2015/11/01 のログ
ご案内:「学園地区/学生街 学園祭会場」に茨森 譲莉さんが現れました。
■茨森 譲莉 > 「はっ、はっ―――。」
もう少し出来るだけ早めに来ようと思っていたのに、
何かかんやとしているうちに、結局時間ギリギリになってしまった。
乙女の準備には時間がかかるのだ、いや、結局何も変わらず普段と同じ制服だけど。
私服にする事も考えたが、直前にやっぱり恥ずかしいからと着替えた。
正直、あのファッションセンスと並んで歩いて見劣りしない服を選べる自信が無い。
アタシは深呼吸して息を整えると、待ち合わせ場所に指定された学園祭の入口を見渡す。
スマートフォンで時間を確認すると、10分前だ。
なんとか10分前行動には間に合ったらしい。
ご案内:「学園地区/学生街 学園祭会場」にヨキさんが現れました。
■ヨキ > (学園都市のお祭りは、一日中盛り上がっている。
人波の中を歩いて辿り着いた会場の入口をぐるりと見渡す。
見慣れた赤毛の後ろ姿を見つけると、にっこりと笑って歩み寄る)
「――やあ。こんばんは、茨森君」
(相手の隣へ回って、その顔を覗き込むように声を掛ける)
「待たせてしまったかね?
ふふ。今日は来てくれてありがとう」
■茨森 譲莉 > 「――――うわっ!!」
走った結果か、はたまた緊張からか高鳴る胸を押さえて
ぐるぐると見渡している最中にいきなり声をかけられれば当然驚く。
多少無様な声が漏れるのは仕方のない事だ、仕方ないが、
せめて「きゃっ」とか可愛い声にしておけば良かったとその顔を見て思った。
咄嗟に漏れる声はどうしようもない、悲しい事に。
「こんばんは、ヨキ先生。
こちらこそ、今日は態々ありがとうございます。」
深々と一礼すると、少し熱くなった頬を押さえた。
「いえ、丁度今来た所、ですから。今日はよろしくお願いします。
えっと、まずはどこから見て回りましょうか。」
こういった経験は一切ないアタシはぐるぐると頭が煮え立つ中、
目を存分に太平洋に泳がせて、金魚のようにぱくぱくと口を開く。
こういう時には、男の人に行き先とかは任せたほうがいいんだろうか。
それとも、もう少し自分から行きたいところを言った方がいいんだろうか。
………それにしても、今日のヨキ先生は随分と白い。
暗い夜の会場には随分と目立つ。これなら逸れずに済みそうだ。
■ヨキ > (驚きの声に目を丸くして、すぐにくすくすと笑い出す)
「……ふ、あはッ!
済まないな、驚かせてしまった」
(一しきり楽しげに笑って息を吐く。
向けられた挨拶にこちらも目礼を返して)
「ヨキも楽しみにしていたからな。
せっかくの機会だ、存分に楽しんでくれるといい。
そうだな、特に予定というものを立ててはいないのだが……
茨森君、夕食はもう済ませたかね?何か飲み物だとか。
道すがら屋台でも覗きながら歩いて、茨森君のクラスでも見に行きたいな」
(いかがかね、と首を傾げて尋ねる。
そうして相手を先導し、往来の中を歩きはじめる)
■茨森 譲莉 > 「アタシのほうこそいきなり変な声出して、すみませんでした。」
ヨキ先生に謝られれば、むしろ罪悪感が募る。
声をかけられた相手にいきなり「うわっ」なんて、失礼にもほどがある。
「アタシも特に予定は立ててないので。すみません、ノープランで。
夕飯は……まだ食べてませんね。
アタシのクラス、ちょっと変わってますけど軽食屋をやってるので、
そこで食べてもいいかもしれませんね。」
アタシは少し考えてから小さく首を振った。
待ち合わせした入口から学校へとのびる学生通りにはずらりと屋台が並んでいる。
実は来る前に一緒にご飯と言い出すのはハードルが高かろうと少しだけ食べて来たのだが、
屋台を眺めながら歩いていれば、夕飯分くらいはあくだろう。
「……それじゃあ、まずはあそこから。」
そう声をかけてから、手を伸ばすか伸ばさないかで少し悩む。
以前異邦人街を歩いた時には大義名分があったが、今は特に大義名分があるわけでもない。
その4本指の手を握るのは、どうしても躊躇われた。
■ヨキ > (譲莉の謝罪には、気にするな、と笑って首を振る。
彼女のクラスが軽食屋と聞くと、顔をぱっと明るませる)
「へえ、それはいい!
