2015/09/28 のログ
ご案内:「美術室」に朝宮 小春さんが現れました。
■朝宮 小春 > 「ふぅ……」
ため息が一つ出てくる。理科室、理科準備室の戸締まりをしようと思ったところ、美術室もついでに、と鍵を渡されてしまったのだ。
美術室と理科室は、それなりに離れているのだからなんとも理不尽な物を感じなくもなかった……けれども、そんなことで不満を言っても始まらない。
元気に理科室と理科準備室の鍵を締めて、今はサンダルの音をパタパタと鳴らして、美術室に向かうところ。
「………さて、鍵を閉めたら………ああ、今日はこれで終わりかしらね。」
思い出すけれど、特にお仕事はもう無かった気もする。
であれば、まっすぐに帰って一つお掃除でも。
そんなことを考えながら美術室の前にやってくると、半分開いていた扉に手を伸ばして、ばたん、っと扉を閉め始めてしまう。
ぼんやりとした夕暮れ。部活も今日はしていない、ということだから……何も考えずに鍵穴に鍵を差し込んで、がちゃ、がちゃ、っと音をさせる。)
■四季 夢子 > 「ま、掛け忘れだろうとそうじゃなかろうと、私には関係ないんだけどさ。」
相槌を求めるかのようにデッサン用の彫像の頭をぺちんと叩く。
やっぱり反応なんてものは無かった。
そうして与太は与太であるだけに直ぐに過ぎ、私の目線は再び作品群へと戻るのだけど
その中に奇妙な絵を見つけると、茜色に染まるとも染まらない蒼天のような瞳が眇めるようになってしまうの。
「………こんな場所でもさ、こういうの描く奴って居るのね。」
それは"個性"と題された絵で、誰が描いたのかは記されていない。
肝心の絵の方はと言うと、全身を真っ黒に塗られた人達の輪の中に全身が真っ白な一人の少女が立っていて
黒い人達の視線は白い少女に注がれていて、一方の少女は瞳を閉じてしまっている。と言う物。
繰り返すけれど、私には特別な審美眼なんてものはない。
でも、それは酷く悪趣味に感じられた。
ただ、そう思うのと同時に背後の扉から鍵のかかる音がするなら
そんな感想は陶芸家が出来損ないの作品を叩き割るかのように消えてしまうわ?
「え"っ、ちょ、待った!入ってる、はいってまーす!!?」
だって閉じ込められそうになってるんだもの。踵が勢いよく返って、扉に向かって走りながら割れ鐘のような大声だって上がる!
■朝宮 小春 > ふい、っと背中を向けて、さあ帰るかー、なんて伸びをしかけたところで。
背後から勢い良く声が響き渡るのだから、びくり、っと身体が跳ねてしまう。
「え、え……っ!? まだ誰かいたのっ!?」
慌てながら、もう一度こちらも鍵を取り出して、がちゃがちゃ、っと鍵を鳴らす。
横に開けば、慌てた表情の生徒が一人、扉の向こうに立っているのだから。
「………あら。」
それが見知った生徒であれば、少しだけ驚いた表情で目をぱちくり。
その上で、くす、と小さく笑ってしまって、両手をぽん、と目の前で合わせる。
「ごめんなさいね? でも、もう下校時間なのに、何をしていたの?」
素直に確認不足を謝罪しつつ、……首を傾げて、相手の顔をじっと覗きこむことにしよう。)
■四季 夢子 > 鍵のかかった扉を叩きながら、映画でよくあるような肩からのタックルを試みるのだけど
ただ肩が痛いだけで、映画俳優も大変ね。なんてどうでもいい感想を抱いた。
尤もそんな俯瞰が出来るのは、鍵を掛けた誰かが故意にそうした訳では無いと知れたからでもあるのよね。
がらりと開けば安堵の溜息をそりゃあ大袈裟に吐く私の姿が見える筈で
私が表を上げればうっかりさんの顔も視れる訳。
「………あら。じゃあないわよ一寸!?もー朝宮先生ったら、危うく私が世紀の大脱出をする羽目になる所だわ。」
瞠目する相手に倣うように瞠目して、一拍おいてから地団太して大声が一つ、人の気配の無い廊下を跳ね回る。
「え"何をって……暇潰しよ暇潰し。何となく時間を潰そうと思ってうろうろしてたら、美術室の鍵、開いてたから……
あ、言っておくけど作品には触ってないからね?誰かが作った物を壊してやろうとか、そういうんじゃないんだから……!」
顔を覗きこまれると後ろめたい事はないのに、何故か弁明するようになってしまって、跳ねる言葉に呼応するように両手が忙しなく宙を掻き
身振り手振りで注釈を加え、諸々の事情をかくかくしかじかと告げもした。
「それでまあ……鍵、閉めるのよね。それなら閉めないと先生の管理責任になってしまうから……場所、移動した方がいいかしら?」
■朝宮 小春 > 「………だ、だってそんな、今の時間に人がいるだなんて思わないもの。
……ま、まあ、それでも、ごめんなさいね?
