2017/06/03 のログ
ご案内:「廃屋の一室」にヴィルヘルムさんが現れました。
ご案内:「廃屋の一室」に「キャサリン」さんが現れました。
ヴィルヘルム > 貴女が“噂”の話を持ち出せば,姿の見えぬ相手からはまるで雷鳴のような咆哮が返った。
この建物に閉じこもる獣が噂の存在を認識していたかどうかは定かではない。
だが,少なくとも貴女の口ぶりに違和感は感じられなかった。
怒り,憎しみ,それから恐怖と焦り,様々な感情の昂りを抑え,人の言葉を発するまでにはいくらかの時間がかかった。

「…だったら,どうするんだい? どうせ,良い噂じゃないだろう?」

噂を否定することもなく,彼はただそうとだけ返した。
貴女が好奇心で身を滅ぼすような愚か者でないことを,祈って。

「キャサリン」 > 「まるで生来の魔物のような」、轟くように響く咆哮。
それそのものが、女が口に出した「怪物」の名の適合性を示していると言えたが…当然ながら、「彼」にとっては不本意なものだろう。どのような感情によってかまでは読めなかったが、彼はしばらく感情が昂るがままに任せており、「彼女」への返答を放棄していた。
…そして、噂を否定しない相手の返答。女は、返答に彼ほどの時間をかけなかった。

「…いや、人狼さんってこの島には少なくないらしいから断定する気はないんだけど…。
ただ、「最近現れた」ヤツなら、珍しくて綺麗な毛並みだとか、それ狙いか何かでちょっかいかけた連中にやり返してたとか、何か挙動がおかしかったとか…

まあ、特別悪質な噂は聞いてないよ。妙だとは思ってるけど」

先ほどの咆哮を受けてなお、平然と、そう返してみせる。

ヴィルヘルム > 獣と化した青年にとって,貴女の反応は意外そのものだった。
彼の常識に当てはめれば自分はまさに怪物であり,存在そのものが許されない絶対悪である。
当然,そのような絶対悪を受け入れる人間など,居ようはずもない。

「………。」

全ての感情が,静かに,静かに,収束していく。…貴女は,怪物と化したこの自分を恐れない。
それだけでも十分に,青年を安堵させた。

「……多分,この辺りに“狼”は僕しかいない。」

静かにそうとだけ答える。その声は落ち着きを取り戻し,もはや人間の,ヴィルヘルムのそれと全く相違ないものだった。

「キャサリン」 > 「彼女」が本来の姿でも、「彼」に対して散々使った詐術だった。
拒絶せず、その一方で、核心となる言葉は絶対に与えない。
そのような「隙」など、見せない。

「あ、そうなの?色々い過ぎて逆に特定のそういう種族に偏ってないのかな、この島」

青年の静かな返答に、軽く驚いた、という風に答える女。

「………こうして話してる分には、普通の「ヒト」と違う感じはしないんだけどねぇ」

何気なく、という風にそんな言葉まで吐く。

ヴィルヘルム > 今の青年にとっては,核心となる言葉など思いもよらぬことだった。
単に世界の全てから隔絶されていると信じて疑わなかった青年は,
その認識が誤りであることを知ったのである。それで十分だった。

「知らないよ,僕は…この島の住人じゃない。今はここに居る,というだけさ。」

僅かな怒気がこもったが,それもすぐに霧消する。
貴女の言葉,口調…久々に“人”に近い扱いを受けている。
それが青年の精神を安定させていた。

「なら,そう思ったまま,そのまま帰るといい。」

だからこそ,この姿を見られてその態度を変えられたくはなかった。
もっとも,話しぶりを聞いている限り,そんな心配は無いだろうとも,思えたのだが。

「キャサリン」 > 「ま、ここは「表向き」学園都市だしね。そりゃあ、ここにずっと住むつもりの人間は多くないでしょ」

「ホント妙な反応するね、アンタ」と、呆れた息を吐く。
…と、再度相手に「帰れ」と促され…「彼女」は、吹き出したいのをこらえて、めいっぱい不満げな顔と声を作ってみせた。

「………アンタ、あたしの話覚えてる?
帰るとこなんかないんだけど」

それから、女は

「とりあえず、香水落としたし別の部屋なら文句ないんでしょ。あたしは3時間くらい寝るよ」

と、他の部屋…ある程度青年のいる場所から距離のある辺り…に、足を向ける音を立てた。

ヴィルヘルム > 貴女の不満そうな声,それに伴う,一度も見ていない表情は想像するほかなかった。
妙な反応と言われても,特に何かを意図しているわけでもない。
そして,感情の昂りに,帰る場所が無い,という貴女の言葉は頭から抜け落ちていた。

「……ごめん,そうだったね。」

この青年を恐ろしい人狼と見ていれば,拍子抜けするような反応だったかもしれない。
けれどヴィルヘルムという人物を知る貴女なら,それも予想の範囲内だろう。

「………その奥の部屋なら,破けてるけれど,ソファがある。」

不快な匂いはほぼ消え去り,離れる足音が聞こえる…文句はない。
青年は,ソファを破いたのが誰かは言わなかった。…傷は新しい。

「キャサリン」 > 「キャサリン」は既に相手を「普通に会話が出来る男」と認識しているし、「彼女」はもちろん、会話相手のことが恐ろしくなどなかった。
謝られれば、やれやれといった風情で息を吐いてみせる。

「…ま、いいけど。
あ、しっかり寝れるようなソファあるんだ。ついてるぅ」

ヒュウ、と口で言ってみせて、軽い足取りで指示された部屋に向かう女。
ソファの損傷は建物の損耗からすると随分新しく見えたが…まあ、せっかく「和解」したのだ、突っ込むのも野暮というものである。

「アンタが中身まで「狼」だとは思ってないけど、入り口と窓に侵入者を知らせるヤツだけ仕掛けとくから、気をつけてよー?」

からかうように青年の方に声をかけて、女は部屋に入る。

「この線踏み越えしものを、音にて我に告げよ…『警報(アラーム)』」

教養なさそうな声のまま、女は呪文を諳んじてみせる。
一応、呪文の言葉も「彼女」本来のものとは変えてあるので、特定とは至らないだろうが…。

入り口に警報のセンサーとなる不可視の線を引いてみせた女は、窓にも同じ術式を施すだろう。