2017/02/16 のログ
セシル > 「大きな組織だ、「風紀」というものについての考えの相違はどうしても生じてしまうからな。
私は、法律以上の網目の細かさを求めようとは、あまり思わないから」

柔らかい笑みを零す。こうしてみると、男性と女性の境界でステップを踏んでいるような麗姿だ。
ここより「後れた」面を持つ世界出身のセシルは、自らの倫理観を絶対化してはいけないという戒めを自分に課している。

「…ご明察だ。
幸い今年はほとんどが義理だったが…どうしても、一部な。
だから、あの日が終わるまで、ほとんど歓楽街の警邏には回らなかった」

「断りと謝罪の手紙が、どうにか9割書けたところだ」なんて言って、苦笑い。
義理堅いんだか冷淡なんだか。

「…そうか…不謹慎だが、それを聞いて少し安心したよ」

「ハガネのバイタリティに敬意を持つ人間は男女問わず多そうだがな」とか、余計なことを付け足しつつ笑み返す。「組」の皆様ドンマイ。

と、そうこうしているうちに頼んだシフォンケーキとコーヒーがやってくる。

「ありがとうございます」

セシルは、運んできた店員に対し、穏やかにそう声をかけた。
テーブルに、ケーキとコーヒーのセットが二つ。

龍宮 鋼 >  
真っ当に暮らしてる大多数の奴らにゃその方がいいんだろうけどな。

(そもそもは自身が不良などやっているのが悪い、ということは自覚している。
 ポケットに手を突っ込んで脚を組みなおす様子は、彼女とは違った意味で男性と女性の境目の雰囲気があるだろう。)

律儀だねェ。
俺だったらいらねェっつって突っ返してるわ。

(渡されたものを律儀に受け取って、あまつさえ断りの手紙まで書いているという。
 そんな頭にクソを三つほど重ねたような真面目さに素直に感心する。)

――安心ってオマエ。
やっぱそう言う趣味か。

(戸惑いの表情を浮かべる。
 勿論そう言う意味では無いだろうとは分かっているのだが、この間の二人はその辺をちゃんと教えたのだろうかと言う確認のようなものである。
 こちらは店員に片手を挙げるだけ。
 片手はポケットに突っ込んだまま、カップを持ってずぞぞ、と黒い液体をすすった。)

セシル > 「こういった場所で、あまり厳密にしようとしてもな…苦しむ者が増えるだろうと思うんだが」

「難しいな」と、柔らかく笑う。
あまり、自分と考えの違う相手に干渉する気もないらしかった。

「そうして突き放すよりは…全てきちんと説明した方が、適切な距離を保ちやすいと思っているんだ。
…そうでなくても、理解されないことが多いし」

こういう振る舞いをしているから女が好きかといえば、そうではなく。
こういう振る舞いと裏腹に男を愛するかといえば、そういう話でもなく。
ただ、庇護者として、あるいは「闘う者」の同輩としてあるというあり方は、あまり伝わらない。

「………趣味?」

不思議そうに首を傾げるセシル。
「安心」というのは、「まさかハガネにまで「王子様」に準ずる見方をされていたら困る」とかそういう方向のつもりだったのである。完全にすれ違いだ。

コーヒーカップを手に取り、香りを楽しむ間をおいてから、一口。
仕草が妙に優雅である。

龍宮 鋼 >  
そいつァ違ェよ。
理由はどうあれルールを守らねェヤツが悪ィんだ。
どんな悲劇的な理由があっても、ルールを破ったヤツが悪ィ。
そうじゃねェとルール守ってるヤツが損しちまうからな。

(龍宮鋼はワルだ。
 ワルだからこそ、ルールの重要性をいやと言うほど知っている。
 だからと言って今更イイコチャンになるつもりも無いが。)

だから律儀だっつーんだよ。
楽だろうが、突き放すほうが。

(しかし彼女は楽な選択肢を選ばない。
 だからこそ自身は彼女が好きだったし、だからこそこうして友人関係にあるのだろう。
 楽しそうに笑ってカップを置く。)

――いや何でもねェ。
つーかオマエこそ誰か渡すやつ居ねェのかよ。
誰かとくっ付いちまえばそんなことで悩まずに済むだろうがよ。

(ああまだ説明されていないのか。
 呆れたような顔をして手を振る。
 そうしてそんな提案をしてから、ケーキを手づかみで口へ。
 豪快にもほどがある。)

