2018/01/23 のログ
アリステア > 「とりあえず」

辺りを見渡しても目印になりそうなものはありません。
というより落下地点が丁度盆地のようになっているようで、
どこに向かえばいいのかも見えません。
所々に立ち枯れた木と大き目の岩がぽつぽつと……
それも白い雪に覆われつつあります。

「泣いても良いですかぁ……」

これはもう涙声になるのに十分な状況だと思います。

ご案内:「転移荒野」に狗隠さんが現れました。
狗隠 > 「――今度は転移荒野か……やれやれ」

雪と風が吹き荒ぶ、殺風景でありながら空間の捩れた異質な気配を感じる光景。
執事服姿に、左右の腰に刀と拳銃を提げたその男は、周囲を見渡して吐息を一つ零す。
あれから、何とか落第街付近まで戻ったと思えば、そこでゴタゴタに巻き込まれ…また転移術式に巻き添えだ。

そして、現在進行形でこの状況。泣きたくはならないが溜息の一つは許して欲しい所だ。

「――ここから戻るとなると、流石に徒歩は厳しいな…魔術を使うか、最悪元の姿――…ん?」

男の感覚が誰かの気配を捉える。吹雪に近いせいで視界は最悪だが、あちらのクレーターじみた凹んだ一角から感じ取れる。
…見て見ぬフリも考えたが、自然と足はそのクレーターへと向かっていた。
そのまま辿り着いたと同時、軽く跳躍して窪んだその中心地へと着地するだろう。

「……突然で済まない。誰か居るのか?」

と、落ち着いた声色で気配の方へと一声掛けてみようか。

ご案内:「転移荒野」に狗隠さんが現れました。
アリステア > 「頑張れです私……」

泣いていても何も好転しません。
とにかく落ち着いて治療できる場所を探さなくては。
既にぼっきぼきに折れた心を何とか奮い立たせ、
歩き出そうとして……

「ひゃぁぃ!?」

突然声が聞こえました。
それはそれはもう吃驚したせいで咄嗟に出た返事が完全に裏返っています。恥ずかしい……
そちらを見れば雪の中にぼんやりと黒い……人影?
ああ、まだ完全に視野も回復していないみたいです。
そのせいでじーっと眺めてしまいますがそこはご容赦ください……。

狗隠 > 「……ああ、怪しい者ではない。…と、言えるかは分からないが。まさか他に誰か居るとは思わなかったものでな。
失礼かと思ったが声を掛けさせて貰った次第なのだが――…」

そちらへと、ゆっくりと敵意や害意が無い事を示すように軽く両手を挙げてみせつつ歩み寄る。
やがて、何とか互いに見える距離まで到達すれば足を止めて。
ジーッとあちらが眺めてくるが、男も男で静かに相手の様子を観察しており。

「……酷い有様だが平気か?衣服は破れているし包帯にも血が滲んでいるようだが」

アリステア > 「あ、えと、これはご丁寧、にども、ありがとございます…」

妖しい人ではないそうです。良かった。
とりあえず挨拶は大事と古事記にも書いてありました。
あまり綺麗な格好してないですけれど、話せばわかってくれるでしょう多分。

「あ、えっと、黒くて大きな……?
 その、ばさばさーって、飛ぶ動物です。Bird、です。
 それに攫われて―……ぽいー、されました」

折れてない方の手で羽ばたきつつ。
包帯の事を指摘された途端に目を逸らして。
虹色の瞳を見てしまったでしょうか……。
直視すると危ないのですけれど。

「あ、えと、へーき、です、たぶん、きっと……」

咄嗟に口から出るのはそんな言葉。
全然平気じゃないですけど!
大体の事は元に戻るとはいえ痛くないわけでも寒く無いわけでもないので!

狗隠 > 「……そちらも望んでここに居る訳では無さそうだな…お互い災難だという事だろう」

そう、呟くように口にしつつ彼女のジェスチャーを交えた説明に真顔でフム、と一つ頷いた。
詳細は正直サッパリだが、大まかには理解した。真偽よりも今はこの状況の打破が最優先だ。

彼女の瞳を直視したのかどうかは謎だが、少なくとも少女から見た限りでは男は無反応に近いだろう。

「……痩せ我慢は程々にしておいたほうがいいと思うが。…取り敢えず、まずはこの寒さを何とかしなければな。
…君の手当ても必要だろう。応急処置出来る道具などはあるのか?」

淡々とした口調で尋ねつつ、改めて一度周囲を見渡す。大きな岩が点在し、枯れ木も何本か…魔術を上手く使えば暖は何とかなりそうだ。
頭の中でザッと方針を組み立てつつ視線を少女へと戻す。

