2018/08/27 のログ
ご案内:「常世港」にアリスさんが現れました。
アリス >  
夏季休講が終わりに近づいたある日。
ふと、思いついた。
釣りにいこう、と。

なんたって私の異能なら釣り道具を揃えるくらいわけがない。
パパが持っている釣具セットを一通り触って覚えて常世港へ。

港では釣り人向けに氷を売ってくれるスペースがある。
砕いた氷をクーラーボックスいっぱいに詰めてもらって硬貨三枚ほど。安い。

「さーて、夏の思い出! 作っちゃいますか!」

餌も購入済み。ワームは気持ち悪いので小さな海老、オキアミとアミエビを使う。
手が生臭くなっても無制限に水を出せる私にはあまり関係ないけど、一応ステンレス石鹸をパパに借りてきた。

レッツ、フィッシング!

アリス >  
その場で錬成しまくった釣り道具を並べ、ついでに日差しがつらいので大きめのパラソルを作り出す。
長靴、いつもの白衣を脱いで救命胴衣、帽子。
まぁ、これくらいあれば魚の一匹や二匹。

パパと前日に練習した、キャスティングにて勝負仕る。
あ! 結構上手くいく!
これは初めてなのに釣れちゃった展開も近いのでは!?

パパとママは仕事で来れなかったけど。
ぼっち暦の長かった私にかかればひとりの遊びなんてこの程度。

と、思っていたのに。

釣れない。まったく、釣れない。
この餌でこの釣りスポットなら色んな魚が狙えるはずなのになー?

ご案内:「常世港」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > 常世港…普段は”仕事”でもプライベートでも足を運ぶ事は無い場所だ。
ただ、たまたま野暮用があり近くまで来ていたので暇潰しと散策も兼ねて立ち寄ってみる事に。
とはいえ、モロに日差しが直撃する――つまり遮る物がロクに無いので鬱陶しい。

「…チッ、これなら屋内でダラダラしてた方がマシだったか――あン?」

氷売りの横を通り過ぎ、そのまま奥の釣りスポット辺りに歩を進めて行けば…友人の少女が居た。
…あと、相変わらずぼっちだった。いや、もうそろそろ友人も数人くらいは作れてると思うが。

「…おぅ、アリス。何か釣れたかよ?」

と、少し遠間から声を掛けつつ、右手をユラリと挙げながら近寄って行く。
少年は見た目はチンピラで雰囲気も刃のようだが、彼女はもうその辺りは慣れているだろう。

アリス >  
声をかけられた。
相手は最初の友達、追影さんだ。
満面の笑みで手招きしながらパラソルの下へ誘う。

「あ、追影さーん! ううん、まだ何も釣れていないわ。釣りって難しいのね?」

三本足の丸椅子を二つ錬成する。

「でも大物は釣れたわね、追影切人その人が」

くすくすと笑った。こんなところで友達と会えるとは思わなかったから嬉しい。
ついでにお互い近況報告でもしよう。

「追影さんはあれからどう? 何か変わったことはあった?」

釣り糸を垂らしながらそんなことを聞く。

ご案内:「常世港」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > 「…まぁ、釣りってのは、成果よりその過程の時間を楽しむのが醍醐味…らしいぜ?俺はよく知らんけど」

と、そんな言葉を返しつつ流石に日差しが鬱陶しいので遠慮なくパラソルの下へ避難させて貰う事にしよう。
彼女の能力は既に本人から聞いており、何度も目にしているので今更驚く事はない。

