2015/07/05 のログ
ご案内:「図書館→商店街」に桜井 雄二さんが現れました。
ご案内:「図書館→商店街」に三千歳 泪さんが現れました。
■桜井 雄二 > 図書館にて。二人で試験勉強、お互い教えられるところは教えあう。
会話は筆談で。周りに迷惑がかかるからね。
『俺は現代文だけは優が取れそうだが、それ以外はどうかな』
と、ノートの切れ端に書いて三千歳泪の前に回す。
これが今の二人の会話。
■三千歳 泪 > テスト期間中の風物詩=連日連夜の一夜漬け。内容はほとんど普段のおさらいだけど、戦術としてはあまり褒められないよね。
君の苦手を私がおぎなう。私の苦手は君にまかせた。言いかえれば一蓮托生。われわれは運命共同体なのだよ。
『数学とか物理はけっこういけるよ!! でも地学とか歴史みたいなのは暗記系だからなー』
私の得意分野は仕組みを理解して応用すること。直感とかひらめきってロジックの省略だからさ。
『桜井くんはおぼえるの得意でしょ? なにかコツとかあるのかな』
■桜井 雄二 > 桜井は理系科目が苦手。どうやら、三千歳泪は文系科目が苦手?
今から悪あがきしても仕方ないけれど、悪あがきしないと仕方ないとも言える。
『俺は数学は全然ダメだ……数式を丸暗記して点数を稼ぐしかないな』
回ってきたのは、暗記のコツの質問。
さらさらと自分なりの暗記法を書いて、差し出す。
『音で覚える。口の中で何度も暗唱して覚える。』
『書いて覚える。あとはそれらの組み合わせで覚える。』
■三千歳 泪 > 『それは私も苦手だなー。答えはパッとわかるんだけどさ』
途中式をすっとばして減点もらうガール。それが私だ。
順序だてて証明することにも時間を取られるから、満点をとれたことは一度もないんだ。
メモを見る。なるほど。音の情報におきかえる。パターンに変換する。そんなところかな。
『数学も現代文と同じだよ。文法をおぼえて、その言い回しがでてくる場面を繰りかえして自分のものにするの』
ね、簡単でしょ? とは言わないよ。向き不向きは人それぞれで、たぶん、考え方の違いだけだから。
イスを寄せて私のノートを開いてみせる。君のノートと私のは取り方からして違ってるはず。
『苦手って思っちゃうから苦手なんだよ。私にできるのは苦手意識をなくすことだけ。どこがダメそう?』
■桜井 雄二 > 『答えがぱっとわかるのって凄くないか……?』
答えが出ない桜井と足して2で割ったらちょうどいいのかも知れない。
数学、それは目の前に立ちはだかる巨大なる壁であった。
『なるほど。文法が数式に成り代わっただけ…なのか?』
イスを寄せてもらうと無表情にお互いのノートを見せ合う。
そこでさらに筆談の頻度は高まる。
『……数式を見るとウッとなる…』
『どこから手をつけていいのかわからないと感じる…』
■三千歳 泪 > 『それはさっき言ってた「組み合わせ」に気付いてないだけじゃないかな』
『文字を数字におきかえて、韻をふむ感じ。英語とか漢字の詩であるじゃんさー』
たとえばこれ。同じ教科のノートでも、私の取り方と君が書きとめた内容はけっこう違う。
でも、見ているものはあまり変わらないはず。苦手意識は根が深そうで。
『一年生の内容をおさらいするのもいいかもよ! たぶんそこからつまづいてるから』
『ノートのコピーあげるよ。ぜんぶ手書きの私の字。それならがんばれるでしょ、さくらいせんぱい』
実は先輩なんだよね。このかわいいいきものは。
「ちょっと外出てみない? 桜井くんの去年のノート、私もほしいからさ。コピー機さがさないと!」
■桜井 雄二 > 『組み合わせ………そうなのか…』
もちろん三点リーダまで書いているのが桜井くんだ。
彼なりの自分の言葉の表現だ。
『わかった。おさらいしてみる。』
『まるで俺が泪の文字が大好きであるかのような言い方だな。』
『大好きだが。』
うむむと唸って頭から白煙を出している。
その時の助け舟にも似た言葉に頷く。
「ああ、そうしよう。とりあえず、商店街へ」
二人で勉強道具を片付けて図書館を出た。
外の空気は生ぬるく、少し暑い。
■三千歳 泪 > 『でっしょー?』
うむ。筆談終わり。勉強道具を片付けて、冷房のきいた図書館を出ていく。
「さいきん掃除子ちゃんは元気にしてるかなー。私もしばらく忘れてたんだけどさ」
「君とはじめてデートしてから、いろいろあったでしょ? タイムトラベルにラジオに飛行船にヘンな本とか!」
指折り数えて振り返る。激動の日々だよね。《直し屋》さんの仕事は危険ととなりあわせなのだ。
「それって分割払いのあつかいになってるのかなーってさ」
「もちろん気分的にはそうなんだけど、終わったことにしたら君と私はこのままでいられるのかなって」
「桜井くんはどう思う?」
日なたを並んで歩いて、最近なんとなく思っていることをぶつけてみる。
■桜井 雄二 > 「掃除子さんはよく働いてくれているよ」
「掃除子さんのおかげで授業に遅れなくなったし」
「なんだかんだでプラスのほうが大きいな」
一緒に歩きながら思い出す。
色んなことがあった。あってはならない事件もあったけれど。
今は良い思い出だ。
「タイムトラベルの時と飛行船の時と夢の時とラジオの時は焦ったぞ」
全部焦っている計算になる。
彼は無表情だが無感情ではない。
「そうだな………俺としては泪と一緒にいられるのであれば」
「………どうでもよくはないな、言葉は難しい……」
「だが最近は泪と一緒にいることが自然すぎて、よくわからないというのが本音だな」
自分たちの関係、それはわからない。
ただ日常はひたすらにやってくるので、勉強と仕事はしなくてはならない。
「そういえばテストが終われば海開きだな、その……」
――言え、言え桜井。一緒に海に行かないか?と言え桜井ッ!