セシル > 「…そうだな…ルールはルールとして、問題はその後の救済か。

………と、暗い話になってしまったな…すまない」

真剣な面持ちで、考えるように口元に手を当てながら呟くが…その後はっと何かに気付いたように苦笑いに切り替え、手をひらひらと振った。

「…女生徒達に、今後臆してしまうような傷はつけたくないんだ。

それに…強引に切ってしまうと、それはそれで後が危険というのがなくもないんだぞ?」

前半はやや目を伏せがちにして(まっすぐ伸びる、長いまつ毛が目立った)…それでも、後半はあっけらかんと笑って。

…なお、元の世界にいた頃。
自分の実家より家格の高い家のご令嬢に、たまたま雑な距離の置き方をしてしまって学校を巻き込むトラブルになってしまったのは黒歴史である。表には出さないが。

「………?」

首をひねる。
天然は、自覚がないから天然なのである。
そして、ケーススタディで間に合うはずもなかった。

「………前にも言わなかったか?私は、男性とも女性とも、それ以外の相手とも、そういった関係を築くつもりはないんだ」

そう、穏やかに笑って、上品な所作でケーキを切って口に運ぶ。
何とも対照的な二人だが、色恋沙汰への考え方は近いのだろうか。

龍宮 鋼 >  
ま、その辺は俺の知ったこっちゃねェな。

(自身は風紀委員ではない。
 なので風紀委員がどういう方向に行こうが自身には関係ないのだ。)

そう言う風にちゃんと後のこと考えてるっつーのは充分律儀だよ。
俺ァなるようになるとしか思わねーからな。

(彼女の過去は知らないが、そういう思考になったのならそう言う思考に至る理由があるのだろうという事は分かる。
 それを聞くつもりは無いし、そう言うところが気に入っているのだからそれでいい。)

まぁオマエがそれでいいならそれでいいけどな。

(そう言う考えにも理由はあるのだろうけど、どうでもいい。
 自身が友人だと思う彼女は過去の彼女ではなくて今の彼女なのだから。)

――それより今なんか外で信じられねェもの見たみたいな顔した女子がダッシュしてったんだが。

(彼女の背中側の窓から見えた光景。
 彼女の追っかけの一人だろうか。)

セシル > 「はは…まあ、時々思い出してくれれば有難いよ」

「知ったこっちゃない」と突き放す鋼に苦笑い。

「まあ、私が私に責任の取れる範囲で何かに巻き込まれるのはしょうがないにしても…いたいけな女生徒達には良い将来を歩んで欲しいしな」

そう言って穏やかに笑む。何というか、「王子様」が板につき過ぎている。
淡白なのだか優しいのだか。

「ああ………私は、それでいい」

そう言って、穏やかに目を伏せがちにして、コーヒーを静かにすする。
その穏やかさは、セシル達の若さには似合わぬ、ある種の諦観をまとっているようで。

「………え」

鋼の視線の先を一応振り返るが、当然痕跡等ありはしなかった。
身体の向きを戻して、

「………もしかしたら、ハガネに迷惑をかけてしまうだろうか?」

と、申し訳なさそうに、軽く頭を掻いた。

龍宮 鋼 >  
ッハ、覚えてりゃな。

(笑い飛ばしてコーヒーを一口。
 美味いかどうかは知らないが、不味くはなかった。)

――オマエよくそんなこっ恥ずかしいセリフを真顔で言えるな。

(今日何度目かの呆れた表情。
 こう言う所が女子生徒を惹きつけるのだろう。
 分かっているのだろうか。)

いや別に迷惑はかかっちゃいねェけどよ。
むしろオマエが大丈夫なのか。

(そもそもこんなガラの悪い不良に突っかかってくるような根性のある女子生徒はそうそう居ないだろう。
 むしろそんな根性の座ったヤツであれば仲良くなれそうな気がするし。
 それよりも彼女が自身と付き合っているみたいな噂が流れては困るのではないだろうか。
 そんなことを考えながら気にせずケーキをがぶり。)