「相変わらず便利だなその異能。…ってか、俺一人より大漁を目標にしとけよ」

と、肩を竦めながらも何時もに比べればこれでも穏やかな対応である。
何だかんだで友人と認めている相手には、刃物の化身のような少年も多少丸くはなるらしい。

「俺か?そうだな…まぁ、”バイト”で赤いゾンビ退治とかな…アリスも事件くらいは聞いてねぇか?」

と、彼女がどの程度知っているかの確認も込めてそう答えておく。
アリス自身がその渦中に自分から入る可能性は低いが、”運悪く”巻き込まれる可能性はあるだろうし。

三本足の丸椅子の片方に遠慮なく座らせて貰いつつ、釣り糸を垂らすアリスを横目に。彼女は相変わらずそうで何よりだが。

アリス >  
彼の言葉に肩を竦めて。

「過程を楽しむの? なるほど……それじゃしばらく待とうかしら」

異能を褒められると笑顔で左手ピースサイン。

「えへへ、ありがとう! 友人は増えたわ、今は四人。もうぼっちとは呼ばせない!」

ない胸を張って言い切る。
今、思えば長かった。
どれくらい長いかと言えば生まれてから今年の8月までかかった。

「ゾンビ退治? あー、あれのせいでゾンビ映画が上映中止になって!」
「困ったものだわ……あ」

釣竿に反応がある。しかし微弱。
地球が釣れていたら嫌だなと思いながら引くと、糸を引っ張る確かな手ごたえ。

「あれ? あれ? なんかいる?」

そう言いながらリールを引くと、小さな魚が釣れていた。
ナマズとボラの中間みたいな魚体。
トコヨアメリカンキャットフィッシュだ。
どうでもいいけど常世なのかアメリカなのかキャットなのかフィッシュなのかはっきりさせてほしい。

「つ、つ、釣れた! 地味! 小さい!!」

最初ってこんなものかなぁ? でもちょっと興奮。

追影切人 > 「まぁ、釣りってのは基本”待つ”モンだからな…待ち時間をノンビリ楽しむのがコツ、なんだろうさ」

とはいえ、少年は釣りなんてまともにやった事が無い。これも何処かからの受け売りだ。
見た感じ、彼女の異能は安定していそうだし友人もどうやら増えたらしい。

「おぅ、ぼっち卒業したかおめでとさん。…けど、一人で釣りってのもアレじゃねーか?」

と、言う事はストレートに言う少年である。まぁ、彼女に友人が出来たのはめでたい事である。

「…あーーそりゃ中止になんだろうなぁ。…ん?」

彼女の嘆きにそりゃそうだ、と言った調子で答えつつも釣竿の手応えに海面へと隻眼を向けて。

「…釣れたのはいいがちっこいヤツだな…つーか何て魚だっけかコイツ」

何かで見た事はある気がするが名前が出てこない。基本興味がない事は疎いのもあるが。

「…その大きさなら、リリースするか…ソイツ捌いて餌に使うかだな。」

この大きさだと例え食べられる魚だとしてもイマイチだろう。なら、大人しく海に返すか捌いて大物狙いの餌にするか、だ。

ご案内:「常世港」に追影切人さんが現れました。
アリス >  
「待つもの、ねぇ……それなら読みかけの漫画か小説でも持ってくるべきだったわね」
「あれ、でも手が生臭くなるから本は……うーん」

おめでとうと言われれば喜色も隠さずにうなずいて。

「ありがとう、追影さん! なーんか一人で行動してた癖が抜けなくて…」
「でもいいじゃない、今は追影さんがいるんだし」

肩を落として溜息を吐いた。
さすがに直談判してゾンビ映画を結局見た話はしない。
けど、これからも事件のたびに好きな映画が中止になったらたまったものじゃない。

「これはトコヨアメリカンキャットフィッシュね」
「食べられるけど、淡白な淡水魚みたいな味わい」
「小さいからリリースしておきましょ」

その前に写真を撮らせてもらおう。
自撮り棒を錬成して左手でスマホを操作、右手で釣った魚を持って。

「追影さん、こっちこっち! 記念撮影!」

彼を一緒に写ろうと誘ってみる。

ご案内:「常世港」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > 「…つーかお前の異能ならその辺り、便利なモンを作り出せばどうとでもなんだろ。」

