2016/08/03 のログ
ご案内:「海岸」に五代 基一郎さんが現れました。
■五代 基一郎 > 夜の海岸……白浜を歩く。
この時期独特のであろうが、人のにぎわった足跡がついているその浜辺をただ一人で歩く。
深夜。
誰も彼もがという時間に目が覚めて、覚めてしまったが故に
ただ一人。
誰も連れずに歩いて……ただ歩いてここに来ていた。
誰も何者もいないこの夜の浜辺でただ立ち尽くす様に。
黄昏るには遅すぎたその時間に。
思い出したからこそただ一人で静かにいる事に耐えられず来てしまった。
■五代 基一郎 > 「……」
言葉を反芻するように、だが口に出せずにただ口を開けて
閉じて……そして開かなかった。
あの時。
時間は遡り……敗北した時。
いやそもそも敗北だったのだろうか。
あの敵と見ていた存在との戦い。
宿命だと思っていた。
運命だと思っていた。
それは相手も同じだった。
同じルーツの同じ”異能”を持つ者であっても根本的な思想が違ったが故に
戦うことは必然だったと語る。
自分は正しいことをしてきたつもりだった。
いや、そう信じているからこそ戦って来たんだと。
正義とかは信じていない。その言葉は嫌いだ。
でも子供の時に見ていた”正義の味方”にと思って、この世界で
力のない人々や奪われた、虐げられた人の為に戦ってきたし
自分もそうだったからこそ戦い続けてきた……
だが相手は違った。
それを否定した。
この世に力のない者などいない。
強弱は相対的なものであり、今この世界では誰もが力ある者。
だからこそわかりやすく力を持ってしまった者の為に戦うことこそ今と未来の為になると。
誰であろうと心を持つ者には変わりない。
異邦人も、異能と呼ばれる力を背負った者もと…
■五代 基一郎 > 三度。
三度閃光が自身を襲ったことを覚えている。
それだけで自分が操っていた巨体が動きを止めたことも。
それは勝手な理屈だと。
お前のそれは世界をかき混ぜて混乱を拡げているだけだと。
その力に膝を屈さずにと立ち上げた体を……巨大な刃が、貫く。
世界は既に混沌の中にあり、私が行っているのは今揺れ続けている時計の針を
進めているだけであり
それを止めているのはお前のような人間であると。
今ここにある、この世界に生きている人々のことをとして何が悪いのか。
それを決めるのは我々だけではないと
残る力で……そのほとんどが崩壊した巨体を引き上げながら拳を固めた。
だが、あいつは否定した。
我々もこの世界に生きる存在であり、決める権利と義務があると。
そして、告げた。断罪のように。
お前はこの世界を否定していると。
いつまでも古い世界にしがみついているだけにすぎないと……
既に大変容は起きて、世界は変わってしまったというのにと!
■五代 基一郎 > お前は大変容を受け入れていない。
変りつつあるこの世界が
変っていく先の世界が
この世界を変えていく存在が憎いのだと
否定できない言葉と共に閃光が放たれ……そして
力は封じられ、その時まで止まっていた時間は動きだし
小さな体は今あるこの体へと変わり……
気が付けば海へ流れていた。
新たな姿と共に。
断片的であるが、中核的なことを思い出した。
思い出して……どうしようもない何かに動かされて
海に来ていた。誰もいない場所を目指していたのかもしれない。
■五代 基一郎 > 「……」
俺にどうしろと言うのだ。
まだおぼろげな記憶に突き動かされながらここに来たが。
段々と夜の冷えた海風に流されながら考える。
この、8つ以上も進んだ体にして
力もほとんどない。異能と呼べる異能もなく、強大な存在と戦えるわけでもない。
どうすればいいのか。
どうすることもせず、どうもしなければいいとでもいうのだろうか。
まだ、どうにかできるのか。
どうすることができるのか……
それすらもわからないまま
白浜に座り瞼を閉じて、眠気が来てもそのままに
ただそこで微睡んでいた……
ご案内:「海岸」から五代 基一郎さんが去りました。