2017/10/26 のログ
■ヨキ > ボディバッグや紙袋を膝の上に載せた格好で、顔だけを隣の月香へ向ける。
「…………?」
口ごもる相手の様子に、自然と逸らされる視線を追って目だけが動く。
そのうちふっと笑みが零れて、可笑しげに眉を下げた。
「ははは。その様子では、人に言えない悪さでも仕出かしたようではないか。
……いや。安心したまえ、女性のプライベートには口出しせんから」
電車の走行音と、時おり流れる発着のアナウンス以外は静かな車内に、穏やかな微笑みが響いた。
「無理に話さずともよいが、言いづらいことを打ち明けるなら今だぞ。
誰も居ないところで二人きりなど、学内ではそうそうないからな。ふふ」
迷う月香の様子に、澄ました様子を作ってみせた。
■和元月香 > 相手の気遣いに溢れた言葉に、あからさまにほっと表情を崩す。
それを誤魔化すように、ぽすぽすと右手の拳で軽くパンチをしながら。
「.....ん、んもー!ヨキ先生ったらキザなんだからー!」
女性に紳士的な相手はある意味イメージ通りだ。
いつものように笑いながら、月香はなんとなく天井の方を見つめる。
「...別に、大したことじゃないんで大丈夫ですよ!
...うん、大丈夫。大丈夫ですよ?」
固定された腕を揺らしながら、
すぐ治りますってと自信たっぷりに微笑む。
根拠はあまり無く、大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせるようではあったが。
「.....ヨキ先生ってよく女たらしって言われません?
なんか言い回しが凄く手慣れてるっぽいんですが。
もしかしてヨキ先生って、女の子を翻弄する悪い大人だったりして」
済ました様子の相手の言葉には、思わず訝しげに。
しかしどこが冗談めかした笑みの辺り、嘘でも真でも楽しいようだ。
■ヨキ > パンチを二の腕で受け止めながら、明るく笑う。
「ふッ、はは!照れてくれたかね。傷が開かないとよいのだがな」
相手の念を押す言葉へ、鷹揚な首肯を返す。
「ああ。君が大丈夫だと言うのならば、それで構わん。
ヨキは君の先生であるから……気が楽になる拠りどころの、そのひとつで在れればよい」
どこか芝居がかった大袈裟な口調は、相手からの言及を受けても崩れなかった。
「……女たらし?
はは、しょっちゅう言われるよ。もはや定評さ。
だが“悪い大人”とヨキの異なる点は、ヨキの思いやりは底なしということだ。
アフターサポートも万全。その気になれば、長い付き合いが楽しめる」
優良物件というやつだ、と、臆面もなく自分で言った。
■和元月香 > 「.....まぁ、敢えて言える不満なら、
生活がかなり不便だってことですねぇ。
新鮮だから、楽しくもあるんですけど」
少し気が緩んだらしく、そう苦笑しながら呟く。
学校も暫く休むことにしたし、これからどうなる事やら。
まず両親の目を何とか誤魔化さなければ。
「あふたーさぽーと.....おもいやり...」
ぽけーっと虚空を見つめる月香の脳内で、
極めて紳士的にあんなことやこんなことをする目の前の教師が
次々と場面ごとに浮かんでゆく。
暫く想像を悶々と続け、「なるほど」と頷いた後。
「...そっか!ヨキ先生が悪い人じゃなくてよかったです!」
ぱっ、と一番最初の警戒心の無い笑顔を相手に向けた。
脳内に掠めた、薄暗い記憶を追いやるように。
■ヨキ > 「その手足の様子では、普段のように動き回れるまで時間も掛かりそうだな。
周りの友人らを、こんなときこそどんどん頼るといい」
数多の種族や事情を持つ者が在籍する常世学園の教師らしく、月香の身体能力や、家族を引き合いに出す言葉は口にしなかった。
宙を見つめて想像を巡らせる月香を黙って見返しながら、納得がいったと見るや機嫌よく笑う。
「そうだぞ。このヨキこそは、常世島の良心を体現する男であるからな。
こんなに人のよい教師は、そうそう居らん」
ふふんと鼻を鳴らす。
それから、歳の離れた友人のように人懐こい半眼で相手を見遣り、
「……で。今の妙な間は、いったい何を想像していたのだね?」
■和元月香 > 「...ですね!こんな時にこそ迷惑かけねば」
コミュニケーション能力は比較的高いため、
学園内に友人は多く、何人かを思い浮かべながら
にやりと悪どい笑みを浮かべて企むように。
まぁ、いつも迷惑をかけているような気もする。
.....特別言及がないのは、月香の場合ややこしい説明を
強要されないので結構助かっていたりしているのだ。
「まじでそう思います!
