2016/01/28 のログ
ご案内:「格納庫」に五代 基一郎さんが現れました。
■五代 基一郎 > 真冬の空というものはそれなりに遮られた空間でさえ温度を奪うものだった。
ここに来るまでの間、一応の空調はそれでも寒さから守ってくれたが、コートなしでは厳しいものがあったのではと思う程度に吐く息はヘリの中でも白い。
昇降機が稼動し自らを輸送してきたヘリごと格納していく。
といっても施設用ではないのは知っての通りであるため、しばらくすれば止まり
上部の外装隔壁が閉鎖され再び完全な姿に戻る。
格納庫内部に再び警報音が流れ、再潜航が開始されたことを中にいる者達に告げた。
出てもよいとわかればドアを開き一歩外へ踏み出した。
まだ冷たい外気が残るのか吐息は白かった。
■五代 基一郎 > 厚底の靴が、金属の床を踏んでいく。
ここは人の気配が希薄だ。
自立稼動した小型の警備ロボットや、整備ロボットが四方の壁を走り動老いているのがちらと見える。
出迎えらしい出迎えがないのも、それらがここに置かれている理由でもある。
ただあれの搬入と同時にここへ入っているだろうあれはまた別であり
搬入されたものへ導くためかやや遅れて前に機械的に軽妙な駆動音を鳴らして現れた。
■お茶くみロボット>「既に組み立てから調整は終わっているぞ101」
そうか、と頷けばそのドラム缶に車輪部分を付けたような体を翻し戻っていく。
その後をついて行き進んでいく。この格納庫に納められた二足歩行の機械を見ながら。
大型の機械……メガマトンや人型のメカノイドについては大変容以後大きな必要性に迫られ様々な技術や意図が絡み産まれて行った。
災害救助から治安維持、巨大な異邦人の出現に際してのもの等……
こうしてここにあるのも、島での活動を見越してのである。
最も局地的なケースとなるるもので、あまり出番がないわけだが。
それでもあるのは有事の際の備えでもある。あまり表立って持てないのは
いくら独立した学生による自治がどうのといえ、常設の軍隊程度の力がどうのとされれば
何かしらの問題には行きあたってしまう。
それでもこれらを揃えなければならないのは、そうはいえない事象が絡むからではある。
ここまで態々あれを搬入したのもそういった事情がある。
最も半分以上は私的な理由であることは、語れぬことだが。
■五代 基一郎 > 「こうして見るのは初めてだな」
そこに固定された漆黒のヴィークルを見上げて呟く。
調整用のデータや設計図面等は送られてきたため把握していたが、こうして見るとまた違う印象を受ける。
■お茶くみロボット>「改修するにも素体であるプロトの修復に時間が掛かりすぎているからだ。一からこの惑星の技術で構築したほうが性能も安定すると判断した。」
二年前の戦いでの破損はそれほどまでにひどかったか、と改めて思う。
外宇宙からもたらされただろう白き方舟に納められていた白いメカノイド。
同盟に引き入れられた時にそれを起動させて以来、それともこのお茶くみロボットと偽装しているこいつとも
長い付き合いではあったが……あったが故にその力が揺るがないものと信じてしまっていたのだろうと思ってしまう。
それが故の二年前の大敗か……いや、それとも。
■お茶くみロボット>「残るARMSとナイト2Kとのシステムアクセス調整は完了。実戦では98%の確率で成功だろう。残り2%は邪魔が入った場合のものだ。」
そのナイトと呼ばれたヴィークルに手を振れれば何か、ということもなく。
かつてのように読み取ることもなくただ冷えた金属の感触が伝わってくるだけだった。
わかることもない。そのままに続けて周りに配置されたARMSと呼ばれるヴィークル……他のメガノイドやメカノイド……機械の巨人と比べらればそれらは異質な雰囲気を纏っているそれら。
この惑星と外宇宙の技術が融合した結果産まれたマシーン達。
白き方舟よりもたらされたそれらの技術を基にこの惑星で生み出されたマシーン達。
高高度ステルス偵察機、スペースシャトル、ドリル戦車等未だに眠るように固定され鎮座していた。
炉に火がくべられていないかのように。
■お茶くみロボット>「時は近いのか」
近いだろうな、と。実際もう既に動かなければならない時が来ている。
時間は待ってくれない。
■五代 基一郎 > このヴィークル達同様、一度火が入れば動き出す。
それが当然のように走り出す。
今我々を乗せているこの移動司令部でもある潜水母艦もまた然りであったように。
特殊警備一課もまたそうであるように。
始動の理由に挙げられたのは二年前のロストサインの一件ではあるが、その実質的な理由はかのものがどうのということではない。
やれどうのと言われようと、突発的な要員(今では包帯まみれの男)で壊滅するのだから程度が知れているものだった。
どのように人々に誇張されようと、所詮はこの島で生まれた違反部活であり
大なり小なりと言えど学生自治の島で生まれたものなのであるから、学生が生み出した組織でしかない。
頂点に立つものも、またその周囲にいるものも事実はただの学生だ。
学生には学生が対応するのが適当と言える程度のものである。
こどもの程度なのだ。
所詮ただの学生崩れ……こどもに対して未だに危険だどうこう言うものはいるが、そういう者に対しては
それなり学生の対応でやってもらえばよいし未だに残る元幹部がどうと言われてもその程度の者達に我々を割くようなものではない。
他の適任者にやってもらえばよいというわけであるからして。
では我々が、なぜとなると二年前の切っ掛けで大きく姿を現したその脅威に対処するためだ。
■五代 基一郎 > それは外部からの介入である。
学生自治の中で発生した学生(こども)の犯罪活動よりも
外部(大人)の介入が目に見える脅威として出現したからである。
オーランド・ウィルマースがそれと言っていい。
その実態は未だに不明であるが財団と呼ばれる組織からのエージェントであり
かの組織の外部との仲介役やルートを握っていた男の存在。
程度はさておき不良のどうこうに暴力団の者が力を貸し利用するように
その介入は見過ごすことのできない脅威とされた。
外部からの諜報的介入が以前よりあったことは知れていたが、それが表層的になることは少なく
また実質的にどういった実体を伴って出現するかは不鮮明な部分があった。
しかし二年前にそれが表出したことで事態は変わる。
この島は基本的に学生自治であるからして、ある程度の期間で内部は入れ替わるし
主たる学生もまた入れ替わっていく。基本的にこどもの世界ではあるが
そこにある種の目的をもった大人が諜報的に潜み利用していくとなれば
そこはその”悪い大人”が何手も先を行くだろう。
彼らには外部の力もあるし、知恵もある。入れ替わる必要性もないだろう。
それはこの島に常駐する、姿は見えないが確実にこの島にいる学生を犯す脅威となると判断されうる事件だった。
事実オーランド・ウィルマースがこの島に残しただろう諜報的行動はまだ働いている。
死んだ後でさえも。
恐らくは、ウィルマース以外にもこの島に入り込んだ外部の力……大人の影はある。
それがどのような形で力を付けているのかは知らないが碌な事ではないのは見なくてもわかるだろう。