彼女の異能の応用性、万能性は何となく気付いているが故にそう告げて。
まぁ、確かに釣りをする以上、手に生臭さが付くのは致し方ない事ではあるが。

「…癖や習慣っつーのはそう簡単には抜けねぇもんだしな…つぅか、俺が居ると周囲の連中が警戒すんぞ多分」

朗らかな金髪美少女の横に、隻眼で腰に刀を携えて刃のような雰囲気の男が居れば周囲も不審がろう。
幾らこの島が色々と寛容とはいえ、こういう組み合わせだとどうしても少年が悪目立ちする。

「…何だ、その適当に付けたようなよく分からん名前は。淡白だとあんまし食った気がしねーんだよなぁ」

ともあれ、リリースするらしい友人の挙動を眺めていたが…何か記念撮影に誘われた。
正直、写真とかは苦手なので露骨に嫌そうな顔になるが…ややあって、溜息と共に。

「仕方ねぇな…一枚だけ付き合ってやる」

と、渋々ながらそういう条件で妥協しておく。少年からすればかなり甘い判断だ。

アリス >  
「あ、そっか。ページをめくるアームと本を立てる台を作れば……」
「次からそうしようかしらー」

夢中になりすぎて釣りの本質を見落としそうかな、とも思ったけど。
こういうのは楽しければなんだっていい派です。

「あはは、追影さんコワモテだもんね」
「でも私は気にしない。だから、追影さんも気にしないで」

周りがどう思おうが気にしないこと。
それも友情じゃないかと最近は思う。

「常世固有種のアメリカナマズ。ナマズはキャットフィッシュ。簡単でしょ?」

基本的にトコヨアメリカンキャットフィッシュは淡水の魚だけど。汽水域なら海でも時々釣れる。

写真をせがむと彼は露骨に嫌そうな顔をした。
やっぱりだめかな?と思っていると。

「やった! それじゃ、カシャっと!」

並んで記念撮影。初めて釣った魚と、初めての友達と一緒に。

「あはは、ありがとう追影さん!」

そう言って釣った魚をリリース。
必要以上に高いところから落としたり、海面に向かって投げたりするのは論外。らしい。

「でもこの調子だと大物の魚なんて無理ねー」
「一匹くらい、面白い魚を釣ってみたいものだわ」

そう言って再びキャスティング。繰り返すうちにちょっとだけ慣れたかな。

ご案内:「常世港」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > 「ま、単なる物質練成するだけじゃなく…”組み合わせ”も考えた方がいいだろうな。
そうすりゃオマエの異能の応用の幅は更に広がるだろうよ」

単体で何かを生み出すより、別々のモノを生み出してそれを組み合わせて一つのモノを完成させる。
条件はあるだろうが、割と物体なら何でも生み出せるならそういう使い方もあるという事だ。

ちなみに、彼女が釣りをどう楽しもうがそれに異を唱えるつもりはない。
そもそも少年が我が道を行くタイプなので、彼女は彼女の好きにやればいい、という考えだからだ。

「強面ねぇ…まぁ、慣れてるから気にしちゃいねーが。ま、そっちが気にしないならそれでいい」

と、アリスの言葉に軽く頷いて。実際自分がどう見られようがウザいと思うくらいでそんな気にしない。
彼女の律儀な解説に頷きつつ、その小さな魚を隻眼でぼんやり眺めていたが…。

で、並んで記念撮影となった。写真は苦手なのでかなーり仏頂面でニコリともしない。
まぁ、写真を撮らせただけマシだろう。これが友人でなければ断固拒否している。

「…別に礼はいいがよ……大物…ねぇ?」

言いつつ海面を眺める。隻眼を細めて何かを探っているかのような間を置いて。

「すげぇデカいのが一匹いやがるな…つーかありゃ魚か?…新種の化物じゃねーだろうな…。」

見えるというより感じる。彼の感覚では近くに一匹、デカい魚?が感じ取れるようで。