2015/06/12 のログ
ご案内:「青垣山」に山吹 冠木さんが現れました。
■山吹 冠木 > さくさく、さくさく。
人の手入れが少ない山近くの道を、慣れた様子で歩いていく。
時刻は夕方を過ぎ、夜も深まった頃合いだろうか。
手に持った懐中電灯の灯りだけが頼りとは思えないほど、
その足取りは確かで、しっかりとしたものだった。
■山吹 冠木 > (……向こうとは違うけど、やっぱり山はおっかないな)
間近に迫る山の姿。
昼間の雄大で、見るものに自然の豊かさを伝えてくるそれとは違い……
今間近に広がるそれは、夜の深さを、自然の恐ろしさを……
その静かな畏怖を、沈黙で伝えてくる
■山吹 冠木 > 「……早めに済ませないとな」
ぼやくように、自分を奮い立たせる様に呟く。
風に揺れる葉の囁きは、まるで獣の唸りの様に。
暗がりに動く影は、自分を狙う牙の様に見える。
…………慣れろ。そして、怖がれ。
散々に叩き込まれ、実際に命を救ったこともある教え。
だが、毎度毎度、胃がキリキリするような感覚と二人三脚しないといけないのは、些か辛いものがあった。
■山吹 冠木 > 「……あれだ」
懐中電灯を片手に、草に覆われた道を歩くことしばし。
目印として用意したその鉄棒は、
地面に突き刺さした1ヶ月程前と変わらぬ姿で、
じっとそこに佇んでいた。
■山吹 冠木 > 「ささっと掘り出すか……猪や熊の類いも嫌だが、
……この島なら、それ以上に危ないのが居ても不思議はないしな」
呟きながら鉄棒を両手で握り、
ぐいっと引き倒す様にして地面から引きずり出す。
棒の様に見えたそれは、実は棒ではなく……
地面に突き刺さっていたその部分。
平たく、頑丈で。そして大きな刃を露にしたその姿は、
大振りな作業用のシャベルであった。
■山吹 冠木 > 手慣れた動きでスコップを振りかぶると、
勢いよく刃を地面に突き立てる。
柔らかな土を掘り返すと、再び地面に突き立て、掘り起こす。
ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ
乱雑な様で、しかしその動きは丁寧で……
地面に埋められた 何か を、慎重に掘り出していく
■山吹 冠木 > 「……ん」
やがて……刃を伝わる手応えに、微かな違和感が混じる。
直ぐさまシャベルを草土に突き立てると、
土に汚れるのも構わずその場にかがみこみ、
両手を使って地面を掘り返しはじめた。
■山吹 冠木 > 両手から肘、膝まで土にまみれながら、
黙々と地面を掘り返すことしばし…………
「あったあった」
やがて、その手は細長いワイヤーの様な物を掴み上げていた。
軽く手で土を払えば、傍らに転がされた
懐中電灯の光を受けて鈍い輝きを返す。
恐らくは一月ほども地面に埋められていながら
全く錆び付いていないようで……
軽く両手で引っ張れば、確かな手応えでその強度を伝えてくる。
■山吹 冠木 > そのままワイヤーをずるずると引っ張れば。
鈍い輝きがどんどん地面から引きずり出されていく。
「……これだけあれば、十分だな」
地面からその終端が引き出された時、
その長さはワイヤーが周囲にとぐろを巻くほどになっており……
見ようによっては、まるで大蛇が地面から姿を現した様にも見えるだろうか。
■山吹 冠木 > 「さて……長居は無用だ。早く帰って、風呂にでも入ろう」
疲れた様に肩を回すと再びシャベルを構え、
掘り返した穴を手早く埋め直していく。
ある程度軽く……恐らくは、再び掘り返すことを考えて
地面を埋め直すと、目印となるシャベルを、
しっかりとその場に突き立てた。
■山吹 冠木 > 「よいしょ……っと!」
土を払い、輪っか状に纏めたワイヤーを肩に担ぐ。
長さゆえか、結構な重量があるようで……
担ぎ上げた体が僅かに傾ぎ、踏ん張る様にしてその場に留まる。
■山吹 冠木 > 「…………」
ワイヤーを担いでから、懐中電灯を片手に念入りに辺りを見回す。
物事は、終わる直前、気が緩んだ瞬間が一番危ない。
もしもこんな状態で襲われでもしたら堪ったものではないからだ。
その場合は、掘り出した代物も置いていかなければならないだろう。
■山吹 冠木 > 「……大丈夫だな」
安心した様に息を1つ。
そのまま静かに、しかし足早にその場を後にした。
ご案内:「青垣山」から山吹 冠木さんが去りました。