい笑い顔を見せながら荒野を歩………
唐突に迫り来る悲鳴に、びくり、っと身体が跳ねる。
「…………関係無いね。……べっつに、こんなとこで誰が襲われてようが、何の関係もないっての。……暇だから行くけど。」
ぶつくさ、ぶつくさ。言いながらも駆け足で現場に急行。………したのが少し前。
今は、ベッドの上に座る女性と、倒れ伏すサボテンの化け物。それを、訝しげな目で交互に見つめ………。
「………どこで寝てんの!?」
やっぱりツッコミを入れた。入れざるを得なかった。
■クレアルト > 「はぁー……喉が渇いちゃった。魔法は使えないし魔物は居るし、暑いし、砂埃は酷いし、御腹は減るし踏んだり蹴ったりだわあ。」
杖をつっかえ棒にするような姿勢でベッドの縁に座り足を揺らす。常日頃絶える事の無い朗らかな顔色は、彼女を知る者が見たら
驚くくらいに渋いものとなっていた。
「移動しようにも靴も無いし……移動しようにもどっちに行ったら良いのかしら?」
目下に広がる荒野は其処彼処に岩が迫り出しているような不毛の地だ。
裸足で歩こうものなら、ものの10分もかからずに歩けなくなること請け合い。
無目的に歩こうものなら、きっと行き倒れる事請け合い。
その他諸々の大層魅力的な惹句が支配する死の大地において
およそ死とはかけ離れた頓狂な声が響いた。
「あら、ええと……何処かしら?」
飛び跳ねるような声を受けて首が傾ぎ、困惑気に訊ね返す。
「寝て起きたらここに居て、ちょっと困っていたのよねえ……ともあれおはようございます?」
見慣れない服装についても内心、首を傾げたのかどうかは定かではないが
ゆるりと頭を垂れて朝の挨拶をし、杖にしていた銀色の杖に額がぶつかる音がした。
■昼奈 > 「わかんないの!?……いや、挨拶とかはいいから……何やってんの!? 何やってんの!?」
思わずツッコミ三連発。赤毛のツインテールがぴょこっと揺れてしまう。
唐突にこの荒野にベッドをおいて、しっかり寝間着まで着込んで寝て。
その上でどこかわからないと口にし、なおかつ挨拶をしながら頭をぶつける。
………言いようの無い大物感に、ごくりと喉を鳴らしてしまうしかない。
「………いや、何処かしらって言われても……」
何言ってんだこの人、みたいな顔をしつつ聞いていたのだけれど、ここではっ、と何かに思い当たったように手を打つ。
そう……言えば、ここは何らかの別世界から転移されてくることが多い場所だと、そう聞いた。
「………仕方ないなー、この美少女がちょっと教えてあげよーじゃない。」
へっへん、と顎を逸らして腕を組んで、偉そうに。
「……ここはあれよ、島なんだけど。……転移荒れ地だったっけ、そんな名前で呼ばれていてね。……なんかこう、いろんなところから何かが飛ばされてくるってことで有名な場所らしいわよ。」
超偉そうにしながら、すごくふわっとした説明をしてくれる少女。渾身のドヤ顔である。
■クレアルト > 「え、その、矢継ぎ早に言われても困るわあ。私のお耳は長いけど、沢山言われても頭には入らないのよ?」
少し赤くなった額を擦り、同時に頬が膨らむ様はまるで連動しているかのように見える。
ゆらゆらと揺れる両の足に合わせて頬が萎む様も、まるで連動しているかのようだった。
「あら教えてくれるの?助かるわあ。朝起きたらいきなり此処に居てね、凄く困っていたのよ。動くサボテンまでいるし、きっと南大陸のどこかだと思うのだけど……」
居丈高に腕を組む少女に対し、手を合わせて言葉を転がせるクレアルト。
しかし、誰が見ても喜色満面と判断するであろう彼女の顔は
説明がなされる度に青々としたサボテンのようになる。
「色んなって……えぇ~……それは困るわねえ……でも、そういう土地柄なら島の領主様に相談すれば良いのよね。
私が魔法を使えない程の結界があるのも納得だわ。何が来るか判らないんですもの。」
……が、立ち直りは早かった。手をぽんと打ち合わせて長い耳が上下に揺れて
