2016/02/11 のログ
■五代 基一郎 > 外部から慎重にナイフでこじ開けてみるも、弄れる部分がない。
恐らくメーター類は何かの……非常用だろうか。
ここから操作できる部分はあまりに少なく、また操作したとしてもと思えるものしかない。
■エイジャックス>「戻りました。どれも、誰も彼も正規の学生には見えません。二級か、そもそも島の人間ですらないかもしれません」
となると、この列車の……輸送の目的はやはり、と口に出そうとした瞬間。
独特の汽笛のような音が響き、車輛先頭の窓ガラスから光が入ってくる。
どうやらトンネルを抜けたか、地上に出たかと分かったのは視界に町並みが見えたからだ。
町並み……街
「街……?」
明かりが見えた、街。人の営みがあるだろう街が……視界に入る。
車輛の進路はその街へ入っていく。
■お茶くみロボット>「何があった101」
「街だ、街に出た。」
■お茶くみロボット>「明確に伝達するんだ101」
懐から小さな双眼鏡を取り出し、夜の街並みを眺める。
背の低い、高い…だが高層ビルの見えない街並み。
「わからない。現代的ではないが…近代か、その時代の建物が見える」
電線等は見えない。ただ昔の写真でみたような風景が双眼鏡越しに見える。
■声>「正確には19世紀のニューヨークです。ご覧になったことはないというのなら些か勉強不足ですね学生さん。」
すぐさま、聞こえてきた方向にナイフを向けつつ、銃を引き抜き発砲した。
車輛横。引き金を引き続け、弾倉が空になるまで撃ち込んだが……
それらは全て、中空で静止していた。
「障壁(バリア)か!」
■声>「その通り。」
包帯まみれの顔が、夜の闇の中に浮かんでいた。そこから延びるように影が形を形成し、姿を現す。
その姿、帽子にトレンチコート……そして包帯。見える顔は口と右目だけという異様な姿であり
人目で真っ当な類の人間でないことはわかった。
■五代 基一郎 > 「知らない顔だな」
■声>「裏の世界で顔が知れているようでは二流ですよ学生さん」
風紀のデータでは見た事がない。ならばやはり外部の人間なのだろうが
同盟のデータでも見た事が無かった。姿は特徴的だがその力について検討がつかない。
中空に浮いた包帯男はそのまま笑みとも何ともつかぬ顔でこちらを見ながら話し始めた。
■包帯男>「そろそろではと思っていましたが案外遅いもので。中々処分するに困っていました。時間が経てばたつほど、綻びは大きくなるものですから。」
「なんのことを言っている」
右手に構えた拳銃のマガジンキャッチを下ろし、マガジンを下ろせば
左手でナイフを構えたまま新たなマガジンを装填する。
銃口は包帯男に向けられたまま……
■包帯男>「ここのことですよ。貴方型がそう……ウィルマースの遺産と呼んでいるものですか。正確にはウィルマースが持ってきた共同出資の移動拠点です。文化保持計画で生み出された人工島の一つ。19世紀のニューヨークをモデルとしその当時の文化を保全するための島。我々常世島外から常世島を探るエージェントのための拠点ですよ。」
聞いたことがある。
異邦人の出現や、その混乱の最中に失われていく本来あるべき世界各国の文化を保全し後世に残す計画。
しかしその産物がなぜ、ウィルマースが。
■包帯男>「ウィルマースがどこから持ってきたのは知りませんが稼動にも運営にもお金がかかりますからね。何人かの国の代表が打診しあって回していたんですよ。島内部に工作員を入れたり島内部の異能者を連れてきたりね。地元ではなかなかできませんからねこういうことは」
そこで、別の路線が合流する。そこに割り込んでくるように……また巨大な列車が接近してきた。
■包帯男>「しかしこれが面倒でウィルマース亡き後島内部側の方が雑になってきましてね。あなたの侵入を許したわけですからそろそろ島ごと引き揚げさせてもらおうかということが他の代表らと決まったわけです。ですからここであなたは消えてもらいますよ」
包帯男がその列車の先頭部に飛び、その列車の照明が瞬く。
巨大な……装甲列車。それが速度を上げて迫ってきた。
それはすぐさま衝撃に代り、列車最後尾とその手前の車両を吹き飛ばした。