お詫びは簡単なものでお願いします、なんてね。」
ごめんね、なんて手を合わせてお願いしてみる。
世紀の大脱出をする夢子さんは見てみたい気もしないでもなかったけれど、それよりも、地団駄を踏んで不満気な相手に謝罪をひたすらにしておこう。
「………? ああ、確かに素敵な作品が多いものね。
そういえば夢子さんの実家は美術を扱っていたんでしたっけ。
それなら、多少は気になるものがあるのかもね。 何かいいもの、あった?」
弁明するようにあたふたする相手を気にすることもなく、自分も一緒にひょい、と美術室の中に入れば、周囲を見回して。
「……ああ、わかってるわかってる。 先生ちゃーんと分かってます。
それに、私は外から鍵をかけられることも無いんじゃないか、って思うから大丈夫?」
日頃の行いかしらねー、なんておまけをつけながら、ふふふ、と笑う。
素直に美術室の中に足を踏み入れて、彫像を見上げ。
■四季 夢子 > 地団太を踏む度に頬が風船のように膨らみもするけれど、お詫びの手綱を握ったなら一先ずぶしゅーと鎮まるこの私。
脳裏には「橘」の季節のデザートが幾つか浮かび、釣られて口端が北叟笑むように歪んじゃう。
「んふふふ……聞いたわよ。一度吐いた唾は飲めないからね、愉しみにしておこうっと――
――と、私の家は美術……ってよりは古い物って色の方が強かったかも。
蔵の中には綺麗だなって思う物よりも何だか良く解らないガラクタみたいなものも多かったし……
ま、その頃は私はまだ小さかったし目利きなんて出来やしなかったんだから、実際は御宝だったのかもだけどさ。」
行雲流水、或いはマイペース。そんな様子で美術室に入り込む朝宮先生の後を追い、実家について簡潔に述べ
気になるものはと言われたら"いいもの"とは思えなかったけれど先程の悪趣味な絵画を指差す。
「あの絵はちょっと不気味かなって思うくらい。後は……どれも綺麗かなって。
期待されても私、そういう勉強してないから普通の事しか言えないわ?」
朝宮先生の根拠の無い自信に満ちた笑みはなんていうか、私よりもずうっと子供っぽくて屈託が無く見える。
合切を茜色に染め上げる夕焼けの見せる、黄昏時の杳の所為かもしれないけど、別段悪くは思わなかった。
■朝宮 小春 > 「安心なさい、ちゃーんと約束は守るからね?」
なんて、小さく笑ってウィンク一つ。
それで気分が治るなら安いものだ。 実際、どんなものを想像しているのかはわからないけど、この子ならそこまで無茶は言うまい。
「……ああ、なるほどね。
でも、こういうものをみて感想を持っておくことは大事かもしれないわ。
私もあまり今までは見ていなかったから、気になるって言えば気になるのよね。」
小さく呟きながら、じ、っと絵画を見つめて、順番に歩く。
「………なるほど、ね。
この学園にいる子は、みんな様々な事情を抱えているから、いろんな絵を描くのかもしれない。
………いいのよ。
人間、勉強をしてしまうと、「それを元にした」感想しか言えなくなっていくし、感じなくなるものだから。
勉強をする前に、たくさんたくさん見て、たくさんたくさん、感想を持っておいたほうがいいわ。
新しい物を見つけられなくなってしまうもの。」
なんて、言葉を重ねながらその絵画を一つ一つ、じっくりと眺める。
……根拠の無い自信? 根拠はあるわ、だって鍵は私が持っているんだもの。
■四季 夢子 > 「ええ、愉しみにしているから。」
朝宮先生が約束を破らないだろうなんて事は言うまでも無く解っていること
でも、言うまでもないだろう事だからこそ、きちんとするのって多分大事だと思うから
私も釣られ、張り付く事の無い笑顔を向けるのでした。
「百聞は一見に如かずって奴よね。ただまあ家の事に余り関係が無いとは言っても
こーゆーの観るのって私は好きよ。この島に来てからは御無沙汰だけど……ていうか美術館とかってあるのかしら。」
笑顔の後に呟きを返し、それが済んだらまたまた釣られて目線は絵画。
何度観ても不気味としか思えなかった。
「色々な事情ね……でもそれって普通の学校でも同じ事よ先生。
ここじゃあ何が普通なのか時々忘れてしまいそうになるけど……
ただ新しいものを見つけるって意味じゃあこの学園は色々と吃驚箱のようなものよね。
古きを訊ねて新しきを知る。なんて言葉もあるけど、ここの古い物って何かあったりもするのかな。」
顎に指を添えて天井を見上げる。そんな解り易い"考える人"をしながら脳裏に浮かぶはこの島の古いもの
――或いは古株?
