2018/08/30 のログ
ご案内:「青垣山」にアリスさんが現れました。
アリス >  
私、アリス・アンダーソン。
今年の四月から常世学園に通っている一年生!
夏季休講の宿題は終わった。
長く苦しい戦いだった。

そして去り行く夏を惜しんで。
なおかつ最近読んだヤマガールノススメなる漫画に影響されて。

私は今、登山に来ています。

空気が美味しい。
青空はどこまでも晴れ渡り、景色は美しい。
来てよかったー!

それにしても昨日、登山に行きたいって言ったら
パパがちょっとお高い登山靴を買ってくれたのはなんだったのかしら。
パパもまだまだ娘が心配な頃なのかな?

アリス >  
すれ違う人の表情もどこか晴れやか。
あ、そうだ。挨拶は大事って漫画に書いてた!

「こんにちは!」

相手からも笑顔で挨拶が返ってくる。
ああ、なんて素晴らしい環境なのかしら。
人は山に登るべきなのよ。14年間生きて、今それがわかるのよ。

足取りも軽く、青垣山を登る。

 
一時間半経過。
 

く、苦しい……
疲れた……そしてパパが登山靴を買ってくれた理由がわかった…
青垣山は舗装された道なんてないから、
ところどころで足をしっかり固定できる靴がないと挫く。
ママもお弁当とおやつをたくさん持たせてくれた理由がわかった。
行動食だ。
低血糖、怪我、油断に妥協、どれひとつをとっても命取りとなる。

人の理が及ばない魔境。
それが山。

……ここにきてヤマガールノススメじゃなくて神々の山岳になってきた。あの漫画も好き。

ご案内:「青垣山」にニコラスさんが現れました。
ニコラス >  
(オッスオラニコラス。
 ――なんて挨拶は生まれてから一度たりともしたことはない。
 それはともかく、ここ数日山に籠って生活していた。
 理由は最近山に籠っていなかったから。
 別に野菜っぽい戦闘民族みたいな理由ではない。
 一応本職は猟師なのだ、山での暮らしが鈍ると困る。
 そんなこんなで食べられる野草を採取しつつ山道をうろついていたら。)

おーい、大丈夫か――あれ、あんた。

(いつかの少女を発見。
 なにやら辛そうだったので声をかけてみたのだが、まさかファミレスの強盗騒ぎに巻き込まれていた少女だったとは。
 名前は確か、)

――アリス、だっけ?
大丈夫か?

アリス >  
そしてここに来るに辺り。
なんだ山登りって簡単じゃーん! 中級者向けの南側コースから上ろう!
ってなっていやに難しい道を選んでしまった。

青垣山夏季南側無酸素登頂。
それが私の背負ったカルマ。
いや酸素いるような高度じゃないけど。

そして声をかけられる。
よほど顔が地獄だったのだろう。
花も恥らう乙女がきっとザイルが切れそうなアルピニストの表情をしていたのだ。
厭世的な気分になりながら顔を上げると。

「あ、ニコラスさん。こんにちは、山で会うなんて奇遇ね」

そしてその場で杖を錬成して体を支え、ちょっと休憩。
何が山ガールだ! 格好つけても生きなきゃ何にもならない!!

「だ、大丈夫……大丈夫よ…大丈夫だもの……だって大丈夫なんだから」

塩飴いる?と差し出しながら余裕ぶってみる。

ニコラス >  
全然大丈夫に見えねぇけど……。

(何やらプライドがあるらしい。
 まぁみっともないところを見せたくないという気持ちはわからなくもない。
 わからなくもないけれど。)

塩飴はそっちの方が必要としてるだろ。
疲れたんだろ、無理せず休め休め。

(山では無理をするのが一番危ない。
 ちょうどいい具合に、座りやすい石が近くにあった。
 そちらに腰かけて休憩アピール。)