■五代 基一郎 > 「積荷の人間ごとか!」
激しく揺さぶられる先頭車両の運転席にしがみつき、衝撃に耐える。
しかしその衝撃はどんどん先頭にまで近づいてくる……
■包帯男>「あればよし、なければそれまでですよ。十分にありますからね異能者や異邦人のサンプルは」
包帯男が指を鳴らせば装甲車両の先頭、その両脇が開き巨大な腕へと変形し
腕の一振り一振りで車両を薙いでいく。
一振りするごとに、人の体らしきものと金属が空へ散ったのが見えた。
■エイジャックス>「脱出を!」
「わかっている!」
先頭車両のドアから飛び出せば、そのまま線路の上に着地。
止まることなく走り出した。
後ろでは先頭車両がどこかに吹き飛ばされた音が聞こえる。
■包帯男>「逃がしはしませんよ」
装甲車両の後部、その天井部が開き続々と飛行物体が飛翔しサーチライトを瞬かせ飛んでいく。
また、街の方々から黒い影が躍り出て自分めがけて飛びすさぶのが見えた。
物量が違いすぎる。
この街自体が敵の拠点である上に外部の工作員と戦うとなると……
線路の上を走りながら、ネクタイを引き抜いた。
拳銃とナイフは既に仕舞われている。
■包帯男>「死は一瞬、苦痛は死ぬまで続きますよ」
線路の上を全力で走りながらネクタイに力を込める。
力を籠め、祈り小さく唱える。力を借りる言葉を唱え……跳躍。
振り向きざまにネクタイを振り抜く。
振り抜けばそのままネクタイは炎を纏い。索となって飛行物体に伸びていく!
そのまま飛行物体を叩き、薙いで燃やしては落とす……不動明王の持つ剣索の如く捕まえては切り裂いていく。
橋の上で振りかぶれば、炎が水辺に落ちていく。
■飛行物体(ドローン)>「ユニットAが大破、Bがコントロールを引き継ぐ」
されど飛行物体の数は多く、方々からやってくるドローン……二足歩行の装甲物体は絶えず攻撃を仕掛けてくる。
■包帯男>「往生の際が悪い。ではなるべく手短に決めましょう」
包帯男が両手を振り抜けば装甲列車がせり上がり、巨大な影として……メガマトンとして立ち上がる。
その巨大な腕を振り抜いて線路が叩かれれば、線路ごと橋が叩かれ大きく揺らぎ
そのまま崩すように橋は傾いて崩壊していく。
■エイジャックス>「御主人!」
崩壊していく橋の瓦礫を蹴り、前に進もうとするがうまく飛べない。
そも崩されて垂直に倒れているのだから、逃げようがない。
■包帯男>「終わりです」
そして、それをものともせず装甲列車のメガマトンは直進し、そこへ振りかぶる。
橋の瓦礫ごと破壊するために。
■五代 基一郎 > 「ナイトアームズ!!」
しかし、その破壊の衝撃は五代を砕くことなく。
新たな衝撃により中空を彷徨う。
■包帯男>「何ッ」
それは偽装光学迷彩を解除し、姿を現した。
機械の翼を広げた漆黒のヴィークル。特徴的な赤いデジタルサーキットのラインを描いて瞬くヘッド。
先の体当たりの後の旋回後、主の下へ駆けつける。
その姿が見えればそのまま落下していき……開いたコクピットめがけて飛ぶ。
「フュージョン……ッ」
囁くように唱える。唱えれば……その漆黒のヴィークルと接続され
意識が合わさり一つになる。
折りたたまれていたヴィークル形態から展開。
翼が折りたたまれ、体を展開し足は開き、手は開き……頭部が出現する。
顔にはヘッド部にあったバイザーが装着され、赤くラインを明滅させ起動と接続を完了させた。
「ナイト・ライダー…!」
時を経て、再び己が巨大な戦闘用の機械の体に接続されたことを確認し
そのコードを、名前を呼ぶ。
外宇宙から来た技術を解析し作り出されたファイティング・メカノイド。
地球と降りてきた外なるものの技術の融合。旧約聖書にあるネヴィリムの如き存在であるからつけられたその計画規格名。
人と…機械。五代のつねに傍らにいたお茶くみロボット…ネヴィリムと接続することで
己の意のままに巨体を動かし戦うことができる。
守護騎士。ガーディアンナイト。漆黒の騎士(ナイト・ライダー)が誕生するのだ。
腰部のスラスターを吹かしながら、水面に降り立つ。
装甲列車のメガマトンと対峙するように。