ご案内:「転移荒野」に狗隠さんが現れました。
アリステア > 「遭難、ですか?」

遭難、の言葉のアクセントと発音には自信があります。
何故なら多分一番多く使ってる言葉だからです。
特に反応がない辺りセーフそうです。ちょっと安堵の一息。

「えと、それなら、この鞄、あけてほしい、です」

手持ちの大きな鞄をそっと差し出す。
鞄の取っ手からワイヤーが手首に繋がっているので持ちにくいかもしれません。

「えと、この場合、119番、にダイヤルを合わせて鍵を開けてほしいです」

見た目古いトラベルバックのそれのダイヤルを指さしつつそっと地面に置きます。
近くにいると危ないですからね。

「そしたら、治療、品と簡単なテントセットが、出てくる……はずです。」

……少々勢いよく(当社比)飛び出すのが難点ですが。
黒服のお兄さんお姉さんからこれだけは絶対持っててと
渡された便利鞄さんが無くなってなくて本当に良かった。
なお正常に作動するかは保証しません。

狗隠 > 「災難、だ。…遭難も間違いではないが。少なくとも雪と風は朝まで続くそうだからな…街に戻るとしても朝方になるだろう」

と、少女の言葉を訂正しつつも、安堵の吐息にはやや不思議そうな面持ちを。
とはいえ、気にしてもしょうがないので差し出された鞄を一瞥する。
…何故、少女の手首とワイヤーで繋がれているのかは聞かないでおくとしよう。

「119…分かった。…ふむ」

地面に少女が置いた鞄の前にしゃがみ込み、ダイヤルを合わせて鍵が開いたのを確認。そして開けたら――…。

「………!」

中身が物凄い勢いで飛び出してきた!まともにぶち当たったら普通に怪我をしそうな勢いだ。
しかし、男はテントセットや治療セットを全部両手で器用にキャッチしていた。

「……成る程。中々に凝った仕掛けだな」

と、謎の納得をしつつ、治療セットを少女に手渡そうと。一方、テントセットは男がそのまま持っており。

「では、ここにテントを設営するか…まずは――」

左手を雪の積もった地面に軽く触れさせる。途端、何の前触れもなく雪が”削り取られた”。
それを繰り返しつつ、テントを設営するのに調度いいスペースを確保して行く。

とはいえ、現在吹雪のような有様なので、テキパキとテントセットを組み立てておこう。
手馴れているのか、その一連の動作は鮮やかなものである。

アリステア > 「……えーっと?」

日本語は難しいです。
黒服さん曰く、普通に喋れば翻訳されて聞こえるそうなのですが
同じ言語で喋るって大事だと思うのです。うん。って……

「あさ……まで?」

驚愕の言葉に冷や汗がたらり。
すごおく珍しい事に幸運にもこの人が近くにいたおかげで回避できそうですが
凍結して回収される羽目になる一歩手前だったと思うと内心穏やかではありません。
そんな感じで若干現実から意識が遠のいている間に鞄が開かれて……

「流石収納庫兼ぼーかん撃退用装備……」

良かった。どこでも一緒君こと四次元鞄は壊れてなかったようです。
何時ものように豪快に飛び出すアイテムたちを何処か遠い目で見つつ……
あ、凄い全部キャッチした。

「ありがと。ございます。……あぅ」

差し出された救急セットを受け取り開けようとしたところで
荷物が飛び出る際に天高く舞っていたペットボトルアレイが、頭に直撃。
何でこんなものが中に……まぁ幸いにも中身は水です。痛いで済みました。
そんな現実逃避をしている間に目の前の人はテントの設営を始めて……

「わ、凄い、手慣れてる、です。
 頼もしいです」

本当になんて幸運だったんでしょう。
テントを立て慣れていて、しかも実際に立ててくれるなんて
とても親切さんです。
雪が消えていく仕組みは判らないけれど、とりあえず設置の為には
つごうが良い事なのでこの際気にしない事にします。

狗隠 > 「まぁ、気にしなくていい。君が言う遭難も間違いではない、という事だ」

そして、朝方まで雪が続く事に驚愕している少女。一方男の方は相変わらず冷静である。
ともあれ、鞄から飛び出した中身は全部キャッチした…水入りペットボトルを除いて。
アレだけはどうも空高く舞い上がって受け止め損ねたらしい。
「大丈夫か?」と、一応少女に声を掛けつつも、何だかんだでテントの設営は無事に完了だ。

