2016/07/16 のログ
ご案内:「転移荒野」にクローデットさんが現れました。
■クローデット > 「…やっと天気が落ち着きましたわね」
太陽が辛うじて高さを保つ午後、クローデットは荒れ地が広がる転移荒野にやって来た。
平らな荒れ地ゆえに「大物」は少ない。
(…ここなら、比較的安全に実験が可能でしょう)
クローデットは、その荒野の地面に、クローデットが腕一杯に抱えるくらいの大きさの機械を置いた。
■クローデット > 常世学園に留学しに来た時からの、表向きの研究課題。
「魔術や異能要員が少ない地域でも安定して扱え、量産が容易な『門』発生予測装置」
の実地試験である。
機械を地面に置き、更にその上にカメラを乗せる。
機械の測定結果と、実際の『門』発生状況を照合するためだ。
それから、各種防御魔術を展開する。
自動修復では修復期間中の測定にノイズが発生するかもしれないため、基本的にはオーソドックスな防御魔術に頼ることにした。
ただ、魔術防御術式だけは、測定対象となるパラメータだけは透過するように改造を施した。
■クローデット > 無論、「それなりの強度の防御魔術を纏う、魔力で駆動する機械」は、魔力を糧とするタイプの魔物の格好の餌食となる可能性がある。
しかし、魔術的な要素に頼って『門』の予知を試みるタイプの機械が、魔力の透過を遮断するわけにはいかない。
………そこで、「彼ら」の出番だ。
「…さあ、ここがあなた達の「仕事場」ですわ」
慈母のごとき優しい声で、ポシェットから白と黒の球体を1つずつ取り出すと…宙に放る。
そうすると…宙を舞うそれらがまばゆい光を放った。
■クローデット > 光が晴れると、全長2mほどの、銀色の鱗と妖精の羽根のような胸びれを持つ、魚が二尾。
銀色の鱗が、光を照り返して七色に輝いている様子は美しいとも思えるかもしれないが…全長2mの巨魚が空中を滑らかに回遊する様は、「異様」という感触の方が先立つ者が多いだろう。
以前助けた少年から譲り受けた「素材」を利用して、クローデットが作った魔法生物だ。
その妖精羽根のような胸びれにはものを「斬る」力がある。
…しかし、それは物理的な力ではなく魔術的な力なので、「斬る」対象には物理的な硬軟よりは性質の「条件付け」が関わる。
ここで「番人」の役目を仰せつかった二尾は、それぞれ「生きているもの」と「生きていないもの」を斬る性質を持つ胸びれを持っていた。
■クローデット > 「いらっしゃい…あなた達のことが分かるように、「印」をつけて差し上げますからね」
クローデットが優しい声でそう呼びかけると、魚達はすーっとクローデットの方に寄っていく。
「…良い子達ね」
そう笑みかけて、それぞれのえらのあたりに、魔術的な印を描いてやる。
この魚達が生命活動を維持出来なくなりそうな時に、それをクローデットに警告として発するための発信術式だ。
「…1ヶ月間、あの結界の中身を守って下さいね。
…それが、あなた達の「仕事」。『あたくし以外の近づくものを皆斬りなさい』」
そう言って、クローデットが防御術式に守られた装置を指差すと…魚達はふわふわとその装置の周囲10mの範囲内を回遊し始めた。
「…良い子達ね。頼みましたわ」
その様子を見て、クローデットは満足げに微笑んだ。
■クローデット > (…一応、学園中に告知をしておいた方がよろしいかしら?)
近くに水辺もない、草も生えない、隠れられるような凸凹も少ない荒れ地だ。
大掛かりな魔物狩りの舞台となることはそうないだろう。
…しかし、この転移荒野は広大なる「実験場」だ。
何かの実験に広大且つ荒涼な荒れ地を必要とする者が、近くに来ないとも限らない。
(実験のためにわざわざこれだけの荒れ地を選ぶ者が、露骨に視認出来る怪しいものに近づくとも思えませんけれど…万が一もありますし。
…帰る際、研究区管理課に寄って掲示を出して頂くよう手配致しましょう)
そう決めると、クローデットは身を翻そうとする…が、その前に。
「あたくしの可愛い子達。頼みましたよ」
もう一度「番人」達に声をかけて、それから転移荒野を後にしたのだった。
ご案内:「転移荒野」からクローデットさんが去りました。