2017/07/24 のログ
■クローデット > 「…お勉強すれば…いずれ、出来ることも増えましょう」
そう言って口元に優しい微笑を刻む。
「………」
軽く肩が触れ合い、目が合った瞬間。クローデットの方が、息を呑んだ。
しかし…
「………」
瞳を閉じ、吐息だけを漏らして、笑って…
青年の方に、その身体を大きく倒した。
■ヴィルヘルム > 「僕も,表で生きていくために勉強しないと……。」
貴女の瞳をまっすぐに見ていた青年は,つぶやくようにそうとだけ言った。
沈黙が2人を包み…意を決した青年が,その手を伸ばそうとした時。
「……クロー……デット!?」
一瞬,青年は何が起きたか分からなかった。
ただ反射的に,倒れてきた貴方を受け止める。苦しくないよう,優しく。
鼓動は破裂しそうなほど激しく,身体は一瞬で熱を帯びる。
貴女への想い,貴女の体温,感触,香り……どうやっても,冷静ではいられなかった。
「………っ……」
青年は,両腕を貴女の背に回し,憧れの相手を,柔らかく抱きしめた。
それでもなお,激しさよりも優しさが表に出たのは,この青年の性格なのだろう。
■クローデット > 優しく甘い香りは、情動をかき立てるタイプのものではない。
けれど、青年にとっては誤差だろう。
「………ふふふ…服越しでも熱いのですね」
回された腕、優しく抱きしめられる感触。
少し悪戯っぽく笑うその声は、けれど優しかった。
■ヴィルヘルム > 「…………っ…。」
貴女のことだから,試されているのかと思った。
けれど,聞こえた声は楽しげで…優しい声。
「クローデット…僕は……っ……。」
君のことが好きなんだ。こんなことをされたら,おかしくなってしまう。
身体が熱を帯びるほど,貴女の甘い香りが強く感じられるようになる。
“マリア”だったころからずっと感じていた,貴女への想い。
その全てが清純なものであろうはずがない。
青年はずっと,貴女に異性としての魅力を,感じていたのだから。
……貴女の身体を強く,抱きしめる。
夢が叶ったと言えるはずなのに,青年の心は不安でいっぱいだった。
抱きしめる力を緩めて…一度,その身体を離し…
「……お願い…僕を…嫌いに,ならないで。
好きなんだ……君のことが,本当に…!!」
もう一度貴女を抱きしめながら瞳を閉じ…
…控えめに,自分の唇と貴女の唇とを触れ合わせようとする。
■クローデット > 「………っ」
クローデットの身体は女性として特別華奢なものではない。恐らく、目の前の青年の方が身体は細いだろう。
けれど、強く力を籠められれば、クローデットは少し苦しげに息を吐いた。
…服越しにでさえ、青年の身体にこもる熱が、少しばかり移ってくるように感じられる。
「………シュピリシルド様は…きっと、女性のことで苦労なさいますわね」
優しい声がそう言って笑い…そして、その柔らかい唇が閉じられる。
合わせようと近づいてくる唇を、クローデットは拒まなかった。
…ただし、相手に気を遣って目を閉じてやったりは、しないが。
■ヴィルヘルム > 唇と唇が触れ合う。貴女が瞳を閉じているかどうかは分からない。
それは貪るような口づけではなく,柔らかく優しい口づけ。
二人は優しく触れ合い,そして静かに離れた。
ただそれだけのことなのに,青年の身体は,さらに熱を帯びる。
「……いいよ,苦労しても……僕は,幸せだから。」
青年はそう言い切って,瞳を開いた。
唇は離れたが,吐息を感じられるほどの距離に貴女の笑み。
■クローデット > 「………」
優しい、触れ合うような口づけが終わり。
クローデットは、視線を落として、一つ息を吐いた。
心なしか、少し頬がいつもより赤いように感じられるかも知れない。
「………苦労するような色恋沙汰でこそ、ご自身を見失われてはいけませんのよ?」
視線を落としたまま、唇から吐息の笑声を零した。
■ヴィルヘルム > 普段の青年なら貴女の頬の色に気付いたかもしれない。
けれど今は,そんな余裕があろうはずもなかった。
「……僕は,ほら…ずっと“誰かの幸せため”に生きてきたから。
でも,今は……きっと,僕が,一番幸せなんだと思うんだ。」
青年はこれまで,明確な自己を持たなかった。
誰かのために生き,その対価として必要とされる居場所を見出していた。
だが今,こうして,幸せだと感じている。