セシル > 「…ふふふ」

笑い飛ばす鋼の豪気さに思わず好ましさを覚え、笑みを零して。
まさにタイミングが合うかのように、コーヒーを一口。

「…そうか?相手のことを思えば、こんなものだろう」

呆れた表情を向けられても、不思議そうに首を傾げて、一口サイズに切ったシフォンケーキを口に運んでしまったり。
セシルの方はセシルの方で身分制が根深い社会出身なので、「男性ならばこのくらいの気を遣ってみせるもの」と思ってしまっているのだ。

「私は…直に聞かれれば友人だと話すよ。

…ただ、裏切られたように感じてしまう女生徒がいるとしたら…悲しい誤解になってしまうな」

「傷つけたいわけではないんだが」と付け足して、またコーヒーを一口。
…なんというか、これはこれで、「この場に男がいなくて良かった」感がある。

龍宮 鋼 >  
そこまで出来るヤツァ男でもそう居ねェだろ。

(当然のようにそう言い放つ彼女は完全に王子様の風格を漂わせている。
 お貴族様だとは聞いていたが、ここまで徹底した貴族っぷりとは思っていなかった。
 思わず苦笑。)

裏切るも何も、別にそいつとオツキアイしてる訳じゃねェだろ。
勝手にあっちが期待して勝手に傷付いただけだろうが。

(この辺りは彼女と感覚が違う。
 期待される事を嫌うと言うか、善悪関係なく評価されると言うことを嫌うのだ。
 その程度で誤解するようならばその程度だ、と。
 それに、)

――つーか意外と喜んでる可能性もあるぞ。
風紀委員の王子様と落第街の札付きのワルの禁断の恋とかなんとかってな。

(そんな可能性もあるのだ。
 女の子と言うのはそう言う話が大好きなのだ。
 納得は出来ないが理解は出来る。)

セシル > 「…そういうものか…こちらの世界はこちらの世界で女性は大変だな…」

うむむ、と真面目な顔で唸り声を上げるセシル。
あなたも一応肉体上は女性ですが。

「………いや、「誰ともそういう関係になるつもりはない」という文面で手紙を書いてしまっているから………
言行不一致になってしまうと、裏切られたと思われてしまうだろう?」

「書き直すべきか」なんて、真面目に考えかけるが…「喜び」の可能性を示唆されて、しばしきょとんとした後。

「………やはり、迷惑がかかるのはハガネの方ではないか?」

と、真顔で鋼の方を見やり。

龍宮 鋼 >  
女だけじゃねーだろ。
むしろそう言うのは女の方がドライじゃねーのか。

(好きな人にはとことん可愛いところを見せようとするが、そうでないものは扱いが雑だったりする。
 そう言う意味では男の方が大変だろうと思わなくもない。)

実際そう言うつもりで俺とダチやってんじゃねーだろ。
そう思うやつが勝手に思ってるだけだ。

(背もたれに深く身体を預けたままカップに口を付ける。
 真面目すぎるんだよ、とカップを持つ手の人差し指を突きつけて。)

――この龍宮鋼は、所謂不良のレッテルを貼られている、つってな。
今更どんな噂流れされたとこでどうとも思わねーよ。

(昔のマンガの名台詞。
 真偽性の低い噂など今更だし、そんなものを気にするぐらいなら、不良などとうにやめているのだ。)

セシル > 「女の方がドライじゃないのか」と聞かれて、目を大きく二、三度瞬かせて。

「………「ドライ」の意味次第、だろうか。
私の故郷では、結婚相手次第で暮らし向きが随分変わったから…」

そう言いながら、考えるように首をひねった。
身分制、あるいは階級社会における、女性の立場。それに対しての、ある種の諦観。

「…まあ、それはそうだが…」

「真面目か?」と、不思議そうに首を傾げる。
往々にして自覚というものは以下略。

「………そう、か」

昔のマンガの名台詞など、セシルは知るはずもないが…「そのままで良いと思うのか」という言葉を、セシルは飲み込んだ。
きっと、彼女は生半可な覚悟で今の場所に立っていないのだろう。

「………強いな、ハガネは」

そうぽつりと言って、コーヒーカップに口を付けた。

龍宮 鋼 >  
それこそ世界が違ェからな。
ここにゃお貴族様なんて居ねェし、そう言うもんだっつー空気がある。

(きっと彼女にチョコを贈っている女生徒も、大抵はそこまで本気ではないだろう。
 男性アイドルとかクラスのイケメンとかに熱を上げているようなものだと思う。
 中には本気のものもいるだろうけれど。)

