2015/09/27 のログ
ご案内:「クローデットのおもいで」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 私は、少し大きくなって、ちゃんとした魔術の勉強を始めていました。

お父様の話は、誰にも出来ません。
お父様のことを聞こうとすると、みんな、悲しい顔をするか、怒ってしまうのです。
私は、「お父様を慕うのは良くないことだ、いけないことなのだ」と思うようになっていました。

お父様がいなくても、私の家族は、みんな親切に魔法を教えて下さいます。
お母様は、錬金術や、魔法の道具を作るための魔術を。
おじい様は、四大元素を使った魔術を。
おばあ様には、悪魔を召喚して助けてもらう方法について教わりました。
…でも、悪魔を召喚するのは怖くて、私は、魔力を少し分ければ満足してくれる、下級の使い魔を呼んでおばあ様に安心してもらうのがやっとでした。

ひいおばあ様は、今はご自分では使われないけれど、白魔術の使い方については、ていねいに教えて下さいました。
傷のいやし方。悪魔や、呪われた動く死者をあるべき場所にかえす方法。

私は、人の役に立ちたいと思う気持ちが役に立つ魔法であり、本当に人の役に立てる白魔術を覚えられることが、本当にうれしかったのです。

クローデット > それでも、教えて下さるひいおばあ様は、

『こんなもの、何の役にも立たない』

と、悲しそうな、それでいて怒っているようなお顔をなさいます。
私がもっと小さかった頃、大おば様をお助けする事が出来なかったお話を、ひいおばあ様はして下さいました。

でも、ひいおばあ様の悲しみは、お怒りは、もっと深いような気がして。
私は、ひいおばあ様におたずねしたのです。

「こんなにすてきな魔法なのに、ひいおばあ様ががんばって勉強なさってきたことなのに、どうしてひいおばあ様はそんなに悲しそうで、お怒りでいらっしゃるのですか?」

と。

クローデット > ひいおばあ様は、白魔術が苦手とすることについて、お勉強として説明して下さいました。

『あなたがこの問題に突き当たるのは…ずっと、先になると思うけど。
その時に諦めないように、最初に説明しておくわね。

白魔術は「復元」する形で身体を治す魔術だから、けがを治すのは得意だけど、病気を治すのはあまり得意じゃないのよ。
特に…自分の身体が悪さをする、アレルギーとか…がんみたいな病気にはね。
………だから…私は、あなたのひいお爺様を、助ける事が出来なかったの』

ひいおばあ様のお顔を、涙が一筋、流れました。

クローデット > 『ひいお爺様はね、とても優しいお方だったのよ…』

ひいおばあ様は、涙を流しながらお話しして下さいました。

ひいおじい様が、ベルナデット大おば様の死を本当に悲しまれ…ひいおばあ様と2人で、寄り添って泣いたこと。
世界が異能やよその世界の人の存在を認める事にし、これまでの争いに謝った時…認めない側として争ったひいおばあ様達には何の言葉もなくて、ひいおばあ様が悲しくて腹立たしくてたまらなかったときに、
『これからは未来を見よう、傍にいるから、争いの連鎖を断とう』
と、優しく抱きしめて下さったこと。
それでもひいおばあ様はがまんが出来なくて、【レコンキスタ】という組織に参加しようとしたときに、
『「ヒト」として、正面から向き合うことをやめてはいけない』
と、悲しげにおっしゃったこと。
それでも、ひいおばあ様やおじい様、おばあ様が【レコンキスタ】の活動を続ける中で…お父様の面倒を、優しく見てくれていたこと。

クローデット > ひいおばあ様は、世界に当たり前のように認められた異能者やよその世界の人がにくくてにくくてたまらなかったのだけれど、ひいおじい様がご存命の間は、攻撃するのは
「悪いことをする異能者やよその世界の人」
だけにするよう、がまんなさっていたのだそうです。
それでも、
『何の覚悟もなく力を持たされてしまった彼らこそ被害者じゃないか』
『この世界の事をきちんと学べば、共存出来るかもしれないのに』
と、たくさん怒られたのだそうです。
ひいおばあ様は、悔しくて悔しくてたまらなかったそうです。
『私達は、ずっと昔から隠れて、世界と折り合いをつけようとしてきたのに、ずっと認められないままだったじゃない。
なのに、何で彼らは最初から甘やかされているの?』
と。