少し芝居がかった風な、大仰な仕草で気合を入れ……
「あ、ところで貴方。ナイフとか持ってない?靴がないから、この御布団を切って靴代わりにしようかと思うのよ」
荷物がほぼ無い事を思い出し、少女を手招きした。
■昼奈 > 「………わ、ほんとに耳長いじゃん。」
思わず驚いて口にしてしまう。つまるところ……まあ、普通の人間ではないということはこういうところでひとまず証明できてしまうわけで。
好奇心旺盛な彼女は、おいで、とされればすぐに近づいて、その耳をじいっと見つめてしまうのだった。
……本物っぽいな、なんて考えながら、手をのばすか少し悩む。いきなり怒られてもたまらないわけで。
「………まあ、転移されて来たって人がどーすんのかは知らないけどさ。中心部に行きたいってんなら、案内するけど。」
耳が揺れれば視線も揺れる、んっしょー、っと手を伸ばしてみた。触れるなら触ってしまおう。
しかし昼で良かった、と思う。夜であれば鴨がネギ背負ってどころではなくて、料理が皿に乗ってやってきたようなものだ。
襲わずに済んだことを残念にも思い、安堵もし。
「…んー? これ使う? わざわざ切って作っても、ここ石ころだらけだからつらいよ?」
なんて、自分のサンダルをぺい、っと器用に足で脱いでベッドの側に投げつける。ちょっと小さめ。
■クレアルト > 「……?ええ、本当に長いのよ。だって私はエルフだもの、別に珍しくも無いでしょう?」
手招きに応じて近付いて来た少女の言葉に少し得意気に、少し当惑気に言葉が返る。
当の長い耳は少女の説明に応ずるようにぴこぴこと動いたりもしていたのだけど
不意に手が伸び掴まれたら当然動きは止まり、代わりに少女の手に確かな体温を
少しひんやりとした不可思議な体温を与えるだろう。
「こらこら。不躾に耳を触ったら駄目よ?普通だったら怒られてしまうんだから……
って履物、貸してくれるのはありがたいけれど、貴方が歩けなくなってしまうわ?」
クレアルトは、め、と少女を諌めるように彼女の額を軽くはたき
次は宥めるように赤い髪を梳くように撫でた。
撫でながら暫く、唸って考え事をしている風だったが、突如晴れやかに表情を綻ばせる。
「そうだ、私が履いて、貴方をおんぶすればいいのよ~。ね、名案でしょう?」
それはきっと名案と言えるものだった。
クレアルトが己の腕力をきちんと計算に入れていれば。
発言と同時に彼女の腹がぐうぐうと鳴り響く事からして
空腹ゆえの思考力の欠如が懸念されたかもしれない。されなかったかもしれない。
■昼奈 > 「あたっ………」
ぺちん、と軽く頭を叩かれれば、へへー、っと舌を出して悪びれずに笑う。
赤い髪を梳かれれば、なんだろう。昨日も撫でられて、今日も撫でられて。
それが気持ちいいのか、目を閉じながら素直にそれを受け止めて。
「………私は素足でもだいじょーぶだし。気にしなくてもいいってのに。」
相手が気にしていることに気がつけば、少し苦笑をしながら裸足で歩いて見せて…………。その上での相手の提案に、かくん、っと肩を落としてしまう。
「あのさ、………いくつかツッコミを入れるんだけど。まずその格好が歩く格好じゃない。 んでもって、お腹すいてるんでしょ?」
腰に手を当てて、はー、っとため息を付き。その上でぽん、っと己の胸を叩く。
「……逆でいーよ、私がおぶってってあげる。私、こう見えて健脚で通っててね。まあ、美少女の背中に乗れる名誉を与えたげるってんだから、喜びなさいよね。………あと、まあ、少しくらいなら食事出せるから。」
めっちゃ偉そうにえっへんと無い胸を張りながら逆提案をして、……ついでに食事についても聞いてみる。
さすがの悪辣美少女(自称)も、右も左もわからない女性をほっぽって帰ることができるほど、無感情ではないのだ。
■クレアルト > 「あら~……頑丈で、しかも力持ちなのねえ。もしかして、貴方ドワーフ?」
