2015/06/21 のログ
ご案内:「青垣山」に岡部 吹雪さんが現れました。
ご案内:「青垣山」に桜井 雄二さんが現れました。
桜井 雄二 > (青垣山を登りながら険しい表情で男は歩いている)
(黒蟻の亜人である敵対的怪異、蟻人がこの山に野営地を作っているという報告を受けたからだ)
……やはり、蟻人には明確にゲートを作る能力があって。
計画的にこちらの世界に侵攻しているんだ。
クソッ……なんて奴らだ…(憎々しげに呟いて)

岡部 吹雪 > 獣道を巡回する蟻人の斥候。
がさりと物音に気付けば穂先を頼りに奥へと入る……が。
「悪いな。」
木々の上から遅れて間の抜けた空気音。
サプレッサーに声を押し殺された銃弾が、ここぞとばかりに蟻人の後頭部を抉る。

近隣への影響なし。
今はこの辺境には彼らが二人のみである。

「これでえー……っと。」
「三匹目ぐらいか?」
「こうも露骨に侵略者面されると、俺たちとしても勘弁ならねえモンがあるな。」

桜井 雄二 > ……良い腕前です、岡部先生。
これも仕事なんでな。(血の臭いが出ないように死体を氷漬けにし)

ここは俺たちの島です。そして蟻人には自分たちの世界がある。
……こっちに来ても死ぬだけだということを、先遣隊の命を代償に知ってもらわないと。

(草木を僅かな音だけ残して掻き分けて進んでいく)
(その時、獣皮か布かはわからないが、とにかく異世界の何かで作られたテントが複数ある場所に辿り着く)

岡部先生、プランはありますか?
俺から出せるプランは『奇襲して皆殺し』です。
(小声で囁いた、まだ相手は桜井、岡部という二人だけの敵に気付いてはいない)

岡部 吹雪 > 「我が教え子ながら随分と過激派なこって……。」

普段の桜井を見る者ならば驚くだろうか。
彼はこと異界の侵略者に対しては並々ならぬ憤りを感じていた。
岡部の目にも異常である。

「そうさな。こいつ貸してやるから、風上に行ってきな。」
「合図は特になくていい。見りゃわかる。」

取り出したのは銀メッキの小洒落た瓶。
表記は共通語ではなく、何かしらの魔術刻印に似通った文字列である。
中にたっぷり満たされるのは、ガソリンのような可燃性の液体だ。
ただしデスソースめいて、一滴垂らすだけで大惨事を引き起こすほどの効果がある。

「昨日ちょっとヤボ用でさ。」
「秋尾と見つけてきた掘り出しモンだ。」
「ガラクタだろうがタンクに注げば、一瞬にして唸りを上げて火を噴くぜ。」
「……まあ、用途は違うが効果はお墨付きだ。」
「俺は頭を抑える。」


小瓶を放り投げて背を向けた。

「それじゃ、頼んだぜ。」

桜井 雄二 > ……すいません。でも、俺は。
(言い訳めいた言葉を口にした時に瓶を取り出す岡部)
これは……(ただの瓶、なのに目が離せない不思議な危険性を感じる)

秋尾先生と? なるほど……それは効果がありそうです。
では風上にいってきます、着火と消火は任せてください。
(獰猛な笑みすら浮かべて、小瓶を受け取る)
(ずっしりとした重量感が、何故か安心感を齎した)

(風上に移動すると、蟻人たちの野営地の中心に向けて小瓶の口を開き、投擲した)

(蟻人たちがそれに気付き、桜井のほうを見るがもう遅い)

(桜井が右手の指をパチンと弾くと、火花と共に熱量が小瓶に向けて放たれ)
(大爆発を起こした)

(ほぼ、壊滅状態に陥る野営地に桜井は突っ込んでいく)
(右手に炎の剣を、左手に氷の刃を作って)
(逃げ惑う蟻人を一匹、また一匹と殺害していく)
(爆発の残り火に身を晒そうと、構わずに)

岡部 吹雪 > その有様は劇的で、陰惨で、名画のような鮮やかさ。
赤と青のコントラストが空を舞い、瞬く間に一切を飲み込んでいった。
だがそれでもと、足掻き這い出た者達がいた。
彼らを出迎えたのは、迎えの手ではなかったが。