それでも、ひいおじい様が悲しそうなお顔をなさるから、ひいおじい様が
『きっと未来はもっと良くなるから、我慢しよう』
とおっしゃるから、ひいおばあ様はがまんし続けたのだそうです。

クローデット > それでも、ひいおじい様は「がん」という病におかされてしまって。
普段はひいおばあ様が白魔術で苦しみを和らげることが出来てしまうので…病院にかかって、病気が見つかったときには、手遅れだったそうです。

ひいおばあ様は白魔術を得意としていたので、人の身体のことにはお詳しくなかったのだそうです。
それでも、科学で無理なら魔術でいやすしかないと、一生けんめい研究なさって、がんを治すための白魔術を編み出すことは出来ないか、がんばったのだそうです。
【レコンキスタ】の活動を、後回しにしてまで。

クローデット > 結局、ひいおばあ様の研究は、間に合いませんでした。
ひいおじい様は、科学を使った治療の中で、苦しみに苦しんでお亡くなりになって…ひいおばあ様も、蘇生を諦めたのだそうです。
病気を治すことが出来ないのに生き返らせてしまっては、苦しみを長引かせてしまうだけだから、と。

ベルナデット大おば様と、ひいおじい様。
お二人を助けることが出来ないことにがっかりなさったひいおばあ様は、ご自分で白魔術の研究をするのを、おやめになってしまったのです。

そして、ひいおばあ様の目の色は、そのころに赤くなったのだそうです。
私やお父様と同じ青い瞳の色が抜けて…血と同じ、赤い色になったのだと。

クローデット > 『昔は、アルベールも良い子でね…ひいおばあ様が辛いのをよく分かってくれたのよ』

ひいおばあ様は、ひざの上に置かれた手を、強く握りしめていらっしゃいました。

『だからね、アルベールがやっている研究も、最初は私達のためだったの。
…それなのに、異世界人(ヨソモノ)と接しているうちに、情が移ってしまったのね…』

ひいおばあ様の口が、悔しそうに横に広がり…私は、ぎり、と噛み締めるような音を聞いた気がしました。

『………あの子は、私達を…私を、裏切ったの』

私は、お父様を慕ってはいけない理由を、やっと分かることが出来ました。
お父様は、ひいおばあ様や…おじい様、おばあ様。
そして、お母様の気持ちを考えるのをやめてしまったのだと。
だから、悲しまれ、怒られているのだと。

クローデット > 『クローデットは…私を、裏切らないでいてくれる?
ひいおばあ様が悲しい気持ちでいるのを、忘れないでいてくれる?』

ひいおばあ様は、悲しい目をしておっしゃいます。
私は、ひいおばあ様にこれ以上悲しんで欲しくなかったので、頷きました。

『ああ………ありがとう、クローデット』

ひいおばあ様は、涙を流して、私のことを抱きしめて下さいました。

クローデット > 「でも、ひいおばあ様。
私は、ひいおばあ様を大切に思う気持ちを、魔術に活かしたいです。
それが一番出来るのは…白魔術です。
ひいおばあ様は、役に立たないとおっしゃいますけど…私は、白魔術のお勉強を、がんばってみたいです」

私がそう言うと、ひいおばあ様は、驚いた様子で私の顔をご覧になって…そして、少し辛そうに、お笑いになりました。

『………そうね、クローデットみたいに良い子なら…きっと、白魔術も上手く使えるわね。
いいわ…ひいおばあ様が覚えている白魔術、全部教えてあげる』

そうして、私とひいおばあ様の、白魔術のお勉強は続いたのです。

ご案内:「クローデットのおもいで」からクローデットさんが去りました。
ご案内:「風紀留置所」に洲崎さんが現れました。
洲崎 > 質素な簡易ベッドに寝転がりただただ一転を見つめる
何もない壁、何もとらえない瞳でただじっと壁を見つめたまま男は寝転がる