■朝宮 小春 > 「ふふ、じゃあ、その時は家にでも来る? 準備しておくからお茶の一つでも?」
なんて、相手を誘う。
生徒を誘うなんて悪い先生だけれど、まあ、悪いことをしようというわけではない。
お詫びの品を振る舞うだけの話だ。
「んん、美術館は………見たことが無いけれど。
でも、異邦人街とかにはありそうだけど。……あまり出向いたこと無いのよね。
………そうね、普通の学校も同じ。
私も昔は普通の学校の先生だったから、分かるわ。
ただ、ちょっとだけその比率が高いだけかもね。
………………古いもの、ねぇ。 ………」
こちらも、顎に指をおいてううん、と考える素振りを見せて。
「……ヨキ先生が、10年くらい勤めているとは聞いたけれど。
それ以外に古いものは、それこそ学園そのものくらい?」
■四季 夢子 > ――鳩が豆鉄砲を食らったような顔。なぁんて言葉があるけど
この時の私は鳩が大砲を食らったような顔をしたような気がする。
気がするだけだから、慌てて自分の頬をぺたぺたと触って、取り繕うのはちょっと変にも視えてしまうかも。
何にそんなに驚いたのかと言うと――
「……いやいや先生の家って随分飛んでるでしょう!?
私はほら、「橘」でやっている季節のデザートプレートとかその辺を期待していたんだけど……。」
朝宮先生の距離感。
尚、何かを奢らせようと目論んでいた私の距離感の是非なんてものは私が起点である以上何一つ問題が無いので伏しておく。
もう一つ何に驚いたのかって言うと、美術館の行方とかじゃあなくって
朝宮先生から意外な先生の名前が出てきたからに他ならない。
「ヨキ先生って……確か美術の、あのせいたかのっぽの人よね。その……獣人の。」
私は獣人がちょっぴり苦手。
勿論無論でヨキ先生がそうであるかは知らないけれど
身体能力に優れていたり嗅覚に優れていたり気配察知に優れていたり
凡そフィジカル面において一般的な人間を凌駕している事が多いから。
――仮に透明になっても、私の事を容易く見つけてしまいそうだから。
「ちょっと顔が恐いというか、厳しい人だけど……でも先生だもんね。何かの折にお訪ねしてみようかな?」
ただ先生であるなら、その容貌がどうであっても良い人で頼れる大人には違いないのだから
偏見は良く無いと私は頷いた。
■朝宮 小春 > 「……あ、そういうもの? 私、有名所の和菓子とお茶くらいかなって思ってたのだけれど。」
金銭的にはほぼおなじくらいだけれど、距離感は大分近い。
首をちょこ、と傾げて、少しだけ考え。
「それもいいかもしれないわね、じゃあ、今度の帰りにでも寄りましょうか。」
ぽん、と手を打って微笑む。
思い出したら食べたくなる、ってことあると思います。
相手がちょっと驚いた顔をしているのだけれど、気にせずに。
「………ああ、ええ、長いらしいわよ?
私はそれこそまだ1年も経っていないから、そういう古い場所については、知らないことが多いわねー。
………獣人、だけれど、怖くないわよ?
それとも、やっぱり少し苦手、なのかな?」
相手にそうやって尋ねながら、椅子にそっと腰掛ける。
「やっぱり先生が怖いのかしら?」
なんて、くすくすと笑う。 両手を持ち上げて、がおー、っと脅かしてみたり。
■四季 夢子 > 「べ、別に先生が恐い訳じゃないってば!そりゃあ授業が厳しいとか、課題が多いって意味で恐い先生はいるけど
この場合の恐いはまた違うものだし……獣人は、正直ちょっと、恐いけど。」
先生が椅子に座り、私は御行儀悪く、所作正しく机に座って足をつまらなさそうに振った。
「……少し前に獣人の人同士の喧嘩を見た事があって、偶々片方が犬系だったからかな
姿を消しているのに「人間のにおいがする」なーんて途中で言い始めて危うくって奴。
だから恐いし、苦手。でも……大まかに言ってしまえばそれも自分と違うから恐い。って奴でさ?