「ありがとう…いろいろあったけれど,この世界に来て…君に出会えて,本当に良かった。」
青年の笑顔は,これまでのどんな笑顔よりも素直で,
これまでのどんな笑顔よりも明るくて,そして,幸福そうだった。
■クローデット > 「………そう、ですか」
自分が幸せなのだと、クローデットに会えて良かったと言って、素直に笑う青年を、クローデットは真っすぐに見ることが出来なかった。
他人と身を寄せ合うことの「喜び」、「幸福」というものが…家族の間でそういうコミュニケーションをすることで得られる「安らぎ」以外の形で存在すること、知識としては理解していても、感覚としては理解出来ないまま生きてきたのだ。
「加害者」と「被害者」という、これまでの枠。
クローデットの頭から未だに離れないそれを、青年は軽々と跳躍してしまったように見える。
「………それでは…満月の夜の下準備のために、またお伺い致しますわね。
きっと、夜になってしまいますけれど…今夜同様、事前に連絡は致しますので」
口元に手を当てながら、そんな事を言って…クローデットは、どこかぎこちない所作で立ち上がる。
■ヴィルヘルム > こんな風に笑ったのは,生まれて初めてかもしれない。
けれど貴女は,どこか暗い表情をしているように見えた。
「クローデット…?」
その上,立ち上がる貴女の動作にぎこちなさが見えれば,青年も立ち上がって声をかける。
青年には,分からなかったのだ。
貴女が一体何に悩んでいるのか,何に囚われているのか。
「…独りだけで,悩まないで。
僕だけ言いたいこと言って…僕だけ幸せなんじゃ,不公平だもの。」
真っすぐに貴女を見る。
「クローデットも,話せたら,話してほしいんだ……
……なんで,そんな,つらそうな顔をしてるの?」
■クローデット > 青年自身が、幸せのただ中にいるからこそ、その感情とクローデットのありようの差が気になってしまったのだろう。
戸惑いや思案が顔に出たのを、相手は殊更深刻に捉えてしまったようだった。
「ああ、その…考え事をしていただけで、深い意味はないんです。
心配させてしまって、申し訳ありません」
そう言って軽く頭を下げて…再度青年と向かい合ったその顔には、少しだけ困ったような…それでいて、ヴィルヘルムをいたわるような微笑が貼付いている。
■ヴィルヘルム > 青年は幸せのただ中に居る反面,不安の中にもあった。
自分の想いを伝えて,それは受け入れられなかった。
しかし貴女は青年に身体を預け,青年は唇を重ねようとして…
…貴女はそれを受け入れた。
「…僕の方こそごめん,お節介だったね。」
貴女の微笑みに,青年も笑って応える。今はそれしかできなかった。
……今ここで幸せなのは,自分一人だけのような気がした。
どんなに自分が幸せでも……それでは,意味が無い。
■クローデット > 「いいえ…お気持ち自体は、嬉しく思いますわ。
………呪いが解けて、シュピリシルド様が、表で落ち着かれたら…
いずれ、お話しようと思います」
今までのやりとりに比べれば、クローデットの応答は青年に心を開いた、好意が見えるものだろう。
しかし、穏やかな微笑が顔に刻まれているが、その中に、青年が感じたような幸福感が満ちているようにも考えづらいものだった。
「…それでは…また、お伺い致します」
青年に対して、優雅にお辞儀をして、クローデットは身を翻す。
わざわざ部屋の入り口を出てから、クローデットは転移魔術で帰っていった。
ご案内:「廃屋の一室」からクローデットさんが去りました。
■ヴィルヘルム > いずれ,その時が来たら…その時は,貴女の話をしっかりと聞こうと思う。
けれど,貴女はそれを望むのだろうか……
「…えぇ,お休みなさい。」
……青年は,確かに幸せを感じていた。
そして青年は,貴女に同じ幸せを感じてもらうにはどうしたらいいのか,考え始めていた。
貴女が帰ってしまえば,廃屋は静寂に包まれる。
紅茶もクッキーも結局手を付けなかったが,そんなことはどうでもいい。
「………………。」
クッションを枕に,横になる。そこに微かな貴女の香りと,体温を感じてしまった。
すぐ近くにあった貴女の顔を,優しい微笑みを,そして唇の感触を,思い出してしまった。
「…………………………。」
久々に人として過ごす夜は,眠れない夜になりそうだ。
ご案内:「廃屋の一室」からヴィルヘルムさんが去りました。