2016/07/25 のログ
ご案内:「海底遺跡『朱夏の遺跡』」にリヒットさんが現れました。
■リヒット > 歓楽区や研究区のギラつく喧騒を尻目に、常世島北東の近海を駆ける小ぶりのクルーザーがひとつ。
運転席にて舵を握るのは、白衣姿の人間の女性です。そして、その白衣のお尻にしがみつき、海風に耐えるはリヒット。
「ぷー……」
リヒットは異邦人であり、精霊の一種です。そのため、人間のように食事も要らなければ、快適な住居もいらない。
常世島に棲むにあたり、基本的に学費以外はほとんどお金を使う必要はないエコロジーな存在です。その学費も、境遇と幼さゆえに当座は免除されている様子。
とはいえ、全くの無一文で過ごせるわけでもなく。多少なりとも、リヒットにお金は必要です。
例えば銭湯。リヒットは暖かいお湯、つまりお風呂は大好き。でも根無し草のリヒットがお風呂で温まるには、どうしてもお金は必要です。
加えて夏休みで暇だったのもあり、この興味深い『遺跡保全』のバイトに食いついたリヒット。1週間ほどアルスマグナ先生の講義を受け、予習もバッチリです……彼なりには。
では、遺跡に向かうこのクルーザーを操縦する女性は何者でしょうか?
「リヒット君、もう少しで着きますからね。海水は辛いでしょうけど、我慢してね?」
「ぷ~……」
アルスマグナ先生からリヒットを通じて手渡された海図を凝視しつつ、腰にしがみつく小人を諌める女性。
彼女は、研究区に勤める研究員のひとりで、専門は異世界・異邦人の研究。そう、彼女の任務は、謎の異邦人であるリヒットの研究なのです。
■リヒット > 遺跡があると思しき海域まで到達すると、船は右に左にとぐらぐら揺さぶられ、あちこちに流されます。
これでも夏になって多少海流が和らいだというのですから、普段この領域に近づくのが如何に困難か想像に難くありません。
そしてやがて、白い砂浜と木々に囲まれた小島が見えてきます。
リヒットはこの島に遺跡調査・保全のバイトに来たわけですが、同伴の女性はリヒット本人の調査が目的。
語弊を恐れず言えば、これは一種の「ストレステスト」というものです。
シャボン玉を自称する精霊が過度のストレスを受けた時、どういう反応を見せるか。このボケっとした児童が、攻撃的な何かを隠し持っていないかどうか。
幾億とある並行次元からの来訪者、異邦人にどんな特異で致命的な能力が潜んでいるか知れたものではありません。それを調べ、管理するのは常世学園の健全な運営に欠かせないといえましょう。
とはいえ、自我や自意識が確立した成人であればまだしも、リヒットはまだ幼児。かようなテストを課すのは、倫理的な面でも提案しがたいものがあります。
そこを、リヒット本人が自ら危険に飛び込もうと主張するのです。この機会を逃すわけにはいきません。
「……まぁ、ほんの10000ぽっちのバイトですし。きっとそんなに危険じゃないのでしょう」
「ぷ~……せんせぇ、まだつかないの……」
石鹸の精であるリヒットにとって、ミネラル分の多い塩水は苦手なものの一つ。界面活性剤の力が奪われ、シャボン玉を作れなくなるのです。
波音とエンジン音にかき消されそうな弱々しい声にも、面倒見のいい女性はいちいち応え、懸命になだめています。
やがて、クルーザーは小島へと着岸しました。
■リヒット > クルーザーの側を力なく、ふわふわと右往左往に浮遊するリヒット。波しぶきと海風にやられ、かなり疲労している様子。
とはいえこの冒険はリヒット本人が言い出したこと。この島の奥まで進めば遺跡がある、と考えれば、徐々に勇気が湧いてきます。
そんなリヒットの側で、何やら小型の機械を起動する研究員。機械は小さな起動音を立てると、4枚のプロペラを回し、宙に浮きました。
「リヒット君、このドローンを着いて行かせるからね。キミに何かあったらすぐ助けにいくから、安心して」
「ぷー。でっかい虫さん」
リヒットはその機械を興味深げに眺めています。プロペラの間にはキラリと光るレンズ。カメラドローンです。
迷子防止の意図もありますが、本来の目的はもちろんリヒットの観察です。
「アルベルトゥス教諭に渡された道具類は忘れず持ってきましたね?」
「……あるべるとぅす?」
「ああ、あの人はアルスマグナって自称してたんでしたね。ほら、補修用の道具とか、明かりとか、テキストも」
リヒットはこくこくと頷いて、袖をぷんと軽く振ります。
大きめのシャボン玉が形作られ、すぐさまリヒットがそれをつまんで割ると……その手の中には、小ぶりのカバンが生まれていました。何やら可愛らしいキャラクターがプリントされています。
この芸当からしても、研究員にとってはてんで理屈の分からない「術」。彼の遺跡での振る舞いを見れば、その仕組みも少しは分かるのでしょうか?