「あばよ。」

残り火に呻く蟻人を一刀の元斬り伏せ、続く二匹も同様の末路。
岡部の太刀筋に足踏みする残存兵も、後方から飛び出してきた桜井の手で消し炭となった。

「思ったよりも早く片付きそうだな。」

立ち昇る焔は煌々と、天を焼かんばかりに燃え盛る。

桜井 雄二 > (残った敵の大半を切り捨てると、空を仰いだ)
(炎に灼かれる青空、血と燎原の火が齎す臭い)

………!(その時、爆発の衝撃で腕が半分以上拉げた蟻人が一匹、姿を見せる)
(片腕で金属製の剣を持っている、こいつが残った最後の蟻人)
死ね……!(氷の刃で相手の剣を持っている腕を切り落す)
死ね! 死ね!!(炎の刃で切りつけ、相手が炎上する)
死ねぇ!!!
(右足で相手の腹部にミドルキックを当てると、最期に蟻人が呻き声を上げて)
(次の瞬間、右足から噴き上がる爆発的炎が蟻人を焼けた肉片に変えた)

はぁ………はぁ………はぁ……
(争いと憎しみに心を歪めた男が、肩で息をした)
岡部先生、無事ですか……?

岡部 吹雪 > 「問題ねえよ、これぐらい。」

くるりと手首で愛刀を回し、返答する。

「ま、だいぶ楽させてもらったからな。」
「それよりもお前の方が危ういっつーの。」

煤けた居住区の中に歩を進めつつ、桜井へと言葉だけを向ける。

「知ってるか?」
「大酒喰らったあとには吐くだけ吐くのが楽なんだけどよ。」
「あんまりやり過ぎると、自分の胃液で喉やっちまうんだよ。」
「程ほどにしねーと、声も出なくなっちまう。」

切っ先で資材の山を掻き分けるも、収穫らしき収穫は無し。
恐らくまだ土台作りの最中だったのだろう。
高位の蟻人もおらず、故に瓦解も早かった。

「何飲んだらそうなるんだね。ええ?」

桜井 雄二 > そう、ですか………(険しい顔つきはいつもの無表情に戻っている)
危うい………? 俺が?
(蟻人たちの死体の中を岡部に向けて歩を進める)

………酒を飲んだことがないので、わかりません…
でも、岡部先生が言いたいことは、わかります。

(ふぅ、とため息をついて)
岡部先生は何かを、誰かを憎んだことはありますか?
俺は……あります。俺が子供の頃に、本州で突発的に蟻人が出現したことがあって。
……俺は、その頃から炎熱系の能力者として才知に溢れていた兄に助けられて。
そして俺を庇って逃げ遅れた兄が、蟻人に殺されたんです。
(その声は憎悪に染まっている)
……兄を一番最初に見つけたのは、俺でした。
どう見ても、激しい拷問を受けた痕がありました。
あいつらは、蟻人は兄の命を使って遊んだんだ。
あの……あの!(吐き出すように言葉を紡ぐ)
あの絶望と恐怖に歪んだ兄の表情が…………忘れられないんです…
俺に言うんですよ、蟻人を殺せって………!
(蟻人への憎悪、ただそれだけに憑かれた男の言葉)

岡部 吹雪 > 成程、と。こんな雑多な世の中だ。
それぐらいあるさと岡部の視線は冷ややかなもの。
安い同情も、慰めの言葉もそこにはない。
それを求められるならば、こなすだけの器用さは持ち合わせている。
だが生憎と、目の前の青年にはそういったものは感じられなかった。

「俺は反戦論者じゃねえし」
「『復讐なんてバカバカしい!』」
「『無駄な時間を過ごす前に今を生きたまえ!』」
「そんなくだらねーコト言うつもりもねえ。」

乱雑に頭を掻きながら、倒れた資材ケースの上に陣取った。

「一つ教えといてやる。」
「茹った頭じゃ、数はこなせねーよ。」
「そんなんじゃ、兄貴との再会も近いだろうさ。」

桜井 雄二 > ……そうですね、俺も復讐を止めてもらうために言ったんじゃないです。
(氷を掌に作って額を冷やした、冷たい感触が心地いい)
……数を、こなす…(そうだ、自分は死ねない)
(蟻人が人間の世界への侵攻を諦めるまで)
(自分は蟻人を殺し続けなければならないのだから)
……ありがとうございます、岡部先生。
(それだけを言って、深くため息をついた)

