2018/09/01 のログ
ご案内:「屋内プール施設『わくわく常世ランド』」にアガサさんが現れました。
■アガサ > 常世島に存在する完全屋内型の大型プール施設。
その名も『わくわく常世ランド』
物凄く、恐ろしく、チープな名称だと思うのだけど、聞けば何故か施設の名称は毎年変わるらしい。
オーナーの趣味なのか、はたまた余人には計り知れない理由があるのかは判然としないけれど、
今は一つ、水に流して忘れるものとする。
だって此処の名物は流れるプールもとい激流プールなのだから。
「おーおー夏休みも終わり際なのに人が多いなあ。いや、終わり際だからこそかな?」
全体的にハワイアンな調度と音楽に支配された施設内にて私は感嘆の声を上げる。
名物の激流プールは2Fに配され、吹き抜け式となった中央部分は波のプールだ。
ご丁寧に人工砂浜まで完備され、色んな人達が思い思いに場所を取って憩いの時間を過ごしている。
「場所取りは……一人だからいっか。貴重品は防水ポーチの中だし──」
レンタルした透明無地な巨大浮き輪を肩に掛け、周囲をくるくると見てからうむと唸る。
誰か、誘えば良かったかも知れないと。
■アガサ > 後悔してももう遅い。
というか夏休み最終日は、何処と無く寮内も殺気が漂い、迂闊に誰かを誘おうものなら私が水辺に浮かびかねない。多分。
「それにまあ、知り合いが居ないほうがかえって色々気にしなくても済むよね、うん」
例えば、泳ぐ前にマラサダなるハワイ的お菓子のお店に突撃して甘ったるいコーヒークリーム入りを注文したりだとか。
「なんていうか擬似ハワイ的な感じだなあ。まあ此処も島だしそういう意味じゃ同じなのかな?」
去年はまた内装も別だったらしいけれど、もしかしたら毎年変わるのがウリなのだろうかと店員のお姉さんと二言三言交わして思う。
一見して揚げパンのようにも見えるマラサダは、変わった名称ほど変わった味では無かったけれど、これはこれで悪くない。
なんて、思っていると私の後ろに並んでいた褐色肌のお兄さんがクロサダなるものを注文している。
「…………」
気がつけば右手にマラサダの入った紙袋。
左手にはクロサダの入った紙袋。
前者が丸く、後者が四角。
これで後は三角形があれば完璧だなと、何処と無く晴れやかな顔。
ご案内:「屋内プール施設『わくわく常世ランド』」にアリスさんが現れました。
■アリス >
私、アリス・アンダーソン。
今年の四月から常世学園に通っている一年生!
今日は青のセパレート水着装備でわくわく常世ランドに来てみた。
何かおかしいと思っていたの。
今年の夏は色々あったけど、何か物足りないと思っていたの。
そう、泳いでない!!
そうと決まればソロでプールに行くくらい余裕。
ぼっちだった時代が長かったのでそういうのに抵抗がない。
早速、ピナ・コラーダ風ソフトドリンクを手に歩いていると。
見覚えのある髪色の少女が。
「あれ、アガサじゃない? 奇遇ね!」
のんき極まりない能天気な発言と共に近づいてみる。
■アガサ > ウッドデッキ上に設置された白い二人掛けのテーブル群と数々の椅子。
そういったフードコート的な場所は、波のプールが良く視得て景観的にも中々良い。
レジャー施設らしいレジャー感と言うものは、特に何をする訳でも無く気分を盛り上げてくれるもので、
お一人様でもウキウキ気分でマラサダを頬張っていた──ところにかかる声。
「もが?」
おや?みたいな抑揚で変な声がついと零れて波音に消える。
振り向くと其処にはなんということだろう、顔見知りで友達のアリス君がいるじゃあないか。
「うわあアリス君だ。こんな所で逢うなんて奇遇だなあ!
