2015/06/13 のログ
犬飼 命 > 悪いなと不機嫌な猫の頭を指でかく。
ここまで懐くとは思ってもいなかった。

「あぁ、寝てたぜ
 ……あん?」

犬飼の目からも起き抜けのヴィクトリアの行動は異常に見えた。
青ざめる顔とこの距離感……以前どこかで見たことがある。
そうだ、人に虐待された猫は人に対してこういった反応を示す。

「……」

口をつむぐ、手も伸ばせない。
傷つけられたことによる恐怖感と拒否感。
大丈夫だなんて言葉、大丈夫じゃないだろうが。
歯ぎしりするが……。

「飯……食うか」

言葉に出来たのはこれだけだった。

ヴィクトリア > ……うん、ってかボクそんな寝てたのか。
【こんな時間たったのか、と。
で、よく考えれば飯に随分時間かかったなと。あの手だもんな。

……?
しかし犬飼の様子も変だな
この間の様子からして蹴りの一発でも飛んできてもおかしくなさそうなんだけど
雰囲気を壊したくないんだろうか

こう見えてこいつも臆病なのは知ってるしそのへんはボクと一緒だ
ボクと違うのは、コイツには牙があるってことだ。】

うん……んで、今日の飯は何なのさ
あとお前、チャーハン上手いからってこればっかりってのもどーなの?

【とりあえず、震えてることをわすれるようにした。
わすれる、というか、自覚したくない】

犬飼 命 > 「そうだな……飯が冷めるくらいにはぐっすりとな」

皮肉を口にする。
飯は十分に温かいままだ。

(すっかりと腑抜けちまったもんだ、蹴りぐらいかましてやればよかったものを。
 牙を研ぐことが出来なければこんなにもダメになるとはな)

ヴィクトリアに対して要らぬ遠慮が生まれている。
こんな女に拘る必要など無いというのに。
何故なのか。

「見りゃわかるだろ、肉と野菜と米だ。
 それがどうした、ただの白米じゃ味気ねぇだろうしこれが一番手軽んだんだよ」

何より、余った材料を突っ込めばなんとかなるのが焼き飯の優秀なところだ。

「文句をいうなら食わなくていいぞ」

ソファに腰掛けると箸で飯を食い始める。

ヴィクトリア > うーわー、疲れてんのかなァ。
まあとりあえず飯だ飯ー。
それに冷や飯だってそれはそれで幸せだろーよ。

【確かに味は落ちるが利便性は上がるし、何より冷や飯はすこしジャンキーな感じもいいのだ。
もっとも、ヴィクトリアは飯など自分では作らないが。】

いや見りゃわかるけどさ。
ったってお前……焼くと混ぜるしかないだろ。
しかも味付け下手だから白米で満足できなくなんだよ煮物覚えろつったろー。

【食卓につきつつ、最初っから言ってた問題を口にする

これはつまり、腹が減った時に思いついた料理を作るスタイル
つまり、早く食いたいからどんどん手間をかけなくなるアレだ。

で、出汁の要素も考えないから味気なくなり、だから全体として塩分が増え油っぽくなり味が濃くなる
個々の料理が悪いのではなく全体の食い合せが悪くなるのだ

……コイツ絶対キノコとか出汁系の調味料買ってこなさそうだよな……】

犬飼 命 > 「どうせ夜更かしで睡眠足りてねーんだろ。
 あぁ、食え。
 どうせ食うならあったけぇ方が美味いだろうが」

怪我で手がおぼつかなかったのか今日の味付けは濃いめだ。
醤油の味が少々濃い。
それでも十分食べれるので犬飼にとっては十分だ。

「そういうのは時間が掛かるから面倒だって言ってんだろうが。
 こちらと学生やってんだ、そこまでやってられっかよ」

料理にいちいち手をかけていたら、それこそ料理ばかりに時間が取られる。
時間の無駄だ、次第に手抜きを覚えて今の手抜き飯が完成したといえる。
汁物ならインスタントで済む。

「てめぇこそ人様の作った飯を汚く食うなってんだろ。
 掃除するのは俺じゃねぇか」

ヴィクトリア > お前時間の使い方も下手なのなー。
別に煮物っつたって時間かかるものばっかじゃないしさー
そんな火加減気ぃ使うようなもんでもないものもたくさんあるだろ
鍋物なんかそれこそ準備してぶち込むだけじゃねーかよ
カレーも面倒とか料理のできない女子高生にも劣るじゃんかよ
だいたいお前そんな忙しい身でもないだろーがよ
それに時間が中途半端に余るって感じるなら合間にトレーニングでもすりゃいいじゃん頭悪いな

うっわ……これ白米で食べるわけでもないのになんでこんな味濃いの
お前いつか高血圧で死ぬよ? 犬は味濃いの毎回与えちゃマズいんじゃないの?