それでは、君のところで馳走になりたいな。
……もしかして君も担当だったということは、ウェイトレスか何かだったか?
それとも調理の方か。惜しいことをしたな、そのときに顔を出しておけばよかった」
(あちゃあ、と、残念がって苦く笑う。
隣り合って屋台の並ぶ道へと歩くその顔は、譲莉の逡巡にはまだ気付いていない)
「どこの学校でも、学園祭はこうして盛り上がるものだと聞いたよ。
ヨキは、この学園しか知らないものだから……
君の学校も、学園祭はこんな風に賑わうものなのかね?」
■茨森 譲莉 > 「ウェイトレスやってましたよ、クラスの人が記念だって。
アタシ、目つき悪いからお客さん逃げちゃうしキッチンがいいって言ったんですけどね。
………全然そんな事無くて、この学園の懐の深さを改めて感じましたけど。」
ウェイトレスの服はクラスの人間の手作りで、
おおよそアタシには似合わないなんとも可愛らしい代物だったからキッチンで、
などと言っていたのにも関わらず、クラスの人達が折角だからと着せようとして来た上、
アタシが不器用すぎてキッチンだと邪魔になるとかそういう明確な理由までつけられて押し切られてしまった。
写真を撮って貰って、それは当然のようにアタシのスマートフォンにも送信されているが、それは黙っておこう。
そんな毒液のような画像、さっさと削除してしまいたいのだが、
この学園の思い出の一つと思うと、なんとなく消しにくい。
「正直言って恥ずかしかったので、ヨキ先生が来なくて良かったです。」
この先生の事だから、可愛いとか似合ってるとか平然と言うんだろうし。
そんな事を言われたらと思うだけでもわりとしんどい。笑ってくれるくらいのほうがまだ気が楽だ。
「確かに盛り上がりますけど、アタシの学校の学園祭はここまで大規模じゃないですよ。
異能で作られた変わったものも、異邦から来た妙なものもありませんしね。」
アタシは輪投げの景品になっている小さな置物を指差す。
どうやら異能で作られたモノらしいこの学園の時計塔を模した細長いそれは、
それこそ種も仕掛けも無さそうなのにも関わらずゆらゆらびゅんびゅんと左右に揺れている。
いくら細長いとはいえ、あれに輪を投げて、すっぽりとその輪に収めるのは随分と難しそうだ。
■ヨキ > 「ここはみんな優しいからな。
けれどそれを抜きにしたって、きっと君には似合っていたと思うがなあ。
…………。思えばヨキは、制服姿の茨森君しか見ていなかったような気がするな」
(ふと気づいて、相手の様相をしげしげと見遣る)
「ほれ、君は綺麗な色の髪をしているから。
めかし込んだときには、きっと可愛かろうと思ったのだよ」
(が、来なくて良かった、という言葉には眉を下げてしゅんとする。
指先で頬を掻いた)
「そうか……うむ。本人がそう言うなら、仕方がないな」
(残念そうに小さく笑うと、気を取り直して)
「確かに、ここは島が丸ごとひとつの学校であるからな。
本土ではなかなかこうもゆくまい。
……ふはッ、それにしても変わった賞品が置かれているものだな。
ううむ……ヨキが上手ならば、君にプレゼントでもしてやれたろうに。
……こう、ものを投げるというのが、些か苦手で」
(不意に苦手なことを打ち明けると、照れたように笑って)
「君は実は輪投げの天才だった、なんてことは?」
■茨森 譲莉 > 「そうですね、外だとこうは行きませんよ。
それこそ、目つきが悪いだけでも偏見持たれますからね。
この学園の生徒は、きっと皆寛容なんだと思います。色んな事に。
―――そ、それはそのっ!!学生と先生なんですから当たり前ですよ!!