私もなんだかんだヨキ先生が1番話しやすいし
優しいし、かっこいいし、生徒のこといっぱい考えてくれるし、
.....めっちゃいい先生だと思いますよ!」
ノリノリで相手をべた褒めする。
決して嘘はついていない。
「.....え?」
尋ねられた妄想の中身に、思わずきょとんとして。
.........時間差で放送禁止用語を二言か三言、
真顔で見つめ返しつつ呟くように答えた。
■ヨキ > 「そうそう。それに……友人のみならず、ヨキもその『頼りにする』相手の一人としてほしいね。
学生に対する心身の手厚いサポートは、教師の最たる役目であるから。
あはは、そうやって褒めてもらえるのはいつでも嬉しいな。
だからこそ、学生から褒められたとおりの教師で居ようと努められるのだ」
嬉しそうに後頭部を掻く。
「かく言う君こそ、明るい様子は見ていてとても気持ちのよいものだ。
それでいて、心遣いがきちんとしていて無神経ではない。
自分なりに考えているのだろうと窺える学生は、こちらこそ信頼もおけるというものだ」
大らかに微笑み、相手を真っ直ぐに見つめてそう断言する。
――続けて真顔で答えられた放送禁止用語には、しばし目を丸くする。
けれど二三の瞬きですぐに口を開き、月香の肩を叩く仕草(身体のどこを怪我しているか、判ったものではない)。
「……ははは!まったく君と来たら、…………。
それは卒業式の後にな」
照れも、気分を害した様子もない。
微塵の動揺もなく、あっけらかんと言い放った。
「その想像の、十倍は巧いぞ」
■和元月香 > 「言われなくとも頼りにしてますよ!
...ヨキ先生がいい先生なのは本当なんで」
悪戯っぽく小首を傾げてみせる。
しかし。
「...へへ、そうですかぁ。
信頼できますかぁ.....」
自身を褒められるなり、
頬を染めて照れたように微笑んだ。
未だに褒められるのは慣れず。
「.......い、いや、私がやられたいわけでは」
何故か慌てて弁解する。
そういう趣味ではないというか、
声が結構マジだったせいなのかは月香も分からなかった。
うぅ、と俯いた顔は確かに赤かったのはただの名残かそれとも。
■ヨキ > 「有難う。ふふ、かわいい教え子の言葉は疑ったりしないさ。
その代わり、ヨキも学生たちへ嘘は吐かない。絶対にな」
表情こそ微笑んでいるが、茶化すでもなく、語調は至って真面目だった。
自分の返答に慌てる月香へは、わはは、と否定の形で軽く手を振る。
「なあに。卒業までに良い相手が居なければ、ヨキが相手になってやろう、とそれだけのことさ。
大抵は恋人の一人や二人や三人を経て、ヨキのことはどうでもよくなってしまうものでな。
そんなこんなで、ヨキは未だ独り身で教え子を送り出し続けている」
赤面する相手を余所に、ぺらぺらと言葉を続ける。
「君にはそういう……誰か、居ないのかね?『いい人』や、『いい人候補』になりそうな相手は?」
■和元月香 > 「...手慣れてますねぇ」
一連の言葉を受けて、そう一言じとりと恨みがましく呟く。
翻弄されているのが、ほんのちょっと悔しいようだ。
「やっぱり生徒にもてーだしてるんだー。
別の意味で悪いおとなだー」
再び軽くパンチしながら。
別に咎めるつもりは無いし、心配はしない。
この嘘をつけない先生のことだ。
ちゃんと順序も踏んでお互い同意の上だろう。
「.....〜っ、なんっでみんなそういうことを.....」
むすっとしたような、何故かどこか嬉しそうに吐き捨てれば。
ちょっと迷った後にいつもの笑顔を取り戻し。
「気になる人はいますけど、
あんなことやこんなことは多分できませんよ? 」
■ヨキ > 「悪党ではないが、慣れていることは否定せんな。
場数の多さというものだ。
言ったろう、『卒業式の後』と?在学中は、あくまで先生と教え子だ。
だから約束など交わした日には、卒業式の終わるのが楽しみでな」
口ぶりからして、当日だ。終了後の流れるような直行コースだ。
「気になる人が居る?おや、それはよかった。
こう言っては何だが、安心したよ。君は何だか……」
ヨキにしては珍しく、少し考えるような間。
「いつも明るいけれど、“何かひとつに心を傾ける”タイプにはあまり思えなかったものだから。
……いや、妙なことを言ってしまったな。これは失敬」
自分でも何を言っているのだか、とばかり、困ったように笑った。
ご案内:「列車内」に和元月香さんが現れました。
ご案内:「列車内」に和元月香さんが現れました。
ご案内:「列車内」に和元月香さんが現れました。
■和元月香 > 「...そうですか、よかったです。
大胆なのか紳士なのかわかんないですけど」
あぶないあぶない。
もう少しで通報するところだった。
「...........」
誰か一人に心を傾けるタイプには見えない。
その言葉に、少し困ったように笑う。
多分、間違ってはいないのだろう。
そして何かを言いかけて、急に停車を知らせる車内放送が
電車の中に響き渡る。
「.....もう行かなくちゃ。先生、さよなら」
そして電車が止まれば、へらりと笑って電車を後にするだろう。
まるで意を突かれたようだったが、月香は何も言わなかった。
ご案内:「列車内」から和元月香さんが去りました。
■ヨキ > 「両方、と言って欲しいところだな?」
不敵ににやりとするが、自分の一言に押し黙った月香の顔を見る顔は真面目だった。
言葉を待ったが――会話を遮るアナウンスに、スピーカーを一瞥した。
やがて、挨拶を済ませて電車を後にする相手を見送る。
「……ああ、済まない。
またな、和元君。……おやすみ」
扉が閉まる。窓越しに去ってゆく月香の背中をしばし見つめて、正面に引き戻した目を伏せる。
「………………、」
過ぎ去る街の灯に照らされて明滅する車内は、無人のようにひっそりとしていた。
ご案内:「列車内」からヨキさんが去りました。