2017/09/03 のログ
暁 名無 > 「流石にプロの料理人になれって言ってるわけじゃねえんだからさ。
 ……けどま、あんまプレッシャー掛けるのも良くねえか。
 じゃあほどほどにな、藤巳。」

けらけら笑いながら麦茶を飲む。
そうは言っても藤巳のことだ、何だかんだで気合を入れて作ったりするんだろう。

「自覚を持てばそれで良し。
 普段来ない場所だから少しわくわくするのも分かるが、危険な場所でもある事は忘れるなよ。」

まあだからこそ普段よりガードが緩い私服姿で、
弁当に気を取られ屈んだ拍子に見える実りの良いものが間近で見れるのだけども。
いやしかしホント成長著s……うん?なに?

「へ?……ああ、本当だな。
 風じゃなさそうだ、藤巳、何時でも動けるようにしとけよ。」

威圧感のような物は感じないから、さほど脅威と呼べるものでは無さそうだ。
だが油断は禁物。一瞬の慢心で窮地に追い込まれるなんて、この地ではざらにある。

藤巳 陽菜 > 「はい!」

いつでも動けるようにとの言葉におにぎりを飲み込んでしまい杖を片手に構えて逃げるべき方向を探る。

茂みから姿を現したのは猪のような怪物。
本土の方で見かけるそれと比べて角が生えているくらいで変わった点は見当たらない。
戦闘の心得があるものなら苦なく仕留められるだろう。
但し、それは相手が一頭の場合。茂みから現れたのは6頭。
囲むようにしていることから頭も悪くなさそうである。

「…囲まれましたね。先生どうすればいいんですか?
 魔術で攻撃しましょうか?」

だが、陽菜が使えるのはあくまで自衛レベルの魔術のみ。
一撃で命を奪うものなんてとてもじゃないが使えない。

暁 名無 > 「なるほどワイルドボアか……

 藤巳、魔術障壁か何かが出せるなら展開しとけ。
 一発二発くらいなら耐えられる様にな。
 それと弁当、ちゃんと守っとけよ。」

早口で告げてから、俺は懐から煙草を取り出し、火を着ける。
あんまり藤巳の前では吸っていなかったが、事態が事態だ。

「まったく、人の憩いの時間を邪魔しやがって……。」

タバコを銜え、猪たちを睨む。
まさかその程度で怯む様な獣じゃないのは百も承知だ。
こちらとしても折角の目の保養を邪魔されたからには生かしておくつもりはない。
煙草の煙を吐き出すと同時に、俺は一番間近の猪へとノーモーションの火炎弾を飛ばす。

藤巳 陽菜 > 「はい!」

いつでも動けるようにとの言葉におにぎりを飲み込んでしまい杖を片手に構えて逃げるべき方向を探る。

茂みから姿を現したのは猪のような怪物。
本土の方で見かけるそれと比べて角が生えているくらいで変わった点は見当たらない。
戦闘の心得があるものなら苦なく仕留められるだろう。
但し、それは相手が一頭の場合。茂みから現れたのは6頭。
囲むようにしていることから頭も悪くなさそうである。

「…囲まれましたね。先生どうすればいいんですか?
 魔術で攻撃しましょうか?」

だが、陽菜が使えるのはあくまで自衛レベルの魔術のみ。
一撃で命を奪うものなんてとてもじゃないが使えない。

「障壁ですか分かりました!
 
 詠唱!雨から、陽から、力から私を守って…黒傘!」

そんな呪文を唱えれば杖の先に傘のように魔術の障壁が貼られた。
あまり高位の魔術ではないが防御力は低くない。

『プギャゥ』

火炎弾を真正面から受けたボアはそのまま地に伏せた。
炎はそのまま猪が蓄えた脂を燃料に燻り続ける。
仲間が倒されても竦むことなく他の二体は火球を飛ばした教師の方へと向かう!

「…なんか美味しそうな臭いしません?」

その言葉に怒ったのかどうかはともかく一体の猪は陽菜の方へ…。

「うわっ!こっちに来た!」

…傘に阻まれて陽菜にその牙も角も届かない。
一時間でも二時間でも耐えれそうな様子であるが…。

「…せっ先生!どうしましょう!?」

暁 名無 > 「あと5……!」

此方へ向かって来る2体の内、一体へ最初の猪へ放ったのと同じ炎弾を飛ばす。
もう一体へは小さな氷柱を生み出して投げナイフの要領で額へと飛ばした。
これで多分残りは3体!

「藤巳はとにかく自分の身を守ってろ!
 俺は攻撃で手一杯だ、気ぃ抜くんじゃないぞ!」

そう告げてから障壁に突進を繰り返す猪の横っ腹に蹴りを突き込む。
全盛期よりは劣るものの、リーチの長くなった足技は、自分的にはまだまだ健在だ。
と言っても誰が解ってくれるか、わかったもんじゃねえけど!