それに、この学校だと皆学生ですから制服以外の服装だと浮きます、し。」
今日も結局制服のアタシは、慌てて首と手を振る。
学園祭という事もあってちらほらと私服の生徒も居る今言うには些か苦しい言い訳だろうか。
ヨキ先生と並んで歩くのに、アタシの貧相極まりないファッションセンスで選んだ服では役不足だ。
制服のほうが絶対マシ、だと思う。制服はなんだかんだで整った見た目だし、当たりはしなくともはずれもない。
「綺麗だなんてそんな事ないです!!
………変わった髪の毛の色ですし、それに、癖っ毛ですからボサボサですよ。」
思わず指先でくるくると髪の毛を弄ぶ。
綺麗な色、なんて言われたのは初めてだ。
この先生が冗談を言うような先生ではない事を知っているだけに、余計にこそばゆい。
「これだけ大きければ、服とかを売ってる所もあるかもしれません。
その時は、ヨキ先生が好きな服を選んでいいですよ。」
豚もおだてりゃ木を登る、なんとも浅はかかつ現金なアタシは、
じっと、左右に揺れるその景品を見ながら、少しくらいお洒落してもいいかなと。
浮かれ果てて思わずそんな事をボソっと言ってしまった。我ながら愚かだ。
「残念ながらそんな事は無いですね。
それに、百発百中の輪投げの名手でもあれに狙って入れるのはちょっと無理がありますよ。
……投げるのが苦手って、その手のせいですか?
それとも、他に何か?」
聞くのは少し失礼かと思いながらも、好奇心に負けて首を傾げた。
■ヨキ > 「偏見か。ヨキには大人っぽい顔だと思っていたが……
外の基準は、なかなか難しいのだな。
はは。そう言ったって、休日くらいは君もお洒落をしているのだろう?
せっかく授業がないのだから、自由な格好をしても罰は当たらんと思うぞ」
(笑いながら、譲莉の髪の毛をにこにこと見遣る)
「癖っ毛なのはヨキとて同じだとも?君の髪は、きちんと艶があって綺麗だ。
女性の髪に迂闊に触る訳にも行かんが……、ふわふわしていそうだし。
……変わった色?『そうなのか』。…………、あ」
(うっかり不思議そうな顔をきょとんとしてみせてから、妙なことを口走ったと気付く。
輪投げの話と併せて、うん、と改まって話し出す)
「……いやあ、ヨキは元が犬であるからな。
今言った通り、ものを投げる、という感覚がいまだに掴みきれなくてな。
力は強いが、てんで明後日の方向に飛んで行ってしまう。
それと同じで……実のところ、『色』というのが、ヨキの目にはあまり見えておらんでな。
犬だった頃よりは随分と識別できる色も増えたが……たぶん、人間よりは見えておらんだろう」
(後頭部をぽりぽりと掻く)
「でも、君の髪が綺麗に見えたのは本当だよ。
ヨキの目にも、他の人びとの髪より明るく見えたから……きっと、違う色をしているのだろうと思った」
(嘘も誤魔化しも利かない性質であるらしい。
そこまで正直に話してから、出店を見回して笑う)
「では、ヨキが君に着けてもらいたいと思うものを選ぶから、
その中から、君が自分で好きな色を選んでくれるか。
それならきっと、間違いもないだろうから」