2015/07/04 のログ
ご案内:「リフトFree(一日券)」から秋尾 鬨堂さんが去りました。
ご案内:「Free1」にチェシャさんが現れました。
チェシャ > 互いに華麗に雪の上を競い合いながら
最後の最後、負ける手前で超人的な加速を行った猫が、このまま彼を引き離して
レースの幕は閉じるのか?
もし、観客がこの場に居れば誰しもがそう思ったであろうレースの行方は
突如、白猫にかかっていた魔法が解けるかのような、あっけない失速と共に
その横を去っていく秋尾を勝者として、幕が閉じた

降りた訳ではない
彼の呟きが、耳の良い猫にはしっかりと届いた
きっと、聞こえないであろうその答えを、白猫は白銀の世界の中へと返した

「降りた訳じゃないよ……でも『ふわふわの走れる時間』は終わった
もう少しだけふわふわの加速が早かったら、もしくはもう少しだけ時間があったら勝っていた自信はあるよ
――……でも、勝負って言うのは『時の運』と呼ばれるものがある様に
どうやら『時』と『勝利の女神』は秋尾に味方していたんね」

負けたのに、気持ちがいいのは
きっと彼との走りが気持ちよかったからであろう
決して踏めなかった訳でもないが、只の猫として走るにも
そりを引く事すらその身ではままならない
「またいつか、走りたい、勝ちたい、そしてまた楽しみたい」
そんな思いを胸に抱きながらも、夏の雪原の中で猫は
頑張ったご褒美のローストビーフを貰えば、夢中になって食べる

遠く遠くへ行った彼の、最後の言葉が聞こえたのは
魔法のせいか、或いは猫の耳が良いせいか?
「待っているヨ」と、言われれば
「またチェシャも逢いたいよ」
と、小さく返して、その華奢で小さな身体を
そっと、そりに乗って全身をローブで覆っていた女性が胸に抱く

真夏の太陽の下で、その蜜の様に鮮やかな琥珀を
日の光で反射させながら――……


『ふふ……秋尾、と言った男性は、私達を「季節外れのサンタクロース」と
思っていたわね……言い得て妙、とも言えなくは無いのだわ』

彼が去って行った先で、初めてその女性は口を開いて、実に妖艶な笑みを魅せた
見えるのは口元だけであろうが、もしその場に誰かが居たら魅了されていたであろう
……さて、この女性とは一体…………?

西洋魔術にて、惑星に関する魔術を行う時は
『惑星時間』と、呼ばれる時刻表がある
簡単に言えば、その7惑星に当てはまる曜日と、惑星時間に魔術を行うのだ

彼女自身ある意味では『金曜日の化身』とも言えなくは無い上に
乗っていたそりを引いていた『猫』は『金星』の象徴
『金曜日』の今日の『金星の惑星時間』にて
その力は最も発揮され、彼との勝負を行っていたのである

……では『その女性』が、季節外れのサンタクロース台詞に微笑んだ理由は……??

では、先ずサンタクロースの成り立ちから解説しよう
サンタクロースは現在、トナカイを引いたそりに乗り子供たちへのプレゼントと
白い髭と赤い衣装が特徴である

……けれど、そのサンタの元を辿れば、オーディン神に行きつくのだ

オーディン神とは、この雪原に相応しい北欧神話の主神である
彼はスネイプニルという八本足の馬を引く馬車に乗り、老人の姿で冬の夜空を駆け
時には予言をし、時には病気を治し、時には人を裁き……
そして、時にはあの世とこの世の使いとなっていた

そんな彼の姿を、決して見てはいけない
見た者は、あの世とこの世の使いとして、あの世へと連れ去れてしまうから――……
けれど、彼の姿を見ず 彼への供物を長靴の中に入れておくと
彼が供物を受け取って、そのお返しが置かれるという――……

そして、これも諸説があるのだが
オーディンの妻をフリッグというが、其れはとある女神の別名とも称される事がある
もし、妻でなくとも彼女はオーディンの愛人であり
『愛人』もまた『金星』の象徴である――……

そんな、金星の象徴である女性の名は『金曜日』の名前の由来となった
美と愛欲の化身の女神であり、魔術に長けているのであった
彼女達の国を連想させる雪原の中で

『金曜日の化身であり名前を持つ美女』は微笑みながら『猫』を抱き
暫しの間楽しませてくれた男性の去る後を見つめるのであった――……

『ふふふ……気に入ったわ
貴方をいつか、連れて行っても良いかもしれないわね……』

さてさて。その女神の名前だが
美の女神であると同時に、戦争の女神としての反面も持ち合わせている
北欧神話では、死んだものは『エインフェリア』としてオーディンと彼女によって二分されるが
その伝承から、北欧では死ぬ事を
『フレイヤにつれて行かれる』と、言い回す

内に激しい闘争心を燃やしつつも、美しく気品がある彼はきっと――……
面食いの女神にはお気に召すかもしれない
そんな、北欧の神話じみた、真夏の昼の夢