2015/12/24 のログ
ご案内:「地区ごとの駅」に日下部 理沙さんが現れました。
日下部 理沙 > 年の瀬。12月末。
冬の寒さも厳しくなってきた常世島。
列車のホームにて、新入生……というのも若干厳しくなってきた日下部理沙は、コーヒーを片手に列車が来るのを待っていた。
待合客は理沙の他にも疎らにいるが、列車が来る様子はない。

日下部 理沙 > 何故列車が来ないのか。
理沙には理由は不明であるが、どうもどこかで遅延が発生しているらしい。
この冬の寒さの関係かもしれないし、どこかで異能者や魔術師が暴れているせいかもしれないが、詳細は不明である。
しかし、理沙は別に急いでいるわけでもないので、のんびりと翼を折りたたみ、ホームの隅の椅子に腰かけて、列車が来るのを待っていた。

日下部 理沙 > 時間に厳格な鉄道委員会には珍しく、今日の遅延は中々に長引いている。
理沙も此処で列車を待ち始めてぼちぼち小一時間だ。
といっても、元々本土のド田舎に住んでいた理沙にとっては電車は元から早くてもそれくらいのペースで来るものであったため、別段気にしてはいなかった。
のんびりと、ちょっとずつ冷めていくコーヒーを飲みながらただただ待っている。
理沙は待つことは好きな方なので、別段苦痛は無かった。

日下部 理沙 > 理沙からすれば待つ時間というのは考える時間である。
故に、日常に唐突に現れるこういった時間のロスは、理沙にとっては小休止のようなものであった。
理沙は決して要領が良いほうではないので、あれこれしながら何かを考えることは苦手なのである。
そのため、こういった時間の隙間はあれこれしながらでは考えられない事を考えるのにうってつけであった。

日下部 理沙 > 実際、今は考える時間が欲しかったので、理沙にとっては何かと都合が良かったともいえる。
では何を考えるのかといえば、議題は正に理沙の手の中にある。
 
「うーん……」
 
右手にもったコーヒーをすすりながら、空いた左手で開いているのは……部活動紹介のパンフレット。
そう、理沙は何か部活を始めようとおもっていた。

日下部 理沙 > 九月から常世島にきてぼちぼち三ヵ月。
あれこれ思うこともあり、何か自分もやってみたいという人並みかつ月並みな欲求が理沙の中には生まれていた。
出来る事なら、この背中の馬鹿でかい翼を生かして何かをしたいとも。
といっても、この翼は生えているだけのもので飛行は不能である。
故に、この翼を生かすとすれば専ら見た目を生かした何かという事になるだろう。
雄や真にもそうアドバイスされた通りである。

日下部 理沙 > そう考えると、やれることの候補は自然と狭まってくる。
雄に誘われた通り仮装でもしてみるか、真のアドバイスに従って演劇や歌唱でもしてみるか。
ハッキリいってどっちも上手くやれる自信は全くない。
だが、ただ目立つだけの翼があるだけでそれが生かせる何かと考えると、そっち方面しかないような気は理沙もしている。
しかし、足が中々向かない事もまた事実であった。
単純に恥ずかしい。

日下部 理沙 > それすら含めて克服しに行けと言う事なのかもしれないが、どっちにしろすぐに答えは出ない。
出ないからこそ考えていることでもある。
前向きに検討してはいるが、それですぐに実行に移せる性分であったら理沙は最初から何も苦労していないのである。
こうやってうじうじ悩んではその都度立ち止まり、吟味に吟味を重ねた上でまた懊悩し、その末になんとか答えを得るといった遠回りを繰り返している。
いい加減そういう生き方には理沙自身もうんざりしているところがあるのだが、これもまた性分であるためすぐには治らない。
いや、この常世島であれば、あるいは斯様な気弱の虫も瞬時に駆除しえる何かがあるのかもしれないが……まぁ、そのことについては今は割愛しよう。

日下部 理沙 > そんなこんなで未だ満足に部活の見学にすら行けていないのが理沙の実情である。
気付けば学期末であるというのは流石に理沙自身も己に辟易する始末であるが、だからといってそれに甘んじて手を拱き続けているわけにもいかない。
かといって一人で見学に行くのは若干難しい以上、折衷案としてそのうち誰か知り合いでも誘って見学に行こうかという話にはなるのだが、恥ずかしながら未だ友人の少ない理沙にはそれもまた難しい話であった。
親しい知人がいないわけではないのだが、暇なときに巡り合うことができないのである。
だったら自分から連絡しろと思われるかもしれないが、ここで自分からプライベートな連絡を取れるほどの度胸はやはりまだ理沙にはないのである。
全く持って意気地なしであった。

日下部 理沙 > 今度誰かに相談しよう。 
結局そのあたりの消極的ながらも理沙としては精一杯積極的な選択肢に落ち着く。
しかし、これは実際進歩ではあった。
以前の理沙であったらそもそも諦めてそこで終わりだったからである。
それに比べれば、牛の歩みではあるが遅々ながらも理沙は成長しているのかもしれない。
多分に希望的な観測であるが。

日下部 理沙 > とりあえずまた明日。
そう思い至ったところで、散々遅延していた列車がホームに丁度滑り込み、理沙の前に止まる。
待ちぼうけを食っていた他の客と共に若干込み合っている列車に乗り込みながら、理沙はただ明日の自分に期待した。
きっと明日の自分は「何を無責任な」と答えるのだろうが、残念ながら今の自分にそれは関係ないのであった。

ご案内:「地区ごとの駅」から日下部 理沙さんが去りました。