良くも悪くもオマエが暮らしてたとことは違うからな。
慣れてねーんだ、言っちまえば。

(前々から思っていた違和感の正体がなんとなく分かった気がする。
 きっと文化の違いに慣れていないのだろう。
 もしかしたらそれに気付いている友人も少ないのではないか、と思う。)

強かねーよ。
諦めてるだけだ。

(強いわけじゃない。
 最近夢に見ることがある。
 新しく増えた電話するだけの友人と、こうして一緒にお茶を飲むような他愛も無い日常。
 出来るわけが無い、とまでは思わないようにはなったけれど、それでもまだ遠い夢のような日常。
 札付きのワルと認識されて、違反部活の頭に据え置かれて。
 そんな評判を覆すのにどれだけ時間と労力をかけなければならないのか。
 だから諦めている、それだけだ。)

セシル > 「貴族はいなくても、貧富の差はあるし…
…そもそも、「そういうものだ」というのがよく分からんな…」

「これは純粋に私の無知なのだろうが」と留保しつつも考え込むように口元に手を寄せる。

流石に、セシルの性別を認識した上で本気というものなどほとんどいないだろう。
ただ、それでもセシルを熱を上げる相手に「選んでしまう」程度にはいたいけなのだと思っているから、セシルは丁寧な対応を崩さないのだ。

「ああ、それはそうだな。
勉強や、仕事にまつわることはそれなりに追いついているつもりはいるが…世俗のことは、結局よく分からんままだ」

指摘を受けて、特に気分を害するでもなく…というか、普通に笑みすら零してみせた。
社会システムや技術に最低限適応しているため、もはや「そういうキャラ」ということになっていて指摘する人間もほとんどいない。

「………それでも、腐らずに立ち続けているのは「強さ」だと、私は思うよ。
世界を呪わず…こうして、「風紀委員」とお茶まで出来るのだから」

そう言って、少し目を伏せがちに、静かにコーヒーを啜るセシル。
「非嫡出子の娘」が、母親を守り続けるために…生まれたその地で、貫きたかった強さを、目の前の少女は強く持っているのだと感じた。

龍宮 鋼 >  
貧富の差っつっても絶望的な差があるわけじゃねーだろ。
その差にしたって家柄とか生まれとかどうしようもねーモンじゃなく、ただの立場の違いだろうしな。
テキトーで良いんだよテキトーで。

(多分選ぶ理由は適度に近しい関係だからだ。
 手の届くところに見た目も性格も良いイケメンの美人が居るから手を伸ばしているだけだろう。
 ある意味で望まれているように振舞ってしまっている、というのも原因かもしれない。)

世俗っつってもなァ。
特に難しく考えるようなこっちゃねェぞ。
深く考えねェでやりたいことやってりゃいいんじゃねェの。

(そう言うキャラで通ってしまっているのはある意味で不幸な気はする。
 通ってしまっている以上下手に崩すわけにも行かないだろうし。
 とりあえず彼女は考えすぎな嫌いがあるので、その辺をアドバイスしておくことにした。)

アホか。
腐ってなかったら不良なんてやってねーっつーの。
今でも風紀の事は気にいらねェし。

(世界までは呪っていないが、風紀に持っている八つ当たりめいた感情はまだ消えない。
 そもそも守ると誓ったものを守れなかったという時点で、自身に対する強いと言う感覚は無い。)

――話変わるけどよ。
最近違反部活片っ端から潰されてるらしいな。
風紀も大変だろ。

(コーヒーを啜りながら。)

セシル > 「…そういうものか…」

むむむ、と声を漏らす。
その辺の細かい知見を突っ込めるほどには、流石に勉強の程度が行き届いていない。

「………やりたいこと、なぁ………」

どこか悩ましげに、らしくない長めの溜息を吐くセシル。
やりたいことというか、やるべきだと定めてきたことを、ほとんど故郷に置いてきてしまった。
風紀委員は、「剣の腕が活きる場所で生活の糧を得たかった」という、割と実利的な理由で所属しているのだし。

「…ははは、手厳しいな」

「私達も精進が足りんが」と、苦笑い。
人の身が、人の身が作った組織が、全知全能とはなれない。
ただ、以前は「救えなかった」ものを「救える」ようになるために、個人も、組織も、切磋琢磨しながら漸進していくしかないのだと、セシルは思っている。