【さんざん悪態をつきながら、食べるものは食べる
相変わらず行儀は悪く握り箸だ。
そもそも、別に箸が扱えないわけではない。コレでもその気ならマナーは出来るのだ
……ただ単にやりたくないだけだ】

べつにいーじゃんよーぅ
箸は使えないわけじゃないけどメンドーなんだよ。
そこんトコをボクに言うなら料理上手くなってから言えよな?
ボクはできるけどやんないだけでお前みたいに出来ないのとは違うんだからさぁ
お前がうまい飯作ったらボクだって礼儀示してやるよ
まずいんだからボクなりに工夫してうまく食べる必要があるんだよ、我慢しろよな

【もちろん、鶏の脂をハネたり米粒をこぼしたりさんざんである。】

犬飼 命 > 「うるせぇ、そんな器用に出来てたら苦労してねぇよ。
 第一、大層なこと言っておきながらてめぇ自身は料理しねぇだろうがよぉ」

「てめぇ、俺を犬呼ばわりとはいい度胸だなぁ。
 だったらなんだよてめぇは雌犬か!?
 言っておきながらてめぇもよく食うもんだぜ」

犬という言葉にはさすがに頭にきた。
それでも手を出すことはなかったが……。

(まったく……牙もすっかり丸くなっちまってよ……)

一瞬悪く無いと思ってしまった心を戒める。
これでは駄目なのだ。
こんな腑抜けた心で戦えるというのだろうか。
兄を追えば、ロストサインを追えば……必ず戦いになる。
本気でない東郷にですら手が出なかった。

「それのどこが工夫だよ。
 みっともねぇだけじゃねぇか、子供の食い方っていうかガキだなガキ。
 こぼすな汚すな……おいおいおいぃ……!
 ったく、俺はてめぇの世話係じゃねぇぞ」

布巾を持ち出すと汚したそばから拭いていく。

ヴィクトリア > ボクはいーんだよ、客なんだから。
それとも何か?
ボクは、お前におさんどんするためにここに来るってわけか?

っ……ああ、うん。
客だから食うのが仕事だろ。

【……雌犬。
いま、一番耳にしたくない言葉だ。
関係ないのに、その単語に体が反応してしまう。

なんでいつもはネコネコ言うくせにこんな時ばかり……】

いいじゃんガキなんだからさぁ
ボクはこの方があってるんだよ
へんに女らしくとかしてたらそれこそおかしいだろばーか。

【拭いたそばから汚していく。
……ボクはいま、行儀よくしたくなんかないんだよ
ガサツで汚くてガキでいい加減で……そうだろ?

彼女は気づいてなかったが、何度か自分を晒して気を許してしまっている部分があるせいか
傷口がまた、少し開いてしまっていた】

犬飼 命 > 「……いや、やっぱてめぇのはいらねぇな。
 ろくなもの出てこねぇだろうし、そもそも料理が出てくるかもわからねぇ。
 そうだな、客のほうがまだマシだったわ」

一瞬の反応に犬飼は気がつくことがなかった。
気がわずかながら逸れていた。

(こんな調子で戦えるのか……? 歯がたたない牙で戦えるのか?)

湧きあがる不安、力の衰えに対しての。
牙は何故衰えたのか。
思えば風紀委員の活動停止処分から呆けることが多くなった。
違う。
それはただの言い訳で理由はもっと別にある。
それがわからない。

「たしかにてめぇが女らしくとか考えたこともねぇな。
 見た目はガキだし、性格もガキだ。
 そんな貧相な身体で女らしくだなんて……ハハッ、笑えるぜ!」

言葉に対して無意識の返答。
それは彼女のコンプレックスを刺激するものであった。
今の犬飼は彼女の心を見ていなかった。

ヴィクトリア > そーゆーことだよ、だいたいお前が自分で気が付かないから言ってやってんのにさぁ
お前こんなマメなのになんでそーゆーとこテキトーなんだか。

【バレていない、気がする
緊張した気が、緩む】

……だろ?
ボクが女らしいとか、マジでバカバカしいよな
ボクはこんなクソガキなのに……さ?