……で、此処に居るって事は夏休み課題は全部片付いた側なんだね。
なぁんだ、そうと判っていれば最初から誘ったんだけど……あ、とりあえずたべる?」
クロサダ。
砂糖と油脂のパワーがみなぎる四角いクロワッサンドーナツみたいなものを差し出そう。
■アリス >
「もが?て…」
ちょっと面白すぎる返答に笑みがこぼれた。
でも自分だってものを食べている時というのはこんなものかも知れない。
テーブルの対面に座って、頷く。
「ええ、課題は全部終わったわ。こまめにやったとはいえ、長く苦しい戦いだったわね…」
「私もメールしたら迷惑な時期かなって思ってアガサを誘うの遠慮してたのにー」
差し出されたのは糖!糖!あと油!!って感じのドーナツみたいなお菓子だった。
「ありがと、それじゃこれ飲む? ピナ・コラーダっていうカクテルに似せたジュース」
パイナップル牛乳ハワイアンココナッツなんとか、みたいな。そんな味の。
差し出しながらクロワッサンドーナツみたいなのを食べた。甘くて美味しい。
■アガサ > 「……あ、何笑ってるんだよう。いいじゃないか浮かれたって。
レジャー施設でレジャーしないと勿体無いお化けが出るんだぞ!」
多分、出ない。けどそれはそれとして私はアリス君に頬を含まらせてBooBooと不平不満を告げてみせ
次には両手で頬を窄めて不満を収める。彼女が何やら面白そうな飲み物を差し出してきたからね。
「え、いいの?それじゃあ、お互い無事に長く苦しい戦いを生き残った事を祝して」
お互いにハワイアンなものを分かち合おう、と私は遠慮無しにピナ・コラーダなる飲み物を口にする。
甘酸っぱさに混ざる乳飲料の風味。爽やかで、それでいてちょっと重たい感じが私の知らない海外風に思えた。
「パイナップルココナッツ牛乳みたいな……うーんどういう発想で混ぜたんだろう。
あ、そうそう発想といえばパンフレットとか見た?ここの名物の激流プールは凄いらしいよ!」
曰く、溺れても自己責任。
曰く、何があっても水に流して忘れる。
他色々と謎の文言があるとかないとか専らの噂。
実際今も吹き抜けの2F部分からは歓声とも悲鳴ともつかない声が上がっている。
■アリス >
友達の顔を見て笑える日が来るとは思っていなかった。
あ、やばい。今、会話の終わり頃くらいに考えるべき重いこと考えてる。
「うん、レジャー施設だからね! わくわく常世ランドなんて名前でエンジョイしなかったらノリが悪いわ」
もぐもぐとカロリーを摂取しながら右手を上げる。
「祝してー」
そして激流プールについて聞くと、目を輝かせて体を前に乗り出した。
「行く! 行こうアガサ! 楽しそうじゃない、だって楽しそうだし!!」
きっと名物というくらいにはすごいに違いない。
SNSにアップしたらイイカモをもらえる。そんな邪念もあった。
■アガサ > 「うわっ迷いがないな君は!?……いやまあ私も行く気だったけど。
こういうの旅は道連れって言うんだっけ?」
そうして戦闘(?)前の腹拵えを済ませて席を立って、アリス君の手を掴んでいざ往かん激流プール。
黒と黄色で交互に塗られた階段を登っていくと、其処は一見して普通の流れるプールにしか見えなかった。
見えなかったけど、明らかにライフセーバーと思われるスタッフさんが多いし、何だかゴツい。
「ええと……あ、定期的に波が来るんですね。飲まれても無理に逆らわないように……はーい、解りました!
……だって。アリス君大丈夫?」
例えば、私達の姿を見止めて案内をしてくれた人は、濃い青色の甲殻が四肢を覆い、前腕部と背に硬質なヒレのようなものが生えている。
マズルの長い精悍な顔付きは爬虫類系と言うよりも、ドラゴン。そういった言葉が似合う筋骨逞しい異邦人だろう男性。
きっと泳ぎが達者なんだろうと見るものに想起させるし、実際達者なんだろう。
説明を受けてからプールに向かう折に、アリス君に確認をしつつ浮き輪を提示してみせた。
ちょっとだけ、意地悪そうに笑いながら。
■アリス >
「冥土へ道連れ、死は情けー」
手を掴まれて、てってっとプールサイドを歩いていく時。
あ、ひょっとして今、青春してるんじゃないの? と思った。
青春!? ぼっちから抜け出したくらいで青春は早いかなって思ってたけど!!
これって夏に友達とプールで遊んでるんだよ。絶対セーシュンだよ!!
ぼんやり考えていると、流れるプールにたどり着く。
あれ、意外と普通。これはSNS映えしない。
案内役の人は亜人だった。
…異邦人だとか、亜人だとか関係なく。
やさしくて頼もしそうな人だ、とは思った。
「ノゥ! 私は泳げるのよ、こんなプール程度…」
ドヤァァァァァ。
「浮き輪なくても楽勝だわ!!」
ざっぱーんとプールに入る。
なるほど、こういう流れ。簡単簡単。あとはイレギュラーさえなければ……