蹴りを受け怯んだ一瞬で至近距離から電撃を叩きこむ。
さてこれで残りは2体だろうか。藤巳の障壁は全然持ちそうだから心配の必要はなさそうだけども……。

藤巳 陽菜 > 「先生凄い!普段より大分カッコよく見えますよ!」

障壁にぶつかっていた猪はいまや電気で焼け焦げやはり美味しそうな匂いをさせている気がする…。
…いや、食べないのだけど。
だが、これで残りは二体!一体どこに?

…あれは!

「先生!後ろです!」

額に氷の刺さった猪が教師に向かって猪突猛進。
相手の額は相当に堅いらしい。
そして、猪の一体は陽菜の背後から!
その鋭い牙を陽菜の蛇体に突き立て…立たない!
その硬い鱗に覆われた身体は猪の牙をそして角を通さない!

「…うわっビックリした!いつの間にいたの!?」

驚きながらも身体の位置と姿勢を変えて間に障壁の傘を持ってくる。
…これで一安心。

「先生!早く倒してください!」

猪も少しやる気をなくしているようにも見える。

暁 名無 > 「よし、全然余裕そうだな!」

軽口が叩けるほどとはだいぶ頼もしい。
今日はあらゆる意味で藤巳の成長っぷりに驚かされてばかりだ。

「おっと!まだ死んでなかったかこの野郎ッ!」

こちらへと突進してくる猪を辛うじて躱し、額に突き立ったままの氷柱へと蹴りを打ち込む。
致命傷へと足りなかった勢いを補って、今度こそ確実に仕留めた筈だ。

「藤巳!大丈夫か!」

気を取られている間に不意打ちを受けたらしい。
急いで術式を編み上げ、先に二体焼いていた炎が意志を持ったように動かして残った猪へと降り注がせる!

数え間違いが無きゃ最初に焼いた一体に、続けて焼いた一体、氷柱が刺さった一体、蹴りの後電撃を受けた一体、
そして今藤巳に不意打ちかました一体で計5体。
……後一体か!

「これでも驚きのペースで倒してるだろ!」

残る一体は何処に行ったか、なんて探す暇も作る気は無い。
咥えていた煙草のフィルターを噛み締め、立て続けに術式を編んだ所為でキリキリ痛む頭を無理やり動かして更に術式を発動させる。
魔力による探知で自動発動の土の棘が、最後の猪を貫くだろう。

藤巳 陽菜 > 「…何か思った以上に大丈夫です。」

全くの無傷だったのだが逆にそれがショックだった。
魔物に噛まれても無傷だなんてそんな…

「はい、早いですけど…
 でも、それはそれとして怖いじゃないですか!」

…確かにペースはかなり早い幻想生物学の教師だけあって魔物との戦闘にも慣れているのだろう。
だが、それでも怖いものは怖いのだ。

「あっ…。」

最後の一体の猪。それは何とレジャーシートの上に居座っていた。
そこで我が物顔で弁当を食らっていたのだ。
そこに下から突き出した土の棘。猪を貫くとともに弁当箱も吹き飛んだ。

「あーっ!」

飛び散る猪の血。飛び散る弁当の中身。
残ったのは惨劇の跡だ。

暁 名無 > 「あー……」

弁当が……
ちゃんと、守っとけって言ったのに……

「あー……何だ、藤巳、その……すまん。」

しかし俺がもっと気を配っていれば防げたかもしれない。
何とも言えない居た堪れなさに、俺は藤巳へと謝罪を口にした。

無残にばら撒かれた弁当と、周囲は猪の屍。
ちょっとした地獄絵図と化した光景に、流石の俺も言葉が出ない。

藤巳 陽菜 > 「…ごめんなさい。」

猪の挙動を見失っていた自分の失敗だった。
あの一頭に気が付けていたら何とか出来ていたかもしれない。

「ま、まあ、でも食べれそうなのも残ってるかもしれませんよ?
 これは…ちょっとあれですけどこっちのおにぎりとかはほら無傷ですよ。」

確かに他の弁当は吹き飛んでしまったり赤いものが着いたりしていたがそれはそのおにぎりたちは何とか無事だった。
これだけでも残っていて良かったこれがなければ耐えられなかった。

「まあ、落ちちゃった奴はは残念ですけど…。
 これを転移荒野出てから食べましょう!
 こっちはシーチキンばっかりなんですよ!」

教師に背を向けて明るい声を作って言う。
顔は見せない、見せられない。

暁 名無 > 「……ああ、そうだな。出たら食うか。」

こちらに顔を向けない藤巳の背を見て、心が痛む。
あれだけ楽しみに、楽しそうにしていたのだからその心境は計り知れない物が在るのだろう。
もしかしたら、泣いてるかもしれない。変なところで繊細な奴だからな……。