【そして、何故かあふれる涙。
あれ……なんだ、これ。

ちょっと待て違うだろ、違うだろコレ
だいたいボクは女とかになりたいわけでもなけりゃ、憧れてるわけでもないのに
それにこんなガキがだいたいなれるわけ無いだろ
なのに……なんだ、これ……とまらない】

ごめ………………これ、ちょ………………違っ………………
ちがうから!平気だから!
そう言うんじゃないから!

【女性らしくない体、態度、言葉遣い、ボサボサの髪、ファッション……ぜんぶ諦めた結果だ。
ボクにはそういうものは遠いもんだと思ってた。
なのに……なんだ、アレ。
なんでああいう時だけ必要以上に女とかなんだそれ
いやそうじゃなくていま関係ないだろなんだよなんだこれ……どうしちゃったんだよボク
おかしいだろ、いまこんなのでなんで涙止まらないんだよ!?

涙を必死に拭いながら、無理に食事を進めようとする
当然、塩分が余計に濃くなっていた】

犬飼 命 > 「うるせー勝手に言ってろ、だいたい前から言ってるだろうが。
 人のこと知ったような言い方しやがってよぉ」

何かと似通った部分があるのかもしれない。
だからこそ的確な悪態がつけるのだろう。

「クソガキね……てめぇでもわか……!?
 おい……?」

犬飼は困惑した。
その涙が犬飼の意識をヴィクトリアに集中させる。

(なんだよ……なんで泣いてるんだよ……。
 ふざけるなよ、気にしてたのか……? そんなことを……。
 違う、いつだってそうじゃないかコイツは……!
 自分のコンプレックスを自分で口にして傷つける。
 違う!
 今のは……俺の言葉で傷ついた……!
 なんだよ……馬鹿か俺は!?
 わかってただろうにこいつの馬鹿さ加減を!)

「……っ!」

言葉が出ない、なんて声をかけていいのかわからない。
不器用な考えでは何も思いつかない。

(なんて顔をしてるんだよコイツ……。
 なんて声をかければいいんだよ……。
 なんて顔をしてるんだよ俺は……!)

見たこともない後悔の顔。
胸が締め付けられる。

ヴィクトリア > ごめ………………悪ぃ……そんなんじゃないから
ほんと、違うから。
ボクにもよくわかんないんだ……ほんと…………ゴメン
だいじょうぶ、だいじょうぶだから
……だから気にすんなよ……マジでそんなんじゃないから……

【犬飼の……おまえのせいじゃない。
第一、なんで泣いてるのかボクにもわかんない。
大体、こんなところで泣くことじゃないだろ……コレ
しかもなんでお前がそんな顔しなくちゃいけないんだよ違うだろそうじゃないだろ
お前ならこういうとき蹴るんじゃないのかよ
テーブルが邪魔ならひっくり返すし食器ごとぶちまけるだろお前。】

悪ぃ……マジで………………
ボクにも………………わかんない………………

【ヴィクトリアは知らなかった
これは喪失感だ。
彼女は自身が持っていないと思っていたがゆえに今まで意識することも奪われることもなかったものだ。
それが無理やり与えられた上で、マイナスになるまで根こそぎ奪い取られた結果だ。

そしてイヤになるほど……ヴィクトリアのAIはそういったことに優秀だった

……涙は止まらない】

犬飼 命 > 「わる……」

(今なんて言おうとした!? 謝罪の言葉か!?
 違うだろ!
 俺は凶犬だ! 何を謝罪しようとしていやがる!)

苛立ちがふつふつと湧いてくる。
そうだ、いつもであればこのようなネガティブなクソ女を殴り倒す。
それでいいんだ犬飼は。
凶犬は牙を研ぎ澄まさなければいけない。
牙の無い凶犬が戦えるものか。
だから牙を向け。

「……がっ!?」

その拳は自らの頬に飛んでいた。
湧き上がった苛立ちは自分に対してのものだった。
この中途半端な自分に対しての。
自然と体が動いたのだ。

「ふざけんなよこのクソ女……」

おかしくなったのはすべてこの女のせいだと。
ヴィクトリアの後頭部に手をやり胸へと引き寄せる。

「俺もわかんねぇよ……ふざけんな……」

ご案内:「Night of the lonely wolf」にヴィクトリアさんが現れました。
ヴィクトリア > ……っ!?

