2015/06/30 のログ
ご案内:「青垣山」にナナさんが現れました。
■ナナ > ちょっと前に挫折した登山をもう一度やり直してみる。
今度は前よりも慎重に。
杖で足元を叩き、障害物がないことを確認してから一歩踏み出す。
こんなことの繰り返し。当然ながら歩みは遅い。
頭には麦藁帽子。つばの広いそれは顔を隠し、
その下にある包帯の巻かれた目を見えないようにしている。
背中にはリュックサック。
中身にはサンドイッチと紅茶。
今日はミルクも持ってきている。
こんこん、とんとん。
地面を叩いて、ただただ登る。
■ナナ > 一応、リュックの中には魔法書も入っている。
家の本棚から別の本を取り出す、転送用の魔法書だ。
もし山登りに挫折したら、感覚増幅の魔法書を持ち出して
杖を使わずに帰る。
常用するには少々魔力的にきついが、たまに使う程度なら問題ない。
転移の魔法書でもいいけれど、もうすこしこのあたりの様子を知りたかった。
ならば最初から調査用の魔法書を持ち出せばいいのだが、
それはそれで面白くない気がした。
それに、魔法書に頼るのもあんまり好きではない。
せっかく外に出るなら、ピクニックみたいなことがしたい。
辺境に住みながらも、少女は案外たくましく人生を謳歌していた。
■ナナ > 「お、っと……」
危なかった。杖がちょうど石に当たって滑った。
ちょっとバランスを崩したが問題ない。
こんこんと石を叩いて大きさを確かめる。
踏んだら転んでいたサイズだろう。
周囲を杖で探って軽く調べる。
石がたくさんあるわけではない。
注意すればこのあたりもちゃんと登れるだろう。
ひとつ深呼吸すると、再び登り始める。
こんこん、とんとん。
地面を叩きながら、ただただ上へ。
■ナナ > 目をふさいでいて、ほんの少し便利だと思ったことといえば、
辺りが暗くても明るくても関係ないと思えるようになったことだろう。
こんな夜更けに登山をしている姿を見た人は何を思うのだろうか。
そういえば、この間あった先生もびっくりしていたのだろうか。
いや、それは私が転がり落ちてきたからだろうか。
勝手に思い出して、口の端に笑みが浮かぶ。
おかしなことを平常で行うというのは、思っていたより愉快なのかもしれない。
いや、朝起きられないのは不便かもしれない。
全体としてはマイナスが大きいのだろうか。
とりとめなく考えながら少女は山を登り続ける。
目を覆い隠す包帯のおかげで、頂上までの距離はわからない。
まあ、小さな島にある山の一つ。その高さなんてたかが知れている。
のんびりと、歩を進めていく。
■ナナ > くるくる くるくる 思考が回る。
多幸感。
陶酔感。
夜風に当たって、理由もなく気持ちが高揚する。
こつりこつりと地面を叩いてただただ登る。
この山のてっぺんがなければいいのに。
ふと、そう思った。
いつまでもこうして登り続けていたい。
この山に終わりがなければいい。
ずっとこのまま上へ上へと向かって行きたい。
■ナナ > くるり くるりとステップを踏む。
おかしくなってどこかに突き抜けたテンションに任せて。
山の斜面で踊ってみる。
「あは―――」
知らないうちに口の端から笑い声が毀れる。
とん、とんとリズムを取って。
くるり、くるりとターンする。
杖を振り上げて、一回転。
狂ったように、くるくる、狂々。
■ナナ > で。
思考は特に理由もなく唐突に冷える。
ここは斜面。
石もある。
前は転んだ。
普通に歩いていただけで。
今の私は踊っている。
杖も地面についていない。
となれば。
ご案内:「青垣山」にエイフワズさんが現れました。
■ナナ > 「ひきゃんっ!?」
まあ、当然の帰結である。
数秒前に冷静になった瞬間から「あ、これは転ぶな。」と。
分かってはいたのだけれども。
生憎とテンションに任せて踊りだした足は止まらなくて。
見事に丸っこい石を踏みつけて見事転倒。
今度は理性で杖を握り締めていたものの、
痛いものは痛いのである。
■エイフワズ > 「おてんばお嬢様はどうしてこうも足元を見ないのか?」
(見知った顔があった。見ていれば山の斜面でクライマーズハイにかかって踊っている。斜面で転倒はしゃれにならぬとかけつけんとしたが、転んだだけで済んだようだった。
ばさばさと羽音をわざと出して己をアピールしながら接近。
少女の足元へと降り立つと嘴で軽く素肌をくすぐってみよう)