「……その前に、火消はしてかないとな。」

炎の魔術を使った事で周囲の木々にも火が燃え移りかねない。
俺はサッカーボール大の水球を造り上げると、それをゆっくり、ゆっくりと宙に高く浮かばせ、徐に破裂させた。

ばらばらと即席の雨が降り始める。
通り雨よりも一時的な、柔らかな雨だ。

藤巳 陽菜 > 「魔法って凄いですね。
 雨まで降らせられるんだ…。」

持っている傘をさしもせずにせずに雨が降るのを見ている。
雫が頬を伝う。これは雨だろうか?いや、麦わら帽子に遮られてこの程度の雨では顔は濡れない。

「…あっ虹。」

そうして空を見上げていればそこに虹が見えた。
人工的に降った雨、太陽の光、それらが合わされば起こる光の屈折。
ホースから出した水に架かるみたいな人工的な虹。
大きいものではないし天然の物でもないけども…虹は虹。

「…先生、それじゃあ帰りましょう」

…いまだ障壁の消えない杖は傘の役割を果たす。
これがあれば雨に打たれない、もう濡れない。
それでも少し湿った頬のままで雫のが頬を下ったその跡を拭かないまま顔で
微笑んだ。

暁 名無 > 「あくまで俺が出来るのは雨の真似だけどな。
 もっとちゃんとした魔術の使える先生なら、本当に雨を降らすことだって出来るだろうよ。」

俺がそこまでやるにはかなりの条件を重ねないとならない。
準備も必要だし、魔力の消費も素人同然の俺では半端じゃない。
周囲に燻っていた火が消えたのを確認すると、ゆっくりと雨も止んだ。

「……そうだな、帰るか。
 たまにはこうして外で飯食うのも良いもんだな。
 
 また、次の休みにでも公園で藤巳の弁当が食いてえな。」

なんとか無事な食材を弁当箱に戻し、それらを片付けつつ。
泣いてた事を隠しもしない藤巳の頭に、声を掛けつつそっと手を乗せよう。
別に慰めの言葉を掛けるつもりだったわけではなく、本心からだ。
……何だかんだ、今回は良い所を邪魔されたわけでもあるし。

藤巳 陽菜 > 「流石に本当の雨は…。
 いや、出来るのかな…。」

出来るけどやらないとかそういう人はいるかもしれない。
師匠とかなら出来るだろうか?

「ええ、小学校の遠足以来かもです。
 …公園はちょっと目立ちませんかね?
 大丈夫ですか?」

流石にそんなところで弁当を食べて噂とかされると良くない。
特に先生は先生であるし、普段からセクハラな言動をする事から変な誤解を生みかねない。

「…これは雨ですからね。
 先生が急に雨とか降らせるから濡れてしまっただけです。」

そう言いながら目元を拭い来た道を行く。
帰りの道は分かりやすい、あちらに見える時計塔を見れば迷う事は無いのだから。

暁 名無 > 「どっちかと言えば祈祷師とかの領分だけどな。
 まあその辺のカテゴライズはごっちゃになってそうだし、出来る人も居るだろ。」

流石に自由自在に天気を操る、なんて芸当は無理だろうけども。
それくらいの事は軽くこなしそうな教師が居そうなのが常世学園という場所だ。

「じゃあまた此処に来るか?
 今度は目一杯の魔物避けの準備もして。
 ……あんまり勧めたくは無いけど、まあ、藤巳だけ特別でも良いか。」

普段からセクハラな言動の被害を受けているんだしな。
ただその代り今後もその被害は受けて貰うと思うけども。

「へいへい、悪かったな。
 ほら、あんまり急ぐとまた崖から落ちかけたりするぞ。」

戻り始めた藤巳の後を追って俺も続く。
雨に濡れた所為と主張するならせめて服も濡れてくれれば良かったのになー、とか思ったり思わなかったりしつつ。

藤巳 陽菜 > 「流石に用事がないと…。
 また、必要な材料とか出来たらお願いします。」

…何故かこの教師を尻尾で叩いて許されるような気分になる。
いや、叩かないけど。
凄い酷い事を思われた気がする。

「流石に落ちかけませんよ!
 もう気をつけますし!」

そんな事を言いながらもこのあと今度は川に落ちかけたり。
帰りも割と大変な目にあったりしながら最後には弁当箱を空にすることが出来たという。

暁 名無 > 「流石に懲りたか。
 そうだな、また何か入り用の時は引率するとしよう。
 その時はもっと弁当の腕も上げとかないとな?」

けらけら笑いつつ、ゆっくりと頷いた。
今回は流石に気の毒が過ぎる。最後まで楽しめる機会を与えたい気持ちの方が勝っていた。

「はいはいはい、また魔物も出てくるかもしれないしな。
 転移荒野を出るまでは油断するんじゃないぞ。」

……と言ったのにも関わらず。
やっぱりどっかしらで不注意な藤巳をヘルプしながら帰ったのだった。

ご案内:「転移荒野」から藤巳 陽菜さんが去りました。
ご案内:「転移荒野」から暁 名無さんが去りました。