……先生の話も何か聞かせてくださいよ。
結構、長いこと二人で話してるんですから。
(肩を竦めて苦笑して)ロケーションは最悪ですが。

岡部 吹雪 > 「俺の言葉に乗ってこねえってンなら、十分だ。」
「最短距離で首元かっ切るには、頭ン中に色付けてちゃ駄目だからよ。」
「考えるなってワケじゃねえけどな。」

踵で資材ケースを鳴らす。
がつりがつりと響かせて、岡部は笑った。

「俺の話つっても、鉄板ネタはだいたい話したぜ?」
「しかもお前、この前なんか目の前でフラレる様まで見てたろ!」
「あれ以上の笑い話を用意しろってのも、ハードル高過ぎねえ?」

「あとはそうさなァ……。」
「……腹が立つことなんてーのは毎日山ほどあるけどよ。」
「それで誰かを殺したいだなんてとてもとても。」
「昔はあったのかもしれねーけど、実際してみりゃ軽々しくは思えねーよ。」

「今じゃあるのは結果だけだな。色々あって結果、殺しちまう。」
「コイツは殺すしかねえってことも多々あったけど、そういうのは天秤に架けた結果でしかなし。」
「昔からこんな生き方してても、そんなもんだよ。」

「何も思わないワケねーし、俺だって人間だからよ。」
「本当に何も思わねーなんて奴は、もう人間辞めてるか最初から別の倫理観で生きてるってトコだな。」
「辻斬り楽しんでる犯罪者共とかそうだろ。」
「俺には何考えてンのかわかんねーしな。」
「あいつらの暴力には覚悟がねえ。だから俺は何の共感もできねえ。」
「俺からしたら人間とは思えねーな。」


「その点、お前はまだ人間だよ。」

桜井 雄二 > 頭の中を冷静に保ったまま、相手の懐に飛び込まなきゃいけない。
その中でヤケになったり、死ぬ覚悟なんて持ったりしてはいけないんだ。
……俺、まだ三千歳泪とデートしたり、安室冥路に笑顔を教わったりしたいですから。

(無表情に顎に指先を当てて)
笑い話をしろと言ったわけではないのですが。
フった女性も覚悟と腰の入ったビンタをしていたので、確かに面白かったです。

(岡部の言葉は、円熟した大人のそれのように思えた)
(今までどんな生き方をしてきたのだろう?)
(きっと彼は生徒にそれを軽々しく語ったりしない)
(彼に対する尊敬の念が、また一つ積み重なった)

……結果、ですか。仕事の結果、行動の結果殺してしまうと。
辻斬り……最近、街を騒がせている…
そう、なんでしょう。意思の欠如した暴力を振るっているうちに、心が鈍化してしまう。
感じる心を捨てたら、人間はおしまいだ。
(そこまで言った後に目の間を擦って)
……さっきまで蟻人への憎悪を語った口で、言えた義理じゃないですね。すいません。

(最後の岡部の言葉に、胸がいっぱいになった)
(蟻人との戦いの間で少しずつ捨ててきた人間らしさ)
(それでも恩師にまだ人間だと言ってもらえることが、嬉しかった)
(一度、深く頭を下げて)

……帰りましょう、岡部先生。
(顔を上げた男の表情は、どこか晴れやかで)
後始末は怪異対策室二課に任せます。
それでいいんだ……今は、それで。

岡部 吹雪 > 「あいよ。」
「まあ……あんまに気負い過ぎンなってこったな。」
「熟慮は潜水と同じだ。水面に戻ってこなきゃ溺れちまうよ。」

資材ケースから降りて帰路へと向かう。
戦力を削ぐことはできたが、敵の全貌が伺えない以上、どれほどの効力があったのかは定かではない。
加速度的に増加している異邦人犯罪は留まる事を知らない。
彼らの行いは正しいものなのか。
それを保障してくれるような神は、生憎とこの世界へは来訪していない。

ご案内:「青垣山」から岡部 吹雪さんが去りました。
ご案内:「青垣山」から桜井 雄二さんが去りました。