2017/05/27 のログ
ご案内:「廃屋の一室」にヴィルヘルムさんが現れました。
ヴィルヘルム > 夜の闇に息を潜めて,部屋の隅にその巨体を横たえる獣の姿をした青年。

美しいプラチナの体毛も土埃に汚され,部屋は日に日に傷跡を増やしている。
孤独や恐怖,不安などの心理的な側面だけにとどまらず,空腹や渇きにも苦しめられていた。

「……………。」

昼の間は,その体が獣へと変わることが無いと,まだ確信をもって言えるわけではない。
だが,明日には何か食べ物を手に入れに行かなければ。

ご案内:「廃屋の一室」に金髪の女さんが現れました。
金髪の女 > そんな折、入り口に人の気配が増える。
先日の少女と、足音などからすると体格は違うようだが、魔力の気配は似ているようだった。
そして…香りの立ち方は微妙に違うが、その女が1滴だけ纏った香りは、獣の姿をしている青年に、ある種の既視感を覚えさせたかも知れない。

(………噂も広まりつつあるようですのに、動いていないなんて…どうありたいのだか)

「彼女」の知らぬところで「彼」は「その姿」を人目にさらしてしまっているらしく、「珍しい毛並みの人狼」の話を、移動途中で一度だか、耳に挟んだ。危機管理がなっていない、というべきか。
…というわけで、姿が変わっているとはいえ、青年の塒に姿を現したのは、やはり「彼女」だった。

ヴィルヘルム > 噂が広まっていることなど知る由もない。
そして行くあても無ければ,動くに適した時間も分からない。
獣と化した青年にとって,少なくともこうして静かに寝られる場所を離れるには,障害が大きすぎた。

「誰だ……?」

貴女は,青年の声が明らかに苛立っている,もしくは焦っていると感じるだろう。
それは貴女のまとった香水に起因するものかもしれないし,単に空腹感からくるものかもしれない。
……そして同時に,その声は明らかに疲弊している。

金髪の女 > 「………あれ、人いんの?」

青年の声に返ってきたのは、はすっぱな口調の、品のなさそうな女の声。
喉の使い方を少し変えるだけで印象が変わるので、変身する際の年齢を下げない場合には度々使う声だ。

「やだなー、まさかこんなとこにまで野宿の先客がいるなんて思わなかった。
部屋いくつかあるし、別のとこならいーよねぇ?」

青年の声の苛立ち、焦り、疲労を無視するかのように、ずかずかと廃屋の中に足を踏み入れてくる女。
…無論「彼女」は、先日からの変化に気付いてはいるのだ。
「彼女」は、「彼」が自ら姿を曝す時を伺っている…。

ヴィルヘルム > 貴女の声が届けば,青年は不快そうに身体を起こした。

「……いいから黙って帰って。今は,一人にしておいてほしい。」

その声は,以前の招かれざる客とはまるで異なっていた。
人間ならそう感じたところだろうが,聴力が数倍に跳ね上がった彼にとって,それは違和感となって耳に残った。
“野宿”という言葉。記憶の中の音と,聞こえた音が,重なって聞こえる。

「…………………。」

青年はその身体を倒した。ドサリ,と重々しい音が,貴女にも聞こえるだろう。

金髪の女 > 「帰ってって、帰る場所があったら野宿とか言い出さないし。
って………は?」

途切れた相手の声、そして響く重々しい音。

「…ちょっと…何があったっての?」

じり、じりと女の気配が、足音が青年のいる部屋に近づいていく。
近づき方の雰囲気としては、「怖いから嫌だけど、確かめないとまずい気もするから仕方なく様子を見に行く」だが…。

青年の嗅覚に、微かな甘い香りと、人間の…女の匂いが迫ってくる。

ヴィルヘルム > 青年にもう少し魔術の知識があったなら,貴女と先日の女の関係性を正確に見出したかもしれない。
それどころか,この憎むべき魔術の使い手との繋がりさえも,看破し得たかもしれない。
だが,彼は心に大きな疑念を抱くのみで,その先に進むほどの知識を持ちえなかった。
疑念は怒りを生じさせ,怒りは憎むべき衝動を掻き立てる。

「……野宿,野宿…………。」

おかしい,同じ人間の声だ。匂いは,香水に阻まれて分からないが……。
どういうことかもわからないが,声が同じなのだ。

「…………君は,誰だ?」

……声が震えているのか分かるだろうか。沸き上がる怒りや衝動を必死に抑えているのが,伝わるだろうか。

金髪の女 > 「………は?」

震えた声での質問には、教養のなさそうな声での返答があった。
とりあえず、「見知らぬ」先客が無事なのを相手の声で確認してか、女の足が止まる。

「誰も何も、落第街に掃いて捨てるほどいるしょーもない女以外の何だっていうの?
名前まで名乗れって?」

震える声と…その背後で膨れ上がる気配を感じられないほど、「彼女」は愚鈍ではない。
足を止めたまま、呆れた様子で手を広げてはみせるが…「しょーもない女」というには、魔力の底を「隠している」ように、「彼」には思われるかも知れない。