2016/08/26 のログ
ご案内:「窓も扉もない部屋」にネットワークさんが現れました。
ネットワーク >  
物が一切無く、そして光さえ無い部屋
そこに幽鬼のように何者かがが並んでいる

光がなくともなぜかそこにいるとわかる彼らの人数は多く、両手で数えるにも数える前にあきらめるほど

彼らは身じろぎもせず輪になり、そしてやはり口も動かさずに会話をしていた

『―――次の議題だが』
『学園にて実行中の実験に関してだが』
『アルヒャイのうち一つが奪取された。早急に回収する必要がある』
『奪取したものの動向はすでに把握している』
『一時ではあるがアルヒャイに匹敵するかそれ以上の戦闘力を見せた、追加投入は見送るべきと判断する』
『この影響が他の個体にも出ている可能性は―――』
『どちらにせよ回収は急務』
『むしろ破壊すべき』
『簡単に解析できるとは思えない。監視はつけるとして静観すべきだ』
『彼を使えばいい』
『まずは実地で判断させるのは―――』


矢継ぎ早に出される言葉

会議のようにも見えるがそれをとりまとめるものはみあたらなかった

ネットワーク >  
『決議だ』

誰ともなくつぶやく

『『・・・・・・』』

無言の肯定

ゆっくりと文字が浮かび上がる

『76%/ 実験の続行
 8% / 実験の凍結
 16%/ その他  』

多数決
単純でいて強い、数を持って正当とする意志決定手段

彼らにトップは存在しない

ネットワーク > 『では―――』

『25%/ 【彼】による回収
 4% / アルヒャイを投入し奪取者もろともの殲滅
 2% / 監視・静観
 66%/ 視察 
 3% / その他                  』

『では
 彼を投入し視察を行う
 判断は一次保留とする』

異議を挟むものは存在しない
賛成だと声を上げる者すらいない
悲哀も歓喜の声も聞こえない

ただ全てのものが決定を受け入れていた

ネットワーク >  
『次の議題だが―――』
『同件についてだ』

議題は粛々と進む
意思決定にしてもそれは異様なスピードと言えた

『RK-1115の量子回路に変異が見られる』

『!!』
『彼女に影響は?』
『初期化すべきだろう』
『むしろ喜ばしいことでは?』
『サンプルとして凍結でよいのでは』
『生ぬるい。運用に関して影響が出る可能性が大きい。即時解体、解析すべきだ』
『本当にそうだとすればそれは非人道的なのでは』
『今更それを言うか』
『解析するにしてもより症状が大きくなってからだろう』
『これをベースに共有化を行う手も』

先ほどとは違い悲喜こもごもの言葉
この流れを望むものと望まぬものがいるのだろう

ネットワーク >  
『・・・・・・
 決議だ』

『・・・・・・』

やはりみな無言
これが彼らのルーチンワークなのだろう

『7% /初期化
 35%/解体・解析
 37%/経過観察
 21%/その他   』

『ではメンテナンス・並列化の後に当初通りの実験へ復帰
 経過観察をおこなうこととする』

やはり異を挟む者はいない
淡々と会議は続いた

ネットワーク >  
『・・・議題は以上だ
 本日もお集まりいただきありがとう』


『全ては』『我らがヒトであるが故に』

影が闇に溶けるように消えていく
その数はゆっくりと減りただただ広い空間のみが残る

そして自分も消える

退席の時間だ

ネットワーク >  
首に埋め込んだネットワークインプラントから
感覚が体に戻ってくる

目に光がさし
そのまぶしさに目を細めた

ぎぃと革張りの高級そうな椅子を揺らし白衣の男が顔を押さえる

「くっくく くふ くっくく
 ・・・」

予想通り、いや予想以上
小さな波紋はやがて全てを押し流す激流となる

だがまだ届かない

だが、かならずこの手を届かせる
目を細め窓から宙を見る
その目はとても遠くを見ていた

『先生?時間ですよ?』

おずおずといった風に扉が開き声をかけられる

「ああ、もうそんな時間か今行くよ」

そうして先ほどまで感覚を手放していた体を億劫そうに動かすのだった

ご案内:「窓も扉もない部屋」からネットワークさんが去りました。