2017/07/11 のログ
ご案内:「廃屋の一室」にヴィルヘルムさんが現れました。
■ヴィルヘルム > 月光を浴びて怪物と化した青年は,今日もこの廃屋に息を潜める。
だが,“あの日”からというもの,この場所での孤独な時間が苦痛ではなくなっていた。
むしろ,この場所に居続けること,この場所を守ることが,巨大な獣の存在意義になりつつあった。
「………………。」
静かで規則的な吐息が,徐々にゆっくりとしたリズムへと変わっていく。
安らかな気持ちのなかで,狼と化した青年は眠りにおちようとしていた。
ご案内:「廃屋の一室」にクローデットさんが現れました。
■クローデット > 獣と化した青年が眠りに落ちようとするその時、その気配は突然、部屋の入り口付近の廊下に現れた。
ひたりと、裸足が床に着く気配。魔力の匂い。…優しく甘い、薬草と花の混じったような香り。
「………。」
お互いに、姿の見えない位置で。その気配は、躊躇いがちの吐息を漏らした。
■ヴィルヘルム > 人間の姿であったら,気付くのにもうすこし時間がかかっただろう。
しかし狼と化した青年の聴覚と嗅覚は,人のそれとは比べ物にならない精度だった。
「………!?」
音と,匂い。まどろんでいた意識は引き戻され,青年はその巨体を起こす。
「クローデット…?」
だが唯一,人よりも劣る視力は,貴女を捉えられなかった。音のほうへ顔をむけて,声をかける。
■クローデット > 「………!」
声をかけられ、息を呑む。
かつての逆であるように…クローデットの方が、姿を見られまいと壁に背を付ける。
「………夜分遅くに…申し訳、ありません」
「…一人では、どうにも落ち着いて眠れなくて…つい…。
………ソファが、借りれたら嬉しいのですが…」
ぽつりぽつりと、躊躇いがちにそんなことを言い出す。
■ヴィルヘルム > 貴女の言葉はともかく,その声色や様子は明らかに異様だった。
それは,まるで何かに怯えているようにも聞こえる。
「それは,構わないけれど……。」
ソファは隣の部屋にあり,青年が人間の姿の時に利用している。
だからそれを貴女に貸すのは,何の問題もないことなのだが…
「……なにか,あったのかい?」
…心配になった青年は,できるだけ優しい声で,貴女に問いかける。
まだ貴女を見つけられぬ瞳が,窓から入る月明りを反射して,ぼんやりと光っているだろう。
■クローデット > 「………。」
クローデットのことを追い詰めている「夢」の話の詳細など、出来るはずもない。
それに…こんな姿を無防備に曝されても、彼の方が困るだろう。
どう言い繕えばいいか、少し考えて…
「…最近、「昔」の夢をよく見まして…あまり眠った気になれずにおりまして。
…ジュリエットにあまり心配させたくもないので、今夜は外泊するように仕向けたのですけれど………家に一人だと、それはそれで、眠れなかったものですから…。
………本当に…それだけ、なんです。シュピリシルド様には、ご迷惑をおかけしてしまいますけれど…」
そう言いながら、クローデットの身体は壁に背を付けたまま、ずずず…と床にへたり込んでいく。入り口付近まで寄らなければ、角度の関係でクローデットの姿は確認出来ないだろう。
■ヴィルヘルム > 狼の姿をした青年は,貴女の言葉を静かに聞いた。
貴女がどのような夢を見ているのかまでは考えもしなかったが,少なくともそれが良い夢でないことは確かだろうと思った。
「………そ…っか…。」
瞳は貴女を探すことをやめ,代わりに耳がピンと立つ。
……家に一人で眠れなかった貴女がこの場所へ来た…?
…………自分のことを,頼って,来てくれたのだろうか…?
「迷惑なんかじゃ,ないよ。
僕も,ずっと一人じゃ,寂しいと思っていたところ…だったから。」
立ち上がって,一歩,また一歩と近寄る。
隣の部屋のソファを貸すにせよ,案内もしないというのは,失礼だろうから。
■クローデット > 「………そう、仰っておりましたわね…シュピリシルド様は」
「寂しい」。それを素直に口に出来たら、どれほど楽だろうかと思う。
…が、獣の足音が近づいてくれば…
「…あ、あの、少し、待って下さいますか…」
わたわたと、へたり込む際に変にまくれ上がったネグリジェの裾を直す。
クローデットらしくない不器用な所作。なめらかな生地が立てる、わずかな衣擦れの音。
流石に下着の類が透けたりはしないけれど、上にガウンも羽織らず、裸足で、いかにもベッドの上から来ましたと言わんばかりの姿は、色んな意味で異様に映ることだろう。
■ヴィルヘルム > 「僕は,弱いからね…。」
そう言ってしまえることが自分の強さなのだとは,僅かほども思っていない。
自嘲気味な呟きは貴女の耳にも届くだろう。
貴女が待てと言えば,狼は貴女の準備が整うまで,その場に座って待つ。
忠犬であった。
だが,瞳がやっと捉えた貴女の姿は,想像したものとは…少しだけ違っていて……
「………あっ………。」
外見に似合わない,間抜けな声が漏れる。
巨大な忠犬は反射的に“伏せ”の姿勢になり,顔を貴女から背けて,瞳をぎゅっと閉じた。
……だがその姿が瞳とを閉じてもなお,脳裏に焼き付いている程度には,衝撃的だった。
「……せめて,着替えてから……来ればよかったのに。」
2mを超える巨体が小さく縮こまっている。