「大丈夫かね。てっきり転ぶのが趣味なのかと思ったが、そら痛い目をみたな」
(きっと出血しているだろう。打撲か。傷口があればそこに視線を注ぎつつ)
■ナナ > 「あ……えーと、カラスさん?」
大きな羽音に聞き覚えのある声。あわてて立ち上がると、
砂埃のついたスカートを払う。
多少の打撲と切り傷が見えるものの、たいした怪我ではない。
手ごろな場所を見つけて座ると、
リュックを開いて救急箱を取り出し、慣れた手つきで消毒を始めた。
■エイフワズ > 「うむ。エイフワズだ。カラスさんと呼ぶよりエイフワズと呼びたまえ。人間さんと呼ばれてもいまいちしっくりこないだろう」
(カラスの体から発せられるはバリトンの聞いた男性の低音。違和感しかないのだろうが視界を使わない少女には普通に聞こえているだろう。
治療に手を貸そうにも使えそうな手が無い。じっと見守っている)
「しかし暗いというのに山登りとは関心せん。狼に食べられてもしらないぞ」
■ナナ > 「あはは……エイフワズさん、ですね。」
相手が鳥だとは分かっているのだが、やはり視界がふさがれていると
思ったほど違和感は感じないようだ。
まだちょっとあがったテンションが尾を引いてほんの少し笑みが浮かぶ。
「狼ですか、それはよくないですねー……あんまり美味しくないですから。
私は狼だって食べてしまいますよ?」
半分冗談、半分本気。
森暮らしなら動物を狩って食べたりもするのである。
本当はウサギが美味しいのだけれど、夜兎病は怖いし、
何よりかわいいので手を出したくない。
一応狼も食べたことはあるのだが、あんまり好みの味ではなかった。
■エイフワズ > 「それはそれは。狼を食べたのか。やつら肉付きがよろしくない。
娘が別の狼さんに食べられないことを祈ろう」
(真顔で――人間的な表情は無い。カラスなので――そんなことを言うと、どう狩りをしているのだろうと疑問符を浮かべた。
己の知らぬ手段で狩っているのだろうが見当もつかなかった。冗談なのか本気かわからない。
地面をぴょんぴょん二本の足ではねると、山の頂上の方角へと体を向ける。翼を広げて羽ばたき風を起こしながら)
「目指す先は頂上か? ならば行こう。
そこに山があるから登るのだろう」
(カラスだから飛べばよいだろう。あえて歩きで同行しようと)
■ナナ > 「行きましょ行きましょ。せっかくここまで登りましたからね。」
にこっと笑って立ち上がり、ひとつ伸びをする。
打撲の後には湿布を貼り付けて、
小さな切り傷には絆創膏を貼り付けて。
またテンションに任せて足を踏み出しそうになったが
すんでのところで気がついて、とんとんと杖で進む道を探る。
■エイフワズ > (進めや進め 乙女とカラス。
乙女は二本足で。カラスは三本足でひたすら登っていく。
健脚な少女は疲れもみせず登れるだろうが、カラスは若干疲れを見せている。木々の間を飛び交うならまだしも大地を歩くのも得意とは限らない)
「そうらこっちだぞ」
(頂上へ続く道を案内するべく声をあげる。手を叩けないから翼をはためかせて。
頂上はやがて見えてくるだろうが先に着く栄誉は少女に譲るだろうか)
■ナナ > 「……はふ。」
頂上にたどり着いて、満足げにため息ひとつ。
気分的には、大声で叫んでみたいくらいだったが
この時間だ。いくら山の上といっても自重することにした。
「おつかれさま、でしたっ。エイフワズさんも。」
代わりといっては何だが、大きなカラスに笑顔を向けて。
そのままぐーっと伸びをした。
■エイフワズ > 「おつかれさん」
(少女の真似をしてか、翼の上に足を這わせて一本足の姿勢をとる。鳥を飼った事のある人間には見覚えのある『伸び』の姿勢だった。
笑顔に返そうにも笑顔を作れる筋肉が無いので、かわりに言葉で返しておくことにした。
人気の無い山頂はがらんどうで空の群青とも漆黒ともつかぬ広大さをいっそう際立たせていた。さなかにあるカラスはもはや闇の一旦のように見えるだろう。見えていない少女には意味の無いことだったが)
「走破したな。実に素晴らしい。久々に足を使って山登りなどしたわけだが……どれ一休みしないかね」
(山頂の丁度よさげな平たい岩へと飛び移る。ここだと言わんばかりに羽を鳴らして)
■ナナ > 「そうですね。あ、私サンドイッチ持ってきてますよ。」
いそいそとリュックサックを開くと、
中からバスケットに入ったサンドイッチを取り出す。
レタスとチーズとマヨネーズ。
シンプルな中身だ。
■エイフワズ > 「……ベジタリアン万歳」
(残念。肉が無かった。
空虚な感想を漏らすと一切れを嘴で掴んで遠慮なく頂く。間食するとふーむと喉を鳴らして目をぱちぱちさせた)
「おいしい。やるじゃないか」
(遠まわしな言い方を好むカラスにしては素直な感想を漏らす)
■ナナ > 「あはは……干し肉でよければお肉もあるんですけどね。」
と、狼の干し肉をバスケットの隅っこから引っ張り出す。
ちょっとしょっぱいがまずくはない。
もちろん、市販の肉類とは雲泥の差だが。
おいしいと聞けば、素直に嬉しそうな様子を見せて
自分もサンドイッチにかぶりついた。
「あ、紅茶はお好きですか?」
水筒に入った紅茶を差し出して聞いてみる。
カラスに紅茶を上げてもいいのかはよく知らないが、
なんとなくエイフワズさんならいけるのでは、という謎の信頼感があった。
■エイフワズ > (干し肉。ようは天日干しにして水分を抜くことで長期保存可能にした肉のことだ。つまりまずいのだ。燻製にしたり手を加えねば。
カラスは嘴を上下に振ってみせた)
「いや遠慮しとくよ。狼たちの肉は宗教上口にしないことにしているのだ」
(嘘か真かそんなことを言ってのける。
差し出されたのは紅茶だった。湯気を立ててほのかに香る甘酸っぱさと古臭さを内包したやさしさ。
それをじっと宝石のように輝く瞳で見つめる)
「私はコーヒー派なのだがね。いただこうか」
(コーヒーを飲めるらしい。
嘴を容器に突っ込んで一口二口)
■ナナ > 「そうですか?」
躊躇いなく干し肉を噛み千切る。
これを自分で狩って作ったというのだから、
お世辞にも年頃の乙女の行動だとは思えない。
料理=女子力ではないのだ。
むしろ、女死力と書いたほうが似合うかもしれない。
もっとも、幸せそうに食べ物をほおばるその姿は紛れもなく女の子である。
どこで何をどう間違えたらこうなるのだろうか。
「コーヒー、ですか。結構人気なんですかね?」
ふと、この前であった先生のことを思い出す。
あの先生もコーヒーが好きだった、はずだ。
■エイフワズ > 「文明社会から隔絶した野生の私だが君に言うべきなのだろうな。
ワイルドすぎないか?」
(干し肉を噛み切って貪る姿はまさに野生だった。
どのような人生を送ってきたのかはわからなかったが、野生よりよっぽど野生していないだろうかと思っていた。
干し肉がケーキやクッキーの類で、ここがカフェテラスだったらよかったものを。
紅茶を飲んで嘴をカチカチと鳴らす。人間とは口の作りが違うゆえに、人間用の容器では飲むのに苦労するのだ。
紅茶の味は並だった。)
「苦さがたまらんね。苦くて飲めぬ人間も多いようだが私は好きだぞ。朝食の一杯は常にかかさなかったものだ」
(カラスらしからぬ経験談を語っておいてから紅茶をまた一口。
一拍置いて、首を傾げる)
「これが間接キスというものなのかね。カラスにキスの概念は無いがね」
■ナナ > 「人間は慣れる生き物ですよ?」
さも当たり前のようにとんでもないことを言ってのける。
まあ、慣れだけで目隠し生活をやってのけている彼女だから
言えることなのだろうが、どちらにせよ異常であることに変わりはない。
「……エイフワズさんって、もともと人間だったりします?」
コーヒーを朝食に欠かさずカラスなんて聞いたことがない。
と、いうことから推測を立ててちらっと聞いてみる。
そもそも、カラスって決まった時間にご飯食べるのかな、と
微妙にどうでもいい疑問を抱きながら。
「嘴って、キスに入るんでしょうか?」
冗談めかして返してみたものの、割と真面目に気になってきた。
キス=唇+唇 というイメージがあったのだが、実際どうなのだろう。
猫とか犬とかと口を合わせてもキスになるのだろうか。
■エイフワズ > 「さあ、かもしれん……そうしていたのかもなあ」
(カラスは遠い目になって以降の答えを口にすることは無いだろう。
ワイルドライフを満喫?している少女を尻目に、岩の上でふわーわと嘴を広げて欠伸をする。
間接キス。もしカラスに適用されるのであれば、紅茶を飲んだとたんに間接キス確定であろう。
カラスはけっけっけと喉を鳴らして笑い声をたてた)
「獣人やらロボットやら亡霊やらが徘徊する島だぞ。嘴と唇でもキス扱いされてもおかしくはないと思うが?
もっとも間接キスという概念自体マニアックだ。気にせずのみたまえ。今を逃すと味が悪くなる」
(片羽根で胸を押さえ会釈するそぶり。体の構造的にかなり無茶なポーズだったのか、痛そうに首を傾げる)
■ナナ > 「まあ別にいいですよね。キスなんてしても減るものじゃないですし。」
特に気にした風もなく紅茶を飲む。
干し肉をかじっていたときと違って、今度はちゃんと女の子している。
「そうですね……幽霊さんはともかくロボットさんはキスするんですかね?
あ、でも見た目人間はアンドロイドさんもいますよね……。」
どうでもいいことをちょっとだけ真面目に考えてみる。
まださっきのテンションが抜けきっていないのかも、と
自分の中のどこか冷静な部分が分析していた。
■エイフワズ > 「減りはせんだろうな。価値が下がる。
市場というものは量産された多数のものに価値を感じず、
価格を下げてしまうものなのだ」
(干し肉をぱくつく姿は狼よりも狼らしい。僻地で一人開拓生活などしているのだから狼少女なるあだ名をつけられてもおかしくないだろう。
平素よりも少女は饒舌だった。
アドレナリンの恩恵なのか。
カラスは少女の傍にやってくると卵でも温めるような姿勢になった)
「アンドロイドはキスの夢をみるか? 答えはイエスだ。
現物を見たことはないがね。したいか問えばイエスというのではないか」
(たぶんな、と付け加える。)
■ナナ > 「減ってもいいですけどね。欲しがる人もいませんし?」
サンドイッチをほお張り、干し肉を齧って紅茶を飲む。
少女は、会話を続けながら簡素な食事を満喫している。
キスの話題になっても動じない辺り、まだ恋愛のことはよく分かっていないのかもしれない。
「異世界の人とか人じゃなかったりとか。案外皆変わらないですよね。
危害さえ加えなければ、誰でも仲良くできるんですよね……。」
ほんの少し、自嘲気味に笑うと紅茶を一気飲みしてため息。
中身の減ったバスケットをリュックにしまいなおした。
■エイフワズ > (干し肉をワイルドに食らっている点と目隠しを除けばごく普通の少女だった。除こうに除けないのだから普通になれないのだろう。
紅茶と干し肉とサンドイッチによる簡単な食事が終わった。
荷物をまとめ始める少女を前にカラスは腰を――腰というより足を――を上げて、大きく伸びをした)
「ある意味ではこの島は異常だぞ。危害を加えなければという点において、腕が多かろうが目が少なかろうが差別せずに受け入れている。
少女――フムン。ナナも目さえ隠せれば危害を加えることにはならんのだろう。」
(ちらりと目を一瞥する。異能。バロルの魔眼に分類される一際危険な能力。)
「現に普通に会話できているのだ。自信を持ちたまえ。
ヒトではなくカラスだが」
■ナナ > 「……ありがとうございます。エイフワズさん。」
ほんのちょっと力なく笑うと、その羽をなでる。
彼女も、分かっているのだ。
異能との付き合い方さえ分かっていれば、危害を加えずとも済む。
それでもなお人に近づいていけないのは、ただ自分の心の問題なのだと。
■エイフワズ > 「おお。くすぐったいぞ………ぉぉぉ」
(羽根を撫でられてむずかゆいのか奇妙な唸り声をあげている。喉が鳴っている。音にすればクルル……グゥーという泣き声だった。
敵はいつだって自分自身だし、環境だって悲観するも楽観するも受け入れるも拒絶するも自分自身次第だ。
カラスは少し助言をしただけ。どう変わるかは本人次第であろう)
■ナナ > 「……ん、今日はそろそろ戻りましょうか。」
大きく伸びをして立ち上がる。
いろいろ見回って帰ろうかと思っていたが、
充実した時間をすごせたので今日はそれでよし、ということにする。
リュックから転送の魔法書を取り出し、
さらにそれを起動して転移の魔法書を呼び寄せる。
■エイフワズ > 「そうだな。魔術か、魔法か。私には翼があるから必要ない」
(転移が始まるよりも先にカラスは翼をはためかせて空へと上昇していくだろう。まるで羽ペンに使われるような立派な羽根を一枚だけ残して。
しばらく上昇していくと少女の頭の上で円を描いて回り始める。)
「また今度会おう。明日には明日の風が吹いている!」
(一際高くカラスの声で鳴くと、上昇気流に捕まって空の彼方へと姿を消していくだろう)
■ナナ > 「今日はありがとうございました!また会いましょー!」
去っていくその姿に向かって叫ぶと、魔法書を起動。
足元に魔方陣が現れて、光が辺りを包む。
光が消えるぎりぎりまで、飛んでいくカラスに手を振り続けた。
その光が消え去れば少女の姿はすでにそこにはなかった。
ご案内:「青垣山」からナナさんが去りました。
ご案内:「青垣山」からエイフワズさんが去りました。