2016/10/19 のログ
ご案内:「青垣山」に巓奉さんが現れました。
■巓奉 > 青垣山の中腹で居住区を見下ろすように一軒の庵が建っている。
普段は物音一つ無く風と木々の囁きのみが支配するその場所はいつもと違う顔を見せていた。
等間隔に刻み響かせるは金属を叩く音、しかし鈍いそれではない透き通ったもの。
一定回数刻んだ後、少しの静寂が訪れまたビートを刻むだろう。
■巓奉 > 灼熱の炉をから放たれる熱量を涼しい顔で受け止める巓奉。
原料の玉鋼を熱している様で、一瞬たりとも目を離すまいと真剣な表情だ。
「誰かの為の一振りを、か。」
先日、寄月に言われた言葉をポツリと口に出した。
熱され白熱していく玉鋼の様子を見つめながら、巓奉はその言葉について考える。
あの時、彼に語った事はまごうことなき事実であり本心だった。
だが彼は言う、誰かを想い鍛え造ったただ一振りの剣の持ち主こそが最強の剣だと。
■巓奉 > 玉鋼に充分熱が通ったのだろう表面はふつふつと沸騰した水の様に気泡が現れ出した。
「馬鹿馬鹿しい。」
思わずそう呟いてしまった。
理性は頭を振る。彼女の考える『つるぎ』がその程度のものではないと。
だが心は頷く、これぞ真の『つるぎ』あらゆる伝承にも勝るものだと。
何とも難儀だなと彼女は思った。鍛冶をしていれば無心で居られるはずが、今こうして雑念に捕らわれているのだから。
炉から玉鋼を取り出し金床へ移し槌を振るう。
音が響く度に火花が飛び散る、雑念を追い祓わんと。
■巓奉 >
「……私は一体何をしているのだろうか。」
いつも通りの材料、いつも通りの道具、いつもどおりの工程。
いつも通りのはずなのに、何かが足りない気がする。
現にこうして鍛えてる今も感じている違和感が巓奉の頭を、心を悩ませる。
身体は機械の様に正確に動いているのに。
「ううん、ダメだ。これはもうダメだ。」
鍛造中だった原料の出来を見るや、作業をやめてしまう巓奉。
■巓奉 >
「興が乗らなかったかな……?」
分かりきった言い訳をしつつ道具を片付ける巓奉。
どうにもスッキリとしない現状に落ち着かない様子で居間へ足を運ぶ。
畳の上に寝転がり天井をじっと見据え思考する。
「(最近上手くいかない……どうしたものか……。)」
■巓奉 >
「あ゛ー! ダメだー、ダメだ!」
こういう時は何をしようとも上手く行かないのが世の常。
だから、じたばたとしてみる。
1分近く続けて見たが誰も居ないので飽きてしまう巓奉。
自分の仕事は上手くいかず、愚痴を言う誰かも居ない。
もういっそ外に出て甘味処を制覇した方が良いのではないかと考えてしまう程には参っていた。
■巓奉 >
「…………もう刀匠廃業しようかな。」
気分が落ちていると出てくる言葉もそれ相応のものが常である。
だが、今回のそれはあまりにも度が過ぎていて。
余程彼女にとってショックだったのは間違いないだろう。
ごろんと転がってうつ伏せになった巓奉は、器用に机の上に用意していた和菓子に手を出し始めた。
■巓奉 > もごもごと口いっぱいに和菓子を詰め込んで考える巓奉。
どうするべきか、改善策を打開策を求め思考する。
「……ああ、そう言えばこの間タマちゃんに見せてもらったアレ。
中々に興味深かったなあ、ええと確か、そう。へるしんき。」
東瀬夏希が所持しているヘルシングと呼ばれたあの刀剣。アレには見事な魔術的細工が施されていたのは間違いない。
あれを再現できれば……もしかすると。
我ながらナイスアイデアと思いつつがばっと起き上がる。
通常の玉鋼に加え『常世ならではの材料』があれば──
それはきっと面白いことになるのではないか?
■巓奉 >
「面白い、面白くなるはず……やってみよう。」
よし、と気合を入れて立ち上がると外へ出る準備を始めた巓奉。
そうと決まればすぐに動くのが信条の彼女はある場所へと向かうだろう。
常世学園へ。魔術関連の授業を受ける為に。
ご案内:「青垣山」から巓奉さんが去りました。