2016/09/17 のログ
ご案内:「廃神社」に世永明晴さんが現れました。
ご案内:「廃神社」にシュシュクルさんが現れました。
世永明晴 > 暗闇の意識を抜けて、瞼を空けた。
いつものだった。ただ、場所を知らない。
ここに来てから久しぶりの感覚。迷子とも言う。辺りを見渡した。
どうにもあの学園とは似つかわしくない風景だ。
どこだろう、ここは。そう確認するように、辺りを寝ぼけ眼に見渡した。

「……」
携帯、と思い懐を漁る。電池切れだ。肝心な時に役に立たない。

しかし……。
「誰に連絡するっていうんスかね……」
自嘲にも似た呟き。どうにもあの時言われた言葉が頭を離れない。

夜はまだ遠い。見渡してみれば、知っているような場所も遠目に見える。
焦ることはない。暗くなる前に降りれれば。

そう思うと、一つ息を吐いて荒れ果てた境内を見つけ。
そこに座り込んだ。

シュシュクル > 廃神社は豊かな自然に囲まれている。
今にも折れてしまいそうな程に細い木もあれば、
かなりの樹齢であろう太く巨大な木も見られる。

苔生した石畳に、そこら中に生え放題の草。
寂れているこの廃神社に、狐狸の類が住んでいたとて
驚くことはあるまい。

さて、そこに迷い込んだ青年が一人。
息を吐いて座り込む世永の横にある草から、がさがさと音が鳴る。

世永明晴 > 頭をかいて、どこか遠くに意識をやっていた。
だが、それもその音を聞くまでだ。
此処がどんな場所か分かってもいない。
そして、それ以前に。此処が常世学園だという前提もある。
つまり、何が出てもおかしくはないということだ。
音が鳴った場所を少しだけ警戒するように、眠そうな目つきのままそこを注視する。

「……えっと。……おいしくないでスよー」

……馬鹿か。と、自らに思う様に、額に手を当てた。

シュシュクル > 遠くの木々の葉がこすれ合う音、肌と耳を心地よく撫でていく風の音。
そういった静けさを思わせる音の中、その異様な音はどんどん大きく
なって――。

がさり、と。一際大きく音が鳴り響けば、同時に小さな女の子が
丈のある草むらの中からひょこりと顔を出した。

ぱちくり、と。丸く大きな目を更に真ん丸にして目の前の青年を
見れば、その表情が、一瞬の内にぱぁっ、と明るくなった。

「ヨナガ! ヨナガ!」

草むらからばっと駆け出し、
そのまま座り込んでいる青年にタックルを仕掛けるような
勢いで、ぴょーんと側面に飛びつくのであった。

世永明晴 > 「は。え」

呆けた音を、声として出した。
あらわれた少女は想定外。だが、見覚えはある。
だからこそ、思考は働かなかった。
その少女の姿があらわれて、こちらに向かって来るまで碌に反応もできず。結果としては。

「……ぎゅえ」

いわゆる、潰れたカエルの様な声を上げて、その少女を受け止めた。

シュシュクル > カエルが苦しげな声を吐き出した隣で、少女はきゃっきゃ、と騒いでいる。

「ヨナガ! またあった! げんきしてたか?」

側面から前面へささっと移動。
両手をばっと万歳の形で挙げてそう口にした時にようやく目の前の彼の
様子に気がついたようで。びくっと身体を震わせて、世永の背中をぽんぽん、と優しく叩く。

「ヨナガ、だいじょうぶか? シュシュクル、わるかった?」

申し訳無さそうな弱々しい声色。
世永の膝の上で、尻尾がだらーん、と力なく揺れている。

世永明晴 > 「…………ぅ」

苦しさに呻いた後、背中にあてられた柔らかな感触に閉じていた目を開いた。
開いた瞳が認識した光景に「やっぱり……」と苦笑を交え、一つ咳をする。

「はい。大丈夫でスよ、シュシュクルさん。……お久しぶりでス」

悪意なき無邪気に、無造作にあたることは酷く……そうだな。
かっこ悪いだろう。

シュシュクル > 「おー、げんきげんき。よかった。ヨナガだいじょうぶ、
 シュシュクル、うれしい」

再びきゃっきゃと、子供らしく笑うシュシュクル。
いつ見てもころころとよく表情が変わる狼少女である。
尻尾もまた嬉しそうにぶんぶんと振られている。

「ひさしぶり、ひさしぶり。シュシュクル、たべものさがしてる。
 ヨナガ、たべものさがしてるか?」

くい、と。首を横へ傾けて、そのままぐぐぐ、と倒していく。
何ともぎこちない首の傾げ方である。
狼少女は目をぱちぱちとさせながら、じっと青年の顔を見つめている。

世永明晴 > 「はい。そちらもお元気そうで」

膝の上に乗った重さを感じながら、以前とも変わらないその無邪気さを見ていた。
自分もこうなれれば、少しは簡単だったろうか。
なんて無為な考えを浮かべる。本当に無為な、考えだ。