アリス >  
荒い呼吸をしながら大丈夫も何もなかった。
私は死んだ。精神が。

「あ、うん……じゃあちょっと休憩…」

ニコラスさんはどうやら山を歩き慣れているようで。
先人の言葉は素直に聞くべきで。
隣に座って深く呼吸をした。

「はぁ……ハイキングってこんなに大変だとは思わなかったわ」

塩飴を口の中に放り込んで、グレープフルーツ味を舌で転がした。
確かに休憩にはちょうどいい頃合だったのかも。

「ニコラスさんは何を目的に登山を? 滝? 頂上?」

ニコラス >  
(ポーチを漁って水筒を取り出す。
 湧水を煮沸し、冷ましてから入れておいたものだ。
 金属のカップも取り出して、中に水を入れてから彼女へ。)
 
こっちはきついからなぁ。
山初めてなら西からの方がよかったと思うぞ。

(彼女の迂闊なルート選択の経緯など知らないので、笑いながらそんなアドバイス。
 西ルートでもガチ初心者だと結構疲れるけれど。)

ん?
あー、俺は山籠もり。
最近サボってたからさ、カン戻さねーと。

アリス >  
「あ、ありがとう…」

水を飲むと、体に染み渡る気がした。
思えば水分補給のタイミングが私はちょっと下手だったかもしれない。
水を飲むのが下手。じゃあ何ができるんだ私は。

「こう……ヤマガールノススメを読んでゆるふわハイキング気分のまま南ルートに来たら…」
「神々の山岳の地獄の無酸素登頂だった、みたいな?」

身振り手振りで説明する。
我ながらこの説明でわかったらすごいと思う。

「や、山篭り!?」

か……かっこいい…カンを戻すとか言ってるし…
両手で金属のカップを包んだまま目を輝かせて質問する。

「動物を狩ったり、山菜を集めたり、夜は焚き火で、山の息吹を感じたりするのね!?」
「わぁ……漫画の登場人物みたいだわ…」

ニコラス >  
水分って気付かないうちになくなってくからな。
喉が渇く前に飲んどいた方がいい。

(脱水症状は本当に怖い。
 こんな山の中で、ましてやこの暑い日ならなおさら。)

ん?
んー、あー、いやまぁ、何となくわかった。

(つまり漫画に感化されてウキウキ気分で乗り込んだら、そこは地獄の一合目、みたいなあれか。
 そういう経験、覚えがないわけではない。)

そ。
俺、元の世界だと猟師でさ。
獲物追いかけて山で一週間とかザラだったんだけど、こっち来てからそういうの減っちまって。

(獲物を獲らなくたってメシは食えるし、獲ったところでそうそう売れない。
 何より街の方がよほど便利なのだ。
 山に籠る必要が全くない。)

アリス >  
「山は怖いわね……登るのに集中していたら忘れてしまいそうだわ」

山の中で倒れて、意識を手放したら?
怖くなった。本当は山は一人で来るものではないのかも知れない。

「……あれね、釣りが上手くいったからちょっといい気になっていたのかも」

その釣りも特大のトラブルをたまたま居合わせた友達に処理してもらったのだけれど。

「へえ……そういえばこの山って危険な動物がいたりするのかしら?」
「来る途中、トコヨカナヘビは見たわ」

無害。可愛い。名前がヘビなのにトカゲ。

ニコラス >  
だから出来れば慣れるまでは――いや、慣れてからも一人で山には来ないほうがいいな。

(慣れた頃が一番危ない。
 複数人でくれば、誰かが倒れても助けられるのだから。)

釣り?
なんか大物でも釣ったのか?

