2017/05/28 のログ
■ヴィルヘルム > 貴女の言葉に,違和感は無かった。
だが違和感を感じるのは,その魔力や,香水の香り。
帰る場所も無いと語るような女が,僅かほどの香水の香りをまとう。
「………名前が無いわけじゃないだろう?」
魔力に関して洞察することはできなかった。
それ故に,まだ,貴女の正体に確信を持てずにいたのも事実である。
「………君は,誰だい?」
疑念を抱いている。だからこそ,その口調は厳しく。
■金髪の女 > 「…キャサリン・ブロンテ。まあ、ちょっとした商売人だよ。
この街の住人の名前に、そんなに価値があるとも思えないけどね。
…満足した?なら、あたしはテキトーな寝床漁らせてもらうよ。
こんなボロい建物、誰のものってわけでもないんだろうし」
口からでまかせの偽名を、余裕の態度で吐き出す。
疑念を抱く「彼」に、女の態度はどう感じられるだろうか。
■ヴィルヘルム > 貴女はさらりと名を名乗った。
青年は疑念を抱いたまま,しかし決め手が無ければ何も言葉を返せない。
いつものように,追い返してしまおうかと思ったが,
もし,貴女がこの間の女と“同じ人間”なら,何かの方法で姿を変えているのなら…
…何のためにここに来たのか,それが気になった。
弄びに来たのか,殺しに来たのか,捕まえに来たのか。……もしかしたら,助けに来てくれたのか。
いや,そんなはずはない。助けに来たのなら,別人になる必要が無い。
「…………好きにすればいいさ。
でも,その,香水の匂いだけは消してほしい。…そこからでも匂う。」
青年が心を落ち着けて言葉を発するまでには,だいぶ時間がかかった。
それでもなお,貴女がここに居ることを許容する言葉は“だいぶ無理をしている”のがバレバレだった。
■金髪の女 > 前回と別の姿を選んだのは、しつこく尋ねてくることに相手が激昂することを考慮してである。
「もういなくなってるかと思って」と言い訳しても、良かったといえば良かったのだが。
「そお?ありがと………って、別にアンタのウチでもないんだし礼を言うほどじゃないか。
ま、「時は金なり」って言うしねぇ。長居はしないよ」
ふっと、少し笑いを零したような声。
…が、香水のことを指摘されれば、
「あれー?少なくともあたしからアンタの姿は見えてないし、その程度に距離は離れてると思うんだけど、そんなに匂う?
商売の最後の手段で泣き落とす時のとっておきで、けちけち使ってんだけど…
アンタ、相当鼻いい?」
と、とぼけた声を出してみせた。
「…でも、消せって言われても、こんなボロいとこにシャワーなんかあるわけないしねぇ…アルコールで拭けないことないけど、多分そっちのが臭いきついよ」
その上で、香水を落とすのを面倒くさがった。
■ヴィルヘルム > 貴女の想像の通り,恐らく同じ人物が尋ねてくれば獣は冷静さを欠くだろう。
だが,先日の女は,立ち去り際に青年を案ずるような言葉を掛けた。
その言葉を青年が覚えていたのなら,怒りを希望が上回る可能性も十分にあった。
とは言え結果的には,青年が先日より疲弊していることと,声の共通点に気付いたことが先日と異なる結果をもたらしたのだが。
「…………何でもいいさ,匂うものは匂う。僕は,その甘い匂いが嫌いなんだ。」
面倒くさがる貴女に,青年は静かにそうとだけ言う。
あまりにも単純な理由だったが,声の震え具合を鑑みれば,その言葉に嘘は無さそうだ。
「……………君は,何を売っているんだい?」
やがて青年は,貴女にそうとだけ,声をかける。
それは貴女に敵意がないと明確に判断したのではなく,会話によって自己の孤独感を埋めようとした結果に過ぎなかった。
■金髪の女 > 「そ…めんどくさい男だねぇ」
「こういうのに引っかかるくらい単純でいいのに」とかぼやきながら、「どこからか」アルコールを取り出して、香水をつけた箇所を拭ったらしい。
エタノールのキツい臭いは、瞬間的には香水の比ではないだろう。そのうち落ち着くのだが。
「何?あたしの商売に興味持ってくれるわけ?」
女の声のトーンが、気持ち高くなる。
「あたしが扱ってるのは、魔術でこしらえた薬の類だよ。サプリメントとか、化粧品も少しね。
薬は普通のもヤバいのもあるけど、まあ中毒にすることが目的じゃないからそこだけは安心してくれていいよ。ヤバい組織と繋がってるとかもないしね」
「だから野宿になるんだけどさ」と、何でもない調子で付け足す。
「この女」の主張をまとめると、
「組織などに所属せず、独立して魔法薬の類を売っている売人。
独立して商売しているのが気に入られていないのを警戒して固定の住居を構えていない」
あたりだろうか。…よくもまあここまで出鱈目をこしらえるものである。
「何だったら、アルコールの臭いが飛んだらアンタにも見せようか?
