2015/08/07 のログ
ご案内:「夕霧の自宅」に夕霧さんが現れました。
夕霧 > 夜中。
カン、カン、カンと。
階段を上がる。
ゆっくりと自室のある階へと。

「……」
息を吐く。
後輩との件が少しだけ引っかかる。

何がどうひっかかるのか、今の彼女にそれを表現できる言葉は無かった。
ただ無言の違和感、と言うのか。
言葉には出来なかった。

その後の仕事中もどこかかみ合わない感覚。
とはいえ、その原因が己にあるというのはわかるが。

それがどういう意味であるのかは未だ理解は出来ていない。

「……?」
ルーチンのように鍵を取り出し、回した所で違和感。
鍵が閉まる。
と言う事は。
鍵が開いていた。

夕霧 > 無言で中の様子を探る。
気配がある様子は無い。

さて、侵入されるような理由は、今の所思いつかない。
既に気配も無い。
気配を殺している様子も無い。
一応扉を少しだけ開けて上下を見るもののトラップの様子も無い。

「……」
それ以上の思考は無意味。
扉を開けて中に入る。

入れば。

夕霧 > 其処に広がるのは何者かが侵入してきたとは真逆に、片付けられた部屋。
脱ぎ散らかしていた衣服は洗濯機の中に入れられ、散乱していたゴミは一つに纏められている。


そして片付けられたはずの部屋からする。

あの匂い。

「―――あぁ」

【好きにしろ、好きにする】

思い出すのはその言葉。
要はそう言う事なのだろう。

寝室へ、ベッドへ近づけば。
匂いは一層キツくなる。

あの二夜を思い出す。

ベッドは片付けられたのとは逆に、人が転がった形跡。

「これはまた」
苦笑。

ベッドに滴り落ちた、血痕と転がる小さな肉片。

夕霧 > ちら、と棚を見れば。

「……見はったんですね」
カチャ、と棚を開ける。
一度開けた痕跡。
中身は変わらず。
ただ見ただけ。

閉じる。
見られたから、どうと言うことは無い。

見た彼がどう思ったか、気になるが。
「ふふ」
笑う。

ただその笑いは自然と出た笑い。

・・
擬態した彼女の笑いでは無く本心からの。

「しかし弱りましたなァ」
ギッ、とベッドに片手を置く。

その匂いは既に寝室一杯に充満するほど濃い。
部屋の暑さと相まって、匂いと熱気が凄まじい。

「こんな匂いに囲まれてうちに寝ろと」
流石に無茶がある。
おかしくなりそうだ。

夕霧 > ―――。
マトモに寝れそうもない。
ソファで寝るのも考えたが。

そんな気分でも無くなった。
適当に夜歩きでもして夜風でも当たらなければこの昂ぶりを抑えれそうもない。
このまま寝れば明日の仕事に支障が出る。

ベッドから手を離す。
その際にひょい、と小さな肉片を拾い上げた。

大元。
手に取れば更に匂いが近づく。
流石にクラクラしてくる。

「……」
少しだけ考えて。

夕霧 > その肉片を口へ放り込んだ。
夕霧 > 噛んでみるものの、ゴリ、と噛み砕けそうもないのでそのまま飲み下す。
異物が喉を通る感覚。
吐き気すら伴うその感覚。
同種を食ったと言う背徳。
その癖。
匂いだけは蠱惑的なまでに甘かった。
全て諸々を込めて。

「……まずいですなあ」

最終的な出た感想はそれだけ。
それ以上の感想は出ない。

彼女のようにはなれないようだ。
最もなる気もない。

窓際まで行き窓を開ける。
この匂いは非常に魅力的だが。
ずっと嗅いでいるというのは流石に色々と難しい。

拾い上げた指についた血を舌で舐めとる。
舐めるたびに粘着質な音が上がる。
ねちゃり、と。
飲み下すにも音が大きくなる。

血痕だけはどうしようもない。
乾くのを待つか次の日にでも洗濯するとしよう。

寝室から出てまた玄関へ。

人とは会わないようにしよう。
そう、考えて。
彼女は自分の部屋をもう一度、後にした。

ご案内:「夕霧の自宅」から夕霧さんが去りました。
ご案内:「島外大洋上空」に久藤 嵯督さんが現れました。
久藤 嵯督 > 常世島から遥か離れたところにある大海原。
常世財団と関係を持つ国家の領空であるその遥か上空にて、一つの機影が空を裂いていた。

パイロットは久藤嵯督。
島に来る前は何度か死線を共にした機体である『烏改』を駆り、航空演習に励んでいた。

久藤 嵯督 > (よりにもよって、このタイミングで航空演習か)

常世島での出来事を報告するため一度本部へ戻った嵯督であったが、その際命じられたのが今のこれだ。
確かに『門』からの侵略者の中には、先日の『大蝙蝠』や『翼竜』などといった空を飛ぶ生物もいた。
嵯督はこれを自力でしがみついて討伐したのだが、
これが軍団で襲ってきた場合の事を考えれば、それだけではとても島を守りきれないという事が容易に予測できる。

このようにして演習を行う理由だけなら取ってつけられるが、財団の真意が如何なるものであるのかは掴めない。
純粋に対抗手段としてのものであるのか、それとも……

久藤 嵯督 > 急上昇、急速旋回、急降下―――

「―――ッ!」

いずれも肉体に多大な負荷を与える機動である。
特にこの『烏改』は搭乗者の負荷を無視した……機体としては失敗作にあたるものなので、それがより顕著である。
そのため本来の設計思想とは違って、実質久藤専用機として運用されている。
並の人間であればまず失神するだろうし、それを超えてあまりにも無茶な機動で動けば今度は空中分解。
嵯督も一度それで機体をバラバラにした事があったので、その限界の線引きをもう一度おさらい出来ることを有意義に思っている。
黒い機体は月光を映し、そして雲中に隠れてしまう。