「……ほんとに、お元気そうで。なんとかなってるみたいで、よかった」
その後に続いた言葉に、少し呆けた顔をして笑う。

「ごめんなさい。食べ物は探してないんでスよ」
「ちょっと迷子になっちゃって」
それは少し困った様に。合わせた様に。彼女の首の動き方と同じように、こちらも首を倒して薄く笑う。

シュシュクル > 膝の上にある重さは、ごく普通の少女のそれだ。
結構軽い……とはいえ、人の重さではある。
膝に重さを感じている彼を気遣った上での行動か定かではないが、
獣が何とはなしに木に登ったり降りたりするように、
シュシュクルはとん、と彼の膝から飛び降りた。

彼が同じ動きをしたのを見て、嬉しそうににっこりと笑うシュシュクル。
そして、彼の言葉を聞けば、語を継いだ。

「そうか、たべものさがしてるちがうか。
 ヨナガ、まいごか。みちわからないか。
 ヨナガ、どこいきたいか? シュシュクル、あんないする。できたら」

ぐっ、と両の拳を握って腕を引き、尻尾をぶんぶんと振っている。

世永明晴 > 膝の上からなくなった重みに、少しだけ残念さを感じた自分に疑問を持つ。
心細かったのか、それとも寂しかったのか。
どちらともわからないが、ともかく。
近くに誰かいることに、安心感を覚えていたのは間違いない。
やめやめ、と首を振り。

「えっと……」
頼っていいものか、少しばかりの逡巡を覚えた後。
「……あっちでスね」
そういって、今もなおここからでも遠目に見える、学生居住区を指さした。

「わかりまスか?」

シュシュクル > 「ん~。ん。ん~」

世永が指差した先を見て、シュシュクルはつま先立ちでぐいっと背伸び
しながら、右手を目の上に翳した。

「シュシュクル、あんまりあっちいったことない。
 でもあっちいくみち、わかる。あんぜんいきかた、わかる」

くるりと振り向けば、こくこく、と、シュシュクルは頷く。
やる気に満ち溢れた瞳であった。

世永明晴 > 「ん」

良かったと笑う。善意ばかりの彼女に頼るのは、どこか心苦しいが。
今はそうも言ってられないだろう。
「なら、あーと……おねがいしまス」

ありがとうございまス、と告げたところで。
「あ」と声を上げた。

「シュシュクルさん。ごはん探してるんでしたっけ。一緒にたべまスか?」
思いついたのは、先程の彼女の発言を思い出したからだ。
返せるものは、返せるうちに。
彼女がどれほど食べるのかわからないが、まぁそれは常識的な範囲であろう。きっと。

シュシュクル > 「だいじょうぶ、ヨナガ、シュシュクルまかせる!
 おかあさん、いってた。みんな、たすけあう、だいじ。
 シュシュクル、ともだちたすける、すき」

満面の笑みだ。心底嬉しそうである。
おかあさん、という言葉と共に少しだけ顔が曇るが、それもすぐに
拭いとられ。

「ごはん? たべる? ごはん、たべものか? たべもの、いいのか! 
 ごはんごはん! ヨナガ! だいすき!」

それを聞けば何度も飛び上がり、きゃっきゃと尻尾を振って
世永へと再び飛びつくシュシュクルなのであった。

世永明晴 > 「シュシュクルさんは、優しいでスね」

「おかあさん……」
響いた声と、その少しだけ曇った顔に、少しだけ思う。
……そうか。と勝手に得心したように。こちらに飛ばされてきたのだろう。
この少女位の年代に、母親に会えないというのはきっと辛い事だろう。
と、そんなことを。

「そう、たべもの。案内してくれるお礼でス」

ぉぉと。と飛びつかれた衝撃によろけるが、年頃の男子としてはなんとかしたいものだ。

ご案内:「廃神社」からシュシュクルさんが去りました。
ご案内:「廃神社」から世永明晴さんが去りました。