小さいものならすぐ出せるし」
そう、「商売人がちゃっかり」のノリで話を振る。
もし要求されたら、「彼」に「本当の姿」では見せていない魔法薬を適当に見せるつもりでいた。
■ヴィルヘルム > 「…そうやって,君は引っかかった相手を嗤っているんだろう?」
感情の昂りにアルコールの刺激臭が重なり,青年の声は明らかに,不快そうだった。
青年も気付いてはいなかったが,無意識に唸り声が人間の声に混ざり込む。
………そして貴女は,青年の期待以上によく喋った。
「………………。」
それが出鱈目であることを見抜くのは難しいだろう。
筋も通っているし,振る舞いにもさほど違和感はない。声の違和感嶽は,ずっと拭い去れないのだが。
「…………ごめん,薬は嫌いでね。」
間が空いたが,それは怒りを飲み込むための間ではなかった。
貴女があまりに無警戒に話すものだから,自分の姿を瞬時,忘れそうになったのだ。
この姿を見れば,貴女を驚かせてしまうだろう。…そして自分も,そんな目を見たくはない。
■金髪の女 > 「流石に、たかが香水にそんな力はないよ。
迷ってる相手に最後の一押しくらいさ。
………ていうかアンタ、声大丈夫?何か変な音混じったけど」
「あたしは医者じゃないけどさ」と付け足し、青年の話し声に「雑音」が混ざったのを耳聡く聞き留めたことを示唆してみせる。
「そう…珍しいねぇ、この辺りで薬嫌いだなんて。
じゃあ、サプリメントはどお?この辺じゃ、まともな飯になんてありついてないでしょ?」
「この辺でまともな野菜食べようとするよりは安いよ」なんて、調子のいい言葉を繋げて。
…エタノールの臭いが薄れた頃合い、女の足は、「彼」のいる方に無警戒に近づくそぶりを示す音を立てた。
■ヴィルヘルム > 声を指摘され,貴女が立ち上がった音が聞こえる。
食べ物にありついていないのは事実だったが,その理由は街にあるのではない。
「……来るな!!」
怒りと,焦り。そのどちらもが込められた声が響く。それは命令しているというよりも懇願していた。
そして,部屋に近づけば,貴女は酷い状況になった部屋を目の当たりにするだろう。
壁も床も至る所に大きな傷がつけられ,家具は破壊され尽くしている。
何か異様な事が起きているのは明白だ。
■金髪の女 > 青年の懇願じみた命令に、一旦足を止める。
それでも、女は部屋の中が一部見える位置まで近づいていて…
「………。………アンタ、凄いとこで寝ようとしてるね………。
何?ここってどの部屋も「そんな感じ」なの?」
息を呑んでから、そう尋ねた。
現在進行形で破壊の音が聞こえない以上、逃げ出すまではいかないが。
(………これは、想像以上の………。)
「彼女」は、ある意味表面上の態度以上に驚いていた。
「あの青年」のどこに、こんな暴力性が眠っていたというのだろう?
■ヴィルヘルム > 「だから,来るなと言っているんだ…!!僕を一人にしてくれ!!!」
その声は怒りと焦り,そして悲しみに満ちていた。
誰しも,この部屋の惨状を見れば言葉を失って当然である。
だがそれさえも,自身が相手に拒絶されたように感じてしまうのだ。
沸き上がった感情を,ついに抑え込めずに振り上げた前腕の爪が壁を引き裂き,貴女にも破砕音を伝える。
「…………お願いだ。……僕の姿を,見ないでくれ。」
ご案内:「廃屋の一室」からヴィルヘルムさんが去りました。
■金髪の女 > 「………。」
目の前の部屋から、破砕音が聞こえる。
きっと、会話の相手が、目の前の部屋が酷い状況になっている原因の行為を再現しているのだ。
「自分」には見えない、壁の向こうで。
(…流石に、またここで退くのは…)
その破砕音に息を呑んでいるかのように沈黙しながら、「彼女」は次の手を考える。
幸か不幸か、今のところ懐柔は上々だ。これを維持出来れば、もうちょっと「遊べ」そうである。しかし、だからといってわざわざ退いて一からやり直しも面倒だ。
せっかく「遊ぶ」なら、「バケモノ」の目を正面から拝んでおきたい。
………「彼女」は、「はい」とも「いいえ」とも答えないことにした。
幸い、「現在の」彼の外見特徴を漏れ聞かせる噂を、ここに来る過程で聞いている。「商人」という位置づけにしたのだから、情報通で何も問題はない。
反応次第では、突破口があるかも知れない。
「………アンタ、最近ちょっと噂になり始めてる人狼さん?」
恐る恐るといった風情の混じる口調で、女は、目の前の相手に関係あるかも知れない噂の存在を零した。
【続きはまた後日】
ご案内:「廃屋の一室」から金髪の女さんが去りました。