2017/04/14 のログ
ご案内:「地区ごとの駅」に藤巳 陽菜さんが現れました。
藤巳 陽菜 > 研究区にむかう電車が出る駅。
元の人間の体に戻るための第一歩、足のない蛇の体では一歩というのか分からないが…。

「早く、着すぎたかな。」

二本の松葉杖をつきながら駅を行く。
戻る方法が分かるかもという期待感からどうにもそわそわしている。

「まあ、元にもどれるともなれば少しだけ名残惜しいきもするけど
 …まあ、色々と不便だったしね。」

蛇の体になったこの二週間本当に不便な事ばかりだった。
少し、慣れ始めてきたところだったがこの体に未練はない。

藤巳 陽菜 > 上手く安定させることのできない上半身もこの杖さえあれば支えられる。
蛇体を引きずるようであまり見栄えは良くないし傍目からみれば変であるだろうが仕方がない。

「どんな風にすれば元に戻れるんだろう?」

ベンチに座り、余った長い蛇体を遊ばせながら考える。
手術とかするだろうか?なにか薬とかを飲めば治るのだろうか?
もし、戻ったら何をしよう?まずは、足を延ばしてお風呂に入りたい。

この足が治る保障などないというのに期待だけを膨らませていく。

藤巳 陽菜 > この体になってから上手く眠れていないのもきっと解消するにちがいない。

「リハビリなんかもあるのかな?」

きっと、今度は足の動かし方を忘れてしまっているかもしれない。
でも、ずっと使って来た足だ。蛇の体の動かし方を覚えるよりもずっとずっと簡単だろう。

そんな事を考えていると乾いた音を立てて松葉杖が倒れてしまう。
拾おうとしても自分の蛇の体が邪魔をして上手く拾うことが出来ない。
…落としたものを拾う事すらまともに出来ないのだ今のこの体は。

藤巳 陽菜 > それでも無理に拾おうとすればバランスを崩し地面に倒れて這いつくばる。
特に身体に痛みは無い。下半身だけでなく身体の全てが丈夫になっている。きっと、怪我もないだろう。

その時の音で一斉に視線が集まる。
可哀想なものを見るような目、同情するような目。

情けない。情けない。

すぐにでも起き上がろうとしても蛇の体はいう事を聞かない。
身体のどこに力を入れれば起き上がれるのかも分からない。

藤巳 陽菜 > 松葉杖の力を借りて起き上がり。そのまま逃げるようにそこを離れる。
心配する言葉が聞こえる。優しい言葉が聞こえる。
その言葉からも逃げるように。そんな言葉も聞こえないように。

今の自分は一人では杖の力を借りなければ立つことも出来ない存在なのだ。
一人では這う事しか出来ないそんな存在なのだ。

「…本当に情けない。」

ようやく来た研究区に向かう電車に乗り込むと窓に映った自分を見て呟く。

…検査を受ければ元に戻る方法は分かるだろう。
それまでの我慢だ。きっと、それまでの我慢だ。

ご案内:「地区ごとの駅」から藤巳 陽菜さんが去りました。