内心で自分を鼓舞した。
■三千歳 泪 > 「あはは、なにそれ! ラジオのときも焦ってたんだ?」
「地下のねこちゃん見つけたときかな。あれは怖かったねー」
「つかずはなれず時々会って、たまにはごはんも食べたりして。仕事の時だけ連絡をくれる」
「そんな関係をたくさん作って、毎日楽しく過ごしてる。そういうのも気に入ってたんだけどさ」
「君のとなりは居心地がよくて…うん、そうそれ。自然すぎてね!!」
「もういいよ。分割払いはそろそろおしまい。このままずるずる続けるのはよくないからさ」
気がつけば君に助けられてばかり。お返しはもう十分。貸し借りとかじゃなくて、そろそろ次に進みたい。
海って言った? そういえば、最後にデートしてからずいぶんたってる。お仕事のヘルプはノーカンだよ!
だから、そろそろかなって。期待してもいいのかなーこれは。言っちゃいなよ桜井くん。
■桜井 雄二 > 「………あの時の電波ジャック事件で相当からかわれたぞ…」
「まさかラジオを聴いている人間が学内にもそれなりにいるとは…」
相手の言葉に焦りは加速する。
ずるずる続けるのはよくない?
ひょっとして関係を清算しようと言っているのか?
それはよくない。それは、よくない。
照りつける太陽の熱が及ぼすそれ以上に汗をかきながら、喋りだす。
「い………一緒に海に行かないか、泪」
「デートをしよう、海で」
言ったァ!と同時に内心で焦燥感とか、苛立ちとか、苦しみとか。
そういうものが渦巻いている。相手の返事がくるまでが長く感じる。
何が時空間異能概論だ。今、俺は時間を止めているぞ。
自分の今の表情がどんなものなのか、怖くて確認する勇気はない。
■三千歳 泪 > 桜井くんがまたヘンな顔してる。これはたぶん頭の中がグルグルしてて焦ってる顔。
なにかおかしなこと言ったかなー。
―――あ。もういいよって言ったっけ。続けるのはよくないとか。そういう。
別れ話みたいに取られてる? まさかね。聞こえなくもないけど、私が言ったのとは全然意味が違うし。
デートですって奥さん。海水浴場みたいなのがあることは知ってるけど、あんなのは一人で行ける場所じゃない。
まさか私みたいなのがカップルの仲間入りをするなんて。世の中わからないもんだよね。
えっと。そうそう、桜井くんが答えを待ってる。
「いいよ!! いこうよ海! お祭りもいこう!!!」
「浴衣はおかーさんのがあるから、それでいいでしょ? でもなー水着がなー」
「じゃあ、ちょっと提案。今から探しにいこうよ。で、当日までとっとくのさ。テストの後のお楽しみ!」
「山育ちのイモガール的にはさー、都会っ子の桜井くんにみてもらわないとさー」
「泳ぎにもいけないわけだよ!! 分割払いはこれでおしまい。どうよ桜井くん」
■桜井 雄二 > ああ、時間が長いなぁ。
相手の発言を待つまでの間がこんなに長いだなんて。
それに泪もいいよって言っているし。
ん? いいよ?