「………ああ…そうだな」

「違反部活が「裏」の街の内部の別組織に潰されている」話に話題が変わると、苦い顔。

「…本当は、「法」のあり方を崩さないために、私達が出来なければいけないことだから…何とも言えないのが歯がゆいよ。
…ああ、そういえば」

ふと、何かを思い出すように目をぱちりとさせると。

「ヤオヨロズ ライという男を知っているか?
彼から、ハガネによろしくと言われたんだが」

と、以前「自警団」と鋼を結びつけるような仄めかしをした「情報屋」のことを、口に出した。

龍宮 鋼 >  
(そうだよ、なんて言いながらシフォンケーキの残りを口へ。
 指に付いた欠片を舐め取り、コーヒーで流し込んだ。)

別に大げさじゃなくていいだろ
美味いもん食いたいとか、欲しいもんあるとか。

(身近な事でいいのだと。
 そう言う「こちらの生活」らしい事をやっていれば、その内なれるだろうから。)

オマエは別だけどな。
オマエは気持ちのいいヤツだから好きだ。

(ニヒルに笑う。
 が、その男の名前を聞けば、あからさまに不機嫌な表情になった。)

――知りたくもねェ名前だけどな。
俺ァこんなんだからよ、色々世話にはなってんだが……。

(苦虫を噛み潰したような顔で語る。
 嫌いなタイプだし、出来ることなら世話になりたくない男だが。)

――風紀に居るなら分かるだろ。
あのやり方なら、どうしたって拾えねェヤツは出てくるっつーことぐらい。

セシル > 「…こちらは…少しニュアンスが変わってしまうが、全体的に食べ物の質はいいな。
慣れれば、きっと楽しめるだろう。

………しかし…欲しいもの、か………」

食べ物の話はまだ楽しそうだったものの、「実用的なもの以外は、あまり気にしたことがないな…」と、真顔でぽつり。
「こちらの生活」らしいことの経験値が、まだまだ足りないようだ。

「私が特別優れているとは思わないがな…そういう風に思ってくれていることは、嬉しく思うよ」

ニヒルに笑われれば、こちらも柔らかく笑みを返す。
…が、自分が出した男の名を聞いて、鋼が露骨に不機嫌な顔をすれば、「やってしまった」と言わんばかりにその手で目のあたりを覆ってから。

「………悪人では、ないと思ったんだがな…
その様子だと、何か腹に据えかねるものでもあるのか。ハガネの気が楽になるのならば話くらいは聞こう」

やや気まずそうな声ながら、尋ねてみる。
そして…委員会というものの限界について聞かれれば、す、と、視線を下向きに翳らせて。

「…「制度」というのは難しいところでな…
「ここに線を引くと救えない」という問題もあるが、「ここに線を引くと余計なものまで圧迫してしまう」という問題もあって…それらの試行錯誤の末に、特に司法というものは出来ていると、故郷で教わったよ。

私は、元いた世界では、剣で身を立てる代わりに、その束縛を受けると誓う立場を目指していた。
今、ここで風紀委員として身を立てているときに…その束縛から自由になることを、私は、自分に許せない」

「そこまで自分が立派な人間とも思っていないしな」と言ってコーヒーカップを口に付け、傾けて…一度、ソーサーの上に置いてから。

「だから…別に、制度の中に取り込まれるべきだとは思わないんだがな。
ただ………手が取り合えれば良いのに、と思うことは多いよ」

そう言って、翳りが見える微笑を見せた。

龍宮 鋼 >  
まぁ、文明レベルで言やァこっちの方が進んでるみてェだからな。
食いモンの調理法なんかもそっちよりゃ色々進んでるってことじゃねェか。
――んならやりてェこと見つける、でいいんじゃねェか、当面の目標は。

(スマホを持っていなかったことあたりから推察するに、そう言うことなのだろうとは思う。
 そうして欲しいものと言われてもあまりピンときていないらしい彼女の表情。
 それを見て、とりあえずの目標を提案してみた。)

そらァ光栄なこった。
……まァ胡散臭ェヤツだけど、悪いヤツじゃあねーと思うんだが。
――面倒臭ェんだよ。
可愛いだのデートしろだのいちいちいちいち。

(嬉しいと言われれば、こちらも笑うが、情報屋の話になればうんざりした表情になる。
 女の子として見られるのが嫌だ、という事。
 またそれがからかうような感じで言われるので尚更。
 つまり相性が悪いのだ。)