【何………………だ!?
いきなり自分で自分を?
それに相当強く殴ってるぞ?】

まてよおい、悪いのはボクだろ何やってんだよ。
それにお前だってそー言うキャラじゃ……………………ッ!?

【そして、いきなりこっちに来たかと思えば……抱きかかえられる。
全くの予想外。完全な不意打ち。
ゾクッとする、体が震えてこわばる、何か持っていかれる
知らないものがこみ上げてくる……そんな感じ。

え……あ、なに、なにこれ!?
やばい、やばいやばいやばいやばい。
やめろ……やめろって…………まずいだろ、いまこの場でこれマズイだろ
お前何してくれてるんだよ……ちょっと待てって……!?

あたまのなかがまっしろになる。】

あ……っ、え……?
…………あ、ぅあ……………………あ…、…、…、…、

【必死に抵抗しようとする。
抱かれた腕を外そうとし、胸を押し返し、距離を取ろうとして。

ダメだろお前がこんなことしちゃ……そうじゃないだろ離れろよ、怖いんだよ
ボクはこんなふうに触れられたら怖いんだよ……………………!

だから。実際にやったことといえば。

抵抗の代わりに、その胸にしがみついて、ただひたすら泣きじゃくっただけだった】

うわああああああっ、ああああ………………うわああああああああああぁぁぁっ、んぅ…………ッ…………

犬飼 命 > 「知るかよ、全部てめぇが悪い。
 だからこれはてめぇの自業自得だ」

自業自得なのは犬飼自身だ。
女を泣かせてどちらにもなりきれない半端な結果だ。
衝動に身を任せるしか思いつかなかった。

「わけわかんねぇんだよ、俺にはよ。
 だから大人しくこうさせろ、だからてめぇはそうしとけ」

野良犬同士が傷を舐め合い、拡げてく。
その傷をまた舐め合うような悪循環。
勝手に傷つき慰め合う。

今日もまた繰り返してしまう。
彼女が泣き止むまで抱きしめるしか無い。
自らを納得させるまで抱きしめるしか無い。

あぁ、なんてみっともないのだろう……。

ヴィクトリア > うぅ……ぐす、んぅ………………
……違うんだ、違うんだよ………………ちがうんだ…………
ほんとに、ほんとにお前は何も悪くない、から………………ぁ

ほんとなんだ………………
これが………………この間言ってたボクがクズだってことなんだよ……

ダメなんだよ…………
マジで………

お前が言ってたことが正しいんだ……
都合のいい時ばかりボクは他人にすがって求めて奪って狂うんだ
しかも……普段はこんな……こんなクソガキでサイテーのくせして……
どーでもいいときだけ………………本当………………

本当に……………………

なんでか…………なんで……
なんで…一番嬉しくないし嫌で下世話で最低なところだけ女なんだよボクは!!!

どうしてこんなにクズなんだよ……!?

なのにいまお前に甘えてるんだぞ、サイテーじゃんか…………
ボクを蹴れるぐらい……ボクをサイテーだってわかってるお前に、だぞ?

そんなお前がボクにどうしてこんなに優しくすんだよぉぉぉっ!
すがっちまうだろぅッッッ!!!
なんでなんだよ、答えろよバカァ!このクソ犬ッ!首輪野郎!
ボクなんかに優しくすんなよ突き放して捨てろよ!この狂犬!
お前の裾が離せなくなるだろふざけんなよ!
お前は誰にだって噛み付くんだろボクにだけ甘咬みすんなよバカあああああ!!!!