「本当か、泪」
右手で自分の顔を撫でる。やっぱりひどい顔をしていた。
だが表情筋が持たないのですぐ無表情になる。かっこ悪いなぁ、俺。
「わかった、海にもお祭にも行こう」
「水着を買いに……? わ、わかった。分割払いはこれで終わりということで」
あっひょっとしてそういうことか。今理解した。
別に関係を清算しようとはしていなくて。
耳まで赤くなった。恥ずかしいなぁ、俺。
「それじゃ水着を選びに行こう、泪」
胸を張って言った。それにしても世界は輝いていることだなぁ。
二人で水着を売っていそうな店を探して歩く。
他愛もない会話をしながら。
■三千歳 泪 > いつもはクールな桜井くんの顔が真っ赤に染まっていく。本当に気にしてたんだ。
こういう時はものすごくわかりやすいよね。
「そういう意味じゃないよ。貸しとか借りとかそういう関係をおしまいにしたいだけ」
「たとえばさ、君は私を助けてくれる。有言実行だよね」
「たのもしくてカッコいいけど、私がそれをいちいち負い目に感じるのは筋違いのはず」
「君と私はそうじゃなくて、もっと違う関係になれると思ったから」
「それをさー!! 桜井くんはさーーーー! あはは、あっはっは。恥っずかしいなぁ!!」
「ほんとほんと。岩手県民うそつかない! 泳ぎも平気。まかしといて!」
売り子のお姉さんにつかまって、夏モノ商戦もたけなわなアパレル系のビルに引き込まれる。
特設の水着売り場は戦場みたいな大活況。一人でこっそり。友達とわいわい。二人連れもけっこう多い。
時期的にはたしかに今なんだけど、まるでテスト期間中じゃないみたい。みんな余裕だねー。
「あんまり長居できないからさ、三つか四つくらい決めて試着するよ桜井くん!!」
■桜井 雄二 > 「わかった、そういうことなら」
「貸し借りじゃなくて、お互いにとって一番自然な関係を探していこう」
相手が爆笑すると顔を赤くしたまま両手で頬を覆って俯く。乙女か。
「言うなっ 言うなよ、泪………っ!」
「俺にとってはシリアスプロブレムだったんだよ…!」
「そうか? 俺も泳ぎは得意なほうだ、海…楽しみだな」
水着売り場に来ればなんだか女友達と賑々しく水着を選んだり。
あるいは、彼氏連れで水着を選んでもらったり。
これは照れている場合じゃない。
泪に一番似合う水着を選ばなければならないのだから。
「ああ、わかった!」
そう頷いている間に自分の水着(ごく普通の青い海パン)はもう選んで購入を済ませてある。最速。
■三千歳 泪 > 「わかってるってば! だからよけいにおかしくなっちゃって。ごめんね桜井くん!!」
迷子にならない様に腕をとって売り場の奥へ。トロピカルな熱帯雨林みたいに派手な色彩が溢れかえってる。
「元気でよろしい! はりきってるねー」
「セパレートにする? 色は寒色系? それとも暖色系が好み? 種類もサイズもいろいろだよ!」
「私的にはホットパンツとあわせられるのがいいなー。なんかの雑誌のグラビアで見たんだ」
「それがかっこよくってさー。同じ風になれるとは思わないけど、真似してみたくなっちゃって」
「だとしたら、ボトムの飾りはひかえめな方がいい。柄物でもOK!」
「私のサイズはたぶんこれ。いつもは意識してないかもだけど、けっこう大きい方なんだよ」
「こっそり盛ってる子もいるみたいだけど、私のこれは生まれつき! 昔はそんなでもなかったんだけどねー」
モノクロームのツートンカラーの色分けがSci-Fi風味なビキニを身体にあわせて見せる。
「君と私で二着ずつ持ち寄ってみて、その中から決めよう。いいかな。私に着せたいやつだよ!!」
試着室の前で待ち合わせることにして、はじめてのおつかいに送りだす。かわいい子には旅をさせろってさ!!
■桜井 雄二 > 「ちょっと待ってくれ、メモるから」
No.9と書かれた分厚いメモ帳を取り出して泪の言葉を聞く。
「ホットパンツと……あわせられる………」
「わかった、探してみる」
ん? 待て、何かおかしくない?
探してみるって? 俺が? まぁとにかく話を聞こう。
「……………………………ああ」
一瞬意識が間隙に飲み込まれる。
ほんのワンセコンドだが俺の意識は時を越えた。
というか、泪の胸を意識していないはずがないんだ。日常でも。
サイズをメモった。破っ壊力ぅ……
「わ、わかった! えっ わかった! えっ…」
周りを見渡す。あの男の人、彼女の水着選びに一人で放り出されたのね、という視線が突き刺さる。
また赤くなる。クールだ、クールになるんだ……
何とも過ごしやすい空気を放つことで意識を切り替えた。ついでに店内も(勝手ながら)適温になる。
挙動不審な男が一人で女性用水着を見ている姿は、視線を集めるのに十分なものがあった。
桜井雄二、17歳。愛と勇気の冒険の真っ只中。
……泪、俺…お前のために頑張っているよ…?
「コホン……」
試着室の前でキョドってる男。
「とりあえず、ワイヤー入り&ホルターネックの水玉に…」
「黒ビキニ………を、選んだが…」
これでいいのか?
もし、泪に『意外とムッツリなんだね、桜井くんは!』とか言われたら立ち直れなくもなくもなくもなくない?
想像を振り払ってハンカチの表面を低温にして額を拭いた。冷たい。