2016/10/10 のログ
ご案内:「青垣山」に巓奉さんが現れました。
■巓奉 > 青垣山の中腹に一軒の庵がぽつりと佇んでいた。
良くある廃屋の類かと思いきや、その実手入れがされており奇妙な生活観を漂わせている。
そんな庵の中を覗けば鍛冶に使うであろう炉や金床、その他鍛冶道具が整理整頓された部屋が伺えるであろう。
その部屋の真ん中にこの庵の主がむすっとした表情で一振りの刀を研いでいる。
「まったく、酷い目にあった……。」
──作務衣姿の少女が。
■巓奉 > 少女は思い起こす、その『酷い目』の事を。
なんてことはない、ただの散歩だったはずが命がけの追いかけっこになっただけ。
四頭のイノシシに追い掛け回されればそりゃ誰だって酷い目に遭ったというだろう、無事に帰ってこられればだが。
幾振りの刀がボロボロになってしまったが無事に戻ってこられただけで儲けだ、と少女は自分に言い聞かせつつあの場に居たもう一人の事を考える。
あれは──そうだ、赤髪の長髪の男。
互いが互いをイノシシへ差し出そうと醜い押し付け合いを繰り広げた相手である。
「今度逢うたらしっかりお礼しないとねぇ……。」
凄みのある笑みを浮かべて刀を研ぐ姿はさぞ不気味であろう。
■巓奉 > 「んん、ちょっと……間違えたかな。」
どうやら少し力みすぎたらしい、地肌に少し濁りが出ていた。
『いかん、いかんなあ。』と苦笑いしつつ少女は慣れた手付きで修正を施す。
やがて少女はおもむろに刀を持ち上げ光に当てて観察し始めた。
光に照らされ刃は白銀の様に煌き、地肌は青黒い鈍い光を返した。
どうやら完了らしく、満足げに頷くとそっと鞘に納めた。
「んぅ~! 我ながらいい仕事したものだ!」
背伸びしつつ、夕餉の支度に向かう少女。
頭の中は牡丹一択であった。
ご案内:「青垣山」から巓奉さんが去りました。