【言っていることはまるで筋が通らないのはわかってる。
すがるように胸の中で暴れしがみついて泣くしかできないなんでだよ。
どうしようもなく、泣いている。

でも抱かれたら抗えない。
触れられたら喜んでしまう。
怖くて緊張してこわばって肌が敏感になって触感だけでビクつくのに、その一方でしがみついてる

あんな体験、二度としたくなくて触られるだけで怖くて震えてるのに、なんでボクは逆のことやってんだよ……】

犬飼 命 > 「わかってんだよそれぐらいよ……。
 てめぇがクズなことぐらい。
 だからそれがなんだよ?
 わかっててこうして悪いのかよ?」

「てめぇの都合で人にすがってどうしようが俺は知らねぇ。
 てめぇが女の部分を利用しようが知ったこっちゃねぇ……」

「その分、てめぇを俺の都合のいいようにさせろ……。
 ハッ……たく、自分で言ってて意味がわかんねぇよ。
 ホントによ……」

「サイテーなてめぇにこんなことするなんてほんとわかんねぇ……。
 そうだよ、甘咬みして悪いか!
 凶犬がこんなことして悪いか!
 全部てめぇが悪いんだよ!
 てめぇが俺にこんなことさせるんだろうが!?
 使い捨てるんなら最後まで裾を離さず掴んでろ!!!
 このクソ女ァ……!」

互いに言っていることがめちゃくちゃだ。
心に浮かんだ言葉をぶつけあっているだけだ。
喚いてうるさいだけの犬の喧嘩だ。

震えているその身体をいっそう引き寄せ抱きかかえた。

ヴィクトリア > ……どーしてこんなことすんだよ。
おかしいだろ……?

それにボクは女なんか利用なんかしたくないし、そんなつもりもないんだよ!
だいたいボクのドコにそんな女らしさの利用しがいがあるんだよ!?

なのに女っておかしいじゃないか……サイテーなぐらいクソビッチだっておかしいだろぉ!

だいたいおまえなんかにこんな……こんな……
こんなにされたら、しがみつくしかないだろ!

そうだよ怖いんだよボクは……笑えよ。
バカにして罵って貶めてよ……
だってさあ………………だって……
だってそうじゃないとボク……ボクはさァ………………

…………こんなに優しくしてもらう資格、ないんだよ。

【震えている。
抱かれているだけで震えている
しがみついて必死にすがっている

ただ、困惑しながらも、その分、預ける体重は、増えていた。
その重みは、普段の彼女の印象と比べてひどく軽かった。】

犬飼 命 > 「おかしくなんかねぇだろ……。
 てめぇはたとえ俺じゃなかったとしてもすがりつくクソビッチ!
 寂しいからだれでもいいんだろうよ」

おかしな話である。
ヴィクトリアがどういう奴なのかはここ最近いやというほどわかったのに。
すがりつくコイツを受け入れてしまう自分の馬鹿さを。
いや、気がついたのか。

「ハッ、ハハハッ!
 そうかよ、そういうことかよ……待ったっクソが!
 どうやら俺は捨て猫見てぇなやつを放っておけねぇのかよ。
 なんだてめぇと同じかよ。
 きっと捨て猫みてぇなてめぇ以外の女がいたら見捨てれねぇ。
 とんだ凶犬もいたもんだ」

呆れてしまう、同じクズとはいえここまで同じクズ加減とは。

「てめぇの資格なんざもうどうでもいいんだよ。
 今は黙って優しくされろ、考えてもきっと無駄なんだよ……」

寄りかかるヴィクトリアに顔を近づけその耳を甘咬みした。

ヴィクトリア > そうだよ……ボクはクソビッチなんだよ……ホント
寂しいからならまだいいじゃないか……………………理由が…………
理由がちゃんとあるだろ…………

なあ……聞いてくれよ犬飼…………

ボクは……ボクはさァ
こないだガチで売り飛ばされてレイプされたんだよ

薄汚い奴がボクの手足をいいように弄んで力づくでさ
いわゆるよくある調教だよ

…………なのに、だよ。
ボクは心底気持ち悪くて死ねって思ってた豚野郎相手にさぁ
薬打たれたらハジケ飛んで自分から喜んで腰振ってさ…………
しまいにゃ腹上死させたんだぜ?
はじめてでやることが、それか?
なんだ、これ。

ボクはどうすりゃいいんだ?
ボクは女なのか?
生きていていい存在なのか?
なんでそんな時だけクソビッチなんだ?
なあ…………?

【だめだ、とまらない。
こんなの聞かされたって、向こうが嫌になるだけでどうだっていいことじゃないか
ボクの不幸を他人に押し付けるなよ!
こんなことコイツの人生にはどーだっていいことだろ、知らなくていい情報で不愉快にさせるだけじゃんか
何になんでボクは洗いざらいぜんぶ話してるんだバカじゃないのか
それとも甘えて洗いざらいぶちまけてるにしたってコレは、コレはないだろ…………
コレじゃボクが嫌われたくて仕方ないみたいじゃないか
大体、なんだ、ナンなんだボク………………なんでこんなクソビッチなんだよ……!

