2017/05/23 のログ
ご案内:「廃屋の一室」にヴィルヘルムさんが現れました。
ヴィルヘルム > もう長い間、人の気配が無かった廃屋。
入り口も窓も、ずっと昔に壊されたまま放置されており、床にも壁にも至る所に傷や穴が残されている。
過去にこの場所で何らかのトラブルがあったことを示唆するものだが、今となってはそれを調べる者さえ居ない。

「………………。」

そんな建物の一室は、他の部屋とはずいぶんと様子が違っていた。
壁にはまるで何かで引っ搔いたような傷跡が無数に残されており、ありとあらゆる家具が破壊されている。
しかし何よりも異質なのは、それらの傷跡が、あまりにも新しいという事だろう。

「………。」

あれこれ推察するまでもなく、“元凶”はその部屋の片隅に寝転んでいる。
美しいプラチナの毛並みと,恐ろしい牙,そして紅色の瞳をもつ巨大な狼。
彼は,まるでここに隠れているかのように,息を殺していた。

ご案内:「廃屋の一室」に黒髪の少女さんが現れました。
黒髪の少女 > (…あまり精密に探査をかけるわけに参りませんでしたし…少々、手間取りましたわね)

相手の魔力感受性を鑑み、ピンポイントで探していると思わせないよう探査術式をしかけて目的の「人物」の所在を絞り込んだ「少女」は、少々迷いながらも、「彼」のいる廃屋を絞り込んだ。

窓も、入り口も破壊されている廃屋。
荒らされた廃屋の入り口に、重いヒールの下ろされる音がわずかに鳴り…そして、かすかな花の香りが漂った。

ヴィルヘルム > 息を殺していた彼には,貴女の歩みの一歩一歩が,手に取るように分かった。
壁や床から伝わってくる音,香り,何よりも魔力の匂いが,それを感じさせる。

「……………。」

首だけを上げて,彼は貴女の発する兆候の一つ一つに神経を集中した。
貴女が近づいてくると分かれば,その巨体を持ち上げ,待つのだろう。

黒髪の少女 > 「少女」は、まるでその廃屋を見物して回っているかのように、丹念に動き回っている。
それなりに気を払われてはいるものの殺しきるにはほど遠い足音、そして、街中ならさほど気にかけられないだろう程度にはかすかな甘い香り。
「少女」の足音は、気配は、「彼」のいる部屋へと近づいていく…。

ヴィルヘルム > 貴女が近づいてくるのなら,巨体は静かに立ち上がり…意図的に床を鳴らす。
そして,低く,しかし良く響く唸り声とともに…

「…それ以上進まない方が良い。」

…告げる言葉は,警告とも,懇願とも。

黒髪の少女 > 響いてきた、低い唸り声。
それと共に告げられた言葉の主は…「少女」の目的の人物は、普段よりやや低めながらも、本来の特徴を色濃く残す声をしていた。
「少女」は、素直に足を止める。

「………まさか、こんなところに人がいるなんて思わなかった。
ここで野宿してる人?それとも、私と同じ、夜の廃墟探検が趣味の物好き?」

少女らしいあどけなさの残る声が、告げる声に尋ね返す。
この「少女」本来の声ではないが…「彼」は、とある人物の魔力の中の「嘆き」の中に、似た声を聞いた覚えがあるかも知れない。

ヴィルヘルム > 足を止めた少女の言葉。それを聞いた彼は,何処か不快そうに足を鳴らした。
人間とは比べ物にならない聴力が,その声を記憶の中の声を重ね合わせる。

「こんな時間に探検なんて,命知らずだね。でも,僕は好きでここに居るわけじゃない。」

ゆっくりと,心を落ち着けるように,話す。

「……好奇心でここに来たなら,今すぐ帰ってくれないかな。」

貴女が誰なのか,確信があるわけではない。
けれど,こんな場所にまで入り込んでくる相手の言葉を,素直に信じる気にはなれなかった。