そらそうだ。
助けを求めてるヤツら全部助けるなんて正義の味方みてェなこと出来る訳がねェ。
――だからよ。

(そこで一度言葉を切って。
 トン、とテーブルを指で叩いて、彼女の目を真っ直ぐ見据える。)

オマエらが助けられるヤツらはオマエらが責任持って助けろ。
そっからこぼれた奴らは俺が――俺達が全部拾い上げる。

セシル > 「そうだな…異能や魔術を利用する「知恵」とでもいうものは、一日の長があるのだろうが。
食べ物は…こちらの気候が温暖なのも大きいだろう。食材の種類が、私の故郷に比べると随分豊富だ。

………そう、だな。考えてみよう」

食べ物の話やら何やらは積極的に乗るのに、「やりたいことを見つける」という点では、随分歯切れが鈍い。
…「やるべきことを置いてきてしまった」「出来ることならば帰りたい」という感情が、そうさせるのだろう。

「………なるほど、そういった面倒臭さか。
そういえば、私も「安くする」などと言われたなぁ」

「私を女扱いするあたり、筋は通っているのだろうが」と苦笑い。
セシルとしては、なめてかかられなければどちらで扱われようと構わない。ただ、女だと思われる方がその点が危うい場合が多い、という認識があるだけだ。

セシルが彼に相性の悪さを感じるのは、「情報屋」という立場。
「風紀委員の管理層に食い込む気がない」セシルとしては、非常にやりづらいのだ。

「………なるほど、な」

「彼」が「自警団」の話をほのめかしながら鋼の名を出した理由に、流石のセシルも合点がいっていた。かなりのサービスといえるのだろう。

そんなことを考えながらも、セシルはまっすぐ、鋼の視線に応えた。

「無論、それが私達の仕事だからな。
…「自警団」「とやら」の仕事、ゼロにするのは難しいだろうが、出来るだけ減らしてやるとしよう」

どこか、悪戯っぽい強気な微笑を浮かべて、言った。

龍宮 鋼 >  
こっちだと一応表向きは出てきて十数年だからな。
あとは国民性だろうな。
この国の食にかける執念はおかしい。

(それ以前にもひっそりと裏では研究は続いていたのだろうけれど、規模は小さいものだっただろう。
 さらに食事に関してこの国は明らかに常軌を逸している。
 他国の料理に魔改造を施して国民食と呼べるようなものに変えた先人達の、執念とも呼べる情熱は他国の追随を許さないのだから。)

――ま、とりあえずの目標でいいだろ。
言っただろ、考えすぎんじゃねーよ。

(彼女の言葉の裏に隠れた真意を読み取れるほど付き合いが深いわけじゃない。
 それでもやはり彼女に関しては適当に考えてちょうどいいと思っている。
 改めて力を抜け、と。)

あれァそう言うとこ突いて遊ぶようなヤツだからよ。
まともに相手すんのが間違いっつーのは分かってんだが。

(それでも癪に障るを通り越して一度ぶん殴ってやりたい。
 殴っても無駄だと勘が言っているので殴らないけれど。)

そいつァ困る。
飯が食えなくなっちまうからな。
――自警団なんて立派なモンじゃねーよ。
鋼の両翼、なんて大層な名前が付いてるが、ヤクザかマフィアが良いとこだ。

(そう告げるのはいかにも困る、と言ったような表情。
 しかし口元は笑っていて、冗談だとすぐに分かるだろう。)

セシル > 「そうか…それでこれだけの学園が出来てしまうのだから、やはりこちらは根本的に世界が豊かなのだろうなぁ…」

そんな風に、しみじみと。
が、食の話になれば

「食は人生の彩りだから良いに越したことはないが…「執念」か」

くくっ、と、おかしそうに笑い声を漏らした。
セシルの故郷では、そこまでのコストはよほどの特権階級でなければ割けない。セシルの実家ですら、入らないくらいの。

「…考え過ぎない、というのも難しいな…
………精進を忘れず、あるがまま…でとりあえずはいいか」

「考え過ぎないことに固執したら本末転倒だしな」なんて、ふっと笑みを零して。
力を抜け、という鋼のメッセージは、セシルなりにきっちり受け取ったらしい。

「………なるほど…それは、性質が悪そうだ」

鋼から「八百万 頼」という人間の人となりを聞いて、困ったように眉をひそめる。
セシルからしても、とても、やりづらそうな相手だ。
鋼のように付き合いがあるわけでもないので、そこまでの感情は持っていないが。