「手馴れている、というか知識にあるというか。まぁ、これなら雪が止むまでは一息つけるだろう」

雪を削り取ってむき出しの地面が露になれば、テントを設営しつつ四方を固定して完了だ。
取り敢えず、少女に中に入って応急手当をするように促しておこう。

男の方はといえば、テントには入らず少女が入ったのを確認してからテントの周囲に風の魔術と火の魔術を重ねてドーム状の空間を形成しておく。
これで吹雪は防げるし、火の魔術と風の魔術の重ね合わせでテントの中とその外側数メートルは暖かい温度になっていく筈だ。

(……しかし、このテントは多人数ようではないな。まぁ、外で番をすればいいだけだが)

魔物も出る転移荒野だ。最悪、少女は休ませてこちらが寝ずの番をすればいい。

ご案内:「転移荒野」に狗隠さんが現れました。
アリステア > 「何から、何まで……」

多分自分で設置する3倍くらいの速度でテントが立ちました。
しかも何処も歪んでないです。このヒトは赤い服の仮面の人のお友達なのでしょうか。
全然赤くないですけれど。

「えと、えっと」

いきなり出会ったばかりなのに此処までして貰って
何かお礼が出来ないでしょうか。
そんな事を考えている間にテントに入るよう促されて……
とりあえず言われた通り中に潜り込んで腕に添え木と包帯を巻きつけていきます。
治療術式を使うにもまずちゃんと固定しなければ。

「……あの、入らないの、ですか?」

そこまでした後に入ってこない事に気が付いて。
顔だけテントからのぞかせれば……何やら仕掛けている様子。
その影響か外なのに全然寒くありません。
けれど視界的にも寒いでしょうし外では大変だろうと思うのです。

狗隠 > 「…まぁ、このくらいはお安い御用、というものだ」

テントの設営の一連の流れは迅速で無駄が無かった。それでいて、先に彼女を入らせて応急手当を促す気遣いも忘れない。
さて、雪や風の防護と暖房を兼ねた魔術の仕掛けも完了し、一先ずこのまま番をしていよかと思ったのだが…。

「……そこまで広くないテントなのに、俺が入ってもいいのか?
そもそも、見ず知らずの男と閉鎖空間に二人きり、というのは君の精神衛生上にも良くはない気がするのだが」

と、番をしようとした主な理由をそのまま口に出して行く。無論、魔物の襲撃に備えてというのも嘘ではない。

とはいえ、男としても一息つきたいのは本音だ。先の指摘でも少女が構わないなら男もテントにお邪魔するつもりではある。

アリステア > 「あ―……ぅ―……」

流石にその意味が分からないような境遇ではないので……
少し頬が熱くなった気がします。と言いますか言い方がずるいです。
でも……

「あの、外、辛いです。
 無理、駄目です。」

ぷるぷると頭を振って強く(と自分は思っている程度の小声で)抗議。
確かにそう言われると怖い気もしますが、
それ以上に親切にしてくれた人が休めないのは良くないと思うのです。
働いた人こそ休むべき。
それに、そうなったらそうなったで……

「仕方がない、と思うのです―……」

相手が帯刀しているところなどもさすがに気が付いていますし
もしもその気になったら抵抗する術なんてありません。私弱いですし。
そしてその状況は例えテントの外でも中でも変わらないと思うのです……。

狗隠 > 「……安心して欲しい、というのも無理な話かもしれないが君を襲う気は無いぞ?」

真顔でそう告げる。若干少女の頬に赤みが差している気がしないでもないが、そこは見てみぬフリだ。
しかし、ささやかながら少女からの抗議、というか訴えというか。そう言われると一つ吐息を零して。

「…それと、仕方ないとかそう簡単に言うものでもない。
…まぁ、だが君の気遣いは有難いと俺は思う」

なので、男もテントの中にお邪魔しよう。…流石に、二人となるとスペースも狭いが仕方ない。
邪魔にならないよう、腰に差していた刀や拳銃を収めたホルスターを外して傍に置いておく。

「……取り敢えず、今夜はここで野宿という形になってしまったな。朝になったら俺が街まで送ろう。
風の魔術を使えば飛行も可能だし、そんな時間も掛からないだろうからな」

少なくとも徒歩よりは絶対にマシな筈だ。と、そこまで来てフと気付いた。名乗るのを忘れていた。

「…これも何かの縁、という事で名乗っておこう。俺はクオンと言う。学生や教師ではないが島の住人だ」

ご案内:「転移荒野」に狗隠さんが現れました。
アリステア > 「あの、あの、」

そう言われてもどう反応すればいいのか未だにわかりません。
口をパクパクさせた後、小さくそうですか、良かった。と呟いて
テントの中に引っ込みます。

「……でも、気になるんですもの」

本当は凄く怖いですけれど
胸元で小さく拳を握って胸を抑えて……

「胡桃一つ分の勇気、ですよ」

小さく言い聞かせるように口にして。
だって、怖い以上に放っておけないと思うのだから仕方がないのです。
それに、実際問題夜の間ずっと気を張り続けるには限度がありますし、
明日だってあります。そう、これは打算と計算に満ちた英断なのです。
……そう言い聞かせるように胸中で口にしてみたりして。
だから、名乗られたとき少しだけほっとして……。

