2017/06/10 のログ
ご案内:「廃神社」に加賀智 成臣さんが現れました。
加賀智 成臣 > 名字順の検索の羅列は、「かが」で候補が消える。
出席番号729番は、誰も何も思わぬ内に名簿から消える。
名も知らぬ誰かが使っていた椅子には、そのうち花が飾られた。


今や既に名も無きそれは、息を潜めるように廃神社の近くを歩いていた。

「…………………。」

その名も無きそれは、人の目の前に姿を現してしまった。
二度と、誰にも会うまいと消え失せていたそれは、ふとこう思ってしまった。

『自分が誰にも出会わないのは
  世界を書き換える力で【自分以外の全ての人類を消した】からではないのか?』


誰にも確証は持てない。
世界が彼を観測しないように、彼も世界を観測し得ない。
ならばその現象はきっと、数%でも可能性はあるはずだった。

「……………はぁ…」

消え失せてから、何度目かも分からないため息を吐く。
その真意はきっと、彼にしか判らないのだろう。

加賀智 成臣 > 「………だれか……
  だれか、だれか………」

汚れた制服を身に纏った体を引きずり、泥に汚れた眼鏡を拭うこともなく、雨の山中をふらふらと歩く。
譫言のように、意味のない言葉を吐き出しながら。

その願いは【届いた/届かない】。彼の願いは、必ず叶えられる。

『誰にも会いたくない』も、『誰かに会いたい』も、彼にとっては等しく望みなのだ。

加賀智 成臣 >  
「(誰か僕を殺してくれ。誰か僕を救ってくれ。誰も僕を見付けないでくれ。誰か僕を見つけ出してくれ。
  誰か僕を責めてくれ。誰か僕を許してくれ。誰か僕を拒絶してくれ。誰か僕を認めてくれ。
  誰でも良い。誰でも良い?誰でも良いわけじゃない。)」

曇天を見上げる。
ぴしゃぴしゃと降り注ぐ雨は、眼鏡にこびり付いた泥を溶かし、肌へと塗り広げていく。

「(どうして僕はこの期に及んで死にたくないのだろう?
  僕が生まれたことは間違いだったはずなのに、なぜ僕は生を手放せないのだろう?
  間違いを認めて、死ねばいいのに。なぜ僕は死ねないんだろう?)」

ご案内:「廃神社」にクラージュさんが現れました。
クラージュ > その山中に、少年は立っていた。
何をするわけでもなく、目を瞑り。
現代に似つかわしくない、しっかりとした鎧に剣。
足にはしっかりと泥がついている辺り、歩いてきたのは間違いないようだが。

加賀智 成臣 > 「……………………。」

彼はそれを見た。見てしまった。
彼にとっての希望を、彼にとっての絶望を、その目に映してしまった。

ヒトだ。
紛うことなき、自分以外のヒト。

……現実が、ねじ曲がり始める。
ヒトに会いたいと思っていた願望が、会いたくないと思う願望を、無意識に凌駕し始める。

クラージュ > 赤毛の少年は、瞑っていた目を開いて 歩いてきた少年をまっすぐに見つめた。
他の誰でもない、加賀智 成臣と名乗っていた少年を。
他のモノではない、おそらくはこの場にいないかもしれない、彼を。

「……大丈夫だ」

何が大丈夫なのかわからないが、赤毛の少年はそう声に出す。
相手が誰であれ自分は勇者で―――救いを求める声が聞こえたのだから。
だったら、自分のとるべき行動は一つだけ。
いつもの通りに、声をかける。

「大丈夫だ、もう心配は無い」

加賀智 成臣 > 「は」

「はは」

ばきり、と音がする。『それ』の顔に、ヒビが入る。
ぼろぼろと、まるでガラス片のように、顔が崩れ落ち、破片が消えていく。
あとに残ったのは、闇。顔に穴が空くように、ぽっかりと黒い闇が覗く。

「いまさら」

いまさら、まだ誰かを求めているのか。
今更、まだ誰かに寄り掛かりたいのか。

「いまさらきても もう」

遅い。

何もかもが大丈夫に終わる時間は既に無い。
自分に救いなどあってはならない。救われてはいけない。
『自分の為だけに世界を書き換える人間』など、救われるべきものではないのだから。