「ははは…「自警団」で利益を得られる者達なら、既に「信用」はあるのだろう?
もっと、自信を持っていいと思うがなぁ」

冗談に応じるように、大らかに笑う。
褒める言葉は、割と本心だけれど。

龍宮 鋼 >  
国ごとの貧富の差はあるだろうけどな。
この国は結構裕福な方らしいぜ。
和洋中世界各国の美味いメシが食えるのはこの国ぐらいなモンなんだと。

(同じように楽しそうに喉を鳴らす。
 なんせメシが不味いことで有名な国の料理ですら美味しくしてしまうと言うのだから、笑うしかない。)

いいんじゃねーかそれで。
どうにかならーな。

(自分のような厄介極まりない拗れきった面倒ごとさえとりあえずは何とかなったのだ。
 大抵の事はどうにもならないなどと言うことはないとすら思えてくる。)

悪ーんだよ実際。

(個人的な相性のほかにも、アレは天敵だと思っている。
 自分は頭が弱いほうではないと思ってはいるが、アレは別格だ。
 一度目を着けられれば放っておいたらいつの間にか絡め取られ、相手をすれば手玉に取られる。
 そう言うやり方に異常なまでに特化した蛇のような人間だと、自身では思っていたりするのだ。)

まァカタギに迷惑かけなけりゃ、悪モン潰して回る乱暴者ぐらいの評価だろうからな。
あとはカタギ相手に真っ当な商売やってりゃ、イメージとしちゃそう悪くならねェだろ。
けどやってる事ァまるっきりヤクザモンだよ。

(闇金業とか抗争介入とか。
 とは言え今のところ確かにヤクザ者としてはそこまで悪い印象は受けていないと思う。)

――そろそろ行くか。
この後どうすんだ。
また服でも見に行くなら付き合うぜ。

(コーヒーを飲み干し、立ち上がって伝票を手に。
 何も言われないならそのまま二人分支払ってしまうだろう。
 この後解散するならそうするだろうし、そうでないなら適当にぶらついて。

 ――後日、彼女にワイルドな彼氏が出来たと言う噂が流れたとか流れなかったとか。
 その噂もその内忘れ去られるだろうけれど。)

ご案内:「バレンタイン直後、週末のカフェテラス」から龍宮 鋼さんが去りました。
セシル > 「ああ…確かに、国ごとの貧富の差は、地理でやったなぁ…」

「地理でやった」。異邦人補正があるとはいえ、ちょっと「王子様」の口から出るとちょっとがっかりするかもしれないフレーズだ。

「…そうか…それじゃあ、食わず嫌いせずに色々楽しんでみた方が良いのか」

食べ物については、興味津々の様子のセシルである。「王子様」と体育会系の、微妙に絶妙な融合だ。

「ふふ…そうだな。きっと、「どうにかなる」な」

鋼のマイペースな励ましに、どこか嬉しそうな微笑を見せた。
「王子様」と「女の子」の、間のような顔。

「………そ、そうなのか………」

鋼の言いように、一層表情を険しくするセシル。元々顔の彫りが深めなので深刻そうな雰囲気は割増だ。

「…「ヤクザ」というのも、難しいものだな」

「法」の隙間に生きるもの達に濃淡があること、想像出来ないセシルではない。
ただ、その難儀さを労うような、苦笑いを浮かべて。

「…そうだな…服を見ても良いが、せっかくなら単純に店そのものを見て回りたいな」

「欲しいもの探しだ」と、朗らかに笑いながら…

「会計は、別だぞ?」

念は押しました。

そうして、ウィンドウショッピングと、ちょっとした雑貨を買ったりして。
その週末、セシルはとても充実した時間を過ごしたのだった。

噂の後始末がどうなったかは…また、別の話。
ただ、セシルの方には手紙との整合性を問う女の子達が、何人か現れたとか。

ご案内:「バレンタイン直後、週末のカフェテラス」からセシルさんが去りました。