■包帯男>「奇妙な…しかしまさかメガノイドを潜ませているとは。面倒なことになりましたね……ですが」
ナイト・ライダーを囲むように飛行物体のドローン、二足歩行の攻撃用ドローン……
そして、装甲列車のメガマトンが立ちふさがる。
その量もだが、メガマトンの質量は膨大。ナイト・ライダーの何倍もあった。
■包帯男>「この差は覆し様がない。すりつぶされてください。静かにね。」
機械の巨大な質量が唸りを挙げて吼える。水面が波打つ。
■五代 基一郎 > 「確かにこの差は埋めがたいな……」
■ネヴィリム>「出力変換効率誤差なし。20%……以前のプロトよりは安定している。」
2年前、あの者との戦いで大破したがために現在も修復しているプロトモジュールよりも地球の技術で全て構築しているため出力の安定はしている。
超念導制御は不可能だが、ネヴィリムがその分出力制御をコントロールしてくれている。
不安はない。これが実戦テストだ。このままここで破壊されるのは、ごめんだ。
あれに繋がる手がかりはあるのだから。
「ネヴィリム、他のアームズをコールだ!」
■ネヴィリム>「了解。跳躍カタパルトシステム接続開始。」
「来い!!!」
右手を掲げ、呼び出す。
彼らのシグナルコードと接続して。
■包帯男>「何を……」
何をするのか、口に出す前にそれを阻害するかのように地中から唸りを上げて
ドリル戦車が顔を出す。双頭の螺旋がメガマトンを叩き、飛ぶ。
空からは空間を割いて胴長の高高度ステルス偵察機を模した航空機が出現し
落下するように出現したスペースシャトルがパイロン…積載部に接続されていたユニットを投下しメガマトンに叩きつける。
そうして集まった三つのヴィークルがナイト・ライダーを中心に旋回し始める。
準備は整ったかのように。
「いくぞ!」
■ネヴィリム>「了解!ジェネレーター接続、出力15%解放!」
「アクセス…………フュージョンッ!」
腰からスラスターの噴射ではなく紅蓮の炎が吐き出され、巻き上がり周囲に展開していく。
その周辺にいるドローン達を燃やし尽くしながら……
■包帯男>「させません……!」
メガマトンの腕がその炎の渦を切り裂こうと手を伸ばすも、炎の奔流がそれを許さず
弾かれてしまう。
内部では偵察機がナイト・ライダー背、スペースシャトルが展開し開かれたナイト・ライダーの肩に。
ドリル戦車が足に接続され結合していく。
各々のユニットのデータ接続が全て完了し、各部展開されたユニットが最終的な位置に調整されれば
頭部が新たに兜をかぶるように重なり、バイザーが上がり機械的な双眸が姿を表す。
マスクが装着され、完全な兜になれば双眸が瞬く。
その姿、その力。炎を纏った騎士。
全てを焼き尽くす炎の……騎士。
新生したその姿の名を、全てのシークエンスが完了したことを告げるように呼ぶ。
「ナイト……ブレイザーッ!」
呼べば、その姿が炎から解放されて出現する。
水辺の水を蒸発させながら。漆黒の体、赤く燃える炎のヴェール。
黒鋼の巨人が再びここに生まれた。
■包帯男>「その姿……いや、まさか…」
■五代 基一郎 > 「これなら五分というところか……どうだろうな」
■ネヴィリム>「出力安定……開放率20%で安定」
ゆっくりと構えるように体を動かす。
自分の体のように違和感なく動かせる。この感覚久しぶりだ、と思い出す。
■包帯男>「そのシルエット、細部は違えど見覚えはありますね。まさか同盟の101がこの島にいるとは。4年前の中東を最後かと思っていましたが……これは面倒」
そういえば早く、包帯男はメガマトンの上部から飛んでどこかへ消えるように闇へ溶けた。
「待て!」
■包帯男>「私は業務分は仕事をしましたので、あとはご自由に。最後はウィルマースが処理してくれるでしょう。」
追おうすれば、それを妨げるようにメガマトンが立ちふさがる。
そして覆いかぶさるように圧し掛かってきた。
「くそっ……奴にはまだ聞きたいことがあったんだが」
■ネヴィリム>「その前にこいつだ。破壊するぞ。出力を上げ過ぎるな。」
「わかっている!」
こちらを掴むように押し出してくる両腕を、こちらの両腕で抑える。
