2017/07/26 のログ
ご案内:「廃屋の一室」にヴィルヘルムさんが現れました。
ヴィルヘルム > 青年が眠れない夜を過ごした翌日。
朝から続く曇り空が月明りを隠し,青年は二日続けて,人としての姿で過ごしていた。

「……………。」

眠れない原因を作った相手の心中を知らぬ青年は,僅かな不安を抱えながらも,幸せのただ中にいた。
貴女の残した唇の優しい感触が,甘く優しい香りが,頭に焼き付いて離れない。

……きっと,相手はこんな風に思ってくれてはいないだろう。
そう思えば寂しくもあったが,貴女が自分を“受け入れてくれた”ことが,本当に嬉しかった。

けれど,もし,それさえも“加害者”としての“償い”であったとしたら…。

ヴィルヘルム > 彼が心に疑心暗鬼を生ずるのは仕方のないことだっただろう。
顔を出した不安が大きく育ち過ぎないうちに,青年は努めて考えるのをやめた。

「……僕が信じなくて,どうするんだ。」

自分自身の疑心暗鬼を笑い飛ばす。
そんなことができたのも,笑い飛ばせるだけの材料があったからだ。

いつかきっと,「加害者」と「被害者」という過去から解放される日が来る。
人と,人。男と,女。そんな関係に……青年はそう信じることにした。

ヴィルヘルム > 男と,女。そんな未来を夢想したヴィルヘルムはふと,気付く。
……立ち上がって,窓に映る自分を見た。
腰まで伸びたプラチナのロングヘア,華奢な身体,色白の肌。

「……………。」

それは,かつて“マリア”として生きるために,必要だったもの。
“シュピリシルド家の魔女”として居場所を作りだした,過去の宝物。

ヴィルヘルム > それは,青年の思う“男”の姿ではなかった。
偏見であるかもしれないが,少なくとも故郷やこの島で見た“男”はこんな姿をしていない。

「……………。」

長い髪を撫でるように触れて,感触を確かめる。
この廃屋で過ごした日々の中でも,艶やかな髪は僅かほども傷んではいない。

ヴィルヘルム > ……表通りを,商店街を,二人で歩く未来を想像する。
そうだ,沢山のことを,学ばなければ。
彼女と共に歩むためには,表の世界で生きていかなければならない。

「学校,行かなきゃ……ね。」

この青年がそこに必要性を感じたのは,初めてのことだった。
だがこの呪われた身体では無論のこと,呪いが解けても自分は表に出ることはできない。
今度,相談してみようと思う。

けれど,それより,何より………。

ヴィルヘルム > 「髪,切ろうかな………。」
ご案内:「廃屋の一室」からヴィルヘルムさんが去りました。