「私はここで帰りを待ってますから。……まぁ、リヒット君ならそうそう死ぬこともないでしょう。シャボン玉ですしね」
「うん。リヒットは死ぬけど、死なないよ。早めに帰ってくるね」
研究員に見送られながら、リヒットは地図を片手に、島の奥へと浮遊して進んでいきました。
■リヒット > 【リヒットPLより、アルスマグナ先生、およびROMしてくださってる方々へ】
【リヒットはこれより「修復」のダイス表で、4層を目安に遺跡探索を行います】
【ただし、いくら予習をしてきたとはいえ、リヒットはまだ幼い異邦人です。普通の人間なら容易いこともできない可能性があります】
【状況によっては、ダイスの結果に書かれた顛末を得られず、収入を減らす方向で結果を変更することがあることをご容赦ください】
【また、ダイス目が重複したら振り直します】
■リヒット > 遺跡1層目 [1d15→9=9]
■リヒット > 修復9.
君たちがこの部屋を訪れた時にはすでにルインワーム達によって壁も天井も床も食い荒らされた後だった。おまけに酸がところどころにひっかけられて、貴重な遺跡の史料が見るも無残な形になっている。
ここを修復するのは難しい、次の部屋に移動しようとするなら足元や天井からの落下物に注意すること。
(バイト代ボーナス-250円)
■リヒット > ――アルスマグナ先生お手製の地図をたどり、あきらかに遺跡遺跡した感じの入り口を見つけ、そのまま浮遊しながら侵入したリヒット。
しばらく階段を下り、いくつかの分岐を適当に選んで折れ(もちろんメモを取りながら)、辿り着いた最初の広間は……。
「……うわぁ、ボロボロ」
それはもはや自然洞窟と言っても過言ではない……いや、それ以上に不気味に侵食された空間と化していました。
天井も壁も無造作に食い荒らされ、ノコギリやヤスリめいて筋や棘が生え、いまにも崩れそう。
明かりを取り出し、あちこちを照らして見ますが、今は動く陰などは見当たらず。
かわりに、ほぼ無価値な紙片と化した何らかの書物だったものや、酸に上半身を溶かされた石像だったものなどがお出迎え。
「もったいないなぁ……」
アルスマグナ先生の講義を一通り受けたため、それらの遺物が十全な状態であればとんでもない価値を持っていたであろう、ということも頭に叩きこまれています。
とはいえここまで徹底的に破壊されてしまってはもうどうしようもありません。リヒットにも、きっと考古学のプロでさえも。
とはいえ、入り口でさっと中を照らしただけでは調査は充分とはいえません。奇跡的に残されているかもしれない遺物を探し、リヒットはふわふわと部屋に入っていきます。
「あっ」
そんな彼をさっそく、天井から滴る強酸の雫が襲いました。黄緑色の毒々しい液体は彼に触れるやいなや、ジュッと不気味な音を立て…。
…そして、リヒットはあっけなく石鹸水の飛沫と化し、破裂してしまいました。
■リヒット > 間一髪で酸の飛沫を逃れたカメラドローンが、追跡対象を見失って人工知能を混乱させ、右往左往しています。
……しかし、リヒットを見失って数十秒後、そのレンズがリヒットの来た側の廊下に静かに向き直りました。
「ぷー。リヒットは死んじゃった。頭を溶かされて死んじゃった」
呟きながら、廊下の闇から染み出すようにリヒットが現れます。
懐中電灯は消灯しているものの手に持ったまま、酸が被ったはずの頭頂部も綺麗になって。
「やっぱり、遺跡って怖いところ……。リヒットはあと何回死ぬのかな」
再び部屋の入口にふわりと佇み、やや恨めしそうな視線を廃墟と化した空間に投げかけます。
ボケッとしているリヒットでも、この部屋にあったであろう何かを偲び、失われた価値を体感すれば、ちょっとは後悔の念も湧こうというもの。
「……ぷー。別の部屋行こうっと」
リヒットはくるりと空中で体を捻り、来た道を引き返しました。
そして、廊下の別の分岐へと……。(報酬-250) [1d15→7=7]