だが力を込めて、出力を少し。上げればメガマトンの腕は用意にひしゃげて崩れていく。
そしてそのまま両腕で掴み、踏込み、持ち上げ……放り投げた。
「中心部を狙う!」
■ネヴィリム>「上げ過ぎだ101.島ごと破壊してしまうぞ」
ゆっくりと呼吸しながら右腕に力を集中させれば、上げた微量な出力分の炎を右腕が纏う。
そして右腕は回転し、振りかぶれば右腕は炎を纏ったまま一つの弾丸のように解き放たれた。
解き放たれた炎の弾丸はようやっと起き上がろうとするメガマトンの腹部にあたれば撃ち抜き、そのまま拡大させるように炎が広がり
爆発させた。
その爆発の威力が連鎖し、メガマトンのいた区域は炎に包まれていく。
■ネヴィリム>「やりすぎだ101」
「これでも調整しているんだ。許してくれ」
さて、どうするかと思うまでもなくその爆発が連鎖するように中心点から
徐々に方々が爆発し、また隔壁のような立体物が島の方々からせり上がってくる。
「なんだ!」
■ネヴィリム>「何か巨大な物体の出現を感知!前方!」
■五代 基一郎 > 出現。塔がせり上がってきたというものが妥当だろう。
今この黒鋼の巨人よりも数回り巨大なそれが腕を伸ばし、体を伸ばし
姿を現した。
■ネヴィリム>「解析……この島の中枢を司っているようだ。エネルギーラインが地下から直接伸びている。」
「この島の中枢……何故態々むき出しにするようなことを」
ただならぬ事態になりつつある。それを察し、そこへ向かおうとた時……そして
それが体を起こそうとした時、その腹部から小爆発が起きる。
「なんだ!」
■ネヴィリム>「拡大。生命反応2」
生命反応……誰だ、と目を向ければ
その二人が近場の建物の屋根に降り立つ。
一人は黒髪、長身の男。顔は知っている。
確かに死亡が確認されたし、その姿を見ていた……
“時刻剽”オーランド・ウィルマース。
元ロストサインのマスタークラス、時間操作に長けた高位の魔術師。
その死は確かに2年前確認していた。
そしてもう一人は金髪の青年。学生服に身を包み
特別な赤い外套を掛けている。
その姿は知っている。分かれた時と変わらない……アルベール。
自らが引き抜いた、特異な胃能力者。
元執行部のエキスパート……“波動”のアルベール!
■五代 基一郎 > 「生きていたか、アルベール!」
外部スピーカーが声を拡大し、伝えるように繋がれば返事は帰ってくる。
しかしウィルマースは何故生きている……
■アルベール>「御心配をおかけしました我が主(ロード)」
虚となっている右目から血を流しながら、振り向かずに声にこたえるアルベール。
相対する男は、黒い独特の二つの剣を構えながら、口元の血を拭う。
■ウィルマース>「しくじったか。連中め、尻拭いを押し付けて消えたな。」
2年前のウィルマースにとって波動のアルベールは丁度良く転がり込んできた島の動力炉であった。
戦い、様子を見ればまた解析できる物理法則とは別のエネルギーを取り出していることが察せられ、より深く工作活動ができるはずだった。
しかし誤算があった。それを封じるには内部で干渉できぬ牢につなぐ必要があったし、また子供とはいえ異質すぎたその異能のせいか手こずり
こうして時間流の中を何度も戦うことになった。
どちらかが根を上げるか、そうした時間流への封鎖を外部から開放する……工作が終わる時にまでの期限だが
開放された時に始末すればいいしそれまで利用できるというものであった。
しかしいざ外部からの開放が、となれば既にこの人工島は炎に包まれているし、強制解放からの処理シークエンスに入っている。
他の連中は早々に引き上げているのもある。
あと少しすれば、この人工島は消滅するのであろうし。
後は時間流に逃げ込むか、狭間を利用してと思うが……目の前の子供はそれを逃すまい。
時間流での戦いで勝ち、封印できればと思っていたが結局できなかった存在だ。
面倒事としては嫌なものにあたってしまったし、当てられたものだとつくづく思う。
■ネヴィリム>「101、この人工島には外部から補足されない偽装が施されていた。しかしあの中枢の出現より溶けかかっている。島自体も移動している……既に領海を離れつつある。中枢に高エネルギー反応も観測。状況は悪化している。」