小柄で色黒で頑健な体躯を誇り、酷く大酒飲み。目の前の少女の自信満面な様子を見て
クレアルトはそう判断をし、大きく頷いて見せた。
続く少女の言葉にも何度も何度も頷いて、拝むように掌を併せ己が頬に添えて言葉を綻ばせる。
「すごいわねえ。可愛くて力持ちで私助かってしまうわ。しかも御飯も出してくれるなんて夢見たい。」
夢か現か確かめるべくかは知れないが、銀色の杖に揺れる頭がごつんと当たり、暫し額を抑えて俯く。
肩が微妙に震えている事からして、結構痛がっているのが判るかもしれない。
ともあれ面を上げたなら、それはもう遠慮なしに両手で少女を手招きし
彼女が近付くならば遠慮の欠片もなくその小さな背にクレアルトの身体がかかる事だろう。
■昼奈 > 「……ドワ……? 何それ?」
異世界の言葉なのだろう。きっと異世界で美少女を意味する言葉に違いなかろう。いや多分違うけど。
いつかどこかで調べて、意味を読み取ってからツッコミをするしかない。今はしっかりスルーをして。
「べっつに、いーけど? ………それくらいはさ?」
思い切り直球に褒められて、喜ばれると、少しくすぐったい。頬をぽりぽりとかいて、視線を横にズラし………。
「いや何やってんのってば!?」
ズラしかけたところで思わずツッコミを入れる。なんだろう、目が離せない過ぎるんだけどこの人。
………とはいえ、こんなところで寝巻き姿でずっといるわけにもいくまい。ふぅ、っと吐息を一つついて、背中に乗ってもらうことにする。
………
…ふにゅ。
「…………随分でけーな、おい………………」
背中に押し付けられる柔らかい感触に、思わず言葉が漏れる。私? 悲しいほどに空気抵抗が無くて動きやすくてたまんねぇわ。
ため息混じりに声をかけながら、手を回してお尻を支えてあげながら、徒歩開始。重さを苦にした様子もなく歩き始めて。
■クレアルト > 「朝起きたら荒野に居て、魔法が使えなくって、魔物に襲われて、ドワーフの女の子に出会っておぶられて…んふふ、長生きもしてみるものねえ」
杖を抱えたまま少女にするりと手を回し、遠慮なく体重をかけて
ついでに頭もだらりと預けたならば荒野に流れる、凡そ似つかわしく無い長閑な声。
「あら?知らないの?ドワーフなのにドワーフを知らないなんて不思議な事もあるのねぇ。でも私も時々前日のおゆはん忘れてしまうから御相子ね、きっと」
会話が半分ズレたまま、ベッドを残して荒野を進む奇妙な影。
何処か悲観的な少女の呟きが風に巻かれて消えて行き
「そう?でもドワーフならこれから大きくなると思うし、頑張れ~♡」
酷く無責任で
酷く楽観的で
酷く優しげな声がそれの後を追った。
この後二人は街まで辿り着き
クレアルトがその様々に驚嘆し
少女がクレアルトの食べる食事の量に驚嘆したりするのだけれど
それについては、また後日。
■昼奈 > 「……しっかし、夜だったら危なかったってのに、のんきなもんだねぇ。」
夜であれば襲われるのももっと早かっただろうし、何より私が襲っていたかもしれない。ため息をもう一つついて。
………だからドワーフじゃねえっての、なんて小さく言葉を漏らそうとして、諦めた。
「………ホントかねぇ。……まー、おっきくなくても美少女だからいいんだけどさ! ああもう、腹立つ。後ででっかいの揉んでやろーか!」
ぐなー! と怒りながら女性を背負って街まで歩く。
きっとこの後、一日で何度も「ったくもー!!」と叫びながらじたばた暴れるのだろう。
とんでもない拾い物をしてしまったらしい………ということを気がつくのは、もう少し後。
今でもとんでもないと思っているのだけれど、それを悠々と超えてくるのである。
まあ、それについても、また後日。
ご案内:「転移荒野」からクレアルトさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」から昼奈さんが去りました。