答えなんかでないし、困らせるだけだとわかってるのに全部話してしまったし
……サイテーだ……ボク

そう思った矢先の甘咬み】

うん……っあ………………ふ!?

【!!!?!?!

なんだこれ……ワケが分かんない。
ちょ、ちょっと待て、ヤダ、ヤダよ……コレはヤダ、まじでヤバイ……!

だが、そう思っても拒否はできなかった。怖ければ怖いほど、すがってしまうから。
だから出来るのは必死にしがみつくだけだった】

犬飼 命 > 「確かにそいつは飛んだクソビッチだな。
 初めての相手を腹上死か……笑えねぇほど最低だ」

噛み跡が残るような強さで首もとを噛む。

「それがどうした!?」

何故怯えるのか、卑屈になっていた理由がようやく分かった。
それだけで何か安心したような気分になる。
だからと言ってなんだというのか。
犬飼にとってヴィクトリアを拒否する理由にならなかった。

「てめぇがそれで悩んでいようが俺の知った事か!
 てめぇはそれでも俺にすがってきてんだろうが!
 すがるんだったら最後まですがりやがれ!
 てめぇはクソビッチなんだからよ……誰かにすがってすがってすがってすがって……。
 最後までクソビッチでいやがれよ!」

耳だけでなく首もとや胸を甘咬みしていき、お互いの顔が近づいていく。

ヴィクトリア > あ……、あぁ…………あ……!

【ヤバイ、これ、ヤバイ…!
どうしてだよ、なんで……!!】

この………………この……ぉ…………

【手が震える、息ができない。
声が出ない、さむい】

…………って……あ………………ぅ

【ダメだ、駄目だボク……ほんとに……】

うああああああぁん……あぁ………………うっく、んぅ………………うわぁぁぁ…………ああ………………ん……

【ダメだった、どうしようもなくすがりついて全力で頼った、泣いた、ぜんぶ預けた
何もかもなりふり構わず……ぜんぶ。

ぜんぶ、犬飼に預けた。】

犬飼 命 > 「それでいいんだよてめぇはよ……。
 てめぇが俺にすがってる間はてめぇの全部受け止めてやるからよ」

ヴィクトリアを抱え込む。
歪んでいるこの関係、きっとめちゃくちゃなものなのであろう。
それでも構わないと考える。
きっとこの関係性でいいんだと今は思う。

今夜は全てをさらけ出して慰める。
きっとそれで自分も慰められているのだと。
自分への皮肉を……。

今だけはこれでいいと。

ご案内:「Night of the lonely wolf」から犬飼 命さんが去りました。
ヴィクトリア > 【ヴィクトリアは、何もかもが嫌だった。

弱いことも、搾取される側なことも、何も持ってないことも、足りないことも
女らしくないことも、他人の優しさを認められないことも、優しい人たちを傷付けてしまうことも

そして、同仕様もなく都合のいい時だけ雌犬で、他人を裏切って自分のいいようにしか振る舞えない
卑屈であさましくて、噛み付いて傷をえぐらないと確かめた気にならない

そんな最低のクズ野郎でクソビッチな、そんな自分が嫌だった。
ただただ嫌だった。

だからずっと避けてて他人を傷つけまくってたのに。

こんなんじゃ、さからえない。
ボクはきっといま、犬飼の牙で切り裂かれてずたずたにされてる
……しかも甘咬みで

そんなにされたら、さからえない
もっとボクを蹴って欲しい、殴って欲しい、コイツの牙で噛み砕かれたくなる

おかしい、絶対にそんなのおかしい
他人にそんなコトされてもいいだなんて思えるのはおかしい
きっとボクはおかしいんだ……そうにちがいない
傷ついてだいじょうぶなわけないじゃないか……なんでそんなこと。