何も語らず
何も答えず
気が付けばここにいた

洲崎 > そして最後の記憶を思い出す
自分は死んだはず…確かに脳が焼き切れ事切れたはず
それなのに…何でこんなところに寝転がっているのか?
こうして意識もあり体も動く
ここでは試せないが魔術も少しなら行使できる…と思う

「……何でなんだろ…」

分からない
思考はハッキリできるのに答えが出てこない
否、認められない

洲崎 > 認められるものか…これ程までに練り上げたプラン
その最終段階の最後の最後で自分が自分のプランをぶち壊したなんて

「ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない」

呪詛のようにただひたすらに自分に言い聞かせる
そんなことはあり得ないあって良いはずがない
彼女の再誕を自分の下らない命の為にふいにしたなんて

洲崎 > 舌を噛み切りたい
首を切り裂きたい
刃物かガラス片でもあれば事足りる
そんな事をしようと治療されて終わりだが

「ありえないありえないありえない……僕が生きてるなんて…」

希望の消えた男の末路
今までは希望があったがそれはもうない
たとえここから逃げ出せたとしても、一度答えた呼びかけにはもう答えない
彼女に対しての無礼…生きてるだけで儲けもののはずなのに…

洲崎 > 生き地獄…そういっても差し障りない精神状態の中
男はゆっくりゆっくりと狂っていく

ご案内:「風紀留置所」から洲崎さんが去りました。
ご案内:「美術室」に四季 夢子さんが現れました。
四季 夢子 > 合切を鮮やかな茜色に染め上げる光景の中でも、染まらず主張をするのはテレピン油の匂いだ。
茜色に染まるとも鮮やかさを受けるが故に陰影を深めて、まるで深慮するかのように見えるのはデッサン用の胸像。
居並ぶ画架の影は伸びて床に複雑怪奇な図画を記し、何某かの不可思議な意味を持っているかのように視える。

穏やかな賑やかさと騒がしい静けさが同居する、人の気配もすっかりと失せた黄昏時の美術室。
凡そ教室の類は数あれど此処程個性的な場所を私は知らない。
学園祭が近い所為か展示用と思しき作品群があるとなれば尚更のこと。

「ふぅん……学園祭、か。」

御行儀悪く教卓に座る私が足を揺らすと踵が当たり、教室の様相に添わない明朗な音が響く。
そして傍らには数冊の本が積まれているのだけど、これらの内訳は古今を問わずジャンルも問わない色々。

――何をしているのか?
読書や芸術の秋と洒落込もうにも酔う程の何かも落ちてはくれず、結果としては何となく家に帰る気になれない私が時間つぶしをしているだけよ。
持ち込んだ本の頁を適当に捲ったり室内の様相に独り頷きながら、さも何かに納得したかのように、とかね。

四季 夢子 > 「皆色々と作るなあ。まるでちょっとした展覧会みたいよね。」

作り掛けと思しき彫刻や、完成品と思しき彫金細工のオブジェ。時計塔をモデルにした絵画は微に入り細にわたって描かれているように視えた。
実際はどうかは判らないし、解らない所。幾ら実家が書画骨董を取り扱っていたとしても、私に芸術審美が出来る程の鑑識眼なんてものは無いんだもの。
将来的には得るのかもしれないけど、少なくとも今は無い。

精々が……そうね。ああ、綺麗な絵だとか、格好いいオブジェだな。とか、至極一般的な感想を抱くくらい。
教卓から降りて、作品群の並ぶ台の前を行ったりきたりし、誰もいないのを良い事に好き放題の感想を述べるくらいの一般的。

「考えて見たら当日は人でごったがえしそうだし、今の内に観ておくのも悪い事じゃあないよね。……別に壊そうとか、そういうのじゃないんだし。」

その一般的な行為の道すがらに、足元に転がる小石程度の与太が私の心裡に灯る。……ちょっと無用心すぎやしない?と

「教室、鍵くらいかければいいのに。単に掛け忘れかしら?」

傍らの深慮するかのような彫像に問うてみるも、彼が答えることは無い。
角度を変えて視ると少し困り顔のようにも見えて、何処か能楽の面を想起させた。