国外の領海に出るのはまずいが、高エネルギー反応も無視できない。
まさか島ごと吹き飛ばすつもりなのか……
■アルベール>「貴方はあれを。私はこいつと決着を」
握りこぶしを構えて意識を集中させていく。
ただの拳闘の構えであるが……
■ウィルマース>「舐められたものだ。左目も潰してやろう。」
■アルベール>「既にお前のやることは知れている。勝負は一撃で決まる。」
アルベールに欠けていた、戦いに置いてウィルマースの優れていた点を挙げるならば。
それは戦いへの熟練度、慣れ、そして……大人の狡猾さだろう。
故に常に上を取られていたが……
それを見届けることはなく、背面のユニットスラスターを稼動させ中枢ユニットに向かう。
今回の目的はもう一つある。ヤツに繋がる情報中枢の確保。そのためには直接引きずり出すしかない。
この状態の危険は承知だが、向うから出てきたことには感謝したい。
■五代 基一郎 > 「情報中枢はどこだ!」
■ネヴィリム>「解析……」
振り上がる巨大な波打つ腕を殴りつけ、掴みもぎ取る。
■ネヴィリム>「下腹部だ101!そこにある!」
「よし……」
右腕にまず意識を集中させ、出力を上げていく。
そして続けて左手に意識を繋ぎ、出力を合わせ同著させていく。
「バニシング……!」
右手を叩き込み、そして……左手を合わせるように撃ち込む
「バスタァーッ!!!」
両手でそのユニットを掴むように閉じれば、その外に対して膨大な熱量を放射していく。
内部からの灼熱のエネルギー放射によりその中枢ユニットは融解し、消滅していく………
そして、それを背に。
アルベールとウィルマース。二年の時を経ての決着はついた。
時間流を乱す異常な流れの中での波動幽体移動と出現、再出現との戦い。
その最後の一手。
アルベールはウィルマースの胸部に波動エネルギーを物質世界波長に変換し叩き込んだ。
穿たれる胸。
■アルベール>「勝った!」
■ウィルマース>「はっ……精々あがくことだ。私は先に……ッ」
時間流に逃げ込み、また別の場所で出現すればいい。内蔵は致死だが拠点に飛べば治療はできる。
時間も金もかかるが死ぬことはない。そしてここでの処理を今完成させた。仕事は終わる……
が、戻れない。時間流の制御が効かない。
その声に何を、とアルベールが振り返れば。胸に大穴を開けたウィルマースの手にはスイッチが握られていた。
押されたボタン。そしてウィルマースは制御できない時間にその顔を歪ませ、何を言うこともなく空間ごとねじれるように消えて行った。
どこへ消えたか、それが何かを確認する前に……バニシングバスターの影響で島の中枢部から徐々に崩壊、そして消滅が始まり消えていく。
そしてそれから逃がすように、怪鳥が飛びすさび……アルベールを乗せて離れて行った。
■五代 基一郎 > 人工島が消滅すれば、控えていた潜水空母が浮上する。
甲板を展開し、黒鋼の巨人と怪鳥に連れられたアルベールが格納され
再び潜水し、領海限界付近から帰っていく。
「情報中枢は回収できた……が、内部から破壊されていた。最後の処理まで考えていたようだなウィルマースは」
■アルベール>「奴は消えましたが時間流が乱れ、それに飲みこまれたようです。恐らく行先は……」
「二年前、か」
二円前に確認された直接の死因。胸部へ穿たれた大穴が致命傷での死。
それがアルベールのものであることは解かっていたが、こんな経緯となるとは考えられなかった。
■アルベール>「得られるものはありましたか」
「少しは。」
空母内部のメディカルルームにて目の手当てを受けているアルベールに答える。
二年と少し。変わらない顔を見て安心はした。
自分は大分変ってしまったが
「とりあえず、お帰りアルベール」
■アルベール>「御待たせしました、我が主(ロード)」
これからのことを考えながら、とりあえず今日はゆっくり休みたいと。
アクセスすることで伸びてしまった後ろ髪を弄りながら溜め息をついた……
ご案内:「地下鉄道網」から五代 基一郎さんが去りました。