わからない、わからないから身を預ける心地よさにぜんぶ預けた。


そして……彼女は今日はじめて


………………「安心」を知った。】

ご案内:「Night of the lonely wolf」からヴィクトリアさんが去りました。
ご案内:「学生街のレストラン」にサイエルさんが現れました。
サイエル > 【あらすじ】
訓練施設で運動してたおっさんだったが
研究者の女性と出会い、ちょっと交流。
なにやらお話してると楽しそうだったので誘ってみたら
OKをもらえたので有頂天になってる。
支度を整えて、学生街のおすすめのレストランにやってきた。
おっさん精一杯の見栄である

ご案内:「学生街のレストラン」に瀬田 瑞央さんが現れました。
サイエル > 「というわけでやってきました。レストラン」

誰かに解説するような言葉を吐きつつ。
服装は、まぁいたって普通。
ポロシャツに、ジーパンという格好で。
このレストランは生憎ドレスコードなんてものはない。
それにそういった場所では楽しめたものではないとおもってのチョイスだった。

「洋食はきらいじゃなかったですかね?」

瀬田 瑞央 > 「はい、レストランですね。」

至極まじめに答える。
人によっては馬鹿にされたのか、と思うかもしれないが、素なのである。
格好は……特に変わるでもなく、シャツにタイトスカート……に、上に羽織っていた白衣は流石に手に持つことにしてみた。

「特に好き嫌いはありません……が。」

そこでやや言葉を切る。なれないことであるし、何やら思案しているようだ。

サイエル > 「いえす、レストランです。まぁ少しうるさいですが……」

あたりが静かになる、聞こえるとすれば店員の声くらいのものだろう。
それに相手は研究者。訊かれたらまずいこともあるかも知れないので周りに聞こえないようにもしておく。

「これでよしっと、機密はしゃべらないとは思いますが一応ね?」

ふぅっと微笑んで。
メニューを開き、見せて。

「なら好きなものを? 洋食なら何でもありますし。お酒は、なにか飲みますか?」

言葉をきったなら、少し首をかしげ不思議そうな表情をしつつ

瀬田 瑞央 > 「確かに人の声がそれなりにしますが、これだけ人がいれば自然な……ん」

言いかけて、口を閉じる。喧騒が急に静かになったのだ。
一瞬の間を置いてから、ああ、と理解した顔で

「なるほど。これもまた、あなたの異能なんですね。
 音を選択的に収拾、もしくは打ち消している……でしょうか。
 細やかな事もできるのですね。」

感心したような声をあげる。

「ああ、いえ……そこなのですが……」

珍しく口ごもる。が、それも一瞬で、決意したように口を開く。

「実は、私は普段の食は大体携帯食料に頼っておりまして……
 あまりこういったところで食事をしたことがないのです。」

真顔だった。なお、彼女があげた主な食料はカロリーメイド。
あなたの食にご奉仕、な有名バランス栄養食である。
ついでに飲料は、炭酸と黒い色で有名なアメリカン代表清涼飲料水であった。
なお、わざわざ炭酸を抜いて甘ったるいのを飲むそうである。

サイエル > 「あっはっは、まぁそんな感じです。不要でしたか?
あまりうるさいのは嫌いかなと思いまして」

――タバコは吸っても? と、一応確認。
さっきの訓練場では構わず吸っていたがこれはデートである。
故の質問だった。

「……なるほど。では、これも初めてというわけですね。
初めてをたくさんもらってしまって少し緊張しますね」

――おすすめでいいですか?
と、再度確認。

「ならば、エスコートの見せ所って感じですが。お手柔らかにお願いしますよ?」

瀬田 瑞央 > 「もっと賑やかなところにいたこともあるので、平気ではありますが……
 お心遣い、感謝いたします。」

気を使われるのは慣れてはいない、が。
感謝をしない理由はない。素直に礼を述べる。

「此処は特に禁煙というわけではないのでしょう?
 であれば、特に問題はないかと。」

ややズレた回答。自分への気遣いとは思っていないようである。
だから、世間的に問題なければよい、と。そう考えているようである。

「そうですね……勿論、昔からそんな生活をしていたわけでもないのですが。
 少なくとも、此方に赴いてからはずっとそうです。
 ええ。分からない以上、分かる人間にお任せするのが上策、だと思います。
 あなたは、此方はよく使われるのですか?」