しょうがないことよね。私がそう思うのも、誰かがそう思うのも。」
私がそう思うのも、私の親がそう思うのも仕方が無い。
仕方無く無くなってしまえば、私の立つ瀬は何処にも無くなってしまうから
だから、と、私はふざけて腕を振り上げる朝宮先生にふざけて芝居がかった怯える素振りと笑み顔を向ける。
「まー今一番恐いのは美味しいお菓子と熱い御茶って所……そうそうお茶と言えばなんだけど
この間友達と歓楽街で面白い香水を買ったのよ。それが紅茶の香りがする奴でね。
実は今もつけているんだけど、どう?わかる?」
転がるような笑み顔が話題を転がして、からりと入れ替わるのはいつもの私らしい話題。
先生の鼻先に手を翳してみたりもするんだけど、生憎と室内はテレピン油を始めとし雑多な画材と思しき匂いが強いから判らないかも解らない。
■朝宮 小春 > ………
「なるほどね。 それは確かにちょっと怖いかも。
………まあ、それは仕方ないことよね。
仕方ないからこそ、それを上手く和らげるためにこの場所があるようなものだし。
ああでも、生徒であれば話は別だけれどね、私は。」
そうやって言いながら、目を閉じる。
違うことを否定もしないし、それを怖いと思うことも否定はしない。
先生と生徒の関係だけは、相変わらずしっかりと錘を置いたかのように。
「………ふふ、もしも欲しくなったら何時でも言ってね。
貴方なら、別に部屋に来ても構わないし、お詫びもしなきゃいけないしね。
………?
紅茶の香り? ちょっとここだと絵の具の匂いが強くて。」
言いながら、顔をそっと近づけて、お互いの頬が触れないくらいの距離で、すん、っと鼻をならす。
相手にも、こちらのちょっと甘い匂いが届くくらいの距離。
「………あら、本当。 ふふ、こんなことを言うと変だけど、美味しそうな香り?」
くす、くすと口元を抑えながら、楽しげに笑う。
■四季 夢子 > 「で、でしょ?まあ物陰で物見遊山と見物してた私も私なんだけど……
そりゃあ私も先生なら別よ、べーつー。獣人の先生だって平気でへっちゃらよ……たぶん。」
夜の歓楽街の路地裏で酔っ払った獣人同士の喧嘩を見物していたから。
と、枕詞がくっついたりもするんだけど、それは言わずに大層居丈高に言い返し
欲しくなったらと言われたら、ちょっと悩むのだけど近々訪いますと言葉を正してこれも返す。
朝宮先生が私の手じゃなくて、顔に御顔を近づけると危うく言葉じゃあなくて私自身がひっくり返りそうになっちゃうんだけども。
「な、なんていうか先生って……将を射る前に馬を射るどころか、馬ごと薙ぎ倒す魔物のようなことをするわね……」
それを堪えて、緩やかに香る由来不明の甘い香りはなんぞや?とばかりに鼻をくんくんとしてみるのだけど
生憎と黄昏時に紛れて判らない。
「でも生憎とだけど、この夢子さんは食べられてはあげませんよーだ。紅茶の香りを纏うなら無茶にも為らずって奴。」
でも随分と日は落ちて間も無く夜にもなってしまいそうだったから、
私は机から降り、教卓に置き去りにされた本達を回収し朝宮先生に向き直る。
宛ら、夜に紛れる先生の後姿が何かの彫像のように視えて……
ひょっとしたら私はただ独りで喋っていたんじゃあないかって
益体も無い事が、過る。
「ね、先生。」
だからね
ちょっと呼びかけて
答えてくれるなら、支障がなければ一緒に帰りませんか――なんて。
■朝宮 小春 > 「危ないことはするべき時と、避けるべき時があるのよ。
危険なことは気をつけてね?」
なんて、小さく囁きながら、こつん、っと額を突いてやる。
全くもう、なんて自分をすっかり棚に上げた文句を口にしてやりつつも、いつでもいらっしゃい、なんて言葉を返してやって。
「………ん?
あら、何よ、私を掴まえてとんでもないみたいなことを言っちゃって。」
苦笑をしながらも、すんすん、と匂いをかがれることも特に嫌がらない。
むしろ、ぽん、と頭を僅かに撫でてあげつつ、………。
「そう? じゃあ、代わりにお菓子の一つでも頂いた上で、そろそろ帰りましょうか。」
言葉を返しながら、さあさ、帰りましょう。 と周囲を見回して。
うん、他にいないかな、と確認をもう一つ。
そんなところで、小さく声が背中におぶさってくるものだから。
「なぁに? 一緒に帰る?」
なんて。微笑みながら振り向いて、そっと手を差し伸べてくる。
その手が重なれば、その手をそっと握りしめて。
きっと、今日も明日も、そうやって包んでくるかのような、そんな甘い苺の香り。
ご案内:「美術室」から四季 夢子さんが去りました。
ご案内:「美術室」から朝宮 小春さんが去りました。