2015/07/06 のログ
ご案内:「青垣山」に久藤 嵯督さんが現れました。
■久藤 嵯督 > 山に入った途端、奇妙な気配の残り香が見えたような気がした。
特に気にしないことにする。
ここへやって来たのも、糸の訓練が目的。
ビルの群れに罠を張るよりもずっと難易度は高い。
複雑な分、糸の応用法が多岐になるので練習にはもってこいだ。
早速左手の糸を五本指の分だけ展開し、周囲に大量の罠を展開する。
みだりに野生生物を殺めるのは望む所ではないので、主に『網』の罠を張る。
第一装備ほどの量は持ってこれなったので、
作れる数には限りがある。その辺りの事にも留意しなければならないだろう。
■久藤 嵯督 > 左手で罠を展開しつつ、右手の糸で『蜘蛛の巣』を作り、その上を跳ねて回る。
糸から糸へと飛び移り、時に静止、ぶら下がり、巣の解除。
基本的な用法についてはこんなものでいいだろう。
糸の展開をする際、気を付けていなければすぐに音が立ってしまう。
勘の効く相手に対しては複雑なものを使うより、シンプルな仕組みのものを作った方がいい。
■久藤 嵯督 > 次に、もう少し複雑な技。
展開された糸を、無造作に殴りつける。
すると自身の背後から小さな杭が飛来してくる。拳の9割の威力を持った、その杭が。
自分自身で計算した軌道なので、受け止めることも容易い。
杭は二本指であっさりと受け止められる。
この場においても、力の伝導も問題なく行えるようだ。
何処で使おうにも1割のロスは出てきてしまうが、こればっかりは仕方の無い事として割り切るしかない。
■久藤 嵯督 > これらの技を早回しで展開。
キリ……キリ……と、どうしても音が立ってしまう。
これはひとえに、自分の修練不足だ。
訓練次第で改善出来る余地はあるが、師も持たずに培ってきた技術であるが故に、少しばかり限界を感じ始めている。
どうしても無音で展開できないものか。
工夫に工夫を重ねても、どこかで頭打ちを喰らう。
誰にも真似が出来ない技術を伸ばすには、孤独な自主鍛錬しかない。
嵯督はずっと、たった一人でソウゾウを繰り返す。
■久藤 嵯督 > (まだまだやれるハズだ……俺ならもっとやれるハズだ…!)
優秀な力を持って作られたのは、ひとえに大事を成す為だ。
何の為に生まれたかなんて、それ以外に何がある?
力を持って生まれてきたのなら、その力を十全に発揮できる場所で生きなくてどうしろと言うのだ。
これだけの力を持って生まれた意味は? 人と違った生を受けたワケは?
―――そもそも久藤嵯督という存在は、この世界に必要とされているのか?