オススメで構わない、と肯定しながら質問をしてみる。

サイエル > 「いえいえ、デートの中心は貴女ですからね。私があなたに気遣うのは普通のこと。お礼は、そうですね。今十二分に払われていますし」

許可を受ければ、かちっと火をつけて。
煙を揺蕩わせながら、ゆっくりと息を吐く。

「いえ、貴女が嫌いじゃないかなと。さっきも言いましたが
今この時間は、このおっさん。貴女だけに割いてますので」

……うはぁ、キザすぎて気持ち悪いと内心自分で引いている。
が、ちゃんと口にしなければ伝わらないのは確かである。
なにせ相手は”初めて”なのだから

「それなりに。といっても、相手がいないので一人で来ることが多いですけどねぇ」

手馴れた様子で、サラダとロールキャベツ。パスタデザートを選び。
ワインを一つ、メニューを見ずに注文した。

「これでよし。まぁ、少しお話しながらゆっくり待ちましょうか」

瀬田 瑞央 > 「ん……………」

小さく吐息のような声をあげ……どうやら考察をしているようだ。
デート。逢引……といっても、恋人同士、ではありませんね。
擬似、というものでしょうか。
なるほど。私もこの方に時間を割いているわけで、相手のことを第一義に考えるというのは当然、ということでしょうか。

「煙草は……自分で吸うことはありませんが、特に不快ではありません。
 そもそも、あまり不快と感じる事項が無い、というのがいいでしょうか。」

あまり気を使わせるのも申し訳ないか、と思い……そんな言葉を付け足してみる。
いちいち聞いて回るのも面倒ではあるだろう。

「なるほど、手慣れていらっしゃいますね。
 ええ、ではお話でも……といっても、会話は苦手、というのは先にお話したとおりですが。」

サイエル > 「ふむふむ……なら、よかった」

安心したように微笑み、意図が伝わったことに喜び
微笑んだ。
それと同じタイミングで、サラダが運ばれてくる。
――鯛のカルパッチョ
緑の野菜が程よく乗り、切り身が花のように6枚。
オリーブのドレッシングがかけられている鮮やかな一品。
そして、ワインが注がれる。白ワインだ。

「不快に感じることが少ないのは、羨ましいですねぇ……
まぁ、そのあたりは流れと勢いですよ、お互いに知らないことばかりですし」

グラスを掲げて。

「では、乾杯……?」

瀬田 瑞央 > 「サラダ、というと青物のイメージが強いですが……このような作りもあるのですね。
 海産物の白に、野菜の緑……これが彩りというものですか。」

その眼はどちらかというと、観察的な視線……
何事も分析をしないと気が済まないタチなのだろうか。

「不感症なのではないか、とよく言われます。自分でも否定出来るだけの要素がないので、そういうものかとも思っています。
 何事にも関心を持って賛否を語れるのなら、それはそれでよいものではないでしょうか。」

やや肩をすくめながらワインを手に取る。

「はい、乾杯、ですね。」

サイエル > 「目でも楽しむ。食文化で大切なことですよ」

その様子を目を細めて見つめ

「あっはっは。それはないと思いますよ?
ならば今みたいに感心しないでしょうし
なによりデートに誘いたいとも思わない」

それは言いすぎですと付け足して、
かつんっとグラスを合わせたあと口に含み。
タバコをもみ消してからサラダをほうった。

「んー、うまい……そういえば瀬田さんは、なんの研究を専門としているのです?」

瀬田 瑞央 > 「どうも、決まった色の食しか取っていないと忘れてしまいますね。」

さきほどあげた、己の食を思い出しながら考えこむ。
なるほど、見た目というのは確かに何事につけ大事なものかもしれない。

「ふ、む……そんなものですか?
 デートに誘いたい基準、というのは気になるところですね。」

目の前の男にならってワインを口にする。
甘すぎず、適度な酸味が心地よい。

「私、の専門ですか? 主に技術系ですが……異能や魔術、そういったものに干渉するようなものが多いですね。
 先の訓練場で言えば、異能に合わせた反応をするような装置、などでしょうか。」

サイエル > 「食欲を促進させる要素ですしね」

うんうんっと頷いて。
美味しそうに見えるか見えないか
それは重要なのだ。

「人形を相手にしたいとは思わないでしょう
私は少なくとも、ですが
どんな美人でも、人間もしくは感情があったほうが喜ばしい」

でなければ、恋愛などできないと思いません……?

たははっと頼りない笑顔を浮かべつつ。

「両方の、ですか。やはり頭がいいのですねぇ……
ふむふむ、装置の発明。それはまた難しそうな……」