(「漁」は専門ではないけれど、猟師としてはそちらも気になる。
 何を釣ったのだろうか。)

んー、熊はいそうな感じするけど、鹿とか猪とかでも十分危ないからなぁ。
そもそも神話に出てくるような生き物もいるんじゃないかって噂あるし。

(この山は結構自然が残っているので野生動物もそこそこの数がいそうだ。
 彼女が見たというトコヨカナヘビみたいな固有生物もたくさんいるらしい。
 噂はともかく、魔獣とかも何度か見かけたことはある。
 常世島だから仕方ない。)

アリス >  
「そっかー……友達、誘ったら一緒に山に来てくれるかしら」

メールアドレスを知らない友達もいるから誘うのはタイミングが難しい。

「私は全然。トコヨアメリカンキャットフィッシュのちっちゃいのが釣れただけよ」
「ただ、たまたま近海に来てたヒガンテシャークが私の釣った魚に食いついちゃって」
「強烈な引きで海に引きずりこまれそうになってもう大変。って今の話ウソくさいわね…」

自分で言ってて何このホラ話は、と思うくらい胡散臭い。
でも本当だから信じてもらう他ない。

「追影切人って知ってる? 彼に何とかしてもらったの」

そしてニコラスさんの話を聞いていれば、なんとも怖い話ばかり。
熊? 猪? 神話生物?
鹿でも人間の手には余るのに、このラインナップ。さすが常世。

「熊……ニコラスさんは倒せる? 私は無理、怖いもの」

ニコラス >  
俺でよけりゃついてってやるよ。
――あ、まだ連絡先教えてなかったっけ。

(一番いいのは慣れた人と行くことだ。
 油断してはいけないが、この山は結構慣れた。
 ハイキングコースに沿って登るだけなら問題ない地震がある。
 とりあえずスマホを取り出して。)

あー、なんでも食うらしいからなぁ……。
引きずり込まれなくてよかったな。

名前ぐらいは、聞いたことあるけど。

(オイカゲキリヒト、確か風紀の協力者だったか。
 会ったことはないが、最近風紀委員と話す機会が増えたので、名前ぐらいは知っている。)

――あぁ、あるよ。
一頭だけだけど、倒したことあるよ。

(熊、と聞いて思い浮かぶ人物の顔。
 懐かしそうな、寂しそうな表情。)

アリス >  
「え、いいの!?」

うわ、引くくらい食いついてしまった。
でも連絡先の交換はいつになってもテンションが上がるし。

「私のアドレスはねー、Alice-in-Wonderland……」

喜色満面で連絡先を教えた。
やったー。帰ったら早速メール送ろう。
山にいる彼に届くかはわからないけど、街に戻ったらきっと読んでくれる。

「そうそう、何でも食べちゃうらしくて、それを追影さんがやっつけて事なきを得たの」

思えば私って運が悪すぎる。
なんで釣りに行って死に掛け、ファミレスに行って人質になっているのか。

「……ん。そう」

寂しそうな表情に、どこか突っ込んだ話をしづらくて。
きっと彼にとって思い出が引っかかってる部分の話。
私は立ち上がって杖を分解する。

「さ、じゃあついてきてもらおうかしら」

そう言って笑顔で。

「山の頂上まで! 行きましょう、ニコラスさん!」

ニコラス >  
いいも何も、友達だろ。

(苦笑しつつスマホを操作。
 一緒にハニトー食べてこうして喋っているのだ。
 むしろ何故あの時交換していなかったのか、というぐらいだ。)

ん……オッケ。
俺のは――。

(メールを送ろうとしたがあいにく圏外だった。
 なのでこちらの連絡先を口頭で。)

あれって確かめちゃくちゃ狂暴じゃなかったか……?

(倒す、ってどう倒したのだろうか。
 ライフルか何か持っていたのか。
 その場面が思い浮かばず、難しい顔。)

――はいよ、了解。
エスコートさせていただきますよお姫様。

(彼女に続いて立ち上がる。
 しっかり体力が回復したようで何よりだ。)

あぁ、あと呼び捨てでいいよ。
さん付けだとなんか落ち着かないから。

アリス >  
友達!!
なんて爽やかに!!
そしてスマートに言う!!

