2016/02/20 のログ
ご案内:「クローデットの私宅」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 「………」

如何にも不機嫌な様子を隠さず、クローデットがブレスレットを見つめている。

先日の開拓荒野で行った実験結果が、芳しくなかったのだ。
それも、原因は自らが「無意識に」仕込んでいた、術式構成の一文。

それは、「身代わり」に転嫁するダメージに上限を設けるという、新しい防御術式の長所を殺すような意味を持つものだった。

クローデット > (…何故、このような愚かなことを…)

無論、「身代わり」の生命を考えれば良い気遣いには違いない。
しかし、クローデットが「身代わり」としたのは、転嫁する属性に強い耐性を持つ、スライム達だ。
クローデットが自ら生み出し、育てて、大きくした魔法生命体達。
それの「役目」を果たさせるより、それを「命」として扱い保護するというのは、クローデットにとっては明らかに本末転倒な所業だったのだ。

(無事作り直す事が出来ましたが…術式構成の見落としなんて初歩的な過ちを、何故今さら?)

新しく作り直した魔具…ブレスレットを睨みつけてから、それを目の前の机に下ろした。

クローデット > 『クローデットは、本当にひいおばあ様の若い頃にそっくりで、優しい子ね』
『本当に、思いやりのあるいい子ね…ひいおばあ様にそっくり。
だから、ひいおばあ様のお気持ち、ちゃんと酌んで差し上げるのよ?』

祖母も、母も、幼い頃からことあるごとにそう言って自分を褒めてくれた。
だから、それが、誇らしい事だと思っていた。

その時の祖母や母が、どんな表情をしていたかは………思い出せない。

(…何故、今こんな事を思い出すの?)

不意に涌き上がる回想に、クローデットが動揺していたその時………メールの受信を知らせる音が鳴った。

クローデット > メールの差出人と、その文面を見て………クローデットの表情が歪む。

「………馬鹿にして!」

テーブルを強かに打つ。積まれていた魔術研究用の資料が、バサバサと崩れ落ちた。

メールは、忌々しい父親からの…誕生日を、祝うものだった。
中途半端な時間なのは、恐らく、フィールドワーク先の現地時間に合わせて送信しているためだろう。

毎年のことのはずなのに、今のクローデットには、そのメールの存在が無性に腹立たしかった。
ゴミ箱に移し、更にそこからも削除する。

クローデット > 「………」

激情に、息を荒げることしばし。
それから、クローデットは我に返った。

「………あら、いけませんわ。
こんなに散らかしたままではジュリエットを困らせてしまいますわね」

幾分平静を取り戻した表情で、散乱した魔術研究用の資料を片付ける。

クローデット > …それに、いつまでも取り乱してもいられない。
あの異能者(バケモノ)と繋がりのある研究施設に、近々調査に行く。

(あの姿の「本質」の裏付け、しっかりと取らなければいけませんわ)

開拓荒野での「不幸な」邂逅の後、あの口元の血が何か「裏」につながっていないかと「実験台」探しついでに調べてみたのだが、確証となるものは得られなかったのだ。
時間が経ち過ぎていて、荒野の魔物達がところ構わず血を流しており、判別がつかなかった。

結果論だが、自分に悪意を持つ人間に「あの姿」を見られるという危機において、ヨキは最もましな対応をしたと言えるだろう。

(あの異能者(バケモノ)はあの男を「友人」と言っていましたけれど…
…まあ、わざわざ調査を頼んできたのですし、邪魔にはならないでしょう。

…待っていなさい異能者(バケモノ)。追い詰めて差し上げますわ)

剣呑な光を瞳に宿し、口元に艶のある笑みを浮かべて。
クローデットは魔具の保管庫へ向かった。「敵地」へ向かう、その準備のために。

ご案内:「クローデットの私宅」からクローデットさんが去りました。