2015/09/11 のログ
ご案内:「青垣山」に織一さんが現れました。
■織一 > 青垣山の麓、視界の開けた平原。
「……準備完了」
草花に覆われた地面を見回しながら、小さく呟いた。
繁りに茂った草花に覆われて見えないが、地面には赤色の血文字が大量に刻まれている。
血文字は自身の血液と獣の血液を混ぜた特別製であり__五行思想を基礎とする魔術の術式として刻まれている。
術式自体はシンプルなものだが、独自のアレンジが加えられていた。
”人の技”を”神の奇跡”として振るうのだ、普通の人間には扱えない代物へと変異させている。
顔を上げ、目の前の物体を見据える。
織一の正面、大体3m先に壊れた洗濯機が置かれていた。
山の麓に棄てられていたのを、魔術の的とするためにここまで運んできたのだ。
■織一 > 目の前の洗濯機をしっかりと見据え、深呼吸。
地脈に異常なし、術式に異常なし、自身に異常なし。
「開始する」
右手に持った赤いバタフライが落ち、重量へ従い地面に突き刺さる。
術式が起動、後は詠唱するのみ。
「水は木を育み」
最初に起動するのは水の元素、相生の理論に従い、草花が瑞々しさを増し、洗濯機へと絡みつく。
「木は火の糧となる」
突如、洗濯機に絡みついた草花が燃え上がり、炎が洗濯機を包み込む。
炎は煌々と勢いを増し、洗濯機は物理法則を無視したような勢いで溶けはじめた。
第一段階、水の元素から木の元素に繋げて火を生み出すのは成功。
あとは水の元素で炎を適切にコントロールするのみだ。
■織一 > 炎は洗濯機を包み込み揺らめいているが、炎は洗濯機の周りに及んでいない。
水の元素を操り、炎を塞き止めているのだが、これがなかなか難しい。
水を強めすぎれば水乗火となり炎が消え去り、かといって弱めすぎると水虚火侮となり炎が溢れる。
現状コントロールはうまくいっているが、気を抜けば山火事になるかもしれない。
「……そろそろ、か」
炎が段々と弱まっていくのを見て、呟く、洗濯機に絡みつけた木の元素が残り少ない。
相生の中にも相剋がある、木を燃やせば灰になり燃料は減っていく、ただ燃やせばいいというものではない。
「水は火を消していき」
水の元素を強め、炎を消し去る、後には溶けた金属の残骸。
「火は土を養うもの」
詠唱に呼応し、灰が舞い散り金属へと混ざりあい、溶けた金属は染み込むように地面に消えた。
「……終わったか」
後始末を終えて、地面に座る。
とりあえず今回はうまくいったが……課題は多そうだ。
■織一 > 「……元素の制御、というものは難しいものだな」
地面に刺さったバタフライナイフを引き抜き、呟く。
いままでこっちで魔術の訓練というものをまともにやっていなかったからか、魔術の制御についてはまだまだ課題が多い。
かといって”人間用の”魔術で訓練するには、自身の魔力はあまりにも特異すぎる。
相性の良い魔術基盤と、術式へのアレンジ、この二つが揃わねば魔術を扱えない。
__今回使った術式のアレンジ方法は支援者から伝授されたものだが、一体彼は何者なのだろうか。
■織一 > 「鍛えるには数をこなすしかないが、発動までの手間がな……」
課題その二、下準備に時間がかかる。
この魔術の下準備にかかった時間はおおよそ一週間。
術式を構成してメモに下書きと清書を繰り返し、獣の血を求め山中を駆け回り、
地脈の安定した平地を麓で探し回り、ようやく見つけた立地に血文字を大量に刻む。
とにかく下準備が面倒なのだ。
慣れれば効率的に出来そうな部分も多いので、とにかく数をこなす必要がありそうだ。
■織一 > 欠点が多いように見えるが、この魔術には絶対的な利点が存在する。
それは「権能行使の負担が極限まで弱められる」という点。
たとえば川を氾濫させるのに、「水」と「災害」の権能を使うとする。
大規模な自然災害を起こすには大量の捧げものが必要だし、権能行使の負担も莫大だ。
少なくとも数週間は昏睡状態になり、生命力をかなり下がる。
しかしそこに魔術を挟めば、負担はかなり軽くなる。
準備期間にもよるが……一ヶ月かけて術式を仕込めば、負担は数秒硬直する程度に押さえられるはずだ。
魔術を張り巡らせた陣地に敵を誘い込み、自分の領域で負担なく敵を倒す。
これからはそういう戦い方も行えるようになる、ということだ。
■織一 > これを教えた支援者の意図はわからないが、手段が増えたのなら有用に活用させてもらう。
立ち上がり、軽く地面を蹴る。
血文字が揺らめき、地面に染み込み消えたのを見て、山の中腹に向かい歩き出した。
ご案内:「青垣山」から織一さんが去りました。