青天の霹靂。
もし、私が観測されてないだけで、不運に会う度に友達が増える異能者でもあるとしたら。
神よ、あなたの御采配に感謝いたします!!

「ふふふぅ。友達だー、友達だー」

笑顔でスマホを両手で包み込む。
ストレージに景色の写真以外で有意義なものが収まるとは思っていなかった。

「そ、狂暴だったわ。それをねー、なんと手刀でばっさり!」
「離れた鮫を海を割り虚空を斬る手刀の連撃で……あ、信じて信じて」

相手の言葉に満足げに小さな羊羹を差し出して。
自分も開封したプチ羊羹を食べて歩き出した。

「うん、行こうニコラス!」

ああ、やっぱり。人は……たまには山に登るべき。

ニコラス >  
そんな大げさな……。

(宝物のようにスマホを握りしめる彼女。
 コミュ力に優れた者はそうじゃないものの苦労を知らない。)

へぇ、シュトウでねぇ……手刀???

(シュトウってどんな武器だったか。
 そうそう、手を刀に見立てたチョップみたいなアレだ。
 そこまで考えてから真顔になって彼女の顔を見る。
 手刀で鮫を、しかも離れたところにいる鮫を海ごと???
 そいつ人間か。)

あんまはしゃぐなよ、転ぶぞー。

(ここからは少し下りになっている。
 下り道ではゆっくり歩くのが鉄則だ。
 彼女のあとからしっかりと地面を踏みしめてついていく。)

アリス >  
「大げさよう、私は友達を作るのにめちゃくちゃ苦労してきたんだからね」

ついでに景色の写真をパシャパシャと写す。
友達と一緒にいるとなると、風景も輝いて見える。

「……まぁ、深く考えると頭痛になるから…」

自分もあの後に手刀で何かを斬る練習をこっそりしたことがある。
結果として紙で指を切るにとどまった。

「うん、わかったー!」

下り道を歩く。
その後も彼の指示通りに歩いた。
時にニコラスは草を掻き分けてくれたり、ヤケドムシ?という毒虫を吐息で払ってくれたり。

順調に進んだ私は。ううん、私たちは。

山頂にたどり着いた。
さすがに疲れたけど、それも吹っ飛ぶ感動があった。
山は、素敵だ。

ニコラス >  
あー、うん。
ごめん。

(そういうことかと今気が付いた。
 無神経な発言に思わず頭を下げる。
 しかし彼女は話も下手じゃない、というかうまい方だし見た目もかわいいのに、とも思う。
 ……かわいいからか、とも思うのだけれど。)

空手の達人の手足は凶器だ、とは言うけど。
いやはや、常世学園恐るべし、だな。

(異能か、はたまた純粋な技量か。
 そんな奴が協力者なら、俺なんて風紀に入らなくていいのではないか、とは思うのだけれど。
 ともあれ、岩場で手を引いたり途中休んだり。
 大した事故もなく山頂まで辿り着いて。)

――どうだアリス。
いいだろ、山。

(得意げな顔で。)

アリス >  
「……いいの。今は素敵な友達が五人もいるわ」

五人目はニコラスで、こうして今も気遣ってくれている。
それだけで幸せ。
いじめられていただけの時間より、ずっと。ずっと。

「斬ることを追求すると人はああなるのかも知れないわね」

追求と一言で言うけど。それはもう道なのかも知れない。
何かを斬るために歩む道。

山頂でニコラスの言葉を聞くと、満面の笑みで何度も頷いて。

「うん! 頂上の景色、とっても素敵だわ!」
「あ、一緒に写真に写らない? 今、自撮り棒を錬成するから!」

そう言ってきゃいきゃい騒いで。
今は三時。帰るにもいい時間かも知れない。

「名残惜しいけど、下山までが山なのよね。今度は西側コース、違う景色ね」

山から見える人の街はちっぽけで。
ちっぽけだから、誰かが守っているのかも知れないと思った。