「あ、えと、ありすてあ、です
 最近この島の、せーと、に成りました」

名前を知ったら少しだけ仲良くなったような気がしてきますね。
だからでしょうか、少しだけ自然に微笑めたような気がします。

狗隠 > (ふむ、あまり女心というものに聡くは無いが…この少女に気を遣わせてばかりも申し訳ないな)

かといって、自分に出来るのは少女を無事に街に送り届ける事くらいか。
それに、応急処置を終えたとはいえ彼女の怪我の具合や体力も気になる。

「……そうか。ではささやかなその勇気に敬意を」

真面目な声と調子で軽く頭を下げる。お芝居のようだが男は本気である。
実際、彼女なりに振り絞った勇気をどうして無下に出来ようか?
そして、互いに名乗れば何処か少女の表情や空気も多少弛緩した気がする。

「ふむ、アリステア嬢か…。そういえば怪我の痛みなどは平気か?今夜は休んで明日に備えた方がいい。
俺は眠りが浅いので何かあっても直ぐに対処出来るから君はぐっすり眠るといい」

暖房みたいな暖かさの空間にテント。寝袋や毛布は無いが仮眠だけでも取るべきだろう。
無論、彼女の身に魔物の危険などが無いよう、男は仮眠程度で済ませるつもりだが。

ご案内:「転移荒野」に狗隠さんが現れました。
アリステア > 「……ふふ」

芝居がかった、けれど真面目な対応がなんだか少しおかしいです。
でもきちっとした服装によく合っていて、なんだかとてもかっこよく見える動きでした。

「けが……は……」

そっと手をぐーぱーしてみると鈍い痛み。
この程度なら……

「明日の朝には……なおってる、はず、ですー」

常駐型の治癒術式を再起動、これで明日の朝には全部元通りです。
ただこれの欠点が一つ……

「あの、むりしな、し……で……下さい、ねー…」

これ凄い勢いで体力を使うという事です。
暖かい空気も相まってあっという間に瞼がとても重くなって……
ふらふらと揺れた後こらえきれずにパタンと横に。
こんなにつかれるっていう事は体内もそこそこダメージがあったみたいです。当然ですけれど。

「トリ、と、ふうん、に気を付け……」

あまりの眠さに最後まで言い切る事が出来ませんでした。
あの鳥さん、戻ってこなければいいんですけれど。
多分戻ってくるだろうなとうっすらと思います。

狗隠 > 「……俺は何か可笑しな事を言ったか?」

何故か笑みを漏らすアリステア嬢の様子に、男は心底不思議そうであったとか。
気配りも出来て察しも良いのだが、そういう所はどうにも疎いらしい。

「…そんなに直ぐに治る怪我には見え――いや、君の事情に土足で上がりこむのは駄目だな」

正直、好奇心や興味が刺激されるがそこは堪える。根掘り葉掘り初対面の少女に聞き質すのはいただけない。

「…無理はしないが、最低でも君の身の安全は保証する。それで納得して欲しい」

少女には言わないが、これでも男は怪異だ。そうそう簡単には死なない…というか死ねない。
彼女が眠りに付くのを、それこそ執事のようにそっと見守りながら一息。

「……怪異がお人よし、というのもどうかと思うが…。」

だが、それが狗隠という怪異だ。自分を否定したくは無い。
ともあれ、件の鳥がもし現れたとしたら、少女を起こさないように外に出て一戦交える事になるのだろう。

勿論、無事に朝を迎えればテントなどを片付けてから彼女を魔術を利用して街までちゃんと送り届けた筈。

アリステア > 「……すぅ」

はぃと返事する代わりに安心したような雰囲気で眠り込む姿は
まるで小さな子供の用で……
お人好し同士、どこかお互いに気があったのかもしれない。

吹雪は次第に穏やかになり、大きな雪が深々と降り積もる音が
耳に聞こえる以外、大きな音もせず、
”幸運にも”大型の鳥の魔物が帰ってくる事は無かったようだ。

とは言え結局帰る時にやたら魔物に遭遇したり、
町に着いた途端黒服さんにものっすごい感謝された挙句
いずれ改めてお礼をと言われたりと結局騒動に巻き込まれたのは

――また別のお話。

ご案内:「転移荒野」からアリステアさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」から狗隠さんが去りました。