■久藤 嵯督 > 無意味に生まれて来るぐらいなら、最初から生まれてこなければいい。
この世に生を受けたからには、何かしらの存在理由が必要なのだ。
久藤嵯督には、未だ己の存在理由が見えていない。
『……久藤、やっぱりお前は生きちゃいない。』
お節介なクラスメイトの言葉が、フラッシュバックした。
■久藤 嵯督 > 段々と、技の乱れが顕著になってきた。
これ以上続けていると、技に変なクセがついてしまう。
一度ついたクセは直すのに相当な手間と時間が掛かるので、
これ以上続けることはかえって非効率的なのだ。
張った罠を全て片付けると、名前を失いかけた男は風紀委員の屯所へと戻っていくのであった。
ご案内:「青垣山」から久藤 嵯督さんが去りました。
ご案内:「青垣山」に久藤 嵯督さんが現れました。
■久藤 嵯督 > 山の中に見つけた川原にて、嵯督はパトロールの時間を使って自主鍛錬を行っていた。
人間の本能だか何かは知らないが、ここでこうして鍛えていると心が落ち着くのだ。
一度全身から装備を外して、上半身をシャツ一枚にする。
正拳突きを幾度か繰り返した後、遺伝子に刻まれた型を繰り返す。
生き物は誰に教えてもらうまでもなく知っている何かがあるとは聞くが、これもその一つなのだろう。
■久藤 嵯督 > 中肉中背の上っ面に隠された、無形の肉体。
そこから放たれる拳脚は、明らかに見た目以上の疾さと力強さを併せ持っている。
反復すること数十回、息を整えて型を終える。
■久藤 嵯督 > 「……ふっ、ふっ………」
次に仮想の敵を想定し、その相手の攻撃を避けたり攻撃を繰り出したりする。
今までに戦った強者達の記憶を思い起こし、それらの取り得る行動を全て想定。
不確定要素をいくつか残しつつ、出来上がった影と戦い始めた。
■久藤 嵯督 > 「……ハッ、セイヤッッ!」
戦う相手がいない時はもっぱらこの『影』と戦っているのだが、これが大抵嵯督よりも強くて……
「っ……!」
先に一撃を喰らうのは、いつも嵯督の方。
まるで生きているかのように動く幻想の拳が、嵯督の腹を確かに捉える。
常に自分よりも強い相手を創造する。それが、彼の行うシャドーだった。
■久藤 嵯督 > 「………また、か」
それがたまに自分によく似た男の姿を取ることがあるのだから、精神異常を疑いたくなる。
今日もまた勝てなかったまま、いるはずの無い訓練相手に一礼する。
用が済んだら影を消して、休憩がてらに水分補給を行う。
幸い、ここの水はとても綺麗だ。
両手で水を掬い上げると、それを口の中に運ぶ。
■久藤 嵯督 > 冷たい水が、喉を通っていく。
火照った身体が冷やされて、一抹の心地よさを覚える。
いくら気候が暑いものであっても、川の水は変わらず冷たく在り続けているのだ。
「……これは、これで……うむ」
基本的には辛い物を好むが、味以外の面に関してなら、この川の水は実に機能的と言える。
ミネラル成分も多く含まれていることが舌触りから理解出来るし、しつこい後味も感じない。
■久藤 嵯督 > 水を飲み終えると、少し離れた所に置いてある上着と荷物のもとへと歩く。
ショルダーバッグからタオルを取り出して、今も流れる汗を拭き取りに行くのだ。
「……申し訳程度には、見回らねばならんか」
そう、もともとこの時間はパトロールのためにあるものなのだ。
だから、何もなくとも最低限の仕事はしておかなければならない。
ここはいい場所だが、仕事もあるので長くはいられない。
夏休みに入って休暇が貰えたら、ここまで鍛錬をしに行くのもいいかもしれない。
バッグからタオルを取り出し、汗を拭く。
■久藤 嵯督 > 「……あんまり出し抜いてばかりだと、延長させられかねんからな」
肩をすくめ、吐き出すように呟く。
仕事だけは真面目にしてきても、それ以外のところで羽を伸ばせばくどくど文句を言われる。
どこかの誰かの昔の発言に、『オフの日がなんだって?』とツッコミを入れた。
■久藤 嵯督 > ともあれ今日を越せば、晴れて本部に復帰できる。
次の見回りでは、『当たり』に出会えればいいのであるが。
だがそれも、あまり上の目につかないよう心がけねばなるまい。
普段の素行は、もう少しマシにしておくよう心がけることにする。
■久藤 嵯督 > 汗が引いてきたあたりで、鎖帷子を着込み、両手の指に糸を仕込む。
防弾シャツの上に制服を羽織り、コートを着る。
『その格好、暑くないのか?』とはよく聞かれるが、運動さえしなければ体温調節で問題なく活動できる。
つまり、ケルベロスと戦った時はものすごく暑かったということだ。
荷物をまとめると、開拓村のパトロールへと戻っていく。
ご案内:「